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落書き帳

稀少地名漢字リスト

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記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[80941]2012年6月6日
hmt
[83731]2013年7月28日
伊豆之国
[83977]2013年8月19日
hmt
[92076]2016年12月10日
倉田昆布
[92077]2016年12月10日
グリグリ
[92092]2016年12月12日
hmt

[80941] 2012年 6月 6日(水)19:56:46【1】hmt さん
珍しい漢字の地名
[80935]白桃さん
橋杭岩があるあたりの大字?は鬮野川(くじのがわ)というらしいのですが、「くじ」という字を初めてみました
[80938] 伊豆之国 さん
実に26画、恐ろしく難しい字ですが、かつてこの字を使った「鬮場」(くじば)という駅が岡山県の井笠鉄道にありました。

落書き帳の標準になっている小さなフォントでは字画が省略されていますが、大きなフォントで確認すると、確かに 10画の部首に 16画の「龜」を組み合わせた 複雑な文字です。
もともと「闘い取る」というような意味のようですが、亀は闘争的な動物なのでしょうか。そう言えば、「ガメラ」という架空動物も存在しました。
「くじ」という訓は、亀の甲を焼いて吉凶を占う龜卜に由来するものと理解します。

驚いたのは、こんな珍しい漢字が JIS第2水準に登録されていて PCで書くことができることです。
これも 大字(明治合併前の村)レベルの地名に使われた 実績が買われた故であろうと考え、変遷情報により確認しました。
和歌山県西牟婁郡鬮野川村>1889富二橋村>1924串本町>2005東牟婁郡串本町
ついでに、 [80937]の 埼玉県南埼玉郡垳村>1889潮止村 >1956八潮村>1964八潮町>1972八潮市

合成村名の「富二橋村」において、高富村の「富」・二色村の「二」と共に使われたのは 鬮野川村の「鬮」ではなく、小名橋杭の「橋」でした。さすがに、この難しい字は、明治の新村名から敬遠されたのでした。

「垳」や「鬮」のような珍しい漢字の地名を集めたリストとして、稀少地名漢字リスト というサイトを見つけました。
「垳」は総索引の中にもありますが、「鬮」は表示されていません。

今回の場合は 和歌山県 と知れているので、都道府県別索引で移動し、CTRL+F くじ で調べると、JIS第3水準、Unicode: 49B0の字のところに、
※「鬮(第2水準)」の異体字。
という注釈付きで 収録 されていました。
どうやら、このサイトでも 井笠鉄道のケース[80938]と同様に、10画の「闘がまえ」でなく 8画の「門がまえ」を使った俗字として扱われているようです。

和歌山県の他に岐阜県、愛知県、福岡県の事例も収録されていました。
しかし、これらは変遷情報検索でヒットしないことから、小字レベルの地名と思われます。

岡山県笠岡の「鬮場」も収録されていませんでした。
なお、笠岡の隅田川 写真1の山陽本線橋梁に記されている「鬮場川橋梁」の文字から、架橋時には「鬮場川」と呼ばれていたと思われますが、既に過去の河川名になっている可能性があります。

「鬮」ほど難しい字ではないが、同じく動物関連の珍しい字を使った地名「鷆和」について、少し前に書きました。[80382]

