都道府県市区町村 > 落書き帳 > 記事検索 >このページの最後へ ▼

落書き帳記事番号検索結果10 件の記事を検索しました。


記事#記事日付
記事タイトル
発言者
[66487]2008年8月29日
境界線について(1) 東京港の海岸線再論 hmt
[66488]2008年8月29日
境界線について(2) 東京港付近の河川と港湾 hmt
[66510]2008年8月30日
境界線について(3) 境界線には「目的」がある hmt
[66539]2008年8月31日
境界線について(4) 公式に定められた境界でも「目的外」に利用する際は注意が必要 hmt
[66635]2008年9月7日
境界線について(5) 水面上の境界線 hmt
[66716]2008年9月12日
境界線について(6) 海か湖か hmt
[66732]2008年9月13日
境界線について(7) 地方自治体は(潜在的にせよ)海上部で「接している」のか? hmt
[66738]2008年9月13日
境界線について(8) 県境の交通路 hmt
[66785]2008年9月16日
境界線について(9) 県境を越える 渡し舟 hmt
[66799]2008年9月17日
境界線について(10) 県境越えづくし hmt



[66487] 2008 年 8 月 29 日 (金) 17:12:39 hmt さん
 境界線について(1) 東京港の海岸線再論
hmt 海岸線〜陸と海との境界〜

地図を眺めると、さまざまな境界線があります。
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
でも、一見明瞭なように思われる境界線も、よく考えてみると、疑問が生まれてきます。

2007年3月に、海岸線に関する話題があり、日本の国土・領土へと発展しました。海岸線・国土

その発端は「海上架橋」に関する オーナー グリグリさんの記事[57062]で、事例は隅田川河口に関するものでした。
隅田川の河口付近に架かる橋はどこからが海上なのか分かり難いですが(★)、海岸線の定義ははっきりしているので

“海岸線の定義”として第一に考えられるものは、国土地理院の 「2万5千分1地形図の読み方・使い方」 にある「水涯線等」でしょう[57343]

海上か陸上かを判断するには、面積調のページ における次の記載が役に立ちます[57405]
海岸線は満潮時の水涯線を表し、河川及び湖沼は陸域に含めています。海岸線と行政界が接合しない河口周辺は、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を直線で結んで陸海の境としました。

[57385]では「常時水流」に着目して竹芝桟橋と豊海町との間でラッパ形に開いた口先を「隅田川の河口」と判断し、これがアルプス地図方式による判定とも合致するすることを記しました。
同じ理由で晴海と豊洲の間の水面も、(かなり遅くなるが)水流があり、住所も入っている「陸」としました。

海岸線の自然な形状に従って河口両岸を直線で結ぶという「面積調の手法」に従った判定でも、豊洲・晴海・月島・竹芝の先端を結ぶ海岸線を想定して、「地理的な」海と陸の境界とすることは妥当であると思われました[57405]

しかし海と陸の境界については、「地理的な」見方が唯一のものでないことが、既に[57190]88さん によって示されています。
地理的な定義はよくわかりませんが、河川法、港湾法その他の法的な位置づけについてです。
まず一言。「河川」「海」の境界を法的側面から明確にすることはできますが、非常に困難です。

言及された法令の錯綜とも関係しますが、河川区域と港湾区域との重複問題があります。
港湾法4条5項を見ると、港湾区域を認可する国土交通大臣又は都道府県知事は、“河川区域について、認可しようとするときは、河川管理者に協議しなければならない。”と規定しています。
これは、港湾区域と河川区域とは重複があり得ることを前提とした規定であり、例えば「東京港港湾区域における水域占用許可基準」に“東京港港湾区域(河川区域との重複区域を除く。以下同じ)”と記されているように、重複が実在します。

丸亀港 については、港湾区域を示すと思われる図がありました。「湾境界線」の内側として図示されている水域が港湾区域と考えられます。
問題の富士見大橋[57224]が架けられている港町と富士見町との間の直線部の水域はこの図に描かれており、確かに港湾区域に属します。埋め立てずに残された場所だから「海面」なのでしょうか。
この「海面」の続きのような形で、斜め東に100m余り(ウオッ地図はもっと)が残っている東汐入川は、港湾区域の図に描かれていません。

西汐入川の場合は、リンク図面の範囲が港湾区域とすると、下流端[57224]から汐入橋までの間の僅かな区間だけが含まれており、ここは河川区域と重複するようです。

丸亀港はさておき、隅田川の「河川区域」と東京港の「港湾区域」とを示す図をネットで探したのですが、なかなか見つかりません。
これは、実務上では最初に立ちはだかる困難な理由かもしれません。以下次報。

[66488] 2008 年 8 月 29 日 (金) 17:22:08 hmt さん
 境界線について(2) 東京港付近の河川と港湾
hmt 海岸線〜陸と海との境界〜

海と陸の境界である海岸線。隅田川河口付近についてのグリグリさんの問いかけに対する 地理的な見方でのレス
これに対して、河川や港を管理する自治体の立場からの境界・区域もあるはずとネットを探しました。

パンフレットPort of Tokyo 2008 によると、東京港は荒川河口から多摩川河口に至る範囲で、港湾区域面積(水域)5292ha、臨港地区面積(陸域)1033haとあります。

東京都入港料条例第二条には次のように記されており、「東京港の港湾区域」は港湾局で縦覧可能と思われます。
“入港料は、東京港(法第三十三条第二項において準用する法第九条第一項の規定により公告された東京港港湾区域をいう。)に入港する船舶から徴収する。”
しかしネットでは見つかりません。

東京港便覧 にはかなり詳細な地図が掲載されているのですが、これを見ても港湾区域の陸側の境界線はわかりません。また、海と陸の境界線も示されていません。

東京都建設局の管理する河川についても、全体像 を知ることはできたのですが、臨海部の詳細は不明でした。
ようやく探し出したのが 隅田川流域河川整備計画 というpdf文書。その24/38頁に隅田川の範囲を明示した記載がありました。
要部のみを抜粋。
隅田川 備考:荒川からの分派点・岩渕水門から東京湾まで
 下流端 左岸:中央区勝どき三丁目地先、右岸:中央区築地五丁目地先
隅田川派川
 下流端 左岸:江東区越中島二丁目地先、右岸:中央区佃三丁目地先

