[78554] hiroroじゃけぇ さん
「国際バルク港」の話です。ようするに「バラ積み貨物」の拠点港なのですが、水島港と福山港が一体整備となったという話です。
2003年に JFEスチールに統合された日本鋼管福山製鉄所と川崎製鉄水島製鉄所。
別々だった2社が選んだ立地は 距離的には近いものの、工業地域のブロック化と言えるのかどうか。
陸の視点からの工業地域よりも、海からの視点が関係する「国際バルク戦略港湾」としては、確かに複数の港湾の連携が構想されています。
資料 の計画によると、現在の水深では 鉄鉱石積載量 17万t の船までしか入れないが、福山港の整備(12コマ)により 20万t の船を入れ(5コマ)、ここで一部を荷上げして吃水を浅くした後で 水島港にも寄れば、最小の予算で 効果を発揮することができます。
同様の考え方による 複数の港の連携は、
木更津港 の大水深化(3コマ)により 満載超大型鉱石専用船VLOC(very large ore carrier)の入港を可能にし、連携港湾と共同配船する(4~5コマ)計画にも示されています。
輸入鉄鉱石の話が先行してしまいましたが、これは「バルク輸送貨物」の一例です。
専門的知識はありませんが、物流を通じて地理を語ることを試みてみます。
物流は生活と産業とを支えています。そして、そこには狭義の「輸送」だけではなく、「包装」「荷役」「情報管理」などいろいろな仕事が付随しています。
規格化された「通い箱」である「コンテナ」の利用は、荷役の機械化だけでなく、包装や情報管理にも便宜を与えましたが、コンテナが万能というわけでもありません。
ある資料によると、全世界で運ばれる海上貨物、年間 82億t のうち、コンテナは僅かに 13億t とのこと。84% にあたる 69億t は、専用船で大量輸送されているのでした。
専用船ならば 個別に包装する必要もなく、荷役も、専用の機械によって可能。これがバルク輸送貨物です。
海上物流の大部分を占めるのが「バルク」と言いましたが、これは、もちろん重量ベースの話です。
我が国の総貿易額 は 100兆円を越えていますが、金額ベースでは、おおまかに言うと、バルク貨物、海上コンテナ貨物、航空貨物がそれぞれ3分の1だそうです。
平成21年度バルク貨物流動調査 の結果が公表されていました。
【追記】
これは 30日間の調査でした。下記の考察のうち、穀物輸入量に関する部分を訂正しました。
5/33コマによると、輸出の半分近くを占めるトップは、自動車(160万t)でした。自動車を 台数でなく トンで数えるのには驚きましたが、なるほど、専用船により、包装なしの「バラ積み?」状態で輸出されています。
輸入の総量 3600万t は、輸出総量の 10倍以上で、金額ベースで評価される貿易収支とは裏腹に、重量ベースでは大幅な輸入超過です(あたりまえ)。
トップを占めるのは、予想通り原油でしたが、それに続く石炭と鉄鉱石とを合わせると46% にもなります。
福山・水島の事例で取り上げられた鉄鉱石は、バルク貨物御三家の一角 を占めていることを 改めて認識しました。
意外だったのは、食料自給率の低いことで問題になっている穀物です。
上位 10品目に現れているのは、麦26万t のみで、これより多いと思われる とうもろこし が出ていません。
別の資料により
2008年輸入量 を見ると、飼料用のとうもろこし1650万t、小麦580万t、大豆370万t、その他を含めて 穀物合計3100万t となっています。
30日間の調査と比較するため便宜上 12分の1にすると 約2600千t になり、穀物輸入量は LNGに代って 重量ランキング4位になります。
国際バルク戦略港湾選定結果 を見ても、次のように、穀物・鉄鉱石・石炭の「ドライバルク3品種」が、今回の制度の対象となる輸入バルク貨物として挙げられています。
穀物:鹿島港、志布志港、名古屋港、水島港、釧路港
鉄鉱石:木更津港、水島港・福山港
[78554]
石炭:徳山下松港・宇部港、小名浜港
平成21年度バルク貨物流動調査 7/33コマに現れた港湾名と一致しませんが、これは今回の制度の趣旨が、既にバルク専用港としての整備が行なわれてきた原油輸入基地などでなく、一般貨物も扱っている港における バルク機能拡充 を目指したことによるものと 思われます。
石炭輸入港は、
高知県(なぜ?)資料 3頁にあるように、火力発電所や製鉄所の立地とからんでいます。発電所所在県では、徳島県の 橘湾
[73385]や 長崎県の 松浦
[66821]は示されていますが、熊本県の 天草はありません。
発電所・製鉄所所在県が並ぶ中で異彩を放っているのが、黒崎から坂出に移った三菱のコークス工場がある香川県です。
穀物について選ばれた
釧路港 の宣伝文句(6/18コマ)
釧路港は、北米至近の不凍港であり、関東の港湾と比べ、ガルフ地域からの海上航路が 354マイル短く、1日程度の輸送期間の短縮が可能。
なるほど、
北アメリカプレートの半島状先端 にある東日本。アメリカに最も近い港は釧路なのでした。