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1954/4/1付けの武雄市の新設/市制について
[63494] グリグリさん
十番勝負開始直前だったために88さんに修正依頼するわけにもいかず、自分でこっそり修正したのでした(修正したのは元日だったかなぁ)。88さん、事後になりますがご了承とご確認をお願いいたします。
武雄市の合併の件は、グリグリさんご指摘のとおりです。修正ありがとうございました。
私自身は遅ればせながら第二ヒントで共通項がわかり、残り3市となった想定解を探して調査していました。
市区町村変遷情報ではなく、その編集作業用を兼ねて自分で作成したExcelのデータでです。私は専ら、まずExcelデータを作り、それをコピー・ペーストすることにより
市区町村変遷情報の編集作業を実施しています(作業手順の概要は
[55730]拙稿参照)。
さすがにほとんどの市は既出。そこへ問題の武雄市(「旭村」を含む)を発見しましたが、すでに
[63308]で中島悟さんが誤答。不思議に思い、念のため
市区町村変遷情報で調べてみると「朝日村」。手持ちの他の文献も、
官報情報検索サービスで
官報情報検索サービスの総理府告示を見ても「朝日村」。
いろんな方から書き込みやメールでご指摘を受けて(自分で気づくこともある)修正作業を行うとき、
市区町村変遷情報の入力の修正とあわせて手持ちのExcelデータも修正するのですが、修正のときにExcelデータの修正漏れかなあ、でも武雄市の修正作業ってしたことあったかなあ、と脳の片隅に疑念が残りながらも、解答できる市を探すことに気をとられ、武雄市の件はその後頭から消えておりました(中島悟さんが、誤入力の武雄市を見て(記憶にあって)解答したのならば、申し訳ない、とも思っておりましたが)。
そのあたりの不思議さは、
[63494] グリグリさんを読んで、瓦解したわけです。
言い訳になりますが、誤りは続々と発見され、つい最近もご指摘をいただいて大量に修正したばかりです。「庄」「荘」、「且」「旦」、「黒」「里」、「鴫」「鴨」の誤りなど・・・。編集担当者としては、
市区町村変遷情報を、十番勝負に限らずいろいろと活用していただくのは、議論の発展、興味の広がりなど、喜ばしい限りです。ただし、(残念ながら)まだまだ誤りがあるであろうことに思いを寄せると、気恥ずかしい限りです。十番勝負に関しては、この誤りにより「不成立」なんてことがないように感じるともに、より正確で充実したものにしたい、と改めて思う次第です。
2 市制町村制以前に存在した旭町(村)について
[63494] グリグリさん
まず、どの時点での「旭」市町村とするかについては、明治22年(香川県は23年)の市制・町村制施行(88さんの記事[58627]参照)以降に存在した市町村としました。したがって、例えば、徳島県勝浦郡の福原村、生実村、旭村の三村が町村制施行により明治22年10月1日に福原村として誕生していますが、施行前の旭村は対象外としています。
市制町村制以前は曖昧(調査困難)が多いので、賢明な定義だと思います。・・・と言いながら、それで満足するのはもったいないので(笑)、徳島県勝浦郡旭村と同様、市制町村制以前に存在していた旭町(村)を探してみました。詳細は別稿としますが、その結果、全国で44あった旭町(村)の誕生時期等は次のとおりとなりました。
時期 | 誕生数 | 消滅数 |
江戸末期 | 1 | 0 |
明治(市制町村制前) | 9 | 0 |
明治(市制町村制時) | 23 | 7 |
明治(市制町村制後) | 7 | 7 |
大正 | 0 | 2 |
昭和(戦前) | 0 | 2 |
昭和(戦後) | 4 | 20 |
平成 | 0 | 5 |
計 | 44 | 43 |
まず、天保郷帳にある旭町(村)は、1件だけです(参考:「地名研究必携」(2003年5月) 谷川健一:監修 滝澤主税:編著 日本地名研究所 )。越後国中蒲原郡旭村で、別名が朝日村とあります。「幕末以降・・・」では「朝日村」です。この中蒲原郡朝日村は、津島村→
金津村→
新津市を経て現在の
新潟市となっています。これは表記に諸説ある例のようですので、今回は省きました。
なお、「幕末以降・・・」によると、1889.5.1に東京市神田区となった中に旭町が、1889.4.1に福岡県山門郡柳河町となった中に旭町がありましたが、いずれも城下町ですのでこれも参考記録としておきます。
「地名研究必携」の記載例としては、参考としてもう1件、伊勢国度会郡旭村があります。天保郷帳の時点では粟野村ですが、その後に粟田村が勢田村,旭村,藤里村,前山村に分かれて明治を迎えたようです。1889.4.1の市制町村制施行時には、この旭村を含む数村が合併して三重県度会郡宮本村となり、旭村は消滅しました(現在の伊勢市の一部)。
全国44の「旭」は、武射郡旭村の3年を最短として、短期間で消滅している例が多いです。しかも、合併で誕生し、次回の合併で消滅した「旭」がほとんどです。