これは意外。「河川」を管理する東京都(建設局)の見方によれば、浜離宮と勝どき五丁目の間は隅田川の下流端よりも先の「東京湾」でした。
同様に隅田川派川は豊洲貯木場の手前で終り、その先二手に分かれる晴海運河(上記文書4/38では春海運河)と豊洲運河は「河川」の対象外のようです。

江東内部河川についても整備計画があり、その対象として旧中川、大横川、大島川西支川、大横川南支川、北十間川、横十間川、仙台堀川、平久川、小名木川、竪川、越中島川と、おおよそ越中島−須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。
グリグリさんが[57062]で挙げた11橋のうち隅田川(本川)の4橋と隅田川派川の相生橋を除けば、春海橋・朝潮運河の4橋・晴海大橋の6橋は海上の橋。
見落としてしまいそうなのが、明治28年に完成した月島の先、昭和になっての新造成部分とを隔てる通称「新月島川」。これは月島川と違って河川に入っていませんから、新島橋と浜前橋も海上架橋。

江東区内の豊洲橋・朝凪橋・東雲橋から辰巳橋を渡り、北に向かえば七枝橋・八枝橋・汐枝橋・汐浜橋。東の方にも新砂橋・砂潮橋・夢の島大橋。湾岸道路にも曙橋・新辰巳橋と枚挙に暇ありません。
有明には、一部は港区台場に属している13号地との間の「海」があり、mapionも海扱いです。この海には何本かの橋が架けられている他、有明ふ頭橋もあります。芝浦との間のレインボーブリッジを筆頭に海上架橋の宝庫地帯。
そして中央防波堤内側と外側を結ぶ中潮橋と中防大橋も、もちろん海上架橋。

東京湾の西側にも京浜運河や埋立地の間の海に架けられた橋が多数。

ついでに、東京臨海部の運河に関する資料を見ました。
東京都港湾局の「運河ルネッサンス推進方針」という pdf資料 の3頁には、対象となりうる運河等水域が図示されています。
これによると、晴海運河を通る隅田川の分流は、相生橋の下流から晴海ふ頭の手前までが対象。

国土交通省のヒアリングに東京都が使った 東京港のめざす環境づくり というpdf資料の4頁にも東京港の運河を示す図がありました。
これによると築地と月島の間の「隅田川」が含まれ、その分流(晴海運河)は春海橋まで。

このように、同じ東京都の資料でも、それぞれ微妙に相違します。

[66510] 2008 年 8 月 30 日 (土) 18:25:46 hmt さん
 境界線について(3) 境界線には「目的」がある
hmt 自治体の海上境界 hmt 海岸線〜陸と海との境界〜

陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
前2回[66487][66488]は東京港などを題材にして、地理的な考え方からの海岸線と、港湾・河川管理など行政的立場からの区分けとは異なることを語りました。

代表的な行政境界線である県境(都道府県境)の話題に移ります。
2005年11月に「県境越え」が話題になりました。実はその半年前に [40541]オーナー グリグリ さんが発表した「都道府県隣接数」ランキングがあり、それに関連して、最近も海の県境や隣接に関する議論がありました。

既に「海上の都道府県境」という記事集[66057]がありますが、陸上の情報も補った 都道府県境 の記事を改めてリンクしておきます。

最初に言っておきたいことは、行政境界線や、それによって囲まれた区域というような「概念」ないしは「用語」は、その区域を管理する目的で境界線を引いた者(多くの場合行政機関)が、その目的に合わせて定めたものであるということです。

その典型的な実例が青函トンネルの編入に伴ない設定された北海道・青森県境でしょう。[66057] 88 さん
津軽海峡は特別に領海3海里で、その中央部にあたるこの地点の海上は公海です。しかし、海底トンネルの中は日本の主権が及ぶ新たな領土として、1988年に日本に編入されたのですね。

[46746] 小松原ラガー さん
千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。

東京湾は幅12海里を持つ領海の基線の内側にある「内水」域なので、日本の主権が及ぶことに問題はないのですが、都道府県はもともと陸上の行政区画として生まれたもので、海上には明確な都県境が引かれていません。
しかし、東京湾アクアラインという神奈川県と千葉県との間を結ぶ固定連絡施設ができると、警察や課税を含めた行政権の行使のために、従来は隣接していなかった両県の間に「県境」が必要になります。

人工島である関西国際空港が、沿岸2市1町の従来の区域を沖合いに延長した形で分属するのと同じような考え方で、「海ほたる」は木更津市、「風の塔」は川崎市となり、その間の「どこか」に境界点を作ったのでしょうね。おそらく、川の真ん中を境界にするのと同じような感覚で、2つの人工島の真ん中に。

船舶が通行するだけならば、海がどちらの都県に所属するかを問う実益はなさそうです。
東京港は東京都、川崎港・横浜港・横須賀港は神奈川県、千葉港・木更津港は千葉県に属するとしても、その中間にはいずれの都県に属するとも決められていない水域があるようです。
文献(東京湾埋立地の歴史pdf) の16頁に適当な図面が合ったのでリンクしておきます。

漁業のような経済活動を営む場合には、漁場がどちらの県に属するものなのかが問題になります。
[46750] LFB さんが引用した水産雑学コラム( 本になり、リンクは切れた)によると、これは「慣行」に従うものとされます。以下引用文

“県の漁業調整規則は、知事の管轄権の及ぶ範囲の海面の漁業を規制しますが、神奈川県と千葉県との間には明確な境界線の慣行がなく、両方の県から出漁した船が入会で操業しているようです。裏を返せば、相手方の漁業権区域沖合線の手前までは、双方が自分とこの海という感覚でも、大きな問題がないのでしょう。”

船舶の航行に関しては県境を決める必要がなく、魚を追って移動する漁業に関しては「入会い」で処理してきた。
しかし、固定施設である東京湾アクアラインについては、「境界」を作ることになった。(青函トンネルの場合のような資料はみつかりませんが…)

