香川県井島・岡山県石島の山火事に関連して、両県の境界未定区域との関連も 言及されています
[79041]。
この機会に、「都県にまたがる境界未定地域」について復習し、東京に近い事例の研究もしてみます。
[21603] てへへ さんは、国土地理院の「都県にまたがる境界未定地域」を紹介しています。当時は 20ヶ所ありました。
現在の国土地理院の面積調は、旧基準から現在の基準に改められた【注】
昭和63年分 まで遡ることができ、その 4~6コマには、1988年10月における 28ヶ所、合計面積13,361.54km2 の県境未定地域が列挙されています。
最新のリストは
2010年10月現在 で、県境未定地域の「数」は、14ヶ所と半減していますが、「合計面積」は12,833.85km2と、22年前に比べて あまり変りません。
【注】1988年にリセットされた面積データについては、
[67248]で触れていますが、その詳細は「面積調査の方法」に記されており、例えば
面積調H21 の3~4コマで見ることができます。
同じ資料の5コマには、境界未定地域の市区町村面積につき、総務省自治行政局発行「全国市町村要覧」(平成21年版)に記載されている面積を参考値として*印を付し掲載したことも記されています。境界未定地域の市区町村面積の拠り所として使われている「参考値」の記載は、面積調H16以降です。
国土の面積 を補足する注記から 本題の「県境未定地域」に戻ると、例えば朝日山地は、以前は南北2ヶ所に数えられていましたが、村上市の新設合併により関係自治体が広域化したために、2008年からは両者が融合しました。自治体面積広域化のため、境界未定地域面積は拡大しました。
十和田湖は、陸上と水面の2ヶ所に数えられていましたが、2008年の青森・秋田県境確定で未定地域が消滅しました。
[66867]で 15ヶ所が列挙された後の 最も新しい変化は、2010年の熊本県・宮崎県境界確定です。これにより、椎葉五家荘の県境未定地728.31km2が消滅しました。
境界未定地域の面積は、必ずしも未定境界線の規模に対応するものではありません。境界線のほんの一部だけが未定であっても、広い面積の市区町村と関係していれば、境界未定地域の面積は大きくなります。
朝日山地が 3523km2という面積最大規模の県境未定地域になっているのは、鶴岡市、村上市など大きな面積の自治体に関係するためです。同様に、飛騨山脈も富山市などの面積が効いています。
結局のところ、境界線自体の確定や市町村合併が、ある程度は進行しているにもかかわらず、全国の境界未定地域の合計面積は、ずっと1万km2を超えたままであり
[67267]、全国面積の 3.4%にも及びます。
公式資料には、県境未定地域の名称は記されていませんが、便宜上、それぞれの地域を代表する地名を付して、現存する 14ヶ所の「都県にまたがる境界未定地域」関係都府県名を列挙しておきます。
蔵王(宮城・山形)、朝日山地(山形・新潟)、小合溜(埼玉・東京)、江戸川(千葉・東京)、白馬(新潟・長野)、飛騨山脈(富山・長野)、富士山東(山梨・静岡)、富士山西(山梨・静岡)、伊吹山地(岐阜・滋賀)、木曽川(愛知・三重)、石島(岡山・香川)、英彦山(福岡・大分)、久住山(熊本・大分)、えびの(宮崎・鹿児島)
東京に最も近い県境未定地は、埼玉県境・水元公園の「小合溜」と、千葉県境の江戸川です。
今回は、江戸川改修で生まれた、東京・千葉県境未定地につき記します。
ウオッちず をご覧ください。
江戸川と旧江戸川とが分流する地点で、県境線が切れています。
そのいきさつを探ると、1915~1918年に行なわれた江戸川改修工事に行き着きます。
洪水時の余水を放出するために、現在の行徳橋付近で南西に向きを変えて流れていた江戸川を、そのまま南東に流す「江戸川放水路」が建設されました。この時に新旧河道の分岐点は少し上流側に設けられ、江戸川流路の一部は西に動きました。
地図で岬状に突き出ている三角地帯は、江戸川右岸から左岸になったわけです。
河川改修に伴い流路の反対側に取り残された土地が発生するのは珍しいことではなく、普通は、旧住所のまま 事実上の飛び地になって 残ります。時折、県境変更などにより是正されるの都度、落書き帳の話題になるのはご承知の通りです。
1918年江戸川放水路ができた頃の経緯は知らないので、当事者が千葉県なのか行徳町なのかも不明ですが、この頃に「江戸川流路の変更に伴い、東京との境界も西に動いた」という解釈が行なわれたのでしょう。
現在この地には、国土交通省江戸川河川事務所・江戸川河口出張所や 野球のグランドがあるそうです。
探訪記
探訪者は、地図で市川市に「河原番外地」という表示を見つけて訪れたのですが、出張所の所長曰く“ここは東京都江戸川区東篠崎ですよ”。
たぶん、住民がいないので、問題が明らかになる機会が遅れ、長い間、東京も千葉も自分の領地だと思い続けていたのでしょう。
河川名について。江戸川放水路の 現在の名称は「江戸川」です(河川法改正1960?)。
しかし、
江戸川放水路 という呼び名も、江戸川河川事務所自身により使われているのですね。
問題の境界未定区域を生んだ 短絡部分と、それより下流の河道は、「旧江戸川」が公式名。
【追記】
面積調によると、境界未定地域は、千葉県市川市、浦安市及び東京都江戸川区となっています。
上記の江戸川分流点は、市川市と江戸川区の境界ですから、浦安市が入っている理由がわかりません。
地図を見ると、旧江戸川の河口部分、舞浜大橋から先にも境界線がありませんが、TDLと葛西海浜公園との間には、問題になりそうな陸地は存在しません。
面積調では、この境界未定地域に、更に船橋市が加えられた年(H14)もあります。謎。
【追記2】
[79067]グリグリさんの記事にあった名取川河口部にも、問題になりそうな陸地は存在しませんでした。
しかし、面積調(宮城県)を見ると、仙台市若林区と名取市とは「境界未定」でした。
旧江戸川河口部、舞浜大橋から先の境界線のない僅かな部分には、陸地がなくても、やはり浦安市を「境界未定」とする原因になっているようです。
あいまいな県境