都道府県市区町村
落書き帳

トップ > 落書き帳 >

記事検索

>
1件の記事を検索しました

… スポンサーリンク …


記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[72222]2009年10月21日
EMM

[72222] 2009年 10月 21日(水)00:03:38【2】EMM さん
加賀藩領内の村の形を示すもの「村御印」
[72221] で「村御印」なるものについて触れましたが、これは加賀藩領内の村落の単位を知る上で非常に重要なものなので、もう少し詳しく解説しておきます。
加賀藩では1650年代に年貢納入の徹底と貧農救済を目的とした農政改革を行っており、これを改作法と呼んでいます。
改作法においては貧農救済策として農民のそれまでの借金の帳消し、種籾代や当座の食料の貸し付け、労働人口の再配分を行う一方、徹底した検地を行って村ごとの標準収穫量(草高)を決め、そこから年貢の税率(免)、さらに雑収入に対する税額(小物成)などを定めて年貢納入の徹底を図りました。
制度としては税率一定の「定免制」で、しかも実際収めるべき年貢の量は年毎の穫れ高ではなく標準収穫量を元に決めていますから、収めるべき年貢の量は基本的に毎年同じとなります。
で、定められた草高・免・小物成などを記入して藩内の村ごとに交付されており、この書面に藩主の印が押されていたことから「村御印」と呼ばれています。
この村御印に記された年貢や小物成は、村御印の交付された村で一括して収める「一村連帯制」ということになっていました。
天災等やむを得ない原因で減収となった時は減免措置が行われる場合もありましたが、そうでない場合は決められた年貢・小物成を払いきるまで村としての活動が制限される(富来町史によると嫁取り、建築、商人の立ち入り、米の移動などがすべて禁止された、とあります)等の罰が科せられました。
そのため、1戸でも滞納があれば他の村人が代納しなければならなくなりますし、たびたび滞納する者はさらし者にされたり村から追放されたり…と言うことも行われたようです。
そうなると、決まった年貢を納めるべく否が応でも村単位で結束しなければなりません。
また、小物成は米以外の作物の栽培、林業、狩猟、漁業、海運、工芸品などいろいろなものの稼ぎについて科せられており、小物成に必要な稼ぎを挙げるのにあたって利害関係ができた近隣の村と争いになると言うことも多々あったようです。
このように、改作法の実施以降は「年貢を納める単位」として各村が運営されていくこととなり、その単位を示すものとして「村御印」が存在しています。
この「村御印」、通常は寛文十年に交付されたものが幕末まで伝えられており、多くの場合村肝煎の家で桐の箱に入れられ村の宝として受け継がれていました。
(但し内容は完全に固定ではなく、書き足しの形で草高や免などの変更が行われている)
年貢の徴収にあたっていた十村役(参考)が自分の管轄する組に属する村々の村御印をまとめた史料もあるようですが、加賀藩全体の村御印の内容をまとめたものとしては加越能三箇国高物成帳があります。
これには寛文十年の村御印(あるいはそれ以降で初めて交付されたもの)の内容とその後の内容の変遷竈泊められています。
で、この村御印や加越能三箇国高物成帳の内容と正保郷帳・天保郷帳・天保国絵図の内容を付き合わせた場合に多く齟齬があると言うことでして、そう言った場合は加賀藩から藩内の村々に直接交付されている村御印の単位が実勢を示している、と言う事になります。
そのように判断している実例としては歴史地名体系があります。
歴史地名体系の「全体の凡例」を見ると
近世後期には、全国に約6万5千の村々が存在した。その村名の多くは今日まで、大字(おおあざ)名・町名として残っている。本大系はこの近世村が基本的な行政単位として分布していた事実に基づき、これを過去と現在をつなぐ最小の地域項目として、全国一律に採用した。項目名は、全国の村名を網羅する天保郷帳を一応の基準とし、地域によってはより妥当と思われる史料によって修正することを原則とした。記述は、立地環境を述べ、次いで村の生活、支配の関係、その他特記すべき歴史事象を解説した。また地域項目としての立場から、さかのぼりうる近世以前の様子や、明治以後の近代化過程での地域の事象なども記述の対象とした。さらに、先述した地域的な項目配列に従って、旧村域の範囲にある他の歴史地名項目を、この村名項目の次に配列した。
とあり、さらに「石川県の凡例」では
近世村の項目名は、加賀藩領は原則として村御印・郷帳類を用い、大聖寺藩領・幕府領の村は正保郷帳・天保郷帳などを用いた。金沢城下、小松町・松任町・宮腰町・所口町・輪島町の町名は、町奉行関係文書・絵図類・地誌類を基本とした。
となっていました。
加賀藩領については「地域のより妥当と思われる史料」として「村御印」の内容が優先されている、と言うことになります。
ちょっと悩ましいのは、ネット上で容易に村御印や加越能三箇国高物成帳の内容を参照できないと言うことでしょうか。


#加越能三箇国高物成帳の原本は前田家から金沢市図書館に寄贈された藩政史料「加越能文庫」の中に含まれていますが、その再編集復刻版が金沢市図書館から出版されております。
なので、石川県以外でも大きな図書館や大学の図書館などではその再編集復刻版が置いているところがあるかも知れません。
ちなみに、EMMはその復刻版を買ってしまいました。今書き込みしているすぐ手元にあったりします。
村名の並びが原本のままのようなので、目的の村を探すのにいちいち索引を引く必要があるのがちょっと面倒くさいかも。


※「そうなると、決まった~」以降の1行追加、句読点修正、改行ミスの修正、てにをはが変だった所の修正
※※不要な繰り返し表現の修正(加賀藩領については~の行)


… スポンサーリンク …


都道府県市区町村
落書き帳

パソコン表示スマホ表示