重複があり得ない県境に関しても、海上での公式の取り扱いは、「目的に応じて違う」という実例だと思います。

陸と海の境界に関しては、既に河川法と港湾法とで規定した河川区域と港湾区域とが重複している現実を見ました。
陸と海との境界は、地形図の世界でも海図の世界でも満潮時の海水面で決めています。(海図の水深は低潮面基準)
農耕用地、建築用地等として利用される土地は、通常の場合、満潮時にも水没しないことが条件ですから、陸上の論理では満潮時の海水面で水陸の境界を決めるのは自然なことです。
# 海中に社殿を造った厳島神社のような例外的存在もあります。

ところが、満潮時には川のかなり上流(水産雑学コラムによると、相模川では河口から6.6km付近)まで海水が上がるのだそうです。海水魚が川を上がるとなれば、海の漁師も陸地である川で魚を取る。ここでは海区漁業と内水面漁場との境界問題が生じるという仕組み。
境界問題は、なかなか一筋縄ではゆきません。

[66539] 2008 年 8 月 31 日 (日) 14:15:33【1】 hmt さん
 境界線について(4) 公式に定められた境界でも「目的外」に利用する際は注意が必要
hmt 海岸線〜陸と海との境界〜

県境などの行政境界線や区域を公式に定めるのは、何かを管理する「目的」に応じたものだということを記しました[66510]

このような境界線を、自己責任で「目的外」に利用することは、もちろん差し支えありませんが、不都合が生じるかもしれないことは心得ておくべきでしょう。

わかりやすくするために、実際にはあり得ないような極端な「目的外利用」の例を挙げます。
土地は、1筆毎に境界線で囲まれ、「地積」があります。この地積を積算すれば、市区町村の面積、ひいては「日本の面積」が算出できるだろう…と思うのは、誤った考えなのですね。
個々の地積の不正確さもさることながら、「登記のない土地」(「無番地」)が存在するわけです。[48795] 88 さん

もともと、不動産登記法は“国民の権利(財産権)の保全”を目的とした法律ですから、「公共用」である国有財産は対象外というのが建前です(土地台帳法44条)。このような法律の趣旨を無視して、「目的外」である日本の面積の算出法に使おうとすることが、本質的な誤りなのです。

市区町村の面積、ひいては日本の面積に関する公式資料としては、国土地理院が地形図からの計測に基づいた 「面積調」 を毎年発表していることはご承知の通りです。
しかし、これは毎年10月1日現在の面積を翌年2月1日に発表するわけですから、例えば新潟市に新設された区の面積を即日知るわけにゆかず、グリグリさんが苦戦することになります[57516]

なお、市区町村面積の増減については、“官報または県公報等により告示された境界変更や埋立による異動面積値について関係都道府県に照会し、確認された値をとりまとめたもの”とされており、国土地理院でも、一部は地形図計測データでなく、他の行政データを転用するケースがあります。
[57480]で例示した関空2期の場合は、不動産登記法36条により申請する「新たに生じた土地」の地積を「目的外」に利用したものであろうと思われます。

一方、摩周湖の場合[57433]は、宮内庁によって減失登記[57441]がなされても、無登記の公有水面として国の管理下にあるので、弟子屈町の面積には影響がないはずです。
掘り込み港湾の場合、[57441]88 さんは、
「掘り込み工事→土地の滅失登記→土地でなくなる→住所がなくなる(面積から除かれる)」
とお考えですが、国の管理下の公有水面(陸水部)ならば、土地登記・住所の消失が、国土面積からの除外に直結することはないと思います。

事例が適切だったかどうかわかりませんが、法律というのは、その目的に応じた適用対象を持つということで、法律の定義を「目的外」の他分野に使って、適切な結論が得られるとは限らないことに注目したかったわけです。

このシリーズで最初[66487]で言及した東京港における「港湾区域」とか「河川区域」とかいうのも、それぞれの法律の目的とする港湾管理、河川管理の必要に応じた区分です。
なお、港湾と河川とが重複することは、たしかに「河港」([66499] にまんさん)の存在を考えれば自明でした。

海岸法も含め、法律的な区別を落書き帳のような「法律の目的外」の話題に適用すべきかどうかは、ケースバイケースです。
[66488]でも書いたように、東京臨海部の運河地帯が「河川」の対象になっていないのは、普通の地理的感覚と相違します。
江東内部河川…の対象として…おおよそ越中島−須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。

東京都は「○○運河」を積極的に「海」だと言っているわけではないので、これは少し言いすぎだったかもしらませんが、「河川」として管理しない運河は「海扱い」なのかと思った次第です。

なお、この文中「須崎」は「洲崎」の誤記です。
1969年に地下鉄駅ができて知名度抜群の存在となっている「東陽町」の方がわかりやすかったのですが、いかにも海岸であることを示している「洲崎」という地名を使ったら、誤変換を見逃してしまいました。

「洲崎」で検索すると、館山の地名と共に東京の地名に関する 記事 も登場。現在の「東陽町」と同様に交通の要衝で、その関係が多いですが、1958年まで存在した遊郭にも言及されているところはさすが落書き帳。

江戸時代のごみ埋立により現在の永代通りまで南下していた海岸線は、近代になってからも南下を続けます。
洲崎の湿地(現在の東陽一丁目)が埋め立てられて遊郭になったのは大正時代。
初期のプロ野球に使われた洲崎球場は、水浸しコールドゲームという珍記録もあったとか。

東京港の黎明期には現在の汐浜運河が海岸線だったことを考慮すれば、[66488]のように海上架橋に 汐浜橋 が含まれるのも一応の裏付けがあるわけです。
しかし、完全に埋立地の内部になった現在では、“陸でなければ海”という単純な図式でなく、「運河地帯」というの境界領域の存在を考えるべきなのかもしれません。

