国土地理院の発表 によると、2月1日から、「電子国土基本図(地図情報)」が正式公開の運びになったとのことです。
これまでの2万5千分1地形図に替わる新たな基本図と位置づけられるもので
と書いてあり、地理に関心をもつ者としては見逃せないニュースと思われるので、少しフォローしてみます。
落書き帳を検索すると「電子国土」は18件、「国土基本図」は2件の記事がヒットしますが、「国土基本図」とは如何なるものなのかについては、言及されていないようです。
国土地理院時報(2003,100集)目次 には、次のように記されています。
第二次基本測量長期計画に基づき始まった2万5千分の1地形図の全国整備は 一部離島を除き 1983年に完了し,以後この地形図が 5万分の1地形図に代わる 新たな基本図となった。
国土地理院のサイト内における「基本図」の使用例は、大部分が「電子国土基本図」と「火山基本図」であり、電子化以前の「国土基本図」に関する記事は殆んどみつかりません。上記2003年の時報でも、最近の発表でも、2万5千分の1地形図は単に「基本図」と記されています。
では、「国土基本図」という言葉を使われていなかったのかというと、そうでもないようです。
日本地図センターのサイトに
国土基本図作成区域図 というものがあり、右端に次の説明がありました。
国土基本図は,国土地理院が統一した規格で作成している大縮尺の地図です。
国土基本図の種類は1/5000地形図,1/2500地形図及び1/5000写真図の3種があります。
前置きが長くなりましたが、紙媒体時代の整備状況は、次のようであったと理解することができます。
全国をカバーする基本図は2万5千分の1地形図であった(北方四島のような例外あり)。都市部など国土の一部については、「国土基本図」という名称が使われた 大縮尺(2500分の1又は5千分の1)の地形図や写真図が整備されていた。この他に、地方公共団体が国土基本図と同じ規格で作成した地図もあった。
最初に挙げたプレスリリースの冒頭に、基本図体系のデジタル化(電子化)は、測量法及び
地理空間情報活用推進基本法 の趣旨を踏まえたものである と記されています。
後者は、1995年の阪神・淡路大震災の反省等をきっかけに 政府が本格的に取り組み始めた
地理情報システム(GIS:Geographic Information System) の中核となる 国土空間データ基盤(NSDI:National Spatial Data Infrastructure)を整備し、その活用を推進する法律で、2007年に制定施行されました。
地域における自然、災害、社会経済活動などの情報は、土地利用図、地質図、ハザードマップ、都市計画図、地形図、地名情報、台帳情報、統計情報、空中写真、衛星画像等の多様な表現を通じて利用されています。
従来バラバラに整備されてきた各種の情報ですが、電子化された共通白地図(国土空間データ基盤NSDI)に、これも電子化された種々な情報を重ね合わせれば、各システムを連携させ、統合・強化することができます。これが地理情報システムGISの考え方であると思います。
電子国土基本図 は、いわばGISに使われる共通白地図で、下記3種類の情報で構成されます。
1 電子国土基本図(地図情報) 国土全域をカバーするデジタル地図で、道路・建物・構造物・植生等を含む。
従来基本図として利用されてきた 縮尺レベル 25000の精度に限定することなく、より精度の高いものを含んだ我が国全域を覆うベクトル形式の基盤データです。
縮尺レベル2500の基盤地図情報が提供されている地域(2011/2/1現在)
2 電子国土基本図(オルソ画像) 空中写真の歪を補正して、地図と同様に真上から見た写真画像。
3 電子国土基本図(地名情報) 標準地名や通称・位置・範囲の情報に地理識別子を付与した地名情報。
電子国土基本図(地図情報)は、
電子国土ポータル から閲覧することができます。2009年12月から試験公開されていますから、既にご利用の方も多いと思います。
現在のトップページには神奈川県庁を中心とする1/18000図が示されています。
横浜の地図が選ばれた理由は、上記のように、横浜市全域が縮尺レベル2500になったためでしょうか。
ウオッちず も、2月から電子国土の地図になり、拡大が2段になったのですね。
7月末までは、従来の地形図の画像も表示できると書いてありますから、見比べるなら今のうち。
電子国土ポータルトップから「空中写真を見る」に行くこともできます。
電子国土基本図(オルソ画像)のラジオボタンが選択されている状態で神奈川県庁を検索すれば、先の地図と同じ場所になります。オルソ画像も 1/2500まで拡大可能。