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落書き帳

電子地図

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記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[77603]2011年2月5日
hmt
[77607]2011年2月6日
oki
[77608]2011年2月6日
千本桜
[80531]2012年4月17日
グリグリ
[80533]2012年4月17日
Issie
[80536]2012年4月18日
グリグリ
[80538]2012年4月19日
Issie
[80540]2012年4月19日
futsunoおじ
[80544]2012年4月20日
グリグリ
[80545]2012年4月21日
Issie

[77603] 2011年 2月 5日(土)19:37:31hmt さん
電子国土基本図
国土地理院の発表 によると、2月1日から、「電子国土基本図(地図情報)」が正式公開の運びになったとのことです。
これまでの2万5千分1地形図に替わる新たな基本図と位置づけられるもので
と書いてあり、地理に関心をもつ者としては見逃せないニュースと思われるので、少しフォローしてみます。

落書き帳を検索すると「電子国土」は18件、「国土基本図」は2件の記事がヒットしますが、「国土基本図」とは如何なるものなのかについては、言及されていないようです。

国土地理院時報(2003,100集)目次 には、次のように記されています。
第二次基本測量長期計画に基づき始まった2万5千分の1地形図の全国整備は 一部離島を除き 1983年に完了し,以後この地形図が 5万分の1地形図に代わる 新たな基本図となった。

国土地理院のサイト内における「基本図」の使用例は、大部分が「電子国土基本図」と「火山基本図」であり、電子化以前の「国土基本図」に関する記事は殆んどみつかりません。上記2003年の時報でも、最近の発表でも、2万5千分の1地形図は単に「基本図」と記されています。

では、「国土基本図」という言葉を使われていなかったのかというと、そうでもないようです。
日本地図センターのサイトに 国土基本図作成区域図 というものがあり、右端に次の説明がありました。
国土基本図は,国土地理院が統一した規格で作成している大縮尺の地図です。
国土基本図の種類は1/5000地形図,1/2500地形図及び1/5000写真図の3種があります。

前置きが長くなりましたが、紙媒体時代の整備状況は、次のようであったと理解することができます。
全国をカバーする基本図は2万5千分の1地形図であった(北方四島のような例外あり)。都市部など国土の一部については、「国土基本図」という名称が使われた 大縮尺(2500分の1又は5千分の1)の地形図や写真図が整備されていた。この他に、地方公共団体が国土基本図と同じ規格で作成した地図もあった。

最初に挙げたプレスリリースの冒頭に、基本図体系のデジタル化(電子化)は、測量法及び地理空間情報活用推進基本法 の趣旨を踏まえたものである と記されています。
後者は、1995年の阪神・淡路大震災の反省等をきっかけに 政府が本格的に取り組み始めた 地理情報システム(GIS:Geographic Information System) の中核となる 国土空間データ基盤(NSDI:National Spatial Data Infrastructure)を整備し、その活用を推進する法律で、2007年に制定施行されました。

地域における自然、災害、社会経済活動などの情報は、土地利用図、地質図、ハザードマップ、都市計画図、地形図、地名情報、台帳情報、統計情報、空中写真、衛星画像等の多様な表現を通じて利用されています。
従来バラバラに整備されてきた各種の情報ですが、電子化された共通白地図(国土空間データ基盤NSDI)に、これも電子化された種々な情報を重ね合わせれば、各システムを連携させ、統合・強化することができます。これが地理情報システムGISの考え方であると思います。

電子国土基本図 は、いわばGISに使われる共通白地図で、下記3種類の情報で構成されます。
1 電子国土基本図(地図情報) 国土全域をカバーするデジタル地図で、道路・建物・構造物・植生等を含む。
 従来基本図として利用されてきた 縮尺レベル 25000の精度に限定することなく、より精度の高いものを含んだ我が国全域を覆うベクトル形式の基盤データです。縮尺レベル2500の基盤地図情報が提供されている地域(2011/2/1現在)
2 電子国土基本図(オルソ画像) 空中写真の歪を補正して、地図と同様に真上から見た写真画像。
3 電子国土基本図(地名情報) 標準地名や通称・位置・範囲の情報に地理識別子を付与した地名情報。