河川関係以外にも、「目的外使用」のために地理的感覚と合わない結果を出した事例が過去にありました。
国連海洋法条約の「至近距離」という言葉に釣られた、直線基線に基づく近接候補の提示[66032]が、その例です。
公海と区別された領海の起算を目的とする直線基線を、国内の都道府県の近接判断に使うのは、まさに「目的外」。
静岡・三重、高知・宮崎、石川・新潟の3組は、直線基線で結ばれていても相互を結ぶ航路もなく、これを県の近接と言うのは、いささか無理な感じがします。

[66635] 2008 年 9 月 7 日 (日) 12:35:56 hmt さん
 境界線について(5) 水面上の境界線
hmt 湖沼の分割

境界線について 8月末に書き始めて一休みしている間に、水面上の隣接事例が話題になっていました。
[66592] 日本人 さん
この書き込みでの県境とは、陸上で隣接している場合のみです。
[66607] ぺとぺと さん
境港市と松江市の間を通る「境水道」が川なのか海なのか(もう一つ言うと中海は海なのか湖なのか)を一度調べてみてはいかが

“陸上で隣接”という場合は、陸上を流れる河川を境にする場合を含めるのが普通ですね。
地形図用語では、陸地内に存在する河川・湖沼などの水部を包括して 陸水部 と呼んでいます。
問題の「境水道」は本当に「海」なのか、「陸」ではないのか?というのが、日本人さんへの問いかけ。

水道コレクション にも書いてあるように、海と海をつないでいる潮の通り道のことを“水道”と呼んでおり、事実「境水道」は“中海”と日本海との間にあります。
しかし言葉に騙されて“中海”を「海」と断定してはいけませんよ。
(県境ではありませんが)天橋立で口を閉ざされた“阿蘇海”は京都府の面積に含まれる「陸水部」です。

もっとも、“陸上”だとしても、隣接に疑いの余地がなくなるわけではありません。山の中を含めて「境界未定の場所」は多数ありますから要注意。アーカイブズ帰属未定地

それはさておき、水面を分割して境界を確定したニュースとして最近報じられたのが、
[66428] 作々 さん
[66509] 右左府 さん
青森県と秋田県が十和田湖に関して「青森:秋田=6:4」で分割する内容で合意する見通しとなったそうです。
(2008年8月)29日に関係4自治体首長による協議が行われ、提案されていた県境案に4者とも合意しました。合意した県境案

このような境界画定による「湖水分割」は、地方交付税交付金の算定根拠になる自治体面積増加を図ることを主たる動機とするもので、5年半も前に次の記事がありました。

[9293] 2003 年 2 月 16 日 ぷりぷり さん
中海・宍道湖は県・市・町界が決まっています。今から12,3年前に決まりました。(中略)地方交付税の増額が目的だそうで。各々の自治体の湖岸線延長に比例して面積を配分して境界位置を決めたのだとか。
当時の新聞に「ドル箱 琵琶湖を遊ばせるな」というようなタイトルで「地方交付税増額を目的に琵琶湖周辺市町による境界決定のための協議が始まった」というものがありました。

後半の琵琶湖分割に関する結果を報じたのが
[58389] 2007 年 5 月 8 日 小松原ラガー さん
東京23区なみの面積の琵琶湖ですが、周辺14自治体で帰属に関する分割案の合意がなされたようで。これによって各自治体とも大なり小なり交付税が増加されることになる模様です。 琵琶湖に引かれる市町境界線

協議開始が[9293]の“12〜13年前”とすると1990年頃ですから、昨年の合意までにずいぶん時間がかかったわけですね。
境界確定による面積増加を示した平成19年10月1日の 滋賀県市町村面積

霞ヶ浦や浜名湖のように、沿岸市町村に分割されていない湖沼もあります。

国内の湖沼分割は、地方交付税を動機とするもので、最大の琵琶湖でも 670km2ですが、5ヶ国が関係し、日本の面積に匹敵する 37万km2のカスピ海を分割しようとする動きもあります。廣瀬陽子

先ず問題になるのが、「カスピ海は海か湖か」ということ。
石油を産出しているロシア、アゼルバイジャン、カザフスタンは「海」であるとして、海洋法を適用し、海岸線に応じて領海を設定して分割したい考え。トルクメニスタンもほぼ同調。
これに対して、沿岸から石油が出ず海岸線も短いイランは「湖」であるとして、海底の共有または5ヶ国の均等配分を主張。

石油の他にキャビア資源問題もあり、更にはパイプラインルートを巡るアメリカの政略もからみ、問題は複雑・深刻。

「領海」という制度のある国際問題ですから、「湖」ならば関係自治体の合意で分割可能だが、「海」に関しては地方自治体は手を出せないという国内問題とは事情が違うようです。

[66716] 2008 年 9 月 12 日 (金) 16:51:08 hmt さん
 境界線について(6) 海か湖か
hmt 湖沼の分割

東京の海と陸の境目、そして神奈川県と千葉県との境界など、主として東京湾を題材にた考察から始めた境界線についてのシリーズですが、第5回は湖水上の境界や湖水分割の話題に転じました。もう少し続けます。

中海・境水道の事例において、先ず問題になるのは「海か陸か」ですが、このことは既に6年前に話題になっていました。
[3015] ゆう さん
以前は私も海だと思っていたのですが、現地国道沿いに「一級河川 斐伊川水系 中海 建設省」の案内板をみつけ、調べてみたことがあります。(中略)
ちなみに「境水道」も斐伊川水系の河川扱いです。

国土交通省の 斐伊川水系河川整備基本方針 によると、斐伊川流域は 本川・宍道湖・中海の各流域からなり、次のように記されています。
斐伊川は(中略)出雲平野を東に流れ、宍道湖、大橋川、中海、境水道を経て、日本海に注ぐ、全長153km、流域面積2070km2の1級河川です。

そして中海・境水道の水面に地方自治体境界が決まったのは、[9293]ぷりぷりさんの記事から“12〜13年前”とのことなので、1990年頃と推測されます。湖水面に境界を確定させた比較的初期の事例ではないかと思われます。

境界は行政等の目的に応じて決められるものということを記しましたが[66510]、治水等の目的で「河川」として扱われていた中海が、地方自治の面でも「土地」と同様に自治体に分属する処分を受けたということでしょう。

