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[66487] 2008年 8月 29日(金)17:12:39hmt さん
境界線について(1) 東京港の海岸線再論
地図を眺めると、さまざまな境界線があります。
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
でも、一見明瞭なように思われる境界線も、よく考えてみると、疑問が生まれてきます。

2007年3月に、海岸線に関する話題があり、日本の国土・領土へと発展しました。海岸線・国土

その発端は「海上架橋」に関する オーナー グリグリさんの記事[57062]で、事例は隅田川河口に関するものでした。
隅田川の河口付近に架かる橋はどこからが海上なのか分かり難いですが(★)、海岸線の定義ははっきりしているので

“海岸線の定義”として第一に考えられるものは、国土地理院の 「2万5千分1地形図の読み方・使い方」 にある「水涯線等」でしょう[57343]

海上か陸上かを判断するには、面積調のページ における次の記載が役に立ちます[57405]
海岸線は満潮時の水涯線を表し、河川及び湖沼は陸域に含めています。海岸線と行政界が接合しない河口周辺は、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を直線で結んで陸海の境としました。

[57385]では「常時水流」に着目して竹芝桟橋と豊海町との間でラッパ形に開いた口先を「隅田川の河口」と判断し、これがアルプス地図方式による判定とも合致するすることを記しました。
同じ理由で晴海と豊洲の間の水面も、(かなり遅くなるが)水流があり、住所も入っている「陸」としました。

海岸線の自然な形状に従って河口両岸を直線で結ぶという「面積調の手法」に従った判定でも、豊洲・晴海・月島・竹芝の先端を結ぶ海岸線を想定して、「地理的な」海と陸の境界とすることは妥当であると思われました[57405]

しかし海と陸の境界については、「地理的な」見方が唯一のものでないことが、既に[57190]88さん によって示されています。
地理的な定義はよくわかりませんが、河川法、港湾法その他の法的な位置づけについてです。
まず一言。「河川」「海」の境界を法的側面から明確にすることはできますが、非常に困難です。

言及された法令の錯綜とも関係しますが、河川区域と港湾区域との重複問題があります。
港湾法4条5項を見ると、港湾区域を認可する国土交通大臣又は都道府県知事は、“河川区域について、認可しようとするときは、河川管理者に協議しなければならない。”と規定しています。
これは、港湾区域と河川区域とは重複があり得ることを前提とした規定であり、例えば「東京港港湾区域における水域占用許可基準」に“東京港港湾区域(河川区域との重複区域を除く。以下同じ)”と記されているように、重複が実在します。

丸亀港 については、港湾区域を示すと思われる図がありました。「湾境界線」の内側として図示されている水域が港湾区域と考えられます。
問題の富士見大橋[57224]が架けられている港町と富士見町との間の直線部の水域はこの図に描かれており、確かに港湾区域に属します。埋め立てずに残された場所だから「海面」なのでしょうか。
この「海面」の続きのような形で、斜め東に100m余り(ウオッ地図はもっと)が残っている東汐入川は、港湾区域の図に描かれていません。

西汐入川の場合は、リンク図面の範囲が港湾区域とすると、下流端[57224]から汐入橋までの間の僅かな区間だけが含まれており、ここは河川区域と重複するようです。

丸亀港はさておき、隅田川の「河川区域」と東京港の「港湾区域」とを示す図をネットで探したのですが、なかなか見つかりません。
これは、実務上では最初に立ちはだかる困難な理由かもしれません。以下次報。
[66488] 2008年 8月 29日(金)17:22:08hmt さん
境界線について(2) 東京港付近の河川と港湾
海と陸の境界である海岸線。隅田川河口付近についてのグリグリさんの問いかけに対する 地理的な見方でのレス
これに対して、河川や港を管理する自治体の立場からの境界・区域もあるはずとネットを探しました。

パンフレットPort of Tokyo 2008 によると、東京港は荒川河口から多摩川河口に至る範囲で、港湾区域面積(水域)5292ha、臨港地区面積(陸域)1033haとあります。

東京都入港料条例第二条には次のように記されており、「東京港の港湾区域」は港湾局で縦覧可能と思われます。
“入港料は、東京港(法第三十三条第二項において準用する法第九条第一項の規定により公告された東京港港湾区域をいう。)に入港する船舶から徴収する。”
しかしネットでは見つかりません。