電子国土基本図(地図情報)は、電子国土ポータル から閲覧することができます。2009年12月から試験公開されていますから、既にご利用の方も多いと思います。

現在のトップページには神奈川県庁を中心とする1/18000図が示されています。
横浜の地図が選ばれた理由は、上記のように、横浜市全域が縮尺レベル2500になったためでしょうか。
ウオッちず も、2月から電子国土の地図になり、拡大が2段になったのですね。
7月末までは、従来の地形図の画像も表示できると書いてありますから、見比べるなら今のうち。
電子国土ポータルトップから「空中写真を見る」に行くこともできます。
電子国土基本図(オルソ画像)のラジオボタンが選択されている状態で神奈川県庁を検索すれば、先の地図と同じ場所になります。オルソ画像も 1/2500まで拡大可能。
[77607] 2011年 2月 6日(日)15:29:03oki さん
電子国土基本図(は使えない)
今日は、休日だというのに朝からお仕事。少し飽きてきたので、軽く書き込みを。

[77603] hmt さん
国土地理院の発表 によると、2月1日から、「電子国土基本図(地図情報)」が正式公開の運びになったとのことです。

「電子国土」や「基盤地図情報」は、提供された当初から興味を持って見てきましたが、現時点での評価は「使えない」の一言です。

「電子国土」の利用法には、「基盤地図情報」をGISのデータとして使用する場合と、「電子国土ポータル」を「紙の1/25000地形図」の代替となる閲覧可能地図として利用する場合の二つが考えられます。
まずデータとしての「基盤地図情報」ですが、その大半はGISデータとしては使えません。大きな理由は、そのフォーマットと仕様にあります。「基盤地図情報」のファイルフォーマットは「JPGIS」と呼ばれるXMLファイルですが、極端に冗長な構成を取っており、ファイルサイズが巨大になります。たとえば、地図上の3点を結ぶ線分を示すのに、20行もの記述が必要になります。1つの点(経緯度)を示すのに、次のような5行を費やし、その他ヘッダを入れると3点で20行が必要です。
<jps:column>
<jps:direct>
<jps:coordinate>36.40388495 139.610253106</jps:coordinate>
</jps:direct>
</jps:column>
行政区域、鉄道、道路など、あらゆる地物についてこれをやるのですから、ファイルサイズは馬鹿馬鹿しいほど大きくなります。
しかも、ArcGISやGRASSなど通常のGISソフトは、このフォーマットのファイルを読めません。JPGISファイルを読めるのは国土地理院が提供する「基盤地図情報閲覧コンバートソフト」だけで、このソフトを使ってGISで一般的な「シェープファイル」に変換する必要があります。この変換の過程で、JPGISが持つ属性情報は失われます。つまり、これだけ冗長な構成を取りながら、変換後に得られるのは、ただの経緯度の連なりだけなのです。
さらに、道路に関しては、基盤地図情報が提供するのは「道路縁」の情報で、「道路中心線」ではありません。もちろん、交差点(他の道路との接続)に関する情報もありません。鉄道の方は、線路の本数だけ情報があります。つまり、複線なら2本、複々線の場合は4本の線路に関する情報です。代わりに、線路と駅との関係に関する情報は得られません。
このような状況なので、基盤地図情報のデータを用いて、GISで重要なネットワーク分析を行うことはできません。特定道路の周辺100mに住んでいる人口を求めるようなバッファ分析もできません。
要は、基盤地図情報はただの白地図、つまり白紙の上の線分情報に過ぎないのです。今までの紙の地図上に描かれていた線分に、経緯度情報を与え、経緯度の連なりとして示したもの、それが基盤地図情報です。それ自体としては必要なものでしょうが、少なくとも、私が期待していたような、GISでの分析に利用できるデータではありません。これなら、以前に提供されていた「数値地図(25000および2500)」の方がよほどマシです。

