今回の十番勝負「問五」の共通項は、「市内に『温泉』のつく駅がある市」でした。以前にも類題が出たことがあり(第14回・問九)、また第25回の「落書き帳10周年記念・特別バージョン」の問一では「JRの温泉駅限定」として出題され、そのときには私が「徹底研究」と称して(
[73216])「JRの(その当時存在した)温泉駅」についての考察を行い、それに対してhmtさんか早速レスがあり(有明つばめさんからも少し)、私鉄を含めて過去に存在した「温泉駅」までにも及んだやり取りは、
解説記事としてまとめられました。今回は、JR以外も含めた「温泉駅」のある市が共通項、ということで、既に
[96130] でデスクトップ鉄さんが概略を述べられておりますが、ここでは第25回・問一のときの考察の"Remake"と言う形で、「『温泉駅のある市』になった時期」にスポットを当てるのをメインテーマにして、次の表にまとめることにしました。
この表において、市の並びは、便宜上「お題」→「正答が出た」順とし、未解答で残った2市と、「おんせん」と読まない「温泉津(ゆのつ)」駅のある大田市は末尾に並べておくことにしました。
番号 | 市名 | 温泉駅(路線名) | 該当した日 | 理由 | 備考 |
1 | 鹿角 | 湯瀬温泉(花輪線) | 1995.12.1 | 「湯瀬」より改称 | 第5回オフ会 |
2 | 会津若松 | 芦ノ牧温泉・芦ノ牧温泉南(会津鉄道) | 1987.7.16 | 「上三寄」「桑原」をそれぞれ現駅名に改称 | 旧国鉄会津線の転換と同時。第8回オフ会 |
3 | 笛吹 | 石和温泉(中央本線) | 2004.10.12 | 市誕生 | 第11回オフ会 |
4 | 神戸 | 有馬温泉(神戸電鉄有馬線) | 1947.3.1 | 合併で市域に |
5 | 松江 | 松江しんじ湖温泉(一畑電車)、玉造温泉(山陰本線) | 1970.10.1 | 「北松江」駅が「松江温泉」駅に改称。現駅名「松江しんじ湖温泉」への改称は2002.4.1。玉造温泉駅は2005.3.31に合併で市域入り | 第10回オフ会 |
6 | 秦野 | 鶴巻温泉(小田急小田原線) | 1958.4.1 | 「鶴巻」より改称 | (注) |
7 | 大津 | おごと温泉(湖西線) | 2008.3.15 | 「雄琴」より改称 | 一度非該当市になった後に再該当(注) |
8 | 上山 | かみのやま温泉(奥羽本線(山形新幹線)) | 1992.7.1 | 「上ノ山」より改称 |
9 | 山口 | 湯田温泉(山口線) | 1961.3.20 | 「湯田」より改称 |
10 | 飯山 | 戸狩野沢温泉(飯山線) | 1987.3.1 | 「戸狩」より改称 | (注) |
11 | 恵那 | 花白温泉(明知鉄道) | 2011.3.12 | 「花白」より改称 |
12 | 京丹後 | 夕日ヶ浦木津温泉(京都丹後鉄道宮津線) | 2004.4.1 | 市誕生 | 当時は「木津温泉」駅。現駅名への改称は2015.4.1 |
13 | 二戸 | 金田一温泉(いわて銀河鉄道) | 1987.2.1 | 「金田一」より改称 | 当時は東北本線 |
14 | 大館 | 大滝温泉(花輪線) | 1955.3.31 | 合併で市域に |
15 | えびの | 京町温泉(吉都線) | 1990.11.1 | 「京町」より改称 |
16 | 津 | 榊原温泉口(近鉄大阪線) | 2006.1.1 | 合併で市域に | 駅も温泉街も共に合併で津市内だが、駅の所在地は旧白山町、温泉街は旧久居市 |
17 | あわら | 芦原温泉(北陸本線) | 2004.3.1 | 市誕生 | 旧芦原町ではなく旧金津町 |
18 | 函館 | 湯の川温泉(函館市電) | 194?. | 改称? | (注) |
19 | 豊岡 | 城崎温泉(山陰本線) | 2005.4.1 | 合併で市域に | 合併の1ヶ月前に「城崎」より現駅名に改称 |
20 | 加賀 | 加賀温泉(北陸本線) | 1970.10.1 | 「作見」より改称 |
21 | 上田 | 別所温泉(上田電鉄別所線) | 1970.4.1 | 合併で市域に |
22 | 日光 | 鬼怒川温泉(東武鬼怒川線)、川治温泉・湯西川温泉・中三依温泉・上三依塩原温泉口(野岩鉄道会津鬼怒川線) | 2006.3.20 | いずれも合併で市域に | 「中三依温泉」「上三依塩原温泉口」は合併の2日前に現駅名に改称 |
