[85559]で、東京都新島若郷村と新島本村の面積が『昭和十年 全国市町村別面積調』、『昭和25年 国勢調査報告 第7巻 都道府県編 その13 東京都』において合計となっている問題を指摘しましたが、改めて東京都統計年鑑を見たところ
『第1回 東京都統計年鑑』(昭和27年、人口は昭和28年1月1日調)と
『第2回 東京都統計年鑑』(昭和28年、人口は昭和28年1月1日調)において、人口密度が若郷村と新島本村とで異なることに気付きました。つまり東京都総務局統計部では、面積は合計で表しつつ、人口密度算出の際には独自に面積を決めていることになります。そこで人口密度から面積を逆算してみますと:
都道府県 | 村 | 年月日 | 人口 | 人口密度 | 面積最小値 | 面積最大値 | 下2桁有効と仮定した場合の面積 |
東京都 | 新島若郷村 | 1953.1.1 | 587 | 349 | 1.6795 | 1.6844 | 1.68 |
東京都 | 新島本村 | 1953.1.1 | 4,360 | 168 | 25.8754 | 26.0299 | 25.88~26.02 |
東京都 | 新島若郷村 | 1954.1.1 | 563 | 335 | 1.6781 | 1.6831 | 1.68 |
東京都 | 新島本村 | 1954.1.1 | 4,291 | 166 | 25.7718 | 25.9275 | 25.78~25.92 |
よって東京都統計年鑑からは、新島若郷村1.68 km2と新島本村25.90 km2 (合計27.58 km2より1.68 km2を除することで算出)が確定しました。
また石川県河北郡金津村・高松町について、『昭和26年 石川県統計書』によると
都道府県 | 郡 | 町村 | 面積 |
石川県 | 河北郡 | 金津村 | 8.00 |
石川県 | 河北郡 | 高松町 | 13.20 |
面積の合計は21.20 km2であり、こちらも一応石川県統計書による面積が確定しました。
昭和25年において市町村別面積が示されていない地域(
[85559]参照)について、残りについても面積を分割算出しようと地方統計書の類と比較検討してみましたが、他は残念ながら重大な問題がありました。
まず埼玉県児玉郡阿久原村・渡瀬村について『昭和29年 埼玉県統計年鑑』によると
都道府県 | 郡 | 町村 | 面積 |
埼玉県 | 児玉郡 | 阿久原村 | 7.4 |
埼玉県 | 児玉郡 | 渡瀬村 | 4.9 |
面積の合計は12.3 km2です。埼玉県統計年鑑の面積は下一桁までであり、桁落ちしておりますが、一応合計の数字は1950年国勢調査報告書の12.30 km2と一致します。
次に岐阜県加茂郡旧富岡村村の件ですが、『昭和23年 岐阜県統計書』、『昭和24年 岐阜県統計書』、『昭和25年 岐阜県統計書』、『昭和26年 岐阜県統計書』と
『昭和十年 全国市町村別面積調』、『昭和25年 国勢調査報告 第7巻 都道府県編 その21 岐阜県』における、関連する市町村の面積を並べると以下の通りです。
都道府県 | 郡 | 町村 | 県統S23 | 県統S24 | 県統S25 | 県統S26 | 面積S10 | 国勢S25 |
岐阜県 | 加茂郡 | 富岡村 | 10.23 | | | | 10.23 | 10.23 |
岐阜県 | 加茂郡 | 富田村 | 6.76 | 10.48 | 10.48 | 10.48 | 6.76 | 6.76 |
岐阜県 | 武儀郡 | 関町 | 28.91 | 39.27 | | | 10.78 |
岐阜県 | 関市 | | | | 57.32 | 65.8 | | 32.40 |
岐阜県 | 武儀郡 | 瀬尻村 | | | | | 8.20 |
岐阜県 | 武儀郡 | 倉知村 | | | | | 9.93 |
岐阜県 | 山県郡 | 千疋村 | 3.47 | 3.47 | | | 3.47 |
岐阜県 | 加茂郡 | 田原村 | 18.43 | 14.58 | | | 18.43 | 18.44 |
岐阜県 | 武儀郡 | 下有知村 | 8.48 | 8.48 | 8.48 | | 8.48 | 8.48 |