もっとも、この境界確定により、すべての分野において、中海が鳥取・島根両県に分割されたというわけではありません。
“従来の入会慣行を尊重しつつ”2006年に締結された 中海及び境水道における漁業に関する協定書pdf を見れば、自分の県の許可を得ていれば相手の県で魚を取ってよい、つまり漁業に関しては事実上県境などないことを確認しています。

境界を作って分割するのは人間の都合ですが、自然はそんなことにお構いなし。海水も海の魚も中海に入ってきます。
上記 [3015]にもあった塩分濃度の記載は省略しましたが、中海の下層水は塩分が海水に近い3%程度で、(情況により変化するが)その半分くらいの塩分の上層水とは常に層を成しているようです(本庄水域は低濃度)。

「海か湖か」の扱いが、目的によって変る事例として、環境行政を挙げておきます。
赤潮など海洋植物プランクトンの著しい増殖のおそれに着目して、平成5年環境庁告示第67号で88の 閉鎖性海域 が指定されています。

このリストには「浜名湖」が入っています。
エ! 浜名湖は海なの? というわけですが、静岡県 は次のように説明しています。
浜名湖は、河川法上は2級河川都田川として位置づけられているのですが、湖の奥部まで海水が流入しており、魚など棲息しているものは海の生物が中心です。 従って、環境基準は海域の基準を指定しています。

過去記事を見ると、浜名湖に関して次のようなやりとりがありました。
[9348] ペーロケ[utt] さん
一般に湖と認知されている浜名湖は、塩分濃度が高いため、環境庁の水域指定では、湖沼ではなく「海域」だそうです。国交省では文句無く「湖」なのですが。
[9356] Issie さん
どうも話が噛み合わないのは,ここですね。
どうやら「地形学」の対象として問題にする場合と,環境問題の観点から話題にする場合とでは関心の対象が違うようです。

環境省の閉鎖性海域リストには、浜名湖以外にも「湖」として扱っているような水域がいくつも入っています。一方、塩分がかなり多くても「中海」は“閉鎖性海域”に指定されていませんでした。
島根県のHP を見ても、中海は湖沼A類型・湖沼III類型として環境基準値が定められているようです。

「海か湖か」の判定が微妙な事例を拾い上げるために、国土地理院の 湖沼面積調 の中から環境省の“閉鎖性海域”に指定されたものを拾い出し、面積(km2)の大きい順に列挙してみました。
サロマ湖 151.82、浜名湖 64.97、能取湖 58.41、風連湖 57.74、厚岸湖 32.30、久美浜湾 7.24、万石浦 7.20、松川浦 5.90、コムケ湖 4.94、加茂湖 4.90、阿蘇海 4.81
国土地理院の面積調では、猪鼻湖 5.38は浜名湖と別にカウント。阿蘇海も宮津湾と分けて単独でカウント。

[57151] オーナー グリグリ さんによって提案された、Mapionの水面に住所が入力されているか否かを用いる陸か海かの判定法。
これを上記11水面について確認してみると、阿蘇海・久美浜湾・松川浦[57407] には住所の入力なし。
阿蘇海は、水面の境界未定(面積調)という理由がありますが、他の2件の事情は不明。
単なる入力落ちか、市町村の意向か、それとも「実は海!」なのか?

北海道のサロマ湖・能取湖・風連湖・厚岸湖・コムケ湖、宮城県万石浦、佐渡の加茂湖、それに浜名湖の11水面には住所が入っており、 Mapionでも陸地扱いでした。
特にサロマ湖(佐呂間町・湧別町・北見市)と万石浦(石巻市・女川町)の場合は、連続する境界線によって水面が明らかに分割されていること中海と同様です。

おまけ
「海か湖か」とは無関係ですが、印旛沼の4市町村による分割は、ウオッちずで見られるように湖心からの放射線による水面上のグレートジャンクションだと心得ていたのですが、 [25592] みやこ♂さん の記事にリンクされた大縮尺のYahoo!地図では、成田市と本埜村とが接触していません。真相は?
琵琶湖の分割pdf で、高島市と東近江市とが惜しいところで接触していないことは、[66022] オーナー グリグリさん既報。

[66732] 2008 年 9 月 13 日 (土) 13:54:19 hmt さん
 境界線について(7) 地方自治体は(潜在的にせよ)海上部で「接している」のか?
hmt 自治体の海上境界

中海、印旛沼、琵琶湖などの湖沼では、水面に確定した境界で地方自治体が接しており[66716]、これまで境界未定だった十和田湖についても、2008/8/29の分割合意[66509] により境界線が引かれることになりました。

では、海上部における地方自治体の隣接関係やその境界線は?

[46715] ただけん さん
「昭文社ツーリングマップル6中国・四国」P58によれば、広島県の海域と香川県の海域は直接接しているのですが
[46736] みかちゅう さん
そもそも海水面に厳密な県境は存在するのでしょうか。香川県と広島県の海域が接しているのは、島と島の間に県境を引いたのを滑らかに結び合わせたらたまたま香川県と広島県が接してしまう図になった、というだけではないでしょうか。
[46748] 88 さん
おっしゃるとおり、陸上部と違って、海水面に県境はないと思います。
という応答に見られるように、私も海水面には県境はないと思っていました。

但し橋や海底トンネルなどの固定連絡施設については、警察権や課税権を行使するため実質的な県境を設ける必要があることを、青函トンネルや東京湾アクアラインの例を引いて述べました[66510]

ところが、88 さん から新たに次のようなご意見[66057](いわば潜在的海上隣接説)がありました。
領海は、領海法(現「領海及び接続水域に関する法律」)の制定により、接続海面も地方公共団体に含まれる。このため、海上部で各地方公共団体同士は「接している」。しかし、現実には、まだ区域として明示されていないため、どの地方公共団体同士が接しているかを確認する手段がない。