三毳(みかも)山。
これは珍しい漢字を使った地名の中で、落書き帳において最も多くの記事が書かれただけでなく、落書き帳に登場した自然地名としても、トップクラスの登場回数を記録したのではないかと思っています。
[83731] 2013年 7月 28日(日)14:29:22【1】伊豆之国 さん
五味坂、麹町
[83726][83728] オーナー グリグリ さん
滝沢村大釜字埖溜(ごみたまり)
この「土へんに花」と書いて「ごみ」と読む字。手元にある漢和辞典にもこの字が出ていて、「国字。埖渡(ごみわたり)は、陸奥国の地名」とありました。「稀少地名漢字リスト」には、この埖渡(青森県南部町)と「滝沢市」の埖溜の他に、「埖」の付く地名が岩手県にもう1ヶ所あるようですが、いずれも旧南部領にあり、どうも南部領内のみで使われた「ローカル漢字」のような気がします。「ごみ」という芳しくないイメージを、「花」を文字の中に入れることで「負の印象」を少しでも和らげようとして頭を捻ったのでしょうか。
「ごみ」の付く地名で思い出したのが、東京・千代田区三番町にある「五味坂」。この「五味坂」の由来について、「麹町区史」によると「(当時の)五番町から二番町へ上る坂で、『五二坂』が『五味坂』に転訛した」とあり、千代田区が設置した現地の標識にもそれから引用した字句が書かれているのですが、横関英一氏著「江戸の坂 東京の坂」([83670])を見ると
五番町から二番町に上る坂だから五二坂といったのがいつか五味坂になまったというのだが、江戸っ子はそのような名前のつけ方はしなかったように思う。ごみ坂を嫌って五味坂と変えてみても、芥(ごみ)坂がここだけしかないのならともかく、他にいくつも芥坂があるのだから、五二坂説はいただけない。江戸っ子がすでに呼んでいるように、この坂は芥坂であり、嘉永2年の切り絵図に出ているように「ハキダメ坂」に違いないと思う。いや、芥坂ではないはずはないと思う。他の芥坂同様、芥坂の条件を具備しているからである。とにかく、芥坂を五味坂と改めても何もならない
とあり、「五味坂」は「芥坂」の当て字であることはほぼ間違いない、ということのようです。この「江戸の坂…」によると、先の記事の先頭のほうに「ごみ坂」についての説明があり、「ごみ坂」の共通項として「坂の脇が崖になっていて、ごみ捨て場として格好の場所になっている」ということ、そして、江戸の町にはこの「ごみ坂」と呼ばれた坂が前述の「五味坂」を含め7ヶ所あった、ということが書かれています。
「芥」というと、「芥川」さん。摂津国芥川(大阪府高槻市)発祥といい、文豪・芥川龍之介もこの系統とされているようです。芥川さん、五味さん、どちらも一族に文人が出ていなければ、自分の苗字にコンプレックスを持ちそうな人が大勢いたのではないかと、妙なことを思ってしまいそうです…。
ところで、「五味坂」がある麹町界隈。「こうじ」という字には、この「麹」ともう一つ、「埖」と同じく「花」をつくりに持つ、「糀」の字があります。最近では「塩糀」が話題になって見かけることが増えた字ですが、東京近辺の人には、京急羽田線の駅名にもなっている大田区の糀谷の地名でなじみがあるかもかもしれません。「麹」は中国にもともとある字、「糀」は日本で作られた漢字だそうで、「麹」という漢字があるにもかかわらずわざわざ「糀」という国字を作ったところに、「こうじ」というものに対する日中の見方の違いが垣間見えてきそうな気がします。ちなみに「麹町」の由来は酒の麹ではなく、ここを武蔵の国府(府中)に通じる街道が通っていたことから「国府路町(こうじまち)」と呼ばれたという説が有力なようです(「朝日新聞社会部編「東京地名考」上巻(昭和61年)」[83714])。
話が脱線しますが、「花」をつくりに持つ字には、木へんの「椛」もあります。「椛」の字には「かば」と「もみじ」の二つの読みがあり、「かば」は「樺」のつくりの「華」を同じ意味の「花」に置き換えたもの、「もみじ」は木々に花が咲くような様子を表したものでしょうか。また、「魚へんに花」で「ほっけ」と読む字もあります(この字はPCでは打ち出せないようです)。北海道限定のローカル漢字のようで、道内の魚市場などでよく見かけるそうです。「花」をつくりに持つ漢字は、前出の4字のいずれも国字(和製漢字)だそうで、「花」に対する日本人の特別な感性が現れているのでしょうか。

【追記】以下は蛇足。
昨日、世田谷区向井潤吉アトリエ館へ、「帰郷」を兼ねて訪れてきたのですが、館内の特集展示「四季・春/夏」(今日までで終了)にあった、岩手県滝沢村の田園風景を描いた「六月の田園」という作品を見て、思わず「滝沢市!」と叫んでしまいそうに…。
[83977] 2013年 8月 19日(月)20:46:44【1】hmt さん
母衣コレクション
母衣コレクション の正式デビュー[83963]、おめでとうございます。
2010年末には ほぼ収集が済んでいた「母衣」[77131]に、新たに「袰」の文字を含む地名[77135]が加えられたというわけですね。

過去記事を振り返ると、「ホロ」が気になるという記事は 2005年から現れており[36842]、巨大なロックフィルダム有名な御母衣湖と並んで、「母と衣を上下に重ねて一字のホロ」にした地名の存在にも言及がなされています。挙げられていたのは、その記事から間もない 2005年3月に 中里町との飛地合併によって青森県北津軽郡中泊町になった小泊村袰内(ほろない)です。

2010年末は 同じ青森県でも 津軽ではなく上北の小川原湖南岸にある 母衣平出生(ほろたいはぶ)が話題になりました。
この地は三沢市に属する米軍姉沼通信所が主体ですが、隣接する湖岸の農地だけは上北郡東北町所属です。
自治体越えの地名コレクション では 既に大字「大浦」として収録されているのですが、[76997] まかいの さんの記事にあるように、「母衣平出生」(清濁の微差は揺らぎの範囲でしょう)という字名も市町に跨っているので、こちらも収録対象としてよいのではないでしょうか?