東京港便覧 にはかなり詳細な地図が掲載されているのですが、これを見ても港湾区域の陸側の境界線はわかりません。また、海と陸の境界線も示されていません。

東京都建設局の管理する河川についても、全体像 を知ることはできたのですが、臨海部の詳細は不明でした。
ようやく探し出したのが 隅田川流域河川整備計画 というpdf文書。その24/38頁に隅田川の範囲を明示した記載がありました。
要部のみを抜粋。
隅田川 備考:荒川からの分派点・岩渕水門から東京湾まで
 下流端 左岸:中央区勝どき三丁目地先、右岸:中央区築地五丁目地先
隅田川派川
 下流端 左岸:江東区越中島二丁目地先、右岸:中央区佃三丁目地先

これは意外。「河川」を管理する東京都(建設局)の見方によれば、浜離宮と勝どき五丁目の間は隅田川の下流端よりも先の「東京湾」でした。
同様に隅田川派川は豊洲貯木場の手前で終り、その先二手に分かれる晴海運河(上記文書4/38では春海運河)と豊洲運河は「河川」の対象外のようです。

江東内部河川についても整備計画があり、その対象として旧中川、大横川、大島川西支川、大横川南支川、北十間川、横十間川、仙台堀川、平久川、小名木川、竪川、越中島川と、おおよそ越中島-須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。
グリグリさんが[57062]で挙げた11橋のうち隅田川(本川)の4橋と隅田川派川の相生橋を除けば、春海橋・朝潮運河の4橋・晴海大橋の6橋は海上の橋。
見落としてしまいそうなのが、明治28年に完成した月島の先、昭和になっての新造成部分とを隔てる通称「新月島川」。これは月島川と違って河川に入っていませんから、新島橋と浜前橋も海上架橋。

江東区内の豊洲橋・朝凪橋・東雲橋から辰巳橋を渡り、北に向かえば七枝橋・八枝橋・汐枝橋・汐浜橋。東の方にも新砂橋・砂潮橋・夢の島大橋。湾岸道路にも曙橋・新辰巳橋と枚挙に暇ありません。
有明には、一部は港区台場に属している13号地との間の「海」があり、mapionも海扱いです。この海には何本かの橋が架けられている他、有明ふ頭橋もあります。芝浦との間のレインボーブリッジを筆頭に海上架橋の宝庫地帯。
そして中央防波堤内側と外側を結ぶ中潮橋と中防大橋も、もちろん海上架橋。

東京湾の西側にも京浜運河や埋立地の間の海に架けられた橋が多数。

ついでに、東京臨海部の運河に関する資料を見ました。
東京都港湾局の「運河ルネッサンス推進方針」という pdf資料 の3頁には、対象となりうる運河等水域が図示されています。
これによると、晴海運河を通る隅田川の分流は、相生橋の下流から晴海ふ頭の手前までが対象。

国土交通省のヒアリングに東京都が使った 東京港のめざす環境づくり というpdf資料の4頁にも東京港の運河を示す図がありました。
これによると築地と月島の間の「隅田川」が含まれ、その分流(晴海運河)は春海橋まで。

このように、同じ東京都の資料でも、それぞれ微妙に相違します。
[66510] 2008年 8月 30日(土)18:25:46hmt さん
境界線について(3) 境界線には「目的」がある
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
前2回[66487][66488]は東京港などを題材にして、地理的な考え方からの海岸線と、港湾・河川管理など行政的立場からの区分けとは異なることを語りました。

代表的な行政境界線である県境(都道府県境)の話題に移ります。
2005年11月に「県境越え」が話題になりました。実はその半年前に [40541]オーナー グリグリ さんが発表した「都道府県隣接数」ランキングがあり、それに関連して、最近も海の県境や隣接に関する議論がありました。

既に「海上の都道府県境」という記事集[66057]がありますが、陸上の情報も補った 都道府県境 の記事を改めてリンクしておきます。

最初に言っておきたいことは、行政境界線や、それによって囲まれた区域というような「概念」ないしは「用語」は、その区域を管理する目的で境界線を引いた者(多くの場合行政機関)が、その目的に合わせて定めたものであるということです。

