むかし、地名というか、各地の神社仏閣を詠み込んだ数え唄がありました。私が子供の頃に聞いたのはこんな歌詞でした。
一番初めは 一の宮
二は 日光の東照宮
三は 佐倉の宗五郎
四はまた 信濃の善光寺
五つ 出雲の大社(おおやしろ)
六つ 村々鎮守様
七つ 成田の不動様
八つ 八幡(やわた)の八幡宮
九つ 高野の弘法様
十で 東京招魂社
この後に、
これほど心願かけたれど/浪子の病いはなおらない/ごうごうごうごと行く汽車は/浪子と武夫の別れ汽車/ハンカチふりふりねえあなた/はーやく帰ってちょうだいな/泣いて血を吐くほととぎす
というような徳富蘆花の小説を題材とした続きがあることを知ったのは大人になってからでした。
この部分は、1898-99年に発表された「不如帰(ほととぎす)」が流行した後に、既存の数え唄に付加されたものかもしれません。
東京招魂社は明治2年創建で、10年後には靖国神社と改称されていますが、一般には「招魂社」の名で親しまれていた様子が、明治38年(1905)の「我輩は猫である」の記述からうかがえます。
ネットで検索してみると、ほぼ同様の歌詞で全国に広く知られていたようです。
http://www2g.biglobe.ne.jp/~gomma/kodomo2c.html の作者は、「日本わらべ歌全集(尾原昭夫著・柳原書店刊)」の掲載状況から、関東で作られて大阪にも広まったと考えていますが、富山の薬売りが広めたという説もあります。
http://hokuriku.yomiuri.co.jp/bunka/bun0425/bun0425.htm
このような唄の性格上、歌詞は変幻自在で、部分的な違いは多数あります。バリエーションに登場する地名・名所を拾い集めてみました。
2=日光中禅寺
3=讃岐の金比羅さん、桜の吉野山
4=四国の金比羅さん、吉野の八重桜
6=村々地蔵様
7=名古屋は城で持つ、長野の不動様
8=大和の法隆寺、山田の伊勢神宮
9=高野の金剛さん
10=東京明治神宮、東京二重橋、東京泉岳寺、東京心願寺、東京浅草寺、富山の招魂社
十で 富山の反魂丹/十一 いなかのお医者様/十二は 二宮金次郎… という富山バージョンを見ると神頼みの領域を越えて、なんでもありという感じです。
http://www.tkc.pref.toyama.jp/furusato/minyo/t00-3.html
「一番初めは一の宮」とは別に、こんな地名数え唄もありました。もっと古そうな感じですが、東京があるので、やはり明治以後か。
伊勢、伊勢、い~せ。
新潟、新潟、いせ、にぃがた~。
堺、堺、いせ、にぃがた、さかい。
四国、四国、いせ、にぃがた、さかい、しこく~。
江州、江州、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう。
武蔵、武蔵、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう、むさし~。
名古屋、名古屋、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう、むさし、なごや。
八幡、八幡、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう、むさし、なごや、や~はた。
九州、九州、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう、むさし、なごや、やはた、きゅうしゅう。
東京、東京、いせ、にぃがた、さかい、しこく、ごうしゅう、むさし、なごや、やはた、きゅうしゅう、と~おきょう。
これもバリエーションがあり、
http://www008.upp.so-net.ne.jp/karugamo/zakki/zakki.html ではイタリア、ニッポン、上海、四国、豪州、武蔵、名古屋、やはた、九州、東京 となっていました。