このご意見は、オーナー グリグリさんの「都道府県隣接数」ランキング[40541]や 隣接定義[66022]にもかかわる問題であり、検討してみました。

このご意見も関して、「日本の領海」に関する海上保安庁のサイトと共に、「海と川をめぐる法律問題」(1996)という書物、特にそのp.6〜7が 重要な論拠として引用されています。
それによると、まず“今日では、学説・判例ともに、地方公共団体の区域には接続海面も含まれるというのが通説と見てよい。”として、青森・秋田の海面境界にかかる刑事事件の能代簡裁判決が参照されています。

参照判決の事件詳細は不明ですが、おそらく事件現場(海上)の捜査や裁判の管轄が争われたのではないかと推測します。このように、陸地に近い海上にまで行政や司法の管轄が及ぶことはあるわけです。

しかし、この事件に関して秋田県という“地方公共団体の区域”を管轄する裁判所が“含まれる”と判断した“接続海面”が、「領海及び接続水域に関する法律」でいう“接続水域”を意味するものでないことは、1973年という判決日から明白です。
この法律は、1977年に「領海法」として制定され、“接続水域”という概念は1996年改正(表題も変更)の際に導入されたものだからです。

“接続海面”が地方公共団体の区域に含まれるという“通説”の根拠は、上記判決の他にもあると思われますが、それはともかくとして、この言葉は、例えば海水浴場のような「陸地に接続した海面」の意味でしょう。
そのように認識は“領海法の制定”よりも前からのものであると思われます。
著者が“領海法の制定によって、地方公共団体の区域は自動的に拡大したと見るべき”という見解を示している対象は、(陸地側の)“接続海面”のことではなく、【3海里から12海里に拡大した】領海内のことと理解されます。

この見解は通説ではなく、著者の考えを示したものと理解されます。
言うまでもなく、現在でも地方自治法第5条では“普通地方公共団体の区域は、従来の区域による”となっており、海上に及ぶ可能性については全く触れておりません。

著者自身も、
管轄権の問題だけに止めておくのか、地方公共団体の区域にとりこむのかという問題もある。
と記しており、著者が“自動的に拡大したと見る”のは、例えば漁業権設定の際に行使される都道府県の管轄権(漁業法10条、11条参照)のようなものであり、地方自治法を含めて一般的な概念として理解されている「区域」とは異質のものであろうと考えられます。

なお、漁業法136条は、“漁場が二以上の都道府県知事の管轄に属し、又は漁場の管轄が明確でない”ケースが存在することを示しています。
これは、海上における都道府県知事の管轄権というものが、重複があり得ない「都道府県の区域」とは明確に異なるものである何よりの証拠でしょう。

更に言えば、都道府県知事は 少なくとも漁業権の設定に関して海上の管轄権を持つようですが、市町村については、そもそもどのような行政事務に関して海上に管轄権があるのでしょうか?
海水浴場に関しては県の条例だけでなく市町村条例を定めた例もあるでしょう。
陸地にごく近接した海上レジャー施設などについて市町村の管轄権がある可能性は否定しませんが、市町村が領海全域に及ぶ管轄権、ましてや「地方公共団体の区域」を持つ情況にあるとは思われません。

以上の理由から、
海上部で各地方公共団体同士は「接している」。
すなわち、
(明示こそされていないが)海上の「境界線」で接した「地方公共団体の区域」が潜在的には存在する
という説を、にわかに信じることはできないのです。

[66738] 2008 年 9 月 13 日 (土) 21:10:48【1】 hmt さん
 境界線について(8) 県境の交通路
hmt 自治体の海上境界 hmt 県境の交通路

「信越トレイル」全通 の記事を今日の夕刊で見ました。
長野、新潟県境の関田山脈を走る全長約80キロを山歩きできるトレッキングルート「信越トレイル」が13日、全線開通した。

山歩きの世界には暗いので、県境を80kmにも亘って歩ける尾根道が整備されていたことは全く知りませんでした。
ルート の南西側50kmは既に2005年に開通しており、今回は北東側の30kmが開通とか。

今年の2月にまとめられた[63720]futsunoおじ さんの労作 「県境の交通路」コレクション は、“県を越える”道路・鉄道と峠のコレクションなので、「信越トレイル」のような県境伝いのルートは対象外でしょうが、タイトルの「県境の交通路」そのものなので、参考情報として付け加えておいていただいたらどうかと考えます。

それはさておき
「都道府県」という区域は、もともと陸上の住民や土地を管理する目的で設けられたものです。
このコレクションも、本来の「都道府県境」である陸上の道路・鉄道を主体とするものですが、これに加えて「陸上交通」の手段として使われる固定連絡施設(海上架橋と海底トンネル)が加えられています。
対象は「交通路」ですが、離島の県境 のうち5箇所は、交通路がなくても特別に集録されています。

陸上・海上架橋・海底トンネルの他にも、飛行機や船による連絡路があります。
遠く離れた地点を結ぶ飛行機や長距離フェリーは「県境」の対象としてふさわしくないとしても、「対岸の県との間を直結する航路」は、いわば「動く架け橋」であり、海上架橋と同様に県境を結ぶ交通路と見ることもできます。

また、海上を通る経路で設定された国道のうち 20路線には 海上県境があります。
陸上・海上架橋・海底トンネルのいずれかにより既に隣接都道府県に算入されている12路線を除外すると、8路線です。
[66054]を書いた時は気がつかなかったのですが、兵庫県と香川県とを結ぶ国道436号以外の7路線は、ずっと前に[46683]デスクトップ鉄さん が挙げておられました。

これらの国道がどのような経緯で設定されたものかは知りませんが、現在のところ航路で結ばれ県境の海上国道として機能している路線は5路線と思われます。
兵庫県姫路−香川県福田(小豆島)間 国道436号
山口県伊保田(周防大島)−愛媛県三津浜間 国道437号
愛媛県三崎(佐多岬半島)−大分県佐賀関間 国道197号
長崎県口之津(島原半島)−熊本県鬼池(天草下島)間 国道389号
長崎県茂木(長崎半島)−熊本県富岡(天草下島)間 国道324号

国道57号の三角島原フェリーは2006年に 運行が廃止されました

鹿児島・沖縄航路 は、国道58号と同じように鹿児島県奄美大島と沖縄本島との間を結びますが、国道経由地の沖縄県国頭村は通らず、国道経過地でない与論島から那覇港に直行します。