「旭」の漢字の成り立ちは、会意兼形成で、「九」は「曲折したあげくに伸び出る意を含む」、「旭」は「九+日」で「隠れていた太陽が、ようやく輝き始めること」とあります(参考:「新版 漢字源」(1999年4月1日改訂新版第6刷、学習研究社))。まさしく「旭」=「朝日」です。典型的な瑞祥地名といってよいでしょう。ですから、全国どこにでもある(つけられる)、ということでもあるのでしょう。こうして44あった「旭」の自治体のうち、現在残っている唯一の自治体が「旭市」です。
3 旭市(町,村)の(小規模な)境界変更について
旧旭市(町,村)の境界変更は、大字単位のものでは、
[63495]グリグリさんでご紹介のあった千葉県印旛郡旭村大字馬渡を佐倉市に境界変更する例のほか、S30(1955).7.23付けで茨城県鹿島郡旭村大字神山のすべてを(大字成田の一部とともに)東茨城郡大洗町に境界変更した例があります。大洗町は今でも大洗町のままですから、想定解が増えることにはなりませんが、
[63495]グリグリさんの表に△で追加、ということで。
都道府県 | 郡 | | 市町村 | 変更日 | 変更種別 | 変更対象自治体 |
茨城県 | 東茨城郡 | △ | 大洗町 | 1955.7.23 | 境界変更 | 鹿島郡 旭村の一部 |
また、旧印旛郡旭村大字馬渡は、佐倉市を経てS38(1963).9.1付けでその一部は印旛郡四街道町に再び境界変更して戻っています。「佐倉市大字馬渡字谷三一二のうち及び三一三並びにこれらの土地から鹿島川の水路の中心線にいたる区域」です。それ以上の再境界変更はないようです。つまり、一時的には大字馬渡のすべてが佐倉市に境界変更されたものの、現在では(旧)大字馬渡の一部は四街道市であり、すべてが佐倉市にあるわけではないようです。
今回、これらも含めて
官報情報検索サービスにより、1947(S22).5.3以降に告示された境界変更について確認しました。詳細は別稿とします。
4 そもそも「境界変更」について
[55583]拙稿で、境界変更についていろいろ述べました。この中で、私が基礎資料としている「全訂 全国市町村名変遷総覧」(1991年8月、自治省行政局振興課監修、日本加除出版)において、
境界変更については、件数が膨大であるため、大字の全区域が移動したものの除き、原則として割愛した
と掲載の取捨選択について記載がある、とご紹介しました。今回、
市区町村変遷情報での「境界変更」の
変更種別において、
市町村の法人格に異動を及ぼすことなく単に区域のみを変更することであるが、細かい事例を含めると膨大な数になるため、概ね大字単位のものおよび実質的に「分割」に相当するものだけを独自の判断で選択し掲載している
としました。
今回のリニューアルに伴い、境界変更全体を確認中である、と
[63303]拙稿でふれました。まずは
官報情報検索サービスで境界変更の告示を確認することから始めていますが(小規模なものも含めてすべて)、先ほどの「全訂 全国市町村名変遷総覧」に掲載されている境界変更でも、実際には大字のすべてが移動したものではないものも散見されます(大字の大部分にはなるようですが、確認できません)。そもそも、この文献も、他の文献同様明らかなミスもあります。
[56460] Hiro_as_Filler[Hiro(&TOKO)] さん の
データベースへの収録作業を行う際には、作業としては告示を順に追っていくことになろうかと思います。収録基準ということを考えると、その際には、告示を見ながらこれは○○だから収録しよう、これは××だから収録は見送ろうという判断を個々に行うことになります。そうやって1件1件掲載について収録の是非を判断をしている手間を考えると、何も考えず見つけたものをすべて収録していく方が、作業として楽なのではないか
というご意見を実感しております。
現在、表示されている「境界変更」は、前述の変更種別の定義に沿ったものでありたいとは思いますが、悩ましいものも多そうです。変更種別の説明書きでも「『概ね』大字単位のもの」と、逃げを打っていただいておりますので、少しは気は楽なのですが、十番勝負の共通項で「大字レベル」と定義されてしまうと、メンバー中では資料を比較的豊富に所有していると自負している私も検証が非常に困難です。今回のグリグリさんによる
[63494] [63495]の検証は膨大な労力がかかったであろうと推察しますが、究極は境界変更は「告示をあたるしかない」ということになりそうです。
という訳でグリグリさんに提案なのですが、十番勝負においては、「境界変更」に関連する共通項は避けた方が良いのでは、と私が言うのも変なのですがいかがでしょうか? 紛れが多すぎます。
第十二回十番勝負問八で、「複数の郡(4つ以上)からできた市」の共通項のときにも、境界変更の検証が困難であることもありましたので・・・(
記事集)。
5 おまけ
[63495]グリグリさん
千葉県印旛郡旭村は1955.3.10に千代田町と新設合併し四街道町となった際に、旭村の一部(大字馬渡)が佐倉市に境界変更されています。[63303]で88さんに案内していただいた「境界変更」などの市区町村変遷情報リニューアルの件は、実はこの佐倉市の境界変更を市区町村変遷情報に加えたい欲求から更新作業を行ったものです。88さんに悟られないように作業を進めるのに苦労しました。(笑
グリグリさんの術中どおり、まったく悟っていません。編集担当者としては、問七にブービーで滑り込めて、最低限の面目は保てたか、というところです。