その典型的な実例が青函トンネルの編入に伴ない設定された北海道・青森県境でしょう。[66057] 88 さん
津軽海峡は特別に領海3海里で、その中央部にあたるこの地点の海上は公海です。しかし、海底トンネルの中は日本の主権が及ぶ新たな領土として、1988年に日本に編入されたのですね。

[46746] 小松原ラガー さん
千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。

東京湾は幅12海里を持つ領海の基線の内側にある「内水」域なので、日本の主権が及ぶことに問題はないのですが、都道府県はもともと陸上の行政区画として生まれたもので、海上には明確な都県境が引かれていません。
しかし、東京湾アクアラインという神奈川県と千葉県との間を結ぶ固定連絡施設ができると、警察や課税を含めた行政権の行使のために、従来は隣接していなかった両県の間に「県境」が必要になります。

人工島である関西国際空港が、沿岸2市1町の従来の区域を沖合いに延長した形で分属するのと同じような考え方で、「海ほたる」は木更津市、「風の塔」は川崎市となり、その間の「どこか」に境界点を作ったのでしょうね。おそらく、川の真ん中を境界にするのと同じような感覚で、2つの人工島の真ん中に。

船舶が通行するだけならば、海がどちらの都県に所属するかを問う実益はなさそうです。
東京港は東京都、川崎港・横浜港・横須賀港は神奈川県、千葉港・木更津港は千葉県に属するとしても、その中間にはいずれの都県に属するとも決められていない水域があるようです。
文献(東京湾埋立地の歴史pdf) の16頁に適当な図面が合ったのでリンクしておきます。

漁業のような経済活動を営む場合には、漁場がどちらの県に属するものなのかが問題になります。
[46750] LFB さんが引用した水産雑学コラム( 本になり、リンクは切れた)によると、これは「慣行」に従うものとされます。以下引用文

“県の漁業調整規則は、知事の管轄権の及ぶ範囲の海面の漁業を規制しますが、神奈川県と千葉県との間には明確な境界線の慣行がなく、両方の県から出漁した船が入会で操業しているようです。裏を返せば、相手方の漁業権区域沖合線の手前までは、双方が自分とこの海という感覚でも、大きな問題がないのでしょう。”

船舶の航行に関しては県境を決める必要がなく、魚を追って移動する漁業に関しては「入会い」で処理してきた。
しかし、固定施設である東京湾アクアラインについては、「境界」を作ることになった。(青函トンネルの場合のような資料はみつかりませんが…)

重複があり得ない県境に関しても、海上での公式の取り扱いは、「目的に応じて違う」という実例だと思います。

陸と海の境界に関しては、既に河川法と港湾法とで規定した河川区域と港湾区域とが重複している現実を見ました。
陸と海との境界は、地形図の世界でも海図の世界でも満潮時の海水面で決めています。(海図の水深は低潮面基準)
農耕用地、建築用地等として利用される土地は、通常の場合、満潮時にも水没しないことが条件ですから、陸上の論理では満潮時の海水面で水陸の境界を決めるのは自然なことです。
# 海中に社殿を造った厳島神社のような例外的存在もあります。

ところが、満潮時には川のかなり上流(水産雑学コラムによると、相模川では河口から6.6km付近)まで海水が上がるのだそうです。海水魚が川を上がるとなれば、海の漁師も陸地である川で魚を取る。ここでは海区漁業と内水面漁場との境界問題が生じるという仕組み。
境界問題は、なかなか一筋縄ではゆきません。
[66539] 2008年 8月 31日(日)14:15:33【1】hmt さん
境界線について(4) 公式に定められた境界でも「目的外」に利用する際は注意が必要
県境などの行政境界線や区域を公式に定めるのは、何かを管理する「目的」に応じたものだということを記しました[66510]

このような境界線を、自己責任で「目的外」に利用することは、もちろん差し支えありませんが、不都合が生じるかもしれないことは心得ておくべきでしょう。

わかりやすくするために、実際にはあり得ないような極端な「目的外利用」の例を挙げます。
土地は、1筆毎に境界線で囲まれ、「地積」があります。この地積を積算すれば、市区町村の面積、ひいては「日本の面積」が算出できるだろう…と思うのは、誤った考えなのですね。
個々の地積の不正確さもさることながら、「登記のない土地」(「無番地」)が存在するわけです。[48795] 88 さん

