でるでる さん、88 さん 「市町村合併情報」の収録、ご苦労様です。
[53262]でるでるさん
「市町村合併情報」のコーナーは、合併情報や市制施行などの自治体変更についての情報をまとめることによって、この「落書き帳」での議論のネタや参考にしていただいたり、市区町村プロフィール、雑学、アーカイブズ、地名コレクション、十番勝負など「都道府県市区町村」HP内の他のコンテンツ作成・編集の際の一助として、少しでもお役に立てることが出来れば、まさにそれこそが最大の意義であると個人的に考えております。
このコンセプトをふまえ、特に
「履歴」についての記事 を参照しながら私見を述べ、ご参考に供します。
先ず、変更情報をまとめる対象として使っている「自治体」という言葉について。
ご承知のように、1947年(日本国憲法第8章で地方自治を規定)から時代を遡ると、地方行政組織には、 自治体 としての性格だけでなく「お上」である 国家行政組織の末端機構 という性格が濃い場合がありました。
その程度には、時代的だけでなく、地域的な差異もあります。
例えば、東京市、京都市、大阪市は、1889年の市制施行時に、「三市特例法」
[53890]によって骨抜きにされた形で発足させられ、「自治体」になったのは明治31年(1898年)10月1日でした
[33692]。
中央政府が特に支配力の維持を図った「三市」とは逆の立場ですが、郡部一般に比べて経済力の劣る離島は、「町村制を施行せざる島嶼」として1889年の町村制から外されました。このことは、北海道・沖縄についても同様でした。
1908年の勅令「沖縄県及島嶼町村制」(1920年「島嶼町村制」、1940年廃止)、1897年の勅令「北海道一級町村制」と「北海道二級町村制」(1927年全改、1943年廃止)による町村は、「本土」で施行された法律による町村に比べて、自治が制限された存在でした。
地方自治法施行後は原則として「自治体」で問題ないでしょうが、発足当時の小笠原村
[53248]や大潟村
[53892]のような特殊な事例もあります。
要するに、合併等の情報を記録している対象は、「自治体」というより「市区町村」ですね。
「市」は1889年、現在に連なる「区」は1878年までしか遡りませんが、「町村」となると江戸時代に遡ります。
88 さんは「藩政村」をも視野に入れているようですが、「関村」
[52707]や「上福岡村」
[39241]のような非公式くさい用例の「村」も存在します。数が極めて多いこと、資料が不備であることと共に、古い時代のデータ集めは容易なことではないでしょう。
それよりも、対象を「市区町村」に限らず、「都道府県」も加えたらいかがでしょうか。
と言っても、江戸時代の「津久井県」
[41805]や廃藩置県後の僅かな期間しか存在しなかった「302県」は除外し、3府72県以後に限定。
「自治体」とは言い難い国の機関として発足した「北海道庁」も収録対象にしたいが、
「北海道地方費」 は対象外でしょう。
「市町村合併情報」への収録対象は、これら「都道府県市区町村」(「地方行政組織」と言い換えてもよいかな?)の3要素、すなわち「区域」、「主体」、「名称」の変化に関するものを原則としたらいかがかと考えます。
3要素のうち、「地理的な立場から」第一に注目されるべきものは、「区域の変化」だと思います。
ところが、「区域の変化」をもたらすものは、「主体の変化」である法人格の異動を伴なう「廃置分合」の他に、主体はそのまま存続する「境界変更」があります。
「合併特例法」 では、「市町村合併」という言葉を “市町村の数の減少を伴うもの” に限定して定義しておりますが、このHPの「市町村合併情報」では、合併特例法の定義にとらわれず、新設、編入に加えて分割・分立を含めた 「廃置分合」 が すべて「合併情報」のリストに掲載されております
[53999]。
そして、主体の状態が変化を示す 市制・町制・村制、政令指定都市等への移行、 それに名称変更などが一括して「合併以外の自治体変更情報」として記録されています。
私見では、リストを2つに分けるとしたら、3要素のうち 「区域の変化」に関するもの を「市町村合併等」としてまとめ、廃置分合だけでなく、 新たな村の領域の設定 (例:明治末に藤田組の干拓
[37037]により造成された
藤田村)、 区の再編 (例:
千代田区)に加えて、 「実質的に合併に関与する境界変更」 も含めたらよいように思います。
“合併以外”の方は、3要素のうち 「主体の変化」と「名称の変化」とに関するものということになります。
最後に、
「合併以外の自治体変更情報」を見ていたら、「市区町村」だけでなく、「郡」に関する変化(例:
鳳珠郡)も、既に収録対象になっていることに気がつきました。これも「区域の変化」でしょう。
それにしても、郡役所のあった時代はともかく、現在の「郡」は単に区域を表わす「地理的名称」にすぎませんね。もちろん「自治体」ではないし、「地方行政組織」とも言い難いかな。
最後の方で触れた「実質的に合併に関与する境界変更」の説明と実例は、長くなるので稿を改めます。