岐阜県 | | 上記合計 | 76.28 | 76.28 | 76.28 | 76.28 | 76.28 | 76.31 |
岐阜県統計書の方はこれらの地域で少なくとも昭和26年まで『昭和十年 全国市町村別面積調』の数字を使い続けており、昭和25年の国勢調査で一部改訂された面積の数字が使われておりません。実際昭和25年の国勢調査の面積は『昭和十年 全国市町村別面積調』の面積に比べ、加茂郡俵村・武儀郡旧関町・旧瀬尻村・倉知村の合計で0.03 km2増えています。しかしながら、旧富岡村と旧富田村の面積は、昭和25年の国勢調査でも同じであり、よって昭和25年国勢調査の旧富岡村の面積10.23 km2の内、3.72 km2が加茂郡富田村に入り(合計10.48 km2)、残りの6.51 km2が武儀郡関町に入った(合計38.91 km2)と、当てはめることが可能です。
なお昭和24年10月1日の加茂郡富岡村の廃止に先立ち、昭和23年12月10日に加茂郡田原村の一部(昭和22年臨時国勢調査で278人)が武儀郡田原村に編入されています。『昭和24年 岐阜県統計書』では田原村の面積が3.85 km2ほど減り、その分が昭和24年武儀郡関町に加算されておりますが、一方で『昭和25年 国勢調査報告 第7巻 都道府県編 その21 岐阜県』では、田原村の一部の編入が考慮されているようには見えず、国勢調査報告書の面積が明らかに間違っています。が、このような誤りは一々チェックしたら切りが無いので見なかったことにします。
一方問題となるのが岐阜県安八郡旧北平野村の件です。『昭和24年 岐阜県統計書』、『昭和25年 岐阜県統計書』、『昭和29年 岐阜県統計書』、『昭和30年 岐阜県統計書』と
『昭和十年 全国市町村別面積調』、『昭和25年 国勢調査報告 第7巻 都道府県編 その21 岐阜県』、『昭和30年 国勢調査報告 第1巻 人口総数』における、関連する市町村の面積を並べると以下の通りです(
[85559]で安八郡本郷村・池田村と書いてしまった箇所がありますが、揖斐郡の間違いです)。
都道府県 | 郡市 | 町村 | 県統S24 | 県統S25 | 県統S29 | 県統S30 | 面積S10 | 国勢S25 | 国勢S30 |
岐阜県 | 安八郡 | 北平野村 | 3.78 | | | | 3.78 | 3.76 |
岐阜県 | 安八郡 | 神戸町 | 5.23 | 8.57 | 8.57 | 18.15 | 5.23 | 5.20 | 17.99 |
岐阜県 | 安八郡 | 南平野村 | 4.92 | 4.92 | 4.92 | | 4.92 | 4.89 |
岐阜県 | 安八郡 | 下宮村 | 5.68 | 5.68 | 5.68 | | 5.68 | 5.65 |
岐阜県 | 不破郡 | 赤坂町 | 5.07 | 5.07 | 5.07 | 15.62 | 5.07 | 5.08 | 15.40 |
岐阜県 | 不破郡 | 青墓村 | 9.53 | 9.53 | 9.53 | | 9.53 | 9.55 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 池田村 | 4.03 | | | | 4.03 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 本郷村 | 9.53 | | | | 9.53 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 温知村 | | 14.00 | 14.00 | | | 13.55 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 八幡村 | 12.09 | 12.09 | 12.09 | | 12.09 | 12.08 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 宮地村 | 9.12 | 9.12 | 9.12 | | 9.12 | 9.11 |
岐阜県 | 揖斐郡 | 池田町 | | | | 35.21 | | | 35.54 |
