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落書き帳

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[2341] 2002年 7月 28日(日)20:20:59実那川蒼[あんどれ] さん
JIS外の漢字を使った市町村
JIS外漢字が正式であるとはっきり述べているのは東京都葛飾区くらいでしょうか。
神奈川県逗子市、埼玉県蓮田市、青森県蓬田町、鹿児島県祁答院町なども
JIS外漢字が正式である可能性があります。

このうち、蓮田市は「蓮」が平成2年に人名漢字に追加されてJIS漢字と同じ字体に
なっていますが、それ以後で正式に「蓮」の字体を変更した様子はないようです。
ただし、ホームページではJIS漢字をそのまま使っています。

同じようでも、奈良県都祁村は正式に偏を示偏からネ偏に変えてJIS漢字どおりにしたとか。
[77147] 2010年 12月 31日(金)19:51:16実那川蒼 さん
今年中に書きたい地名に関わる旬の話題の類
今年最後の書き込みになります。十番勝負は新傾向の問題が出題されるようですが、解答の仕方が難しそうです。私は、先月末に告示された「あれ」絡みの出題があるのではないかと予想していますが…

さて、埼玉県蓮田市の「蓮」の表記が2011年1月4日から2点しんにょうから1点しんにょうに変更されます。実は8年前の[2341]で私がこの点について取り上げていたのですが、今回の変更によって解決されることになります。

「蓮」のJIS漢字の字体(パソコン上の字体)は1978年に2点しんにょうで制定されました。当時は2点しんにょうの字体が標準だったからです。ところが、5年後の1983年に1点しんにょうに変更されました。この変更については政策的な理由があったとされ、これが遠因となってWindows XP以前とVista以降で画面上の字体が一部の漢字で異なるなど、現在に至るまで禍根を残しています。

1990年に「蓮」が人名用漢字に追加されたときには、JIS漢字の字体を追認する形で1点しんにょうとなり、漢和辞典でも1点しんにょうが新字体、2点しんにょうが旧字体となりました。人名以外での一般の表記に使用する字体についてはその後も不明確でしたが、2000年の表外漢字字体表の制定によってJIS漢字および人名用漢字の1点しんにょうの字体が追認され、公式の字体になりました。

今回蓮田市が字体変更に踏み切ったのには、以上の過程によって標準的な字体が2点しんにょうから1点しんにょうに移り変わったからであり、パブリックコメントを募集しても1件もなかったことからも分かるように、市民も字体の変更を当然のものとして受け入れていたようです。

それではみなさん良いお年を。
[77318] 2011年 1月 4日(火)10:50:01【1】Issie さん
どぶに落ちても根のある奴は
今年の 総務省告示第1号 (←pdfファイル。たぶんリンクが有効なのは2月初めまで)は「市の名称変更」というものでした。埼玉県の 蓮田市 の名前を変更する,というもの。
で,何か新しい名前になるのかと思ったら,変更後も「蓮田市」なんですね。
何が変わったかというと,「蓮」の“しんにょう”の点が2つから1つになった,ということ。PCのディスプレー上では,特別なフォントを用いない限り区別できなさそうですが。

これは,昨年11月の告示で差し替えられた「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)を受けてのことなのでしょう。もっとも「蓮」は常用漢字ではないので,直接には無関係のはずなのですが。
もしかしたら,これからこのタイプの「名称変更」が続くのかもしれません。

なお,蓮田市の「名称変更」は本日,2011年1月4日より有効です。
[77331] 2011年 1月 4日(火)23:08:26【1】オーナー グリグリ
変遷情報更新
ピーくんさんからの情報(byメール)、[77316]山野さんの情報に基づき、以下の変遷情報を追加更新しました。

