[48775]拙稿に紛らわしい表現がございました。お詫びして補足をさせていただきます。
住居表示未実施地域においては、住民票や登記の表示をどう書くかは、行政裁量の範囲内
と記しましたが、この意図は「わざわざ法改正を経なくても、行政府(国の省庁)の裁量で処置できる」という意味合いでございました。市町村が独自の判断で処置できるという意味ではございません。
まず、「地域自治区」・「合併特例区」には、3つの形態があります。
1.改正地方自治法に基づく「地域自治区」(いわゆる「一般制度としての地域自治区」)
2.合併特例法(及び地方自治法)に基づく「地域自治区」(いわゆる「地域自治区の合併特例」)
3.合併特例法に基づく「合併特例区」
このうち、2と3は「地域自治区」・「合併特例区」の名称を「住所」に付することになっています。
皆様がご指摘の通り、この扱いの法的根拠は、住居表示実施区域については、「住居表示に関する法律」第2条になります。
それでは「住居表示未実施区域については、市町村(または市町村議会)の自由裁量なのか」という点ですが、実態としては、そのような運用にはなっておりません。
市町村が「住所」を特定するのは、住民基本台帳への記載によることになります。この住民基本台帳の記載法を定めた「住民基本台帳事務処理要領」(国から都道府県に対する通知)は、04年10月19日の総務省自治行政局長通知により改正され、上記の2と3の名称を住民票に記載する「住所」に加えることを定めています(
通知内容引用・・・PDFです)。
その結果、国(総務省)の通知に従うならば、各市町村は住居表示未実施区域であっても、住民票の住所に「合併特例法による地域自治区」と「合併特例区」の名称を記載することになりました。
もっとも、地域自治区や合併特例区の名称に「区」を使わなければならない決まりは無いので、例えばせたな町の合併特例区は「大成区」・「瀬棚区」・「北檜山区」としましたが、同日に合併した士別市の合併特例区(旧朝日町の区域のみ設置)は名称を「朝日町」としました。朝日総合支所の住所「北海道士別市朝日町中央4040番地」は、「朝日町」が合併特例区の名称、「中央」が「町若しくは字の区域の名称」ということになります。
(ご参考)士別市・朝日町合併協定書の「町名・字名の取り扱い」
(1) 現士別市の区域内の町の区域及び名称は現行のとおりとする。
(2) 現朝日町の区域内の字の区域は現行のとおりとし、名称については現在の名称から「字」の字句を削除したものとする。
(3) 現朝日町の区域における住居表示については、市町村の合併の特例に関する法律第5条の37の規定に基づき、新市の名称「士別市」の後に合併特例区の名称を冠するものとする。
相模原市津久井町の「津久井町」、上越市柿崎区の「柿崎区」はいずれも「合併特例法に基づく地域自治区」の名称です。
このような総務省の通知があるものですから、05年10月1日の横手市の合併に際して、当初8市町村すべてに「合併特例法による地域自治区」を設置することで協議がまとまった後になって、横手市が合併前の「横手市横手町」について「横手市横手区横手町」や「横手市横手横手町」になるのは煩雑だとして、横手市だけが「一般制度の地域自治区」を選択することに変更した、というような事態が起こります。(横手市横手町は住居表示未実施地域です)
もっとも、住居表示実施区域については、法律通りの住所の表示法を使用することが民間にも努力義務として課されています(住居表示に関する法律第6条)が、住居表示未実施区域にはそのような法的な拘束は無いと思いますので、その点は異なるのかもしれません。