5年も前になりますが、本流より長い(又は流域面積が大きい)支流、いわば
川の本流と支流との逆転 に関する一連の記事がありました。
要点を記すと、
[18691]太白さんの問いかけに対して、
[18697]千本桜さんが“20年来の気がかり”として、代表的な例である阿賀野川と只見川との関係を示されました。
更に、長さや流域面積以外の判定基準の存在について、流量(
[18701] 般若堂そんぴんさん)と川底の高低(
[18703] EMMさん)とが提示されました。
太白さんは、これら自然的要因のいずれにも当てはまらないケースの存在についても言及されました
[18957]。
いずれにせよ、確かに謎ですね。
古い話題を持ち出したのは、とある団体旅行で、先週この大河・阿賀野川の豊かな水量を実感したからです。
約50年前に訪れた只見川については、今回は片門発電所付近を車窓から一瞥しただけでした。
最初に数値などにより阿賀野川の広がりを確認しておきます。
210kmで日本国内 10位とされている長さは、
「阿賀野川水系」 の本川延長、つまり「本川」として指定された一級河川阿賀野川 83km(新潟県)と、その上流福島県にある一級河川阿賀川 127kmとの合計です。
阿賀川(大川)の源流は、奥会津・栃木県境の荒海山を水源とする荒海川です。この部分も常識的には「阿賀野川の本流」なのでしょうが、本川指定がないので、河川管理上の「本川」の長さ 210kmには含まれていないはずです。
阿賀川の支流の只見川は、流路延長145.2kmとなっています。三津合の合流点から河口までは 110km以上あると思われるので、こちらの長さは 250~260kmあるでしょう。
只見川の源流部には群馬県境にもなっている尾瀬沼があり、ヨッピ川も群馬県側。県境といえば、奥只見湖も主として新潟県です。
つまり阿賀野川水系の上流部は、福島県だけでなく、一部は群馬県と新潟県の領域に及んでいます。
流域面積 7710km2は日本で8番目。そのうち
阿賀川の山科地点から上流の集水面積 は 2742 km2、只見川の片門地点から上流は 2765 km2でどちらの流れもあまり変りません。なお、基準点はいずれも合流点から数km上流です。
しかし年間の総流量は、阿賀川 37億m3に対して只見川 70億m3と2倍近く違います。豪雪地を流域とする只見川の雪解け水が阿賀野川の豊富な水量を支えていることを裏づけています。
これまでの比較では、流域面積で甲乙つけ難く、長さと水量で只見川の圧勝。
これを逆転して、阿賀川(大川)が本川と指定された理由は何か? そこで、河川勾配を検討してみます。
[18703] EMM さん
川の本流と支流を決定する要因は、長さでも太さでも水量でも流域面積でもなく、川底の高低だったような覚えがあるのですが。
阿賀野川水系の断面図 をざっと眺めると、150kmあたりで只見川に阿賀川が合流しているようにも見えます。
しかし、合流点はもっと先の110km付近でしょう。大川ダムから駆け下り会津盆地を通り過ぎた阿賀川は、狭窄部に入ってから、階段状のダム湖で高度を下げてきた只見川と合流します。断面図を詳細に眺めると、130km前後で会津盆地を通る阿賀川は、山間を通る只見川よりも低くなっているようです。
つまり、少し強引かもしれませんが、合流点の少し上手に着目すれば、盆地を流れてきた阿賀川(大川)に、山地を流れてきた只見川が合流するという構図です。
匙加減でどうにでもなるような基準ですが、これが地元の実感に合うようにも思われます。
また、流域面積でなく流域人口ならば、比較するまでもなく会津盆地を擁する阿賀川(大川)が、山地を流れる只見川に圧勝。
千本桜さん。20年来の気がかり、いや5年経ったから25年来となった気がかりに対する答になっているでしょうか?
上記の断面図を見ると、阿賀野川河口から尾瀬沼までは260km以上あります。
300km以上の信濃川と利根川とは別格として、石狩川に次ぐ日本第4位の長さ?
ついでに、阿賀野川水系が日本第1位のものとして、水力発電所数 122があります。
1914~1926年に建設された猪苗代第一~第四発電所は当時最大級の発電所で、東京への長距離送電の成功は、わが国の電力事業を一段と発展させました。
戦後は只見川の電源開発が行なわれ、巨大ダムの田子倉発電所と奥只見発電所(1959-60)が有名です。
参考までに、利根川水系の水力発電所は 98、木曽川水系 77、富士川水系 71。