もともと、不動産登記法は“国民の権利(財産権)の保全”を目的とした法律ですから、「公共用」である国有財産は対象外というのが建前です(土地台帳法44条)。このような法律の趣旨を無視して、「目的外」である日本の面積の算出法に使おうとすることが、本質的な誤りなのです。

市区町村の面積、ひいては日本の面積に関する公式資料としては、国土地理院が地形図からの計測に基づいた 「面積調」 を毎年発表していることはご承知の通りです。
しかし、これは毎年10月1日現在の面積を翌年2月1日に発表するわけですから、例えば新潟市に新設された区の面積を即日知るわけにゆかず、グリグリさんが苦戦することになります[57516]

なお、市区町村面積の増減については、“官報または県公報等により告示された境界変更や埋立による異動面積値について関係都道府県に照会し、確認された値をとりまとめたもの”とされており、国土地理院でも、一部は地形図計測データでなく、他の行政データを転用するケースがあります。
[57480]で例示した関空2期の場合は、不動産登記法36条により申請する「新たに生じた土地」の地積を「目的外」に利用したものであろうと思われます。

一方、摩周湖の場合[57433]は、宮内庁によって減失登記[57441]がなされても、無登記の公有水面として国の管理下にあるので、弟子屈町の面積には影響がないはずです。
掘り込み港湾の場合、[57441]88 さんは、
「掘り込み工事→土地の滅失登記→土地でなくなる→住所がなくなる(面積から除かれる)」
とお考えですが、国の管理下の公有水面(陸水部)ならば、土地登記・住所の消失が、国土面積からの除外に直結することはないと思います。

事例が適切だったかどうかわかりませんが、法律というのは、その目的に応じた適用対象を持つということで、法律の定義を「目的外」の他分野に使って、適切な結論が得られるとは限らないことに注目したかったわけです。

このシリーズで最初[66487]で言及した東京港における「港湾区域」とか「河川区域」とかいうのも、それぞれの法律の目的とする港湾管理、河川管理の必要に応じた区分です。
なお、港湾と河川とが重複することは、たしかに「河港」([66499] にまんさん)の存在を考えれば自明でした。

海岸法も含め、法律的な区別を落書き帳のような「法律の目的外」の話題に適用すべきかどうかは、ケースバイケースです。
[66488]でも書いたように、東京臨海部の運河地帯が「河川」の対象になっていないのは、普通の地理的感覚と相違します。
江東内部河川…の対象として…おおよそ越中島-須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。

東京都は「○○運河」を積極的に「海」だと言っているわけではないので、これは少し言いすぎだったかもしらませんが、「河川」として管理しない運河は「海扱い」なのかと思った次第です。

なお、この文中「須崎」は「洲崎」の誤記です。
1969年に地下鉄駅ができて知名度抜群の存在となっている「東陽町」の方がわかりやすかったのですが、いかにも海岸であることを示している「洲崎」という地名を使ったら、誤変換を見逃してしまいました。

「洲崎」で検索すると、館山の地名と共に東京の地名に関する 記事 も登場。現在の「東陽町」と同様に交通の要衝で、その関係が多いですが、1958年まで存在した遊郭にも言及されているところはさすが落書き帳。

江戸時代のごみ埋立により現在の永代通りまで南下していた海岸線は、近代になってからも南下を続けます。
洲崎の湿地(現在の東陽一丁目)が埋め立てられて遊郭になったのは大正時代。
初期のプロ野球に使われた洲崎球場は、水浸しコールドゲームという珍記録もあったとか。

東京港の黎明期には現在の汐浜運河が海岸線だったことを考慮すれば、[66488]のように海上架橋に 汐浜橋 が含まれるのも一応の裏付けがあるわけです。
しかし、完全に埋立地の内部になった現在では、“陸でなければ海”という単純な図式でなく、「運河地帯」というの境界領域の存在を考えるべきなのかもしれません。

河川関係以外にも、「目的外使用」のために地理的感覚と合わない結果を出した事例が過去にありました。
国連海洋法条約の「至近距離」という言葉に釣られた、直線基線に基づく近接候補の提示[66032]が、その例です。
公海と区別された領海の起算を目的とする直線基線を、国内の都道府県の近接判断に使うのは、まさに「目的外」。
静岡・三重、高知・宮崎、石川・新潟の3組は、直線基線で結ばれていても相互を結ぶ航路もなく、これを県の近接と言うのは、いささか無理な感じがします。


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