ただ一つ、基盤地図情報で使えるのは「DEM(標高)データ」です。現在、1/25000地図の等高線を元に作成された全国の「10mメッシュDEM」と、航空レーザスキャナ測量で取得された、都市部を中心とした「5mメッシュDEM」があります。私は、「10mメッシュDEM」をすべてDLし、全国の「赤色立体地図」を作成しました。「赤色立体地図」はこういうもので、従来の段彩図に比べ、地形の凹凸が格段に立体的に把握できます。通常はリンク地図のような赤色の地図なのですが、これに彩色し、「彩色立体地図」と名付けました。この「彩色立体地図」をGoogle Earthに貼付け、その上に「ウォッちず」の地形図を被せて全国の地形を観察するのが、現在の私の大きな楽しみなっています。この点については、「基盤地図情報」とそれを提供する国土地理院に感謝しています。

次に、閲覧できる地図としての「電子国土ポータル」ですが、私にとっては、これも従来の「ウォッちず」の方が上です。
一つの問題は、「電子国土ポータル」の地図表示面があまりに狭いこと。「電子国土ポータル」では、地図の表示枠は画面全体の7~8割程度の面積しかありません。そして私の環境では、地図表示枠のうち右側および下側の1/5の範囲がグレーの空白部分になっています。地図が表示されるのは残りの4/5の範囲です。したがって、地図表示面積は画面の半分にも足りません。何度もプラグインをインストールし直していますが、まったく修正されません。ですので、「電子国土ポータル」は使いません(不思議なことに、「オルソ画像」だと表示枠の全体に地図が表示されるのですけどね)。
で、今回「ウォッちず」の「電子国土基本図」を見てみたのですが、重大な難点があります。1/25000地形図では、大字と小字は文字の大きさで判別可能でしたが、「電子国土基本図」では両者とも同じ大きさで、まったく判別できません。これでは非常に困る。
また、「樹木に囲まれた居住地」の記号がなくなっています。「建物」の記号が従来より淡彩で表示されていることもあり、地方(田園地帯)での集落の状況が非常に分かりにくくなった、というのが正直な感想です。
「ウォッちず」では、1/25000地形図は7月末まで閲覧可能と注記していますが、つまり8月以降は閲覧できなくなると言うことでしょう。そうなるととても困ります。今のうちに、国土地理院から「ウォッちず」のすべての地図画像をDLしローカルで使えるようにしようと、本気で考えているところです。
[77608] 2011年 2月 6日(日)20:46:43千本桜 さん
ウォッちずの1/25000地形図と電子国土基本図
[77607] oki さん
今回「ウォッちず」の「電子国土基本図」を見てみたのですが、重大な難点があります。1/25000地形図では、大字と小字は文字の大きさで判別可能でしたが、「電子国土基本図」では両者とも同じ大きさで、まったく判別できません。これでは非常に困る。
同感です。しかし、これはどうも居住地名だけでなく、島や山の自然地名にも及んでいるようです。松島湾に浮かぶ個々の島々の名称と、それらを総称する松島群島という文字が同じ大きさで表されています。個々名の茶臼岳と総称の那須岳も同じ大きさで表されているところをみると、最初から「個々の名称」と「総称」の区別は考慮していないようです。
また、「樹木に囲まれた居住地」の記号がなくなっています。「建物」の記号が従来より淡彩で表示されていることもあり、地方(田園地帯)での集落の状況が非常に分かりにくくなった、というのが正直な感想です。
これも同感です。植生界や送電線や橋の表示もなくなりましたね。時代とともに地図に求められる物が変わってきたと受け止めるべきなのでしょうか。それにしても建物の色は淡すぎますね。文字情報が見やすくなる利点はありますが、少し淡すぎたようです。そのため、相対的に水部の藍色が強くなりすぎたようです。水田地帯では一条河川と水田記号がうるさく感じるでしょう。ちょっと目が疲れます。でも、電子国土基本図に踏切が表示されるようになったのは良案ですね。
[80531] 2012年 4月 17日(火)05:56:54【1】オーナー グリグリ
使いづらいよデジタル地図
昨日の東京新聞朝刊のこちら情報部の特集記事のタイトルです。国土地理院の電子国土の国土基本図が使いづらい点を取材したものです。落書き帳でも、電子国土の議論として書き込みがありますが、東京新聞の記事では、除外された地図記号など情報減で使えないという利用者の声が掲載されています。具体的事例として、二万五千分の一「浦賀」の例を挙げて、ペリー記念碑の記号がなくなっていたり、横須賀火力発電所の記号と送電線がなくなっていることを指摘しています。火力発電所の件は、東京電力が協力してくれなかったとの地理院のコメントもあります。私はほとんど利用しないのでよくわからないのですが、デジタル化への過程として捉えて、利用者の声を大きくすることによって、改善されていくようにすべきなのでしょうね。実際そう言う動きもあるようですが、このサイトでもそのような声を集めておいてもよいかなと。
[80533] 2012年 4月 17日(火)21:56:48Issie さん
Re:使いづらいよデジタル地図
[80531] グリグリ さん
昨日の東京新聞朝刊のこちら情報部の特集記事のタイトルです。国土地理院の電子国土の国土基本図が使いづらい点を取材したものです。