岐阜県 | | 上記合計 | 68.98 | 68.98 | 68.98 | 68.98 | 68.98 | 68.87 | 68.93 |
関連する境界異動は以下の通りです。
昭和25年4月1日 | 安八郡北平野村を廃し、その区域を分割し一部を同郡神戸町に編入し、残部を揖斐郡池田村に編入 |
昭和25年8月1日 | 揖斐郡本郷村と池田村を廃し、その区域をもって同郡温知村を設置 |
昭和29年4月1日 | 安八郡南平野村、神戸町、及び下宮村を廃し、その区域を分割し、 |
南平野村の一部を不破郡赤坂町に編入し、残部をもって安八郡神戸町を設置
昭和29年5月1日 | 揖斐郡温知村を廃し、その区域をもって同郡池田村を設置 |
昭和29年5月1日 | 揖斐郡池田村を廃し、その区域をもって同郡池田町を設置 |
昭和29年9月1日 | 不破郡赤坂町及び青墓村を廃し、その区域をもって同郡赤坂町を設置 |
昭和30年4月1日 | 揖斐郡池田町、八幡村、及び宮地村を廃し、その区域をもって同郡池田町を設置 |
岐阜県統計書の方はこれらの地域で少なくとも昭和30年まで『昭和十年 全国市町村別面積調』の数字を使い続けているのに対し、国勢調査の方では昭和25年と昭和30年の直前に改訂作業が行われています。とりあえず昭和25年国勢調査と岐阜府県統計書の面積の違いを比較すると、旧北平野村・神戸町・池田村・本郷村の合計で0.06 km2、昭和25年国勢調査の方が面積が減っております。旧北平野村だけで0.02 km2、神戸町だけで0.01 km2、池田村・本郷村の合計で0.01 km2減っております。『昭和24年 岐阜県統計書』・『昭和25年 岐阜県統計書』だけで判断すると、旧北平野村3.78 km2の内、神戸町に異動した面積は3.34 km2、温知村に異動した面積は0.44 km2となりますが、ここから昭和25年国勢調査の面積に合わせるには、0.02 km2の面積を両者から除する必要があります。諦めて按分()で判断すると、0.02 km2分は総て神戸町側に異動した分(3.34 km2 × 3.76/3.78 ≒ 3.32 km2)となり、よって昭和25年の国勢調査における面積は、安八郡神戸町が8.52 km2、揖斐郡池田町が13.99 km2となります。
北海道に関しては『昭和25年刊 北海道市町村市勢要覧』、『昭和27年刊 北海道市町村市勢要覧』という資料を閲覧できましたが、それぞれ面積についてはkm2から下三桁までしめされており、項目のうち総面積民有地細別について
冊子 | 基本法規 | 出どころ | 調査年月日 |
昭和25年刊 | 丑統第836号通牒による | 市町村報告 | 昭和24年8.1 |
昭和27年刊 | 26統第508号通牒による | 市町村報告 | 昭和26年4.1 |
とあります。「市町村報告」がいかなる資料なのか、現時点で私には判断がつきません(わかる方がいらしたら教えてください)。
まず北海道常呂郡佐呂間村と同郡若佐村に関しては、下三桁で示されている『昭和25年刊 北海道市町村市勢要覧』の面積を四捨五入すれば、昭和25年国勢調査の面積と同じとなり、一応面積は以下のように求まります。
都道府県 | 郡 | 町村 | 統S25 | 国勢S25 | 按分 |
北海道 | 常呂郡 | 若佐村 | 151.409 | n.a. | 151.41 |
北海道 | 常呂郡 | 佐呂間村 | 224.708 | 376.12 | 224.71 |
北海道 | 常呂郡 | 上記合計 | 376.117 | 376.12 | 376.12 |
しかしながら、その他、北海道空知郡砂川町・上砂川町・歌志内町、上川郡朝日村・上士別村・上川郡、河西郡中札内村・更別村・大正村・中川郡幕別町・広尾郡忠類村・大樹村の三ケースでは、北海道市町村市勢要覧記載の面積と国勢調査記載の面積が異なります。あえて面積を出そうとするなら、以下のように按分する必要があります。
都道府県 | 郡 | 町村 | 統S25 | 国勢S25 | 按分 |
北海道 | 空知郡 | 砂川町 | 73.477 | 116.10 | 72.65 |
北海道 | 空知郡 | 上砂川町 | 45.700 | n.a. | 45.19 |
北海道 | 空知郡 | 歌志内町 | 57.298 | 58.39 | 56.65 |
