[43975] きまぐれ さん
サムカゼヤマ 寒風山 秋田県男鹿市
フタガミ山 両神山 埼玉県秩父市(旧大滝村)
アンバウ峠 安房峠 長野県松本市(旧安曇村)
角川日本地名大辞典では、“寒風山 かんぷうざん、「さむかぜやま」とも読み、妻恋山、羽吹風(はふかぜ)山ともいう(地名辞書など)。…”とあります。帝国書院の地図(昭和13年)ではフリガナなく、索引ではカンプーザン。
どちらが正解ということではないようですが、地名の由来になっていると思われる北東季節風からすると、音読みの「かんぷうざん」の方が実感が出ています。現在は、この音読みが優勢になっているとは思われます。
きまぐれ さんの昭和15年の地図の編集者は、どうも訓読みがお好きなようですが、何という地図ですか?>きまぐれ さん
山麓に石切り場があり、寒風石(男鹿石)の名で知られる石材を産出する由。
石材・鉱物関連地名に加えましょう。
秩父の両神山。山頂直下にある、イザナギ・イザナミ両神を祀る両神神奥社に由来。重箱読みの「リョウがみやま」が普通でしょうが、訓読みがお好きな地図ですからね。
信濃と飛騨の境の安房峠。帝国書院の地図では、峠にはフリガナがありませんが、近くに安房(アボー)山と振ってあります。屋久島の安房川は「あんぼう」と読みますね。安房国に由来する千葉県安房郡は、もちろん「あわ」。
さて、「しろうまだけ」か「ハクバサン」かの問題
[26306] [43943]でも実感しましたが、どれか一つが正解で、他はすべて間違いというのは、多肢選択問題に慣れてしまった現代人が陥りやすい落し穴ではないでしょうか。
たぶん、「しろうま」でも「ハクバ」でも、どちらでも良いのです。「ハクバだけ」と湯桶読みになるのは美的でないとは感じますが、これを間違いときめつけるのはどうかと思います。
訓読み・音読みの対立ではないのですが、「東京」も、かつては「トウケイ」と漢音で読まれていました。
“因テ自今江戸ヲ称シテ東京トセン”という
詔書を素直に読めば、漢音の「トウケイ」でしょう。
これが、書き言葉として定着して行くうちに、読み方がいつしか呉音読みの「トウキョウ」になってしまった。たぶん、京都の読みに影響されたのでしょう。
現在は圧倒的に「トウキョウ」ですが、「トウキョウ」が正しくて「トウケイ」は誤りとなった時点を特定できるかというと、そんなことができる筈がありません。
「ニッポン」と「ニホン」はどちらも正しい。ということでしょう。
だから日本(ニッポン)銀行があったり日本(ニホン)大学があったり。
アーカイブズもありますね。
さて、私が学んだ「併設中学校」のあった神奈川県愛甲郡南毛利村
[22152]という「人名由来の地名」
[1617]の読み方です。
当時の記憶では、学校の所在地は「なんもうりむら」だったのですが、最近の「市町村名変遷辞典」では、「みなみもり」となっています。
調べてみると、「幕末以降市町村名変遷系統図総覧」や「角川日本地名大辞典」も同様。
そこで、南毛利村が存在していた頃の「市町村大字読方名彙」(小川琢治編1923)
[35703] まで遡ってみましたが、これも「みなみもり」。
平凡社の「日本歴史地名大系」14巻519頁だけに「なんもうり」のふりがながありました。しかし、これも518頁の南毛利中学校遺跡には「みなみもうり」のふりがな。
もちろん厚木市HPも見ましたが、読み方はわからず。「厚木の地名」(厚木市教育委員会1996)にも、読み方が出ていませんでした。
そして、厚木市立南毛利小学校の校歌譜面を見たら、「なんもーり われらのいのち…」とありました。地元の作家・和田傳さんの作詞ですから間違える筈はありません。
「南毛利」という地名が使われている施設を調べてみたところ、郵便局HPの南毛利郵便局には「なんもうり」のふりがながありました。
以上のデータを添えて、昨年12月に厚木市HPから連絡して、「なんもうり」村だったことについての行政当局のお墨付きを貰おうとしたのですが、梨のツブテ。
ところで、この記事を書くにあたり、郵便局HPの
同じアドレスにアクセスして見ると、なんと「みなみもうり」に変っているではありませんか!!
南毛利の読み方は、半世紀の間に「なんもうり」から「みなみもうり」に変ってしまったのか?