さて、
[37021]でグリグリさんから話題を振られたので、私の経験と知識の範囲内で偉そうに講釈します(汗)。
普段から地図には当たり前に接しているので、逆にネットの地図検索サービスはちっとも使わない身であり、男女群島が検索にひっかからないというのは正直、私も驚きました。が、考えられなくもないかなと思います。ネットの検索サービスは当然のことながら、その目的第一位にあるのは「場所を探す」ということ。しかし、普段の生活をよ~く振り返ってみましょう。自然地名を探すという行為、あまり頻繁には起こらないと思いませんか? 生活の上で必要となる目的地は、そのほとんどが「居住地域」ないしは「居住地名」に限定されることが多いのではないかと思います。名の通った自然地名ならともかく、男女群島はもちろん人の住まない無人島、つまりは非居住地域なので、サービスを提供する側にしてみればこういった離島を図取りに含め、どれほど利用されるかも分からない検索にかかるロジックをいちいち組んで、余計なサーバスペースを確保するのは得策でない…などと判断された可能性はあるのではないかと思ったのです。
この考え方は住宅地図や基本図など、超詳細図などでも見受けられます。試しにお住まいの地域の住宅地図があればちょっと開いてみるといいでしょう。よっぽど地域全体が市街化しているのでもない限り、必ずしも図取りが区域全体を覆っているというわけではないことが多々あります。住宅地図の目的は住宅そのものにスポットを当てることにあり、山林や田畑までを図取りでくまなく覆うことには必ずしもないわけです。地図には目的にかなった作り方、組み方をすることも多くあり、これが極まると今回のようなケースも当然出てきてしまいます。まあ、無人とは言え男女群島は日本の領土には違いありませんから、少なくとも検索でどこかの縮尺には引っ掛かるような「しかけ」は欲しいところです。地名の通用度はいつ何時、どのような形で高まるか分かりません。万が一、「男女群島近海で中国当局に日本国籍の漁船がだ捕」などという縁起でもない報道があった場合、誰もが「男女群島ってどこじゃい?」と思って探したくなるでしょうから…(汗)。
地図記載の地名の索引化というのは大変なんでしょうかねぇ。
経験則から言えば、デジタルで完結する(例えばネット上での地図検索や、CD-ROM掲載の地図検索など)索引の取得自体はそう難しくないと思います。コンピュータ上の地図図面に文字をプロットするだけで座標の割り振りは簡単にできますし、例えこれが地図図面上での仮想座標であったとしても、それをリアル座標(いわゆる日本測地系・世界測地系による経緯度情報)に置き換えるプログラムも存在しますから。中には、これに図法(UTM図法とか、モルワイデ図法とかいう、アレです)をかませて自在に文字位置をシフトさせることのできるスゴウデプログラムも…。むしろ、地名に読み情報を付加させることの方が難物ではないかと思われます。プロット時の変換前文字列を読みとして自動登録させることは理論上できても、このオペレータが地名の知識ゼロだとどんな読みで変換されるか分かりません(大汗)から、読み情報の自動取得は結局は現実的でないのです。もっともデジタルにおける検索の概念は、従来冊子体における「読みが分かっていないと地名が探せない」というものとは異なり、「変換を用いて漢字かなカナ表記を文字列として一致させれば探せる」というものへと格段に進化しているのですが、それでも読みから探すことができないのは不便ですし、候補一覧では基本はあいうえお順になりますから、やはり読み情報は不要というわけにはいかないと思います。
上記はあくまでもデジタルワールドでのお話。いくら製作がデジタル化しても、結局は冊子となる地図だとこうはいきません。冊子の地図では仮想座標や経緯度情報は全くと言っていいほど、地名を探す役には立たないからです。グリッドを引いて、インデックスをふって、どのグリッドに地名があるかを結局は手作業で調べて索引化するのが最良となります。ある程度経緯度情報からの自動化は図れますけど、図取りが各見開きによって異なるために、この経緯度情報から「P125A5」などというインデックスへ翻訳するプログラムは、事実上ページの数だけ必要になってしまい能率が良くありません。他社がどうしているかまでは存じ上げませんが、少なくとも我が社においては冊子の索引作業は汗かき作業、人力による昔ながらの手法が今でも脈々と行われています。
地図自体には地名が入っていても検索対象となっていないケース、また、その逆のケースが頻繁にあります。
まず後者、地名が図上にないのに検索できる地名ですが、これにはサブネーム(氷ノ山に対する須賀ノ山、内浦湾に対する噴火湾のようなもの)や総称名(大雪山・八ヶ岳・富士山など)、正式名以上に通用する通称名(甲斐駒ヶ岳など)が考えられます。もちろんプログラム上はこういった地名に対してある場所を指し示させることは可能です。ただ、地名を探すということの性格を考えると、検索先に探す文字列が表示されていないというのはあまり親切とは言えません。検索ウィンドウでそこのところを翻訳してくれたりすれば、分かりやすく使い勝手もいいですね。
で、前者の掲載地名が検索に引っかからないケース、これは実は星の数ほどあります。スポットを指し示さない地名(面状注記・線状注記)、例えば淀川であるとか、東海道新幹線であるとか、日本海であるとか、こういった地名は広がりを持つものを指し示すことになるので、必ずしも図の中(あるいはその検索システムが扱う範囲内とも言い換えられます)にあるのは1コだけとは限りません。しかし検索でいくつも同一地物が引っかかってはおかしいので、結局は「検索時に表示させる場所」以外の文字はすべて地図に載っているだけのダミー扱いとなります。実際に日本海を検索してみて、地図表示させたら新潟市街地図のすぐ沖が出てきた、というのはちょっとおかしいですね。普通に考えると、日本海ほど面的な広がりを持つものなら、日本全図クラスの地図を表示させてしまってもいいくらいです。モノによって表示させるべき地図レベルが当然あるわけで、その辺りの選択判断はある程度のセンスが必要になるでしょう。
これとは別に、デジタルの地図には「階層構造」という独特の特徴があります。検索をすると、表示縮尺を変えることができるしかけがありますが、あれのことです。これはすなわち、同じエリアを覆う地図が層の数だけあることになり、縮尺の大小はあっても当然同じ場所ですから、同一地名が個別の層ごとに重複掲載されている可能性も十分あります。この場合にも、上と同様に検索した時にどの層の注記を表示させるかを特定しておく必要があり、それに漏れたその他層の文字は全部ダミーになりますね。これを加えると表示しかされない地名の数は相当な数に上ります。
書きたいことを機関銃のようにズダズダ書き連ねてしまいました。何だか至極当たり前のことを、さも難しいことのように解説してしまった感がありますが、これで知りたいことが少しでも伝わったでしょうか…?