☆栃木県佐野市と岩舟町の合併の動き
☆埼玉県越谷市の中核市への移行の動き
☆愛知県長久手町の市制移行についての動き
☆広島県府中町の市制移行についての動き

また、88さんにより、[77147]実那川蒼さんからの情報による「蓮田市の名称変更」情報を追加しました([77318]でIssieさんも言及)。88さん、ありがとうございました。私の方でリンク情報を少し追加修正しました。

ところで、この蓮田市の改称は蓮田市の「市の名称変更に関する条例」に基づく正式の改称ではあるのですが、「蓮の字体を2点しんにゅうから1点しんにゅうに変更する」という実質的にはこれまでと変わらないものであり、住民の意識が低いのもさもありなんというところです。しかしながら、我がサイトの雑学ページでは対象としない訳にはいきません。

東京市ってあったの? 消滅した市

上記雑学ページの「改称による消滅」一覧にとりあえず追加してみましたが、今ひとつしっくり来ませんね。記録としての厳密性のためには一覧に追記すべきでしょうが、実質的には消滅しているとは言い難い。実際、Web媒体上では区別ができません。

蛇足:十番勝負ネタでの扱いも微妙になるなぁ...
[77338] 2011年 1月 5日(水)12:55:10ペーロケ さん
改称?
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします。

[77331]グリグリさん
この蓮田市の改称は
(中略)
上記雑学ページの「改称による消滅」一覧にとりあえず追加してみましたが、
う~ん、これを「改称による消滅」に入れてしまうと、廣嶋市→広島市のような旧字体からの改称を無視できなくなるのではないか、という懸念があります。この手の改称は、正式にはいつ改称したのかを特定しなければいけないとなると、探せばきりがない訳ですね。それこそ膨大な作業が必要となります(この膨大な作業も、落書き帳メンバーの力をもってすれば可能じゃないかと思わせてくれるのも不思議ですけど^^)。ただ、自治体によっては、慣習的なものもあるかもしれませんし、もしかしたら改称についての文書で残っていなくて、旧字体でも間違いではないという自治体が出る可能性もあると思います。まあこの手の話は詳しい方に譲るとして、個人的には、この欄は「明らかに違う字である」と認められる改称のみ対象にした方がシックリきます。もちろん、この改称をどこかに記録したいお気持ち、よく分かりますが。。。
[77341] 2011年 1月 5日(水)20:34:3588 さん
蓮田市の改称について
本年もよろしくお願いいたします。

[77338] ペーロケ さん
市区町村変遷情報における旧字体・新字体の表記方法については、[56275] [74087] 拙稿で方針を述べております。趣旨を再々掲すると、次のとおりです。
(1)現在、常用漢字を使用しているものは、近世村当時から常用漢字で表記する。
(理由:旧字体から常用漢字(旧当用漢字)へは一括して字を置き換えただけであり、自治体が「表記を変えた」ものではないため)
(2)(1)にかかわらず、旧字体から常用漢字への変更(またはその逆)が「改称」の手続きを経ている場合は、その「意図」を反映させる。
(改称までは旧字体で表記し、改称後は常用漢字で表記する、等)
(3)現在、常用漢字があるにもかかわらず、「あえて」いわゆる旧字体で表記しているものは、その意図があるとみなし、近世村当時からその「旧字体」で表記する。
(4)現在、常用漢字以外の漢字を使用しているものは、近世村当時からその字体で表記する。
(漢字の部分(偏・旁など)において常用漢字に置き換えが可能であっても、漢字全体が常用漢字か否かで判断する。)
(5)(1)~(4)にかかわらず、これらの文字がネット上で使用することができない場合(同じ字体の漢字がない場合(文字化けする恐れがある場合を含む))には、便宜上、類似した字体で表記し、備考欄のコメントで補足する。

また、[67802]拙稿では、「市町村の名称の書き表わし方について」(昭和33年4月21日自丙行発第7号自治庁行政局長通知)を投稿しました。
要点を抜粋すると、次のとおりです。
市町村の名称の字体が当用漢字字体表にない従来の字体である場合において、当用漢字字体表の字体を用いて書き表わすこととしても、地方自治法第3条第3項の規定による名称変更に該当しないものである。
つまり、「旧字体→新字体」は改称とは取扱わないので条例による手続きは不要、ということを、自治庁が都道府県知事あてに正式に通知したものです。