長崎・鹿児島両県の間は、国道499号が設定されていますが、航路で結ばれていません。
[46715] ただけんさん は、“ただし現在航路が廃止されているはずです。”と書いていますが、航路が廃止されたのでなく、最初から実体のない国道だったのではないかと推測します。
野母崎の脇岬港と阿久根との間には熊本県の牛深港があるのに、これが国道の経由地になっていないのも不自然です。
要するに、この国道が長崎・鹿児島両県を直結しているようには到底思われないこと、ただけんさん同意見です。

瀬戸内海 は、直線基線設定(1996)よりも前から内水とされていた特別の海域で、向き合っている地域の間には、特別の交流・利害関係が存在していると思われます。

本土では隣接していないが、海上架橋・海底トンネルで結ばれている組み合わせ:兵庫県と徳島県、岡山県と香川県(離島では隣接)、広島県と愛媛県(離島では隣接)、山口県と福岡県。

対岸と航路で結ばれている組み合わせ:兵庫県と香川県(国道436)は既出。
周防灘を隔て向き合う山口県と大分県。徳山−竹田津(国東半島)航路[46715]があります。
紀伊水道を隔て向き合う和歌山県と徳島県。和歌山−徳島航路あり。

和歌山県と兵庫県(淡路島)との間は、紀淡連絡道路計画があるほど地理的には近接していますが、航路はありません。かつては和歌山に近い深日港(大阪府)から洲本への航路がありましたが、明石海峡大橋開通の影響を受けて廃止。

備後灘を隔てた広島県と香川県とは、直接向き合っている近接関係でしょうか?
たしかに福山−多度津間の航路は、岡山県笠岡諸島の間を通り抜けるらしく、直結というには疑わしい点があります。[46715] ただけん さん
しかし、漁場としての管轄はともかく、航路については岡山県に属する海域という定めはなく、広島県と香川県とは航路で直結していると言ってもよさそうです。
【追記】
[66740] hiroroじゃけぇ さんから、8月31日をもって、福山〜多度津間のフェリー廃止とのことをお知らせいただきました。
せとうち物流 によると、燃料費上昇・瀬戸中央自動車道との競合・船舶老朽化が理由。

瀬戸内海から外に出ると、高知県宿毛と大分県佐伯の間(豊後水道)、長崎県壱岐と福岡県博多の間(玄界灘)にも航路あり。
東京都大島と静岡県伊東との間も航路で結ばれた近接関係です。

[66785] 2008 年 9 月 16 日 (火) 19:39:42【1】 hmt さん
 境界線について(9) 県境を越える 渡し舟
hmt 都道府県境

「県境の交通路」コレクション は、県を越える道路・鉄道と峠が対象になっており、県境の渡し舟は、「矢切の渡し」が おまけ のような形で登場しているだけです。

「野菊の墓」の舞台である 矢切の里 は、伊藤左千夫の小説が発表された明治後期には東京近郊の農村で、既に明治大合併で成立した千葉県東葛飾郡松戸町の一部になっていました。

戦後に木下惠介監督の映画「野菊の如き君なりき」(1955)を見た後で、手漕ぎ和船の「矢切の渡し」に乗りに行ったことがあります。
映画にも登場した当時の船頭さんは杉浦浅太郎さん。
現在もその息子の正雄さんと孫の勉さんの代に引き継がれている個人経営の渡し舟ですが、その本質は「県境の交通路」というよりも、観光船ですね。

矢切の渡しで江戸川を渡った対岸は東京都葛飾区柴又。寅さんだけでなく、「帝釈人車軌道」[61507]でも落書き帳に登場。
また、帝釈天のすぐ北にあるのが金町浄水場。昔は悪評をとった水質も、1992年以降は高度浄水処理によって向上[58751]
「矢切の渡し」の歌謡曲は、1983年に細川たかしの歌がヒット。

次に利根川の渡し舟を調べてみます。
利根川下流の香取市(旧小見川町)にある富田渡船。ここは[65807]で記したような歴史的経緯による下総国で、県境は更に北の常陸利根川。
茨城県では、取手の小堀の渡し[65697]が落書き帳の話題に出ていますが、ここも県境でない!
利根川上流の島村渡船。伊勢崎市(旧境町)の飛び地(2県にまたがる保育園[64362] 逆太郎 さん)への足。これも県境でない。

結局のところ、利根川における県境の渡し舟は、群馬県千代田町赤岩と埼玉県熊谷市葛和田とを結ぶ 赤岩渡船 が唯一の存在と思われます。

次に、木曽川・長良川の流れる愛知・岐阜県境の渡し舟を上流側から。
中野の渡し(愛知県営西中野渡船場) は、名神高速道路と新幹線とが並んで木曽川を渡る地点から2kmほど下流。愛知県一宮市西中野の対岸は岐阜県羽島市。

ここから更に下ると、木曽川は長良川とより沿いますが、合流はせずに背割り堤を隔てて並流します。
1887〜1912年にオランダ人技師ヨハネス・デレーケの改修計画に基づいて行なわれた 「三川分流工事」 [20690]YSKさんの区間ですが、背割り堤は上流側が岐阜県、下流側が愛知県の所属。従って、県境は上流側は引き続き木曽川ですが、下流側は長良川に移る区間があります。

日原渡船(塩田の渡し)の場所では、愛知県愛西市(旧八開村)塩田と岐阜県海津市日原との県境は木曽川で、愛知県渡船が「県境の交通路」。隣の長良川にも岐阜県渡船がありますが、こちらは県境に該当せず。
ところが、それよりも少し下流の森下渡船の場所になると、岐阜県海津市森下と愛知県愛西市葛木との県境は、背割堤防の西側の長良川になります。
この岐阜県の森下渡船、以前の木造船を老朽化で廃棄した後、新調する費用がないので、現在は必要に応じて 2.6km上流の日原の舟を回送して共用。従って、 予約が必要
東側を流れる木曽川にも葛木渡船があるが、こちらは両岸愛知県なので、県境の交通路に該当せず。