この東京新聞の記事は“周回遅れ”でしょうかね。
3月28日の朝日新聞(東京本社版夕刊)には,この「使いづらい」という声を受けて問題の送電線や記念碑などの掲載を“復活”させることにした,という記事が載っていました。こちらのブログ では当該記事とそれに関するイギリスやドイツの例について述べてられています。
批判の声の中には「戦時改描」なんて物騒な言葉も出てきているようです。
現に見えているものを載せるのは当然だというのは至極もっともで私も同意見なのですが,東電が協力しない理由が「テロ対策」というのが御時勢ではあるのでしょうね。前シリーズから「ブラタモリ」もモザイク画面が増えました。現地を知っている人にはバレバレのような気もしないでもありませんが。
この話,「軍事情報としての地図」という地図の本質の1つにかかわる話題なのかもしれません。

私はほとんど利用しないのでよくわからないのですが

私もほとんど利用していません。「電子国土」に限らず,googleマップのような民間のものも含めて。
理由はやはり,「使いづらい」からです。
紙の地図とは違って“シームレス”であるというのは,何より電子地図の優れたところです。
けれども如何せん,ディスプレイ画面は狭い。紙地図は多くの場合,折りたたむか丸めなければ持ち歩けない大きさで,にもかかわらず“紙の大きさ”という描写範囲の限界があるのですが,その範囲内において“一覧性”という点で狭いディスプレイ画面に勝ります。
縮尺を小さくすれば狭い画面でも広い範囲が描写できるわけですが,その分,情報が減ってしまいます。
そして,この縮尺が自由に変更できるという点。これも紙地図にはない電子地図の極めて優れた特長ですが,使う場面によってはむしろ致命的な欠陥になる。
つまり,たとえば「4cmで1km」という“縮尺の概念”が通用しないわけで,地図の上で距離や面積を把握することが非常に困難です。
実際の使用場面において,私は「地図は消耗品」と割り切って使用しています。必要のある都度,同じ地図を購入してたくさんの線を描き込み,色を塗りたくり,ハサミで切り刻む。
このような使い方も電子地図では難しそうです。いや,そういう使い方のできるソフトがないわけではないのかもしれませんが,私には紙地図の方が使いやすい。