――――――――――
さて、今回の蓮田市の件について。
これは蓮田市が、「市の名称変更に関する条例」のとおり、地方自治法第3条第3項による条例を制定したものです。
(自治体の改称の根拠が総務省告示ではなく自治体の条例であることは、過去の投稿のとおり。総務省告示は単なる周知措置)

一方、「廣嶋市」「広島市」の件については、
・「廣」「広」は旧字体から新字体に置き換えただけであり、同じ文字である。
・「嶋」「島」は、当時としては「表記の揺れ」である。
・よって「改称」手続は成されていない。

以上のように、蓮田市は正式な改称手続きを経ているのに対し、広島市は改称手続きを経ていません。
蓮田市の改称手続きは、例えば、市区町村雑学消滅した市の蓮田市のすぐ上に記載されている、H18(2006).1.1付けの水海道市から常総市への改称(同時に編入)とまったく同じ手続きを経ています(H17.3.23付け平成17年水海道市条例第7号市の名称変更に関する条例)。

表面的な字体の相違よりも、手続きの実体上の相違を鑑みれば、グリグリさんの対応は十分に理にかなっていると考えます。

――――――――――
web媒体上での表示における同様の問題としては、例としてはH3(1991).10.24付け奈良県添上郡都祁村 の「書体変更(示偏→ネ偏)」が挙げられます。
2つの件とも、画像で字体を作って表示する方法もあるのでしょうが、汎用性に難があるため、説明文で対処している現在の方法でやむを得ないと思います。
[77347] 2011年 1月 5日(水)23:48:08【3】Issie さん
…いつか「蓮(はちす)」の花と咲く
タイトルは [77318] の続きということで。

[77331] グリグリ さん
[77147]実那川蒼さんからの情報

ごめんなさい。読み落としてました。重複しちゃいましたね。

[77338] ペーロケ さん
改称?

実はこの件に関しては,自分のHPでどのように取り扱うか,考え中なところです。
が,基本的には 88 さん([77341])と同様,“手続き”を重視すべきである,というのが私の意見です。
今回の件は,「総務省告示」という文書を「官報告示」という形で一般に周知する,という手続きを経たことを何よりも重視したいと思います。
実際,自治体名等の表記の変更について,「自治省/総務省告示」という形で周知された例として1960年7月1日以降では
 ・1972年3月30日付の 鹿児島県噌唹郡→曽於郡(同年4月1日施行,昭和47年自治省告示第82号)
 ・1991年12月3日付 奈良県山辺郡都祁村(“しめすへん”の書体変更。同年10月24日施行。平成3年自治省告示第167号)
の2例があります。…というか,2例しか“ありません”。
大筋は 88 さん([77341]) の説明にある通りです。私も全く同じ認識を持っています。

「字体」の扱いについては 88 さんが [77341] で抜粋された自治省の通知がありますが,“そもそも”の「当用漢字字体表」(昭和24年内閣告示第1号)に付随して出された“内閣訓令”(「当用漢字字体表の実施に関する件」)には以下の下りがあります。

--------------------------------------------------------------------------------------
今後,各省庁においては,この表によって漢字を使用するとともに,広く各方面その使用を勧めて,当用漢字字体表制定の趣旨の徹底するように努めることを希望する。
--------------------------------------------------------------------------------------