結局のところ、愛知・岐阜県境の渡し舟は、木曽川が一宮市西中野と愛西市塩田、長良川が海津市森下で、合計3箇所。

京王閣競輪の開催日には、貸ボート屋が多摩川対岸(京王稲田堤)との間に 渡し舟 を運航しているそうです。片道300円は電車に比べて高いが、利用者は川崎側の土手に駐車したドライバー。これも都県境の交通路?
昔は「菅の渡し」という渡し場だったとか。

[66799] 2008 年 9 月 17 日 (水) 22:17:14【1】 hmt さん
 境界線について(10) 県境越えづくし
hmt 都道府県境

[66738]県境の交通路、[66785]県境を越える渡し舟に続く「県境越えづくし」です。

千曲川→信濃川は県境を横断して越える河川です。
これは言い方が逆ですね。本当は、川に直交して信越国境・長野新潟県境が引かれたのでした…
昔は川舟が通ったであろう信濃川筋も、現在の交通路は道路と鉄道にとって変られ、「国境の交通路」の地位は失われました。

それでも、正面から大河を横切っている信越国境は珍しい事例のように思われます。
例えば阿賀川→阿賀野川[42945]、桂川→相模川[42974]では、数百mの短い区間にせよ県境は河川と一致しており、河川と県境とのクロスになっていません。
高知徳島県境の吉野川、奈良和歌山県境の紀ノ川、奈良大阪府県境の大和川、京都大阪府境の淀川など、数百mは県境沿いに流れた後で別の県に入る川は多いと思いますが、信濃川や吉野川支流の銅山川(愛媛徳島県境)のような形で県境を越える河川は少数派ではないでしょうか。

人工水路にも「県境越え」の送水路はあります。例えば、多摩川の小作と羽村で取水された東京水道の原水[58729]の一部は埼玉県の山口貯水池に蓄えられ、再び東京都に入って東村山浄水場で水道水になります。

まだ県境でなく国境だった時代の水路で有名なのは箱根用水。芦ノ湖から取水した灌漑用水は、箱根外輪山の下をトンネルで貫いて駿河国深良村を潤しました。1670年完成。深良村(現・裾野市)が小田原藩領だった時代です。現在のように県境があれば、水利権が静岡県に渡ることに対する抵抗があり、この事業は実現しなかったでしょう。

水力発電用の送水管も県境を越えています。一般水力で日本第2位の年間発電電力量という 東京電力信濃川水力発電所 は、西大滝の取水堰から信越国境を越えてきた千曲川の水で動いています。

日航機墜落事故(1985)のあった御巣鷹山の地下に建設された神流川発電所[36931]は、2005年に1号機の運用を開始しました。
こちらは群馬県の水を夜間電力により長野県に揚水して蓄え、昼間の水力発電に使って需要のピークに対応する設備で、水に姿を変えた大量のエネルギーが県境を越える水路によって毎日往復していることになります。

群馬県上野ダムによる下部調整池は「奥神流湖」、長野県南相木ダムの上部調整池は「奥三川湖」と呼ばれています。>ダム湖コレクションの美濃織部さん
両者の間にある御巣鷹山トンネルは、発電所付属設備のため「一般車通行止」なのでしょう。

電力施設で県境を越えるものというと送電線。いちいち挙げることができないほど多数ありますが、落書き帳でも話題になった大停電を起こした事故は、千葉から東京に入る送電線[53371]の都県境で発生しました。

送電線ほど目だった存在ではありませんが、天然ガスのパイプラインも各所で県境を越えているようです。
帝国石油広報pdf に新潟−東京を結ぶ管路が図示されていました(3頁)。

この図には、東京湾を経由する東京ガスラインが出ていました。
調べてみると、1977年12月に東京瓦斯の「東京湾海底幹線」が稼動開始しています。東京の豊洲と千葉県袖ヶ浦との間を結ぶ県境のガスパイプラインですが、東京湾横断道路(アクアライン)よりもずっと前に、これができていたのですね。
[66030]で紹介したアクアラインの南側で東京湾を横断する東京電力のトンネル 位置関係図pdf は、東京湾では3番手の県境トンネル?

山口県の岩国燃料廠跡地に建設された(1958) わが国最初の石油化学コンビナートは、1962年に小瀬川の対岸・広島県大竹の海兵団跡地にも拡張されました。河口付近の工場内専用橋は、多くの化学物質をパイプにより県境を行き来させる通路であり[28606]、また赤々と燃えるフレアスタックが県境の位置を示していました。

更に時代を遡った県境の産業施設として、三池炭坑を挙げておきます。
三池は福岡県大牟田の地名ですが、石炭を含む地層は、大牟田だけでなく隣接する熊本県荒尾と有明海の海底に及んでいました。

竪坑は大牟田にも荒尾にもあり、海底に掘り進んだ地下には総延長200kmを越える坑道が網の目のように張り巡らされていたようです。地下の炭坑夫は、県境も海岸線も意識することなく往来していたことと思われます。
大牟田・荒尾も岩国・大竹も、アーカイブズ にもなっている県境を超えたつながりのある地域で言及されています。

県境の産業活動について記したついでに、漁業に関する最新の情報。
今年の9月1日から「伊予灘における漁業に関する協定」が発効するとの 報道 がありました。
添付ファイルの規制図を見ると、海岸から8kmの線引きまでが、沿岸県の専管漁場のように思われますが、これが全国的な慣行か否かはわかりません。

以上で、海岸線から始めて水上の県境、県境越えなどに及んだ 境界線についてのシリーズ を終ります。

既に第1回と第3回とでリンクしてありますが、主として 2007年3月の 海岸線・国土 や、2005年と2008年8月の 都道府県境 における 皆さんの議論を動機として始めたシリーズでした。

十番勝負の定番・隣接系の問題を解くには、役に立たない記事かもしれません。



都道府県市区町村 > 落書き帳 > 記事検索 >このページのトップへ ▲

検索結果参照用リンクを編集 Copyright(C) 2019 M.Higashide 検索条件を変更