23 | 渋川 | 小野上温泉(吾妻線) | 2006.2.20 | 合併で市域に |
24 | 下関 | 川棚温泉(山陰本線) | 2005.2.13 | 合併で市域に |
25 | 新城 | 湯谷温泉(飯田線) | 2005.10.1 | 合併で市域に |
26 | 鶴岡 | あつみ温泉(羽越本線) | 2005.10.1 | 合併で市域に | 一度非該当市になった後に再該当(注) |
27 | 大崎 | 鳴子温泉・川渡温泉・中山平温泉(陸羽東線) | 2006.3.31 | 市誕生(所在地の鳴子町が古川市などと新設合併) |
28 | 武雄 | 武雄温泉(佐世保線) | 1975.6.19 | 「武雄」より改称 |
29 | 黒部 | 宇奈月温泉(富山地鉄本線)、黒部宇奈月温泉(北陸新幹線) | 2006.3.31 | 合併で宇奈月温泉駅が市域に | 黒部宇奈月温泉駅の開業は2015.3.14 |
30 | 福島 | 飯坂温泉(福島交通飯坂線) | 1964.1.1 | 合併で市域に |
31 | 七尾 | 和倉温泉(七尾線) | 1980.7.1 | 「和倉」より改称 | のと鉄道とも共用 |
32 | 郡上 | みなみ子宝温泉(長良川鉄道) | 2004.3.1 | 市誕生 |
33 | 霧島 | 霧島温泉(肥薩線) | 2005.11.7 | 市誕生(所在地の牧園町が国分市などと新設合併) |
34 | 島田 | 川根温泉笹間渡(大井川鉄道大井川本線) | 2008.4.1 | 合併で市域に |
35 | 美濃 | 湯の洞温泉口(長良川鉄道) | 1986.12.11 | 「美濃立花」より改称 | 旧国鉄越美南線の転換と同時 |
36 | 八代 | 日奈久温泉(肥薩おれんじ鉄道) | 2004.3.13 | 「日奈久」より改称 | 鹿児島本線八代~川内間の転換と同時 |
37 | 人吉 | 人吉温泉(くま川鉄道) | 2009.4.1 | 「人吉」より改称 | 共用するJR人吉駅は改称せず |
38 | 松山 | 道後温泉(伊予鉄松山市内線) | 1961.4.1 | 「道後」より改称 |
39 | 青森 | 浅虫温泉(青い森鉄道) | 1986.11.1 | 「浅虫」より改称 | 当時は東北本線 |
40 | 富士吉田 | 葭池温泉前(富士急) | 1951.3.20 | 市誕生 |
41 | 大田 | 温泉津(山陰本線) | 2005.10.1 | 合併で市域に | 「おんせん」と読まない唯一の駅 |
「温泉駅がある市」の仲間入りした理由を見ると、「『温泉』のつく駅名」に改称したことによるものが最も多く、全体の半数近くを占め、次いで「それまで郡部だった温泉駅が合併によって市域に入った」のが続き、「合併などによる市の誕生」によるものは意外と少数派です。
「温泉」駅について、複雑な経緯をたどった市もいくつかあります。大津市には、かつて江若鉄道に「雄琴温泉」と言う駅がありました。1923(大正12)年に「雄琴」駅として開業し、戦後間もない頃?に「雄琴温泉」に改称しています。「雄琴温泉」駅があった雄琴村は、1951(昭和26)年に合併で大津市に入りましたが、
wikiの記述を見る限りでは、合併と駅改称のどちらが先か不明です。江若鉄道は、国鉄湖西線の建設計画との絡みもあって、1969年に全線を廃止し、路線敷きの一部は湖西線の用地に転用されましたが、「雄琴温泉」付近では市街地を避けて山側に線路が敷かれたため、温泉街から遠い場所に駅ができ、また当時は「雄琴」というと「風俗営業」のイメージが強くなっていたことも、駅名に「温泉」がつかなかったことと関係あるかもしれません。その後、温泉街のほうでも「歓楽街」からの脱却を目指して体質改善が進み、「温泉」駅の復活を望む声が大きくなったとされ、2008(平成20)年に「雄琴」駅が現在の「おごと温泉」に改称され、江若の「雄琴温泉」駅が消えて以来、39年ぶりに「温泉駅」が復活となったのでした(この辺の経緯は、大津市民のむっくんさんから情報をいただければ幸いと存じますが…)。
鶴岡市も「温泉駅が復活」した市です。市内には、かつて「庄内交通」の「湯野浜温泉」と言う駅がありました(
こちら)。鶴岡駅から出ていた「湯野浜線」の終点の駅で、同名の温泉の玄関の駅となっていましたが、1975(昭和50)年4月1日付で廃線となり、いったん市内から「温泉駅」が消えました。その30年後の2005(平成17)年、「あつみ温泉」駅があった温海町が合併で「新・鶴岡市」の一部となり、こちらも市域に30年ぶりの「温泉駅」復活となったのでした。
