[53262] でるでる さん
大潟村の場合は、自治体設置と同時に村制を施行
この件、果たして本当にそうなのか?と疑問に思いまして、ちょっと調べてみました。(一度大潟村に関して言及しておきながら無責任ですが……。)
[53248]にてhmtさんが紹介された小笠原村の例と比較しながら検証してみたいと思います。
大潟村が設置されたのが昭和39年10月1日。この時点で村長・村議会は存在せず、八郎潟干拓推進事務局初代局長の島貫氏が村長職務執行者でした。(9月28日に県議会で同意)
「
大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律(昭和三十九年六月十八日法律第百六号)」(以下、「同法」とする)から一部抜粋しますと、
(職務執行者)
第四条 新村の設置があつたときは、都道府県知事は、都道府県の議会の同意を得て、当該都道府県の吏員で市町村長の被選挙権を有する者のうちから、新村の長の職務を行なう者(以下「職務執行者」という。)を定めなければならない。
2 職務執行者は、新村の長が最初に選挙され、就任する時まで、この法律に定めるもののほか、新村の長及び収入役の権限に属するすべての職務を行なう。
3 職務執行者の任期は、二年とする。
小笠原村の場合、この「都道府県の議会の同意」が「自治大臣の同意」となります。
(※ちなみに、この時点では人口も0人でしたが、その後排水機場の職員とその家族の6世帯14人が居住したようです。それはつまり排水が完了していないという事でもあり、湖底はその一部しか現れていませんでした。そのため村役場も当初は県庁内に置かれ、県自治会館への移転を経て、排水が完了した昭和41年5月の翌年、昭和42年12月に現在の位置に移転しました。)
では議会はとうなっていたかというと、小笠原村の「村政審議会」のような規定はありません。但し、別の条文を見ると、
(条例の特例)
第六条 新村は、新村の設置による議会の議員の一般選挙が行なわれ、当該議会が成立するまでの間においては、地方自治法第九十六条 の規定にかかわらず、当該議会の議決に代えて都道府県知事の承認を得て、条例を設け、又は改廃することができる。
(議決事項の特例)
第七条 職務執行者は、新村の設置による議会の議員の一般選挙が行なわれ、当該議会が成立するまでの間においては、その事務を管理し、及び執行する場合において地方自治法 その他の法令により議会の議決を要することとされているときは、これらの法令の規定にかかわらず、当該議決に代えて都道府県知事の承認を得なければならない。
とあります。「
小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律(昭和四十三年六月一日法律第八十三号)」でこれに該当する部分(第二十三・二十四条)を見ると(
[53386]88さんの記事も参照)、「都道府県知事の承認」が「村政審議会の意見」となっています。
つまり、大潟村の場合は新たな村議会の代替機関は設置せず、県知事がその役割を果たしていたと言えるでしょう。いずれにせよ、村議会はなかった事になります。
では、「自治体としての大潟村」が誕生した日、つまり設置選挙が行われたのはいつになるのか。同法には以下のような条文があります。
(設置選挙の特例)
第三条 新村(前条第一項の規定による処分により設置された村をいう。以下同じ。)の設置による議会の議員の一般選挙及び長の選挙に関する公職選挙法 (昭和二十五年法律第百号)第三十三条第三項 の規定の適用については、同項 中「地方自治法第六条の二第四項 又は第七条第七項 の告示による当該地方公共団体の設置の日」とあるのは、「総務大臣が指定する日」と読み替えるものとする。
こちらは、小笠原村とほぼ同一となっています。(同法制定時は「総務大臣」が「自治大臣」となっているはずですが。)つまり、大潟村にも小笠原村同様、設置選挙が留保されていた時期、つまり「村設置」と「村制施行」の間のタイムラグが存在し得た、という事になるのではないでしょうか。
ちなみに、大潟村の「自治大臣が指定する日」は、昭和51年7月28日でした。そして選挙は同年9月5日に行われ、村長と村議会議員16名が選出。続いて、教育委員会などの各行政委員会も設置されました。(
JA大潟村HPの「大潟村について」のページを参照。)したがって、小笠原村とほぼ同じ期間、「通常の自治体ではない大潟村」が存在していた事になります。
(※さらに、これから4年間「制限自治」と呼ばれる状態が続いたそうです。議員の任期が2年間だったほか、県の関わりが強い状態だったとの事。完全に他の自治体と同様の体制になったのは昭和55年9月のことです。)
以上より、結論を。
・大潟村も小笠原村同様、「村設置」から暫くの間、通常の地方公共団体ではない状態が続いた。
・但し、その間の議会の代替機関の役割は県知事が担うなど、違いも見られる。
・大潟村と小笠原村では、国と都県の関係の強さに差が見られる。
……と、長々と書きましたが、私の理解不足の点が多々あると思われます。「制限自治」に関しても、私は初めて知ったもので、具体的にどういうものかは理解していません。
こちらのページ下部にそれに関する記述があったのですが、そこには「村長は県知事が村議会の同意を得て選ぶ」とあり、既述の「設置選挙」と矛盾します。この点も含め、コメント・ダメ出し等宜しくお願いします。
参考HP:
大潟村、
大潟村干拓博物館「八郎潟干拓と大潟村の歴史」、
JA大潟村