この地名、「象の檻」に言及した[77001]で、“なにやら、いわれのありそうな地名”と書きました。
今回のコレクションの中から、青森県・岩手県の「ホロ(母衣・袰)地名」を抜書きし、多数を占めることを確認。
確かに [83963] グリグリさんが言われるように、北海道に見られる「幌」地名と同様の アイヌ語由来 かもしれません。
ほろいわ 袰岩 宮古市、大槌町【注1】
ほろがけ 母衣掛 つがる市、袰掛 五所川原市
ほろかわ 袰川 むつ市
ほろし  母衣下(山) 住田町
ほろたい 袰帯 宮古市
ほろたい 母衣平出生 三沢市・東北町、
ほろち  袰地 宮古市
ほろづき 袰月 今別町
ほろない 袰内 中泊町
ほろぬし 袰主 軽米町
ほろの  袰野 岩泉町
ほろべ  母衣部 東通村【注2】、袰部 東通村【注2】、むつ市、八幡平市【注3】
ほろむら 袰村元 今別町
ほろや  袰屋 宮古市
ほろわ  母衣輪 花巻市
ほろわた 袰綿 岩泉町

【注1】コレクション未収録であった岩手県上閉伊郡大槌町袰岩は、ウォッちずをリンクしました。

【注2】青森県下北郡東通村の「ほろべ」
コレクションには東通村野牛母衣部が収録済みです。しかし、ウォッちずで検索したところ、下北半島北東端・尻屋崎付近のこの地では、風力発電施設 のある 下北郡東通村岩屋に 袰部 がありました。コレクションの「野牛母衣部」にリンクされているmapionを見ると、袰部川沿いの袰部より少し南を通る県道沿い(山中)で不自然な位置です。地名も位置も 袰部川沿いの「東通村岩屋袰部」(mapionにもある)の方が信用できるのではないでしょうか?

【注3】八幡平市の「ほろべ」
コレクションには、岩手県八幡平市の袰部牧場と袰部沢(牧場付近、及び源流近くの2ヶ所)とが収録されています。
八幡平市の住所表示 を見ると、2005年の合併による字名が列挙されています。その大部分は旧安代町なのですが、末尾に安代町字袰部が「八幡平市袰部」に変更されたことが記されています。

昭和合併前の安代町は2村。明治合併前に遡っても田山村・荒屋村・浅沢村の3村ですが【注4】、これらの村名を残した大字はなく、5年前の湯瀬オフ会の時に通った花輪線の 荒屋新町と田山の2つの駅名から旧村名を偲ぶだけです。
多数の字は昔の地名を残し、そのまま八幡平市の字になりましたが、住所表示からは「字」の表記が消えました。無人となっている字も多いと思います。
【注4】
明治8年の合併以前には荒屋村は荒屋村・曲田村・滝ノ又村・目名市村、浅沢村は浅沢村(中佐井村)・岩屋村・五日市村に分れていました。

このようにして「八幡平市袰部」という地名の存在は確認されましたが、その所在地はウォッちず・マピオンのいずれからも分かりません。上記「八幡平市の住所表示」の末尾に記載されていることから、旧安代町の南端、つまり 袰部沢の源流近く と推測するのみです。
【追記1】
旧版の20万分の1地勢図・弘前を見たら、当時の二戸郡安代町の領域内に「袰部」が記されていました。その後集落が消滅して、地名調書[56419]から消されたものと推察します。その位置は コレクション記載の「袰部沢」(の一方)と同じでした。【追記1終】

なお、稀少地名漢字リスト に登録されている 「袰」の用例 も調べてみました。
宮古市大字重茂第8地割字袰鞍口などがあったが、地名変更で消滅したとのことです。
また、このページからたどった 昭和36年青森県告示第119号 には、昭和34/8/1供用開始の尻労袰部線の終点として、「下北郡東通村大字野牛字袰部」という地名がありました。注2を記した時には、山中の「野牛母衣部」の存在を疑ったのですが、「大字岩屋字袰部」と別の「大字野牛字袰部」が存在するようです。

【追記2】
「母衣」「袰」と類似した「ホロ」表記として「母袋」も存在するようです。
八戸市の地名 大字是川の中に 3つの「母袋子(ほろこ)」地名(小母袋子,西母袋子,東母袋子)がありました。
また、注3で記した田山村(>安代町>八幡平市)の袰部にも、かつては「母路部」「保呂部」という表記が使われたようです。(平凡社:岩手県の地名p.715)
かいと 類似の 同音異字地名コレクションが成立する には至らないにしても、何種類かの「ホロ地名」が存在するようです。
[92076] 2016年 12月 10日(土)01:21:49倉田昆布 さん
雨かんむり
「天気名」なら、既にコレクション案として登録済ですね。