というわけで,何か「電子国土」じゃなくて電子地図そのものに対する愚痴になってしまいました。
当たり前のことですが,紙地図にも電子地図にもそれぞれ優れた点とそうでない点があって,それが向いている場面と不向きな場面とがあるわけで,要は必要に応じて使い分ければ良い話です。特にほかの電子情報と関連付けて利用する,つまりGISの基盤として電子地図は不可欠なものです。が,とりあえず私の使い方では紙地図の方が使いやすいことが多い…という,それだけのことです。
[80536] 2012年 4月 18日(水)21:18:24【1】オーナー グリグリ
地図の縮尺スケールについて
[80533] Issieさん
そして,この縮尺が自由に変更できるという点。これも紙地図にはない電子地図の極めて優れた特長ですが,使う場面によってはむしろ致命的な欠陥になる。
つまり,たとえば「4cmで1km」という“縮尺の概念”が通用しないわけで,地図の上で距離や面積を把握することが非常に困難です。
これは同感です。Google Mapなどのネット地図を使っていて不便を感じるのは、直接的な距離感がつかみづらいところです。紙の地図では必ず縮尺表示とともに距離スケールが付いているので距離感がつかめるのですが、ネットマップではスケール表示がありません。

スケール表示がない理由としては、ネット地図は正距図法ではないからなんですかね。ネット地図は縦スクロールや横スクロールで経緯度が変わらないようにメルカトル図法になっているように思うのですが(確認はしていません)、そのため、緯度の違いによる距離差が比較的大きくなると思います。見た目では同程度の距離でもMapionの距離測で計ってみると大きな差を感じることがあります。このためスケール表示がないのかなと思ってしまいます。スケールをフローティング表示にして緯度によってダイナミックにスケールを調整することも出来ると思うのですが。

ところで、一般の道路地図などは正距図法なんですよね。スケールを出していることからの類推ですが。

と思って軽く調べてみたのですが、一般の地図帳は国土地理院の地形図や国土基本図を利用しているんですね(常識ですか?)。で、国土地理院の地図は縮尺によって図法が違うみたいですね。大きな縮尺は距離誤差が目立たないので(?)横メルカトル図法で、小さな縮尺では距離誤差を押さえるために(?)正角割円錐図法なのですか? 地図センターのこんなページがありました。専門ではないのでよくわかりません。
[80538] 2012年 4月 19日(木)00:17:12【4】Issie さん
ややこしい図法の話
[80536] グリグリ さん
スケール表示がない理由としては、ネット地図は正距図法ではないからなんですかね。

「縮小された“ものさし”そのもの」という意味での“スケール”は,電子国土基本図でも,たとえば Googleマップ でも画面上に表示はされていますね。けれども,「縮小率」という意味での“スケール”は表示されていません。
これは,使う側の環境によってディスプレー画面やプリンタの解像度が違えば“同じ範囲”を表示したり印刷したりしてもその大きさが違うわけで,「結果物の縮小率=縮尺」を指定することができないせいではないか,と考えているのですが,…違うかな?

以下,たぶん地図投影法に関しては専門の方もいるのではないかと思うし,たとえば「正角割円錐図法」なんて言葉が出てくると私も正直ついていけないのですが,とりあえず高校の「地理」の時間で扱うような範囲内で…。

