『東西南北端』コレクション をリリースしました。
タイトルからは省いていますが、「都道府県の」東西南北端です。
国土地理院資料 には、全自治体・行政区の東西南北端点の経度・緯度が示され、ウォッちずリンク【注】も付けられています。
【注】URLの誤記があるようですが、「%20」を削除すると、正しい位置になります。
地名コレクションに新たに登場させた『東西南北端』は、所属する市町村名を含む「地名」と、その地の姿についての「種別」とを示しています。
これにより、経緯度数値中心の表では感じにくい 東西南北端の地理的感覚が得られる「生き生きとした表」を作りたい。
これが、データとしては二番煎じである、このコレクションを敢えて作った趣旨です。
とはいうものの、コレクションである以上、収録する東西南北端のデータは大事です。
『東西南北端』コレクションを作るにあたり、第一に問題になったのは、小さな島(岩礁)をどこまで含めるかという点であり、人工物の扱いにも議論の余地がありました。
結論を先に書いてしまうと、両方共に島の大きさなどによる一義的な線引は困難でした。
結局のところ、原則として 前記 国土地理院資料【日本の東西南北端点の経度緯度】 の匙加減に従い、都道府県の東西南北端点を収録することにしました。丸投げですね。
但し、必要に応じて異なる基準の東西南北端も併記し、それについては【東端】(東端)など括弧付きで表示し、備考欄で説明しました。
1.小さな島(岩礁)の事例 飛島北方のオカミ島は無視 しかし対馬北方の岩礁は北端に採用
山形県東西南北端点の経度緯度には、国土地理院が認定した山形県北端の経度・緯度の値が示されています。
経度・緯度の値からすると、山形県北端は飛島八幡崎ということになるのですが、その八幡崎よりも 数百m余り北に 直径数十mほどの 「オカミ島」という小島があります。しかし、この島は 山形県北端としては無視されています
[83154] 。
小岩礁まで拾い出すと「きりがない」ので、適当に無視するのは現実的な措置であり、やむを得ないこととは思います。
しかし、他の県と比較してみると、無視される小島の基準が はっきりしません。
例えば、
長崎県を調べてみると、オカミ島よりずっと小さく名もない岩礁(韓崎の北)が北端に採用されています。対馬島北端久ノ下崎北方約2kmの三ッ島を主島とする岩礁群の東端です。
2.沖ノ鳥島について
東京都南端、そして日本南端でもある「沖ノ鳥島」となると、満潮時の海上部分は更に小さい岩礁です。
しかし、見かけは小さくても、この「島」は明らかに無視することのできない存在になっています。
沖ノ鳥島については過去にも記しましたが
[26266] 、日本の南端ということで、再論します。
沖ノ鳥島の実体は、深海から高さ数千mも聳える巨大な山です。珊瑚礁に覆われていた山頂付近は 最終氷期に低下した海面 まで侵食され、その後の温暖化で 海面まで成長した新しい珊瑚礁に再び覆われました。
電子基準点設置位置図 を見ると、山頂部リーフの範囲は、東西4.5km・南北1.8km、面積約6km2に及んでいます。
このように、海中では巨大な姿で存在感を示す沖ノ鳥島。海面上の姿はというと、干潮時には大部分のリーフが姿を見せるものの、満潮時の海面上は、広さ四畳半ほどの北小島(三等三角点設置)と、一畳ほどの東小島(電子基準点・一等三角点設置)のみになってしまいます。
[26266]で記した北露岩・東露岩の名称は、現在では改められているようです。
人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。
という
国連海洋法条約 第121条第3項などから、日本の南端としての沖ノ鳥島の地位は、国際的には議論の対象になっています。
しかし、実際面において沖ノ鳥島の「水面上」の部分は、領海12海里および排他的経済水域 EEZ=exclusive economic zone 200海里、大陸棚200海里を起算する
基線 の根拠に使われ、
海岸保全事業 や気象観測を含む経済活動の実績
[26266]も積み重ねられています。2007年には灯台設置。
2016年度末までに160mの岸壁を備えた本格的な港湾設備を建設する工事は、2013年開始。
朝日新聞
3.人工物の扱い
沖ノ鳥島の電子基準点や三角点は「自然に形成された陸地」に設けられていますが、ウォッちずにおいて両者の中間に灯台マーク見える観測施設や観測所基盤は人工物です。コレクションの東京都西端・南端の経緯度には、便宜上「北小島の値」を表示していますが、「東京都南端 = 日本南端」は、緯度で8秒南にある人工物である可能性があります。
「人工島」は海洋法条約では島と認められていないのですが、国内には空港島など経済的価値の高い人工島があります。
自然島の一部に人手を加えた 埋立地 は国土の一部です。外洋に孤立する人工島の議論はさておき、少なくとも 領海内に築かれた人工島については、これも本土地続きの埋立地と同様国土の一部に含まれる。そのように認識する方が、むしろ自然と思われます。
東京湾富津岬の沖にある第二海堡は、廃墟になっている人工島ですが、国土地理院リストで千葉県西端として認定されています。
しかし東京湾アクアラインのトンネル内換気を目的に作られた設備・風の塔(川崎人工島)は、国土地理院リストでは神奈川県東端に認定されていません
[83154]。海底を主とする設備の一部だからでしょうか。
4.海上の都道府県境
自治体の海上境界 についても議論があります。ある文献紹介の整理には、“海上部で各地方公共団体同士は「接している」”とまで記されていました
[66057]。
しかし、東西南北端の確認手段がない海上県境を示すことはできないので、この件は無視します。