実は,市町村はあくまでも“自治体”であって“国の官庁”ではないことは,現行憲法・地方自治法の下はもとより,旧憲法の下でもそうであったととらえるべきなのでしょうが,それでもこの「訓令」には相当の強制力があったと理解すべきであろうと思います。「長野県諏訪郡ちの町」の例を考えれば,少なくとも「公」の分野における「当用漢字」の強制力はとても強かった。だから,「廣島市」は“当然に”「広島市」と“書き替わる”(←“受け身(受動態)”ではなく“自発態”)ものであって,告示の必要など全くない
(ところで,「廣嶋市」という表記は“公式に”行われていたのでしょうか)。
全国の自治体名が“自動的”に「新字体」に書き替わったものと思われます(現在,わざわざ“旧字体”表記を(勝手に)主張している自治体も含めて)。

一連の「国語改革」は戦前からの取り組みの歴史を踏まえて 文部省 が主管官庁となって推進されました(決してGHQが「日本の伝統を破壊する」ために押し付けたものではありません。明治以来積み重ねられた試行錯誤の到達点として,獲得されたものです)。ところが,占領終了とともに,旧内務省系の官庁が 自治庁→自治省 と整備されていく中,自治庁/自治省では公文書の表記について文部省系のそれとは若干違うルールを採用しました。たとえば,横書き文書の読点について,文部省系では「,(コンマ)」としているのに対して,自治省系では「、(点)」で表記するものとしています。
常用漢字表において「全て」という表記が“公認”されたのは実は今回の改定が“初めて”です。これまでの常用漢字表(昭和56年内閣告示第1号)では「全て」という表記は認められておらず,「ゼン」または「まったく(まっとう)」としか読めませんでした。けれども,自治省系では「全て」という表記はずっと以前から認められていたようで,公文書でも普通でした。
私が県庁勤務であった時に戸惑ったことの1つは,この“文部省系”と“自治省系”の表記ルールの違いであったわけですが,それはつまり,“自治省の縄張り”である地方自治体において,文部省系の表記の縛りは,最近であればあるほど強くはなかったといえそうです。それとは対照的に,検定教科書における文部省ルールの縛りは極めて厳格でありました。
一方で,その「厳格な」学校における漢字教育を受けた世代においては漢字の一点一画が極めて厳格に決められているものとの「誤解」が芽生えて,それが今回の「しんにょうの点の数」にかかわる「名称の変更」告示につながったのでしょう。
…そんなこと,蓮田市に言われる前っから,あたしゃ「蓮」の字を“一点しんにょう”で書いていますって。

過去に何度も表明しているように,私自身は今回の件は「文字(活字)のデザインの相違」に過ぎないと考えています。“二点しんにょう”であろうが,“一点しんにょう”であろうが,どちらも“全く同じ漢字”。たとえ「正字」というものがあっても,それは“明朝体活字”のお手本であって,それを筆で楷書で書けばそのお手本とされている唐代の字体が“正字体”と違う例はいくらでもある。過去に話題になった「塚」の“点”の有無もそう。「ヶ」や「ッ」の大小もそう。[77344] で にまん さんが紹介されている「葛城市」の例もそう。どちらの形の「葛」が“正しい”かなんて,およそナンセンス。
少なくとも,“手で書く”際にそのようなことにこだわる必要は全くない。ただし,個人名や私企業のような「私」の存在については,それぞれのアイデンティティは尊重されねばならず,字体の違いも最大限区別するべきだと思いますが,逆に「公」の存在である自治体の表記については個々の住民による表記を縛るものであってはならい(“ガバメント・アイデンティティ”というものがあるにしても。それ(たとえば“旧字体/新字体”とか,“ヶの大小”とか)を住民に“上から”強制してはならない。どちらが「正しい」かを決めるのは,住民の多数の“慣用”です。

ただ,冒頭の繰り返しですが,今回の「蓮田市」の件は手続き上,「公的」な表記について“総務省告示”という形で告示されるに至りました。何となく書き替わった「広島市」の例とは違って。この手続きは,重視してしかるべきです。
したがって,記録性を重視するならば,そのような手続きが“わざわざ”行われたことを“記録”として残しておくことは,十分に妥当なことであると思います。
[77399] 2011年 1月 11日(火)18:37:34hmt さん
蓮田市の「市の名称変更」問題 (1)変えたのは「名称」ではなく表記の「字体」
2011年1月4日に実施された 蓮田市の「改称」に関する話題 を興味深く拝見しました。

