[73436][73497]88さん
市制町村制施行時等における飛地・入会地等の表記方法について、以下に私見を書きたいと思います。
市区町村変遷情報においては、市制町村制施行時もそれ以外のときも、各村の「本体」がどのように合併したのかが分かることが最も重要なのではないかというのが私の考えです。
とするならば、A村が市制町村制施行に際し複数の村(B村,C村,D村)に分かれたのであるならば、A村の本体がB村,C村,D村のいずれに行ったのかが一目で分かることがまず必要だと思います。そのため、
(1)「本体」と記載するか否か
ということに関しては勿論Yesで深江村(本体)などと表記した方が利便性が高いと思います。
もちろん一つの村の各字ごとに分かれる2分割や3分割や4分割がなされたためにどの部分が本体かが判断できない場合もあると思います。
その場合、例えば愛媛県(市制町村制施行時)の#124久米郡久米村のところでは、「南土居村の一部(字上組)」とでも表記すればよいのではないでしょうか。
そして「本体」「一部」「飛地」の判断基準の方法としては、新旧対照市町村一覧(編著:和泉橋警察署、出版:加藤孫次郎、M22.12.(香川・愛媛県の部分はM23.6.))(
第1冊・
第2冊)を使うのが良いのかもしれません。
明らかに本体とわかる部分には「○○村の一部」に相当する「○○村ノ内」との記載がありません。そして、どの部分が本体かが判断できない場合では複数箇所に「○○村ノ内」との記載となっています。
また本来は「一部」区域が存在するので「○○村ノ内」と書くべきところでも省略されている箇所もあります。これはおそらくかなり小さな区域なのではないかと推測します。
飛地については「飛地」全体である時は「○○村飛地」と記載されているようですが、東京府のように飛地でも一部区域にとどまる場合は「○○村ノ内」という表記になっているようです。
私が今まで見てきた範囲(少なくとも西日本の各府県)では上記のような編集方針であると私は推察します。
(2)「飛地」「飛錯地」の違いは何か。他の例で、これ以外の表現はないか。
大阪府では府令には記されていませんが「共有地」「錯雑地」という表現があります。(詳細は後述)
また徳島県では「飛入地」「差込地」という表現があります。(参考:
県令第30号(M22.6.29))
(3)飛地ではないが他村に組み込まれる場合は「一部」でよいか。
に関しては「一部」でよいと思います。
またこれに関連してですが、飛地ではない一部地区及び飛地を含むところも「一部及び飛地」ではなくて「一部」とした方が「本体」の変遷を主とする立場からは分かりやすいのではないかと思います。
例えば愛媛県(市制町村制施行時)の#139周布郡小松村のところでは、「玉之江村の一部及び飛地」ではなくて「玉之江村の一部」との記載となります。
#ただし
[73754][73755][73756]では県令第64号との照合の便宜を考え、「一部地域及び飛地」という表現にしています。
(3)(6)飛地か、飛地ではないか、はどのような方法で確認するのか。
飛地か飛地ではないかを、一々調べるのは実際上無理があると思います。
そこで主要部分の変遷に比して重要性が落ちることに鑑み、県令に記載があるところのみを市区町村変遷情報に記載すれば充分なのではないでしょうか。
最後に
兵庫県・和歌山県の例はほんの一部ですので、他府県の検証を含めて、表現方法の統一化などの検討が必要です。
ですが、一例として大阪府の市制町村制施行時の状況を紹介します。
大阪府史第七巻(編:大阪府史編集専門委員会、出版:大阪府、1989)には附図「市制町村制施行直前行政区画図(明治22.3.31)」があり、ここでは大阪府の市制町村制施行前(M22.3.31)と市制町村制施行直後の区域が記載されています。
ここでは例えば、(ア)唐崎村三島江村共有地、(イ)佐井寺村飛地、(ウ)千林村今市村錯雑地、といった共有地や飛地や錯雑地が記載されています。
しかし(ア)は唐崎村(本体)や三島江村(本体)と共に
島上郡三箇牧村となり、(イ)は佐井寺村(本体)と共に
島下郡千里村となり、(ウ)は千林村(本体)今市村(本体)と共に東成郡古市村となりました。そして(ア)(イ)(ウ)の類例もいずれもその本体の村々と共に同一村を構成することになりました。
ところが合併根拠の
府令第17号では記載されていません。
これは、同一村を構成することになったために記載する実益がなくなり、意図的に省略されたものと推測されます。
このような事例をも念頭においておく必要もあります。
・余談1
本筋からずれますが、三重県のように自治体名ではない区域が根拠たる県令に書かれている場合があります(拙稿
[70709]参照)。この場合をどのようにするかです。
・余談2
入会地は、薪炭用などの山林や、カヤなどを植えた草刈場ですから、面積は町村本体に比すると小さいでしょう。
大きさという観点でみますと、
大阪府島上郡大冠村の一部となった“辻子村外2村錯雑地”は辻子村(本体)よりも面積は大きくなっています。同じようなことが「入会地」の場合についてもあるかもしれず、入会地の面積は町村本体に比すると小さい、とは必ずしも言えないかもしれません。
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さて、色々述べてきました。
議論を発展させるには、実例を交えてみるのもいいのかもしれません。
というわけで、
市区町村変遷情報(市制町村制施行時)・愛媛県でどうなるかを見てみました。修正依頼(実はこちらが主だったりする)もついでに行いつつですが。。。
次稿に続きます。
【1】「飛地」「飛錯地」以外の表記法について追記
【2】誤字修正
【3】「本体」「一部」「飛地」の判断基準の方法について追記
【4】誤字修正