秦野市にある小田急「鶴巻温泉」駅は、開業時の「鶴巻」から「鶴巻温泉」に、戦時中に「温泉」を外され「鶴巻」に戻された後、1958(昭和33)年に再び現駅名の「鶴巻温泉」の駅名が復活しています。飯山市はややこしく、飯山線が私鉄だった戦前、野沢温泉の中心部に最も近い位置にある現在の「上境」駅が一時期「野沢温泉」駅を名乗り、国鉄への買収で「上境」に戻った後、今度は隣の「戸狩」駅が1987(昭和62)年に「戸狩野沢温泉」に改称されて現在に至っています(
[73231] hmtさん)。しかし、この両市とも、直近の「温泉駅」の改称以外は、まだ郡部だった時期でした。余談ですが、「戸狩野沢温泉」駅は、北陸新幹線の開業と共に、野沢温泉へのバスの発着が現在地に移転した飯山駅に変更されて、戸狩野沢温泉駅から野沢温泉へのバスの運行も中止され、既に野沢温泉の玄関としての地位を失っているようです。飯山市には昨年の春に訪れているのですが(
[92849])、直通バスが待っていた「菜の花まつり」に気を取られ、野沢温泉方面へのバスは目に留まりませんでした。飯山駅も移転によって元の駅とは別の駅になったように見えるので、新たに野沢温泉への玄関口になった飯山駅を「飯山野沢温泉」(合併破談で「幻の市名」になったあの名前ですが…)に、野沢温泉の玄関の地位を下りた「戸狩野沢温泉」は、「
戸狩温泉」(駅の北方に立ち寄り湯があります)にそれぞれ駅名を改称したほうが、実情にあっているように思えるのですが…。
函館市電の「湯の川温泉」駅(路面電車の停留所)については、
wikiの記事では
1913年(大正2年)6月29日 - 鮫川橋停留所として開業。当停留所から湯川終点までは単線であった
1938年(昭和13年)以前 - 鮫川に改称。 以降、温泉入口、湯川、そして現在の湯の川温泉と改称している
1945年(昭和20年)7月2日 - 鮫川 - 湯川間の単線軌道が撤去され、終点となる
1959年(昭和34年)9月2日 - 1945年に撤去された湯の川温泉~湯の川間の軌道が複線で再敷設され、中間駅に戻る
とあるのですが、「温泉入口」と、現在の「湯の川温泉」への改称時期がこれでは読み取れません。本サイトの「市の変遷」から、北海道の市→
函館市の変遷の欄を見ると
函館市 1939.4.1 編入 函館市, 亀田郡 湯川町
とあるので、「湯の川温泉」がある地域である「湯川町」が1939年に函館市域に入っていることはわかるのですが、それぞれ駅名の改称時期がいつだったか、函館市交通局のサイト→
函館市電のあゆみ→
事業の沿革を見ても記載がなく、これらを見た限りでは「灰色」(この市出身の、こういう名前のバンドが居りますが…)領域に入ってしまい、「温泉入口」への時期がいつだったかによっては「温泉駅がいったん消えた後復活」と言うケースに当てはまる可能性を捨てきれません。
2007年1月に行われた、第14回・問九は、今回とほぼ同じな共通項で出題された問題でしたが、このときの想定解数は39市。「温泉津」駅がある大田市は「正答」として扱われ、またロープウェイの「温泉」駅がある山形市と高山市も正答とされていました(増えた1市」は、実は山形市だと思っていました)。一方、「JRの温泉駅限定」で行われた第25回・問一では、大田市は想定解に含まれず、対象外扱いでした。
今回の問五では、途中で追加された1市とは「おんせん」と読まない「温泉津」駅がある大田市だったと思われ、一方ロープウェイの駅がある山形市と高山市は除外されたと考えられます。反対に、第14回・問九の時点から増えた「温泉駅」がある市は、大津市(2008.3.15に「雄琴」駅が「おごと温泉」に改称して39年ぶりに「温泉駅がある市」に復帰)、島田市(「川根温泉笹間渡」駅がある川根町が2008.4.1に合併で市域に)、人吉市(2009.4.1にくま川鉄道の「人吉」駅が「人吉温泉」駅に改称。JRの駅は「人吉」のまま)、恵那市(2011.3.12に「花白」駅が「花白温泉」駅に改称)の計4市。結局、今回の想定回数は、差し引きで41市ということになったのでした。
以上により、市内に「温泉」のつく駅がある市は41市(大田市を含む)、市内にある「温泉」のつく駅の数は50駅(温泉津駅を含む)。「温泉駅」が複数ある市は5市あり、最も多いのは日光市で、5駅あります。
♯かつて市内に「温泉駅」があった市、町村にある「温泉駅」については、次回に書き込むことにします。
【1】「市にある温泉駅」の合計を追記。その他、誤記と一部の表現を修正。