[77341] で、88 さんがリンクしてくれた 「市の名称変更に関する条例」。ネット上で見る限り、全く奇異な「改称」です。
蓮田市を蓮田市に変更する。

もちろん、条例の原本では、2点しんにゅうの「蓮」と1点しんにゅうの「蓮」とを書き分けているのだろうと思います。
ここでは、便宜上“書き分けている”と記したのですが、原本の表記は、手書き文字ではなく、活字体の文字であると思われます。

つまり、この条例が 実質的に意図している変更対象は、条例の表題に示された「市の名称」ではなく、「市名を活字体で表記する場合の字体」であると考えられます。
リンクしていただいた蓮田市HPにも、パソコンで不具合を生じる旧字体から、標準的な規格として使われている字体への変更という趣旨が記されています。
「蓮田市」「大字蓮田」の「蓮」の字体は、旧字体の2点しんにゅうを使用していますが、パソコンなどの情報機器においては、1点しんにゅうの「蓮」が標準的な規格として使用されており、2点しんにゅうの「蓮」が表示されない、文字化けする、という支障が生じていました。

問題の本質は「印刷表記における字体」にすぎないのに、蓮田市当局は大袈裟に「市の名称」変更としての手続をしました。
そして総務省も、本年の告示第一号としてこれを官報に掲載し、全国民に周知してくれました。
鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん という故事を思い出してしまいました。

でもこの問題は、「市の名称」とは何か? とか、漢字の字体を考えるきっかけになりました。
さほど実害があるとも思われないし、お正月には格好の話題かもしれません。

「蓮田市」は法人の名称ですから、文字による正式の書き方と読み方とがあって然るべきでしょう。
“正式の書き方”と言っても、それは「字種」つまり「くさかんむり」と「車」と「しんにゅう」とを組み合わせた「蓮」という漢字を使うという程度の“正式”と思われます。
市の名称は、手書き文字で書いても、印刷文字(活字)を用いても「正式」です。
手書きにも楷書体、行書体など、印刷文字にも明朝体、正楷書体、教科書体などいろいろあり、どれを使っても正式の書き方ができます。

問題の種になった漢字のパーツ「しんにゅう」。これは、本来「彳」(行く←十字路の形)と「止」(←右足の形)との会意で作られた7画文字ですが、漢字のパーツとして使われる場合は、省略されて4画の「2点しんにゅう」になりました。
手書きする場合、2つ目の点と次の縦線とが続け書きで「ろ」を引き伸ばしたような形になり、3画になりました。
「1点しんにゅう」の明朝体は、この手書き体の2画目を更に単純化して生まれたものと思われます。
教科書体も「1点しんにゅう」ですが、こちらの2画目は、手書きと同様に曲がっています。

このようなバリエーションを見てゆくと、「蓮」の印刷文字の一部である「しんにゅう」の点が1つか2つかという区別は、簡略化の歴史のヒトコマにすぎないと感じます。
「市の名称」変更の対象になるほど重要な意味合いを持つものでなく、“蓮田市としては、以後は1点しんにゅうの字体を使う”と宣言すれば済む程度の問題であったと思われます。

「犬山」と「大山」とは別の地名であり、「おおやま」と「だいせん」も区別される必要があります。しかし、「蓮田」は2点でも1点でもどちらも同じ地名として認識されます。
だからこそ市民から特に意見が寄せられることもなかったのでしょう。

本来は同じパーツから成る“同じ字”なのに、字体配置の違いから無理やり“別の字”に仕立てて、「鹿島市」と同一名称の市になることを回避したのが、「鹿嶋市」 でした。で、この鹿嶋市誕生に関する過去記事を調べたら、市になる直前の町の名称は、「鹿島町」から「鹿嶋町」に変更されているのですね。
[97] Issie さん
・茨城県鹿島郡鹿島町を「鹿嶋町」と改称(1995/8/8付自治省告示第144号)

