市町村合併情報(履歴情報)は、お蔭さまで1912(明治45・大正元)年を入力中です。大正分の入力を終わり、次からはいよいよ明治分に突入します。市町村合併情報の
更新履歴には残らない手法で入力方法をしていますが、順次増殖中ですので、御贔屓にしていただければ幸いです。
さて、
No.1及びNo.2(特に
[54044])の続きです。「合併・改称・市制等における都道府県告示の位置づけについて」
まずは、
[54044]の復習と、まとめを兼ねて。
市町村の「改称」「廃置分合」「町から市への変更」など、根拠となるものを整理すると次のとおりです。なお、地方自治法は何度も改正を重ねていますが、当該条文は制定当初から変更はない、ということを確認いたしました。
[54044] 88
ところが、改称に関しては、総務大臣告示をする旨の規定はありますが、「効力が生ずる」旨の規定がありません。ということは、当該自治体の条例によって効力が生じることになります。
[54174] 紅葉橋律乃介 さん
おや、そうすると告示があっても条例が制定されないと、本当にその名称なのかどうか確認できませんね? 名称変更した自治体は、いちいち条例を確認しないと「確定」とは呼べない?
のとおり、厳密に言うと、「改称」だけが当該市町村の条例で確定し(総務大臣による告示等は「周知」に過ぎない)、その他の「廃置分合」「市制」などは「告示で効力が生じる」ことになるようです。
--------------------------
これを踏まえて、具体的な考察です。
●その1
埼玉県“忍市”をめぐって ~市制施行に係る行政手続の考察~
埼玉県行田市の市制施行時の話ですが、埼玉県告示(行田市HP内)では
(A)忍町を忍市とする告示
昭和24年3月29日
埼玉県告示第129号
地方自治法第8条の規定により、昭和24年5月3日から、北埼玉郡忍町を忍市とする。
(B)忍町を忍市とされた場合における新市の名称変更に関する条例
昭和24年3月3日
公布
忍市を行田市に変更する。
附 則
この条例は、忍町を忍市とされた日からこれを施行する
(C)忍市を行田市とする名称変更を許可した告示
昭和24年3月29日
埼玉県告示第130号
地方自治法第3条により忍市を行田市とする。市の名称変更の条例を許可した。
官報では(
官報情報検索サービスより)
(D)総理廳告示 第二十八号
町を市とする処分
地方自治法第八條第三項の規定により、昭和二十四年五月三日から、埼玉縣北埼玉郡忍町を行田市とする旨、埼玉縣知事から届出があつた。
昭和二十四年四月二十三日
内閣総理大臣 吉田 茂
この行田市の例(A)~(D)を、前述のルール(1)~(7)にあてはめると、次のとおりとなります。
行田市 | ルール | 備考 |
(A) | なし | 県の告示はそもそも規定なし |
(B) | (1) |
(C) | なし | 県の告示はそもそも規定なし |
(D) | (4) | (※) |
(※)なのですが、
・ 標題からも「町を市とする処分」であり、また、本文中の根拠が
地方自治法第8条第3項でもある。(これが(4))
・ 「忍市を行田市とする」は、忍町の条例により確定している。(B)
・ 「町を市とする処分」の総理庁告示にあわせて、「忍市を行田市とする」件の「周知のための総理庁告示」を兼ねたものである
と解釈いたしました。
これにより、「忍町」→「忍市」→「行田市」であることが間違いない、と検証しました。
●その2
茨城県那珂郡美和村(現:常陸大宮市)成立の件
[51369] Hiro(&TOKO) さん (引用者で適宜体裁変更させていただきました)
茨城県那珂郡美和村(現:常陸大宮市)
◎総理府告示第四百七十一号
村の廃置分合
地方自治法第七条第一項の規定により、茨城県那珂郡檜沢村及び嶐郷村を廃し、その区域をもつて美和村を置く旨、茨城県知事から届出があつた。
右の配置分合は、昭和三十一年九月二十九日からその効力を生ずるものとする。
昭和三十一年九月二十九日
内閣総理大臣 鳩山 一郎
○茨城県告示第八百五号
昭和三十一年九月二十九日から那珂郡檜沢村及び同郡嶐郷村を廃しその区域をもつて檜沢嶐郷村を置く。
昭和三十一年九月二十一日
茨城県知事 友末洋治
○茨城県告示第八百三十二号
昭和三十一年九月二十一日付茨城県告示第八百五号中「檜沢嶐郷村」を「美和村」と改める。
昭和三十一年九月二十六日
茨城県知事 友末洋治
茨城県告示は、頭書資料から見てもそもそも根拠がなく、廃置分合は(2)のように総務省告示(当時は総理府告示)が効力を発するため、都道府県告示は効力はありません。このためで「檜沢嶺郷村は存在しなかった」ということでよい、と判断しました。
もっとも、茨城県告示でも、「改称」ではなく、「前回分の告示の訂正」とも言える表現をしていることもありますが。
疑義・ご意見等をいただければ幸いです。私も、もひとつ不安な面がありますので。