まず,メルカトル図法は「正距図法」ではありません。
たとえば,メルカトル図法で描かれた長方形の古典的な世界地図を考えましょう。
この地図にも普通,“ものさし”“縮小率”双方の意味での「縮尺」が両方とも記載されています。けれども通常,そのものさしと縮小率の数字が表しているのは“赤道上”のそれです。つまり,長さ4万キロの赤道をどれだけ縮小しているかを表しています。
しかし,地球上にひかれている緯線のうちで長さが4万キロもあるのは赤道=緯度0度線だけです。たとえば,北緯60度線の長さは2万キロしかありません(cos60度 は 0.5 ですね)。けれども地図上の緯線の長さは赤道と同じです。ということは,実際の緯線の長さの2倍に引き伸ばされているわけで,距離が「正しく」表されていません。通常,普通のメルカトル図法の地図で距離が正しく表されているのは赤道上の任意の2地点間だけで,ほかの2地点間の距離を正しく表すことができず,したがって,メルカトル図法は「正距図法」ではないのです。
ではメルカトル図法で何が「正しい」かというと,「角度が正しい“正角図法”」に分類されます。この「角度が正しい」というのをすぐに頭に入るように説明するのはとても難しいので省略して結果だけ言えば,「地球上に同じ大きさの小さな円がたくさんあると仮定した場合、正角図法で投影された地図上でも全ての円がほぼ真円で表される」という地図です。つまり,狭い範囲であれば「形が正しく」描かれる,という性質を持っています。
ところが,普通のメルカトル図法では「赤道上の距離が正しく表される」ように描かれていますから,たとえば日本のように赤道から緯度にして30度も40度も離れている場所では距離や面積の歪(ひず)みが大きくなって正しく表示することができません(上の説明で言えば,“真円”が赤道付近よりも大きくなっている)。
そこで発想を変えて,地球を“横”にして赤道ではなく“特定の経線”上の距離が正しく表されるように描くようにした地図の作り方を「横メルカトル図法」と言います。基準の経線から離れて歪みが大きくなりそうになったら,別の経線を基準にすればいい。そうすれば,全体として歪みの小さい地図を広い範囲にわたって作ることができます。
繰り返しますが,メルカトル図法も横メルカトル図法も「正距図法」ではありませんから,距離も,したがって面積も正しく表すことができません(つまり,「正積図法」でもない)。でも,5万分の1,あるいは20万分の1くらいの縮尺で実際に刊行されている大きさの紙に収められる範囲内なら気になるほどの誤差は生じないので,「形が正しく」表示される(横)メルカトル図法がこの縮尺の地図には採用されています。

ところで,縮尺2万5千分の1でも5万分の1でも「地形図」の四辺のラインは緯線および経線です。作図の便宜上,この線は直線で引かれているようです。この5万分の1地形図を16枚貼り合せて4分の1に縮めたものが「20万分の1地勢図」ですが,この地図では元になった16枚の地形図の境目に黒い細実線が引かれています。そこで地図上の“東西方向”に引かれている線にものさしを当ててみてください。実はこの線が“直線”ではなく,少し湾曲した大きい半径の円周に近い線であることが分かります。
この大きさ(縮尺)になると,(横)メルカトル図法での歪みがそろそろ気になりだすのですね。つまり,メルカトル図法では無理が生じ始める。ついでに言えば,国土地理院が刊行している50万分の1“以下”の縮尺の地図は,使用している紙のサイズ自体がずっと大きいから,なおさら歪みの大きさが気になる。そこで,これらの縮尺の“小さい”地図はメルカトル図法よりも歪みが小さく広い範囲を表すことができる「正角円錐図法」の1つである「正角割円錐図法」が採用されています。
「円錐図法」というのは,“丸い地球”上の情報を紙に写し取るに当たって,その紙を円錐状に丸めてそれを地球にかぶせ,たとえば地球の中心に光源を置いてそれで紙に映った影をなぞって写し取った,と仮定して地図を描く方法です。
ちなみに,メルカトル図法は「円筒図法」。紙を筒状に丸めてそれで地球に巻き,紙に映る影をなぞって地図を描いています。古典的なメルカトル図法の世界地図は,この紙を赤道で地球に接するようにして巻いたもので,だから赤道上の距離(だけ)が正しい。横メルカトル図法は,それが赤道ではなくて“特定の経線”で,というわけです。
円筒図法であるメルカトル図法では,紙が地球表面に接している赤道または特定経線から離れるにしたがってその“紙面”が地球表面から急速に離れていきますから,歪みがだんだん大きくなります。
一方,地球(半面)にすっぽりとかぶさる“円錐”なら,円筒よりは広い範囲で地球表面に密着させることができます。つまり,それだけ歪みが小さい。北極または南極を上にして円錐をかぶせた場合,特に中緯度で円錐面が地球表面に近接するので,中緯度地方について歪みを小さく写し取ることができる。だから日本のような中緯度地域を広く描く場合に,この「円錐図法」が好んで用いられます(たとえば,新聞やテレビの天気図でも使われています)。そのうち,「角度が正しく」表されるように調整したものが「正角円錐図法」です。
この時,円錐を地球表面に密着させて特定の緯線(または地球を周回する線)で接するようにしたものを「接円錐図法」,円錐を地球表面に食い込ませて2本の線で地球表面と交わるようにしたものを「割円錐図法」と呼びます。円錐面と地球表面が近接する範囲が広い「割円錐図法」の方が歪みの小さくなる範囲が広いので,こちらを国土地理院が採用しているのでしょうね。円錐図法について詳しくは こちら をどうぞ。地図投影法一般については こちら地図投影法 のページで詳しく説明されています。