2点蓮田市→1点蓮田市 と同類の「名称変更?」手続。
それは、1996年の群馬県 倉淵村→倉渕村、1995年の茨城県 鹿島町→鹿嶋町、1991年の奈良県 しめすへん都祁村→ネへん都祁村 と、落書き帳発足前の時代には、かなりの頻度で行なわれていたのでした。
[77400] 2011年 1月 11日(火)18:52:26【1】hmt さん
蓮田市の「市の名称変更」問題 (2)国の漢字政策と工業標準
印刷字体の問題であることを論じた[77399]に続き、複数の字体が使われている背景を探ります。
以下、時系列を追いながら、「蓮田」などの自治体名の表記に影響した 内閣告示、法務省告示、日本工業規格(JIS)、国語審議会答申を列挙します。

(1)1934/10/1 埼玉県南埼玉郡綾瀬村が町制、蓮田町と改称。【当時の活字体は2点しんにゅう】

(2)1946/11/16 内閣告示で 当用漢字表 制定 1850字。
末尾に掲載された官報の画像は、クリックすると1段毎に拡大できます。

当用漢字表の「使用上の注意事項」には、“この表の漢字で漢字で書きあらわせないことばは,別のことばにかえるか,または,かな書きにする。”となっています。これだけだと「大阪」は「大坂」と書き換えられることになりそうですが、「まえがき」の“固有名詞については…別に考えることとした。”に従い、表外字もそのまま使われたようです。
この当用漢字表には、慣用されているものの中から簡易字体 131字が採用され、本体として制定されました。
仙臺・横濱・金澤 などは、この時に「自動的に」簡易字体を使った 仙台・横浜・金沢 に表記が変りました[74082]
この 131字中には 逓・遅・辺・随・髄 も登場し、田邊市は「1点しんにゅう」市の第1号「田辺市」になりました。

「蓮」は当用漢字に含まれないので、「2点しんにゅう」の旧字体のまま、“一般社会で使用する漢字”表の外に取り残され、“別に考える”固有名詞として暫定的継続使用の状態でした。

(3)1949/4/28 内閣告示で当用漢字字体表制定。
青空文庫 の末尾に、官報(号外)に掲載された当用漢字字体表の画像があり、クリックで拡大できます。

1946年の当用漢字表は、基本的には字種を指定しただけで、簡易字体以外の当用漢字の字体には触れていませんでした。1949年の字体表で、約 500の当用漢字が 新字体になりました。「しんにゅう」のつく当用漢字 47文字などは、すべて「1点しんにゅう」になり、「尾道」の表記も自動的に変りました。
「廣島」も、この字体表制定で「広島」になりました。
しかし、表外字を使っている「逗子」や「蓮田」は「2点」のまま変化なく、旧字体のままで市になりました(1954,1972)。

(4)1951/5/25 内閣告示 で「人名用漢字別表」92字が指定され、“常用平易な文字”として子の名に使えることになりました。
当用漢字制定の際に“別に考える”とされた固有名詞のうち、人名については戸籍法令と親の要望を両立させるための別表が作られました。その後も何回かの変更で、人名用漢字は大量に増殖しています。(8)も参照。

(5)1978/3/1 JIS C 6226 情報交換用漢字符号系制定。この時に2点しんにゅうの「蓮」がコード化。いわゆる 旧JISです。
コード化されたということは、既に表外漢字も漢字制限で消える運命から実質的に免れた状態になっていたことを示していると思われます。

(6)1981/10/1 内閣告示で常用漢字表 1945字を制定。
当用漢字時代の“漢字の制限”という言葉はなくなり、“漢字使用の目安”になったので、日陰者的な表外字の「蓮」も、ようやく存在根拠を得たような気がします。