北海道 | 空知郡 | 上記合計 | 176.475 | 174.49 | 174.49 |
都道府県 | 郡 | 町村 | 統S27 | 国勢S25 | 按分 |
北海道 | 上川郡 | 朝日村 | 511.124 | n.a. | 511.13 |
北海道 | 上川郡 | 上士別村 | 165.750 | 676.88 | 165.75 |
北海道 | 上川郡 | 上記合計 | 676.874 | 676.88 | 676.88 |
都道府県 | 郡 | 町村 | 統S27 | 国勢S25 | 按分 |
北海道 | 河西郡 | 中札内村 | 290.184 | n.a. | 288.74 |
北海道 | 河西郡 | 更別村 | 181.348 | n.a. | 180.44 |
北海道 | 河西郡 | 大正村 | 120.394 | 558.76 | 119.79 |
北海道 | 中川郡 | 幕別町 | 339.828 | 364.20 | 338.13 |
北海道 | 広尾郡 | 忠類村 | 203.440 | n.a. | 202.43 |
北海道 | 広尾郡 | 大樹村 | 627.237 | 830.68 | 624.11 |
北海道 | 三郡 | 上記合計 | 1,762.431 | 1,753.64 | 1,753.64 |
次に岡山県小田郡白石島村・神島外村に関して昭和25年から昭和30年までの『岡山県統計書』などをチェックしましたが、残念ながら昭和29年以前に関しては市町村別面積が記載されておらず、記載されてるのは民有地・官有地などの地目別面積(単位:町)のみです。この場合、固定資産税の対象となる地積のみの面積ですので、所有者の存在しない土地の面積が含まれません。『岡山県統計書』では昭和30年以降に町村別の面積が記載されるようになりますが、岡山県小田郡白石島村と神島外村は昭和30年4月1日に共に笠岡市に編入されており、『昭和30年 岡山県統計書』では既に両村の面積が記載されていません。そこで地積から無理矢理按分して面積を求めてみたところ、以下のようになります。
都道府県 | 郡 | 町村 | 統計S25(町) | km2換算 | 国勢S25 | 按分 |
岡山県 | 小田郡 | 神島内村 | 446.5 | 4.428099 | 10.60 | 8.38 |
岡山県 | 小田郡 | 白石島村 | 118.0 | 1.170248 | n.a. | 2.22 |
岡山県 | 小田郡 | 上記合計 | 564.5 | 5.598347 | 10.60 | 10.60 |
最後に島根県に関し、『昭和23年 島根県統計書』や『昭和28年 a島根県統計書』を閲覧しましたが郡別の地積の情報はあっても、町村別の面積・地積の情報は全くありません。島根県簸川郡朝山村は昭和30年3月22日に出雲市に編入されておりますが、それでも敢えて昭和30年の国勢調査の数字から逆算で計算しようとすると以下のようになります。
都道府県 | 市郡 | 町村 | 国勢S25 | 国勢S30 | S25年の面積へ按分 |
島根県 | 簸川郡 | 窪田村 | 39.69 | 48.60 | 48.37 |
島根県 | 簸川郡 | 旧乙立村 | 27.11 |
島根県 | 簸川郡 | 朝山村 | 26.78 |
島根県 | 出雲市 | | 57.56 | 138.65 | 137.98 |
島根県 | 簸川郡 | 稗原村 | 21.41 |
島根県 | 簸川郡 | 上津村 | 13.80 |
島根県 | 1市1郡 | 上記合計 | 186.35 | 187.25 | 186.35 |
すなわち島根県簸川郡旧乙立村の面積27.11 km2の内、8.68 km2が窪田村(39.69 + 8.68 = 48.37 km2)に異動し、残りの18.43 km2が朝山村(26.78 + 18.43 = 45.21 km2)に異動したと、強引に推測できます。
このように、岐阜県の一部、北海道、岡山県、島根県に関しては、昭和25年の国勢調査で合計などでしか示されてない面積を無理に町村別に算出しようとすると、ある程度恣意性を排除することが出来ないことになります。