ところでこれは“紙の地図”の話。
ディスプレイ上の電子地図はまた少し違った投影のしかたをしているような気もするのですが,どうなんでしょうね。
[80540] 2012年 4月 19日(木)20:39:02futsunoおじ さん
電子地図の縮尺と図法
[80536] オーナー グリグリ さん
[80538] Issie さん

電子地図の縮尺は「ウォッちず」を例にするとの2万5千分1図というのは紙の2万5千分1図をシームレスでディスプレーに表示したものですが、このディスプレーの解像度(dpi)はどこでも同一ではないことから、目安として図の隅に「ものさし」があるのでしょう。

真の縮尺が言えない一番の理由は電子地図の図法の多くが円筒図法であることでしょう。これが国土全体をシームレスで、かつ画面の枠に沿って東西南北方向を表示できる図法になりますから。「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。

電子地図には2点間の距離測定などの機能が備わっていたりするので正確な縮尺は必要でないともいえます。ただ北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
[80544] 2012年 4月 20日(金)09:39:40オーナー グリグリ
思い違い
[80536]
紙の地図では必ず縮尺表示とともに距離スケールが付いているので距離感がつかめるのですが、ネットマップではスケール表示がありません。
と書いたのですが、これは完全な思い違いでした。[80538] Issieさん、[80540] futsunoおじさんが指摘されているように、どのネット地図にも「スケール・ものさし」は付いていますね。第7回公式オフ会の[「3県境探訪ルート写真集」をMapion地図をベースに作った際に、しっかりスケールを貼付けていたりしたのに、何を思い違いしたのか。

[80538]のIssie さんの丁寧な説明はとても良く分りました。ありがとうございました。地図投影法はずいぶん昔に教えられた記憶はありますが、等距、正距、等角、円筒、円錐なんてあまり好きじゃない言葉が並ぶと、どうも苦手です。[80540]でfutsunoおじさんが書かれているように、ネット地図は円筒図法で、経度と緯度が垂直・水平になっていると考えて良いようですね。実際にGoogle Mapの最小縮尺の世界図はメルカトル図法に見えます。南極大陸が巨大です。

[80540] futsunoおじさん
電子地図には2点間の距離測定などの機能が備わっていたりするので正確な縮尺は必要でないともいえます。
2点間やルートの距離測定の機能は進化していて、確かに使いやすくなりつつあります。Yahoo!地図はほとんど使っていなかったのですが、リニューアルしてずいぶん使いやすくなったようですね。
ただ北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
この点についても、「スケール・ものさし」は、地図を垂直方向にスクロールすると連動して変化していますね。今まで気付いていませんでした。よく見て使っていない証拠です。となると、あとは物差しを画面上で当てるような機能と言うことになるのですが、これは2点間の距離測定の機能そのものですから、結局、私が[80536]で問題提起したスケール機能は単なる認識不足と言うことでした。お粗末。

#このあと所用があり本日休暇
[80545] 2012年 4月 21日(土)13:12:24【2】Issie さん
電子地図の図法
[80540] futsunoおじ さん
「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。