(7)1983/9/1 「83JIS」とも呼ばれる第2次JIS規格制定。常用漢字表制定や 24ドットプリンタ検討の時期です。
[77147] 実那川蒼 さん
「蓮」のJIS漢字の字体(パソコン上の字体)は1978年に2点しんにょうで制定されました。(中略)ところが、5年後の1983年に1点しんにょうに変更されました。

上記のような経緯によって、表外字のまま 83JISで「1点しんにゅう」の「蓮」が出現しました。
当用漢字字体表や常用漢字表の流れから、漢字パーツとしての「しんにゅう」が、2点から1点に移行する傾向は明白であり、「蓮」のような表外字についてもこれを先取りした 83JIS の気持ちは理解できます。
1987年日本工業規格に分類記号「X」情報部門が新設され、83JISはJIS X 0208 情報交換用漢字符号に移行しました。その後の改正を経ながら「1点蓮」のまま現在に至っています。

(8)1990/4/1施行の戸籍法施行規則改正で人名漢字別表に「1点しんにゅう」の「蓮」を追加。
1990年に「蓮」が人名用漢字に追加されたときには、JIS漢字の字体を追認する形で1点しんにょうとなり、漢和辞典でも1点しんにょうが新字体、2点しんにょうが旧字体となりました。

この段階で、「1点蓮」はJISと人名とで市民権を得たわけですが、文部行政当局は、広く普及している活字文化に混乱をもたらす可能性のある新字体採用には 慎重な姿勢で、すぐには動きませんでした。
でも、この間にもパソコンの普及は著しく、日本でも文字は“書くもの”から“打つもの”へと変ってきました。

(9)2000/12/8 国語審議会が 表外漢字字体表 1022字を制定。
人名以外での一般の表記に使用する字体についてはその後も不明確でしたが、2000年の表外漢字字体表の制定によってJIS漢字および人名用漢字の1点しんにょうの字体が追認され、公式の字体になりました。

中央省庁整理統合により 2001年から文化審議会国語分科会になっている旧国語審議会の答申は、文化庁HPでは整理中ですが、文部科学省HP内にありました。内閣などの告示にはなっていない内部資料ですが、地方自治体や国民一般が漢字を扱うにあたっての参考として利用されることを意識していると思われます。
この答申にも、情報機器の発達が、常用漢字制定時の予想を超えた表外漢字使用の日常化を招き、表外漢字における標準字体確立の必要性が増大したことが記されていますが、「1点しんにゅう」字体を全面的に公認したわけではありません。

ただ表外漢字字体表の対象漢字選定においては、人名用漢字も常用漢字と同様に対象外となっています。
既に法務省の人名漢字になっていた「1点しんにゅう」の「蓮」は、この段階で 文部科学省にも ほぼ公認?に準じる扱い を受け始めたということでしょうか。

逗子の「逗」は、2000年時点では人名用漢字になっていなかったので、字体表 の 736に「2点しんにゅう」が印刷標準字体に収録され、備考欄に「3部首」該当であることが示されています。
3部首とは “しんにゅう,しめすへん,しょくへん”のことで、標準は2点しんにゅう、しめすへん等であっても、現に1点しんにゅう、ネへん等の字形を用いている場合には、これを認めることにしたとされるものです。
都祁村の「祁」も、字体表の 169では「しめすへん」が印刷標準として収録され、パソコンで使える「ネへん」の字は3部首許容対象という位置付けです。
なお、「逗」は 2004年に人名漢字になりました。逗子市HPを見ると、当然のように、1点しんにゅうを使っています。

(10)2010/11/30 内閣告示で新しい 「常用漢字表」2136字 制定。
「蓮」と「逗」とが、常用漢字表外であることは変わらず。
尾道・田辺・遠野・四街道・日進・京田辺各市に使われている常用漢字は、当然、すべて「1点しんにゅう」。


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