雨かんむりで思い出したのが、岩手県一関市の北ほうりょう・南ほうりょうという地名。
Mapionなど、ネット上ではだいたい「豊隆」になってますが、正確には「豊」「隆(の旧字体)」それぞれに雨かんむりがつく字が用いられています(参考)。
[92077] 2016年 12月 10日(土)09:05:22【1】オーナー グリグリ
雨かんむりと天気について
[92076] 倉田昆布さん
「天気名」なら、既にコレクション案として登録済ですね。
やはり過去記事にありましたね。記事検索をサボってはいけません([92074])。^^;

ということで、気象や天気を題材にした地名コレクション候補に関する記事をまとめてみました。一番最初にじゃごたろさんが気象系として提案され、その後、TAMAさん、桜トンネルさんも提案されていますが、桜トンネルさんの[58954]を最後に棚上げ状態になっているようです。

気象系と天気名では微妙に違いがあり、[45827]には「雲」がありますが、[58954]にはありません。天気名の方が範囲を絞り込んでいるようです。私が提案した「雨かんむり」は天候を意識した提案であるのは間違いありませんが、晴、曇、嵐などの雨かんむり以外については考えていませんでした。また、電、霊など天候に直接関係しない文字も意識しています。また、天候関係として一括りにするのではなく、[92070]にも書いたように文字を意識して文字ごとに細切れにする方がよいかなと考えています。

雨かんむりで思い出したのが、岩手県一関市の北ほうりょう・南ほうりょうという地名。
Mapionなど、ネット上ではだいたい「豊隆」になってますが、正確には「豊」「隆(の旧字体)」それぞれに雨かんむりがつく字が用いられています(参考)。
これは貴重な雨かんむり地名ですね。こういうのはぜひともコレクションしたいです。[92070]に地理院地図の件を書きましたが、こちらの那須塩原市に、咆哮霹靂ノ滝(ほうこうへきれきのたき)と雷霆ノ滝(らいていのたき)という珍しい雨かんむり「霹・靂・霆」が3つも集まっています。滝の音が激しい雷に似ているところからの命名と思われますが、貴重なコレクションネタです。

【追記】
倉田昆布さんが[92076]で紹介された参考サイトには、雨かんむりの地名が他にもいくつかありますね。それにしてもこの稀少地名漢字リストというページは稀少漢字地名が網羅されていて素晴らしい情報サイトになっています。
[92092] 2016年 12月 12日(月)17:45:57hmt さん
ローカルな地名漢字
[92077]グリグリさん
それにしてもこの稀少地名漢字リストというページは稀少漢字地名が網羅されていて素晴らしい情報サイトになっています。

過去記事を拾ってみると、pyriteさんご本人の投稿がありました。

だからどうした? という訳でもないのですが、僅か1件でも投稿記事があるのを発見し、なんとなく嬉しくなりました。

実は hmtが落書き帳に出会った2003年夏、武蔵野台地の「ハケ」という地名が話題になっていました。
スナフキんさんが、「土へんに赤」というタイトルで書いているように、関東ローム層の赤土が露出した「崖」で、珍しい「局所地域的作字」による漢字と記載されています。
一連の記事は、2012年に「垳(がけ)という地名」[80937]を話題にした際に まとめたものです。

こちら【ハケ】も地域限定ですが、「垳」よりも 広い範囲で使われています。
しかし、「土偏に赤」 という字については、前記の辞典にも、JIS第2水準にも収録されず、冷遇されています。
「大字」レベルの地名に使われていなかったことが、その原因でしょうか?
これに続いて、狭山市内のバス停写真が紹介されていますが、左側は違う漢字になっています。

稀少地名漢字リストを見直すと、ふじみ野市「はけ」の現地レポ(2013年)も掲載されていました。

稀少地名漢字リストJIS第4水準Unicode212FDに収載。

稀少地名漢字リストの埼玉県で「はけ」「ばけ」を検索すると、JIS第2水準の【岾】が所沢市南永井字大岾(おおはけ)など5+1地点、JIS第4水準の【𡋽】が川越市大字寺尾字𡋽(はけ)など4+1地点、JIS第4水準の【屼】が所沢市大字上安松字向屼(むこうはけ)など2+0地点、JIS外【坫】が川越市砂久保字小坫(こばけ)0+1地点。【はけ11+ばけ2 = 合計13地点】

せっかくの機会なので、地元の「はけ」地名につき、稀少地名漢字リストへの収録状況を確認しました。


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