[80544] グリグリ さん
「スケール・ものさし」は、地図を垂直方向にスクロールすると連動して変化していますね。今まで気付いていませんでした。

なるほど,これは私も気づいていませんでした。
参考までに,今では“旧版”になってしまった「2万5千分1地図情報」を見てみたら,こちらも「100m」スケールの長さが違いますね。つまり,これは“紙の2万5千図”をそのままスキャンして電子化したものではないということです。紙の地形図なら緯度によって100mの長さが違うはずがありません(ここが違ったら,紙地図のお約束の大前提が崩れ去ってしまいます)。
少し意外に感じましたが,考えてみれば当然で,今は地図の作成作業はかなり初めの方から電子化されているでしょうから,電子データ化された地理情報を紙地図の投影法に合わせて出力したものを製版・印刷しているのでしょう。

で,つまり,「ウォッちず」(電子国土基本図)の投影法(図法)は,紙の地形図のそれ(ユニバーサル横メルカトル図法)とは違うということです。
ご承知のように,紙の地形図の場合,どの地図も南北方向の緯度幅,東西方向の経度幅はすべて同じです(例外的に,はみ出るものもある)。だから,緯度が高い「宗谷岬」と緯度が低い「石垣島」とでは地図の“正味部分”の面積が違います。欄外の凡例とともに掲載されている“図の寸法”も,よく見れば上辺と下辺では長さが違う。つまり,地形図の図郭は“長方形”ではなくて“台形”。だから狭い範囲ならともかく,広い範囲にわたって地形図を隙間なく“同一平面”上に敷き詰めることはできないはずです(たぶん)。
それを電子画面上ではやっちゃっているのだから,同じ国土地理院の地図でも電子地図の図法は紙の地図のそれとは違うのでしょうね。

地図の上に緯線・経線が引かれていれば,それを頼りにどのような図法が採用されているかがある程度推測できるのですが,残念ながらそれが記載されていません。でも,恐らくはみなさんがおっしゃる通り,正軸の円筒図法(円筒の中心軸と地球の自転軸の方向が同じ)で投影されているのでしょう。たぶん,地図上すべての位置で緯線と経線が直交している。
けれどもそうすると,長方形に切り取った地図画面の上辺と下辺は緯線,左辺と右辺は経線となり,左辺と右辺の間の経度差は上辺でも下辺でも同じとなる。
しかし,実際は紙の地形図がそうであるように,上辺と下辺の長さ(距離)は違います。それが画面上では同じ長さで表示されているのだから,ここに既に「歪み」が現れています。逆に紙の地図の場合は,上辺・下辺の長さは実際と同じかもしれないけれど,そもそも図郭が“台形”であるということが,「歪み」そのものです。実際の地球上では緯線と経線は必ず直交しますから,図郭は“長方形”でなければなりません。でも,それを実現するのは不可能です。
つまりは,曲面上の情報を平面上に写そうとすれば必ずどこかに歪みが生じるわけで,わずか1枚の地形図や何平方ピクセル(?)かの電子画面上でもそれが既に始まっているのです。

とりあえず,北緯20度から45度の中緯度帯に位置する日本の地図であるなら,まだ我慢できる歪みかもしれません。けれども,高緯度地帯ではどうなんでしょうね。
最初の索引図として世界全体の小縮尺図を使うのならメルカトル図法のような円筒図法でも,とりあえずは構わない。
けれども,大縮尺で各地域の詳細な地図を描くのに,あるいはそれ以上に中程度の縮尺である程度広い範囲の情報を,あくまでも赤道上“だけ”が「正しい」正軸の接円筒図法を高緯度地方に適用し続けるのは,やはり不適切です。Google マップで北極“点”や南極“点”は記載できるのでしょうか。

[80540] futsunoおじ さん
ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。

だから本当は,縮尺の補正だけでなく,緯度帯や縮尺に応じて「適切な」投影法が選ばれる(あるいは“選べる”)システムがあってもいいかなと思います。実際のところ,コンピュータの中では緯度・経度の座標データを一定の計算に従って変換されたディスプレイ画面上の座標にプロットするという作業をしているのでしょうから。

…既に,そういうシステムになっているのかもしれませんが。


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