都道府県市区町村
落書き帳

制度と自治体名

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[78832] 2011年 7月 27日(水)18:02:08【1】hmt さん
「市制町村制」と「自治体の呼び名」 (1)制度と呼び名について
 1990年以降の変遷情報が積み重ねられてきた「市町村合併情報」は、2006年3月に、対象がそれ以前に拡大されることになり、88さんが担当されるようになりました[49902][49915]

2006年12月には リニューアルされて、現在の「市区町村変遷情報」という名になりました[55573]
「昭和の大合併」については、既にこの時よりも前に 軽々と乗り越えていたのですが、明治22年の「市制町村制施行時」に行なわれた「明治の大合併」となると さすがに 手ごわく、多大の歳月と労力とを費やしながら、今月完成したのでした[78755]
市制町村制施行先行して、明治22年3月に行なわれた5県の合併情報も、その直後に追加されました[78761]

[78787] オーナー グリグリ さん
以下の (3)【明治22年(1889年) 4月1日】以降のデータにおいて設置された市町村が、市制町村制施行を基準点とした場合のベースラインとなる市町村を定義するデータであり、現在に至る市区町村の網羅された原データと言えます。
[78790] オーナー グリグリ さん
と書きましたが、原データはすべて市町村であったかという話題です。

日野宿と4駅の存在が指摘され、その後、特に「日野宿」については「日野村」疑惑も出ています[78806]

この問題を考える時、次の3点をわきまえることが必要であると考えます。
(1)法律「市制町村制」により「市制」と「町村制」という2つの「制度」ができたこと。
(2)新しい法律の施行に伴って「自治体の呼び名」が定められたこと。【日野宿か日野村か】
(3)国の「制度」と 府県が定めた「呼び名」とは、(無関係ではないが) 同じものではないこと。

[78797] 88 さん も、この点を認識した上で、次のように発言されています。
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「宿」「駅」は、「町」でよいと考えます。(中略)制度上、「市」「町」「村」しかありません。
見た目の名称と、制度上の名称が異なるだけでしょう。
「宿」「駅」については、見た目の名称に捕らわれず、市制町村制という法律上の位置づけで判断すればよいと考えます。
#実は、正直に告白すると、日野宿や箱根駅などが市制町村制上の「村」ではなく「町」であった、という確たる証拠を確認してはおりません。元々、人口が集中した集落であり、「町」であろう、と考えただけです。
これについては、その気になって調べれば、根拠をきちんと確認できると確信していますが。
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「制度」の問題を論ずる際には、法律に付属した 「市制町村制理由」が よりどころになるでしょう。
現実に使われた「自治体の呼び名」の問題は、当時の公式記録に残された自治体固有名の調査が必要です。

本題に入る前に、市制町村制理由 を読み直してみて、気がついたことを一つ。
左61頁4~5行
今前述の理由に依り此区画を以て悉く完全なる自治体と為すを必要なりとす。即府県郡市町村を以て3階級の自治体と為さんとす。

「自治体」と言葉が使われているのですね。「自治体」が明治の法律用語だったとは知りませんでした。
現行法では、憲法第 92条で使われた「地方公共団体」という用語[75012]に従い、地方自治法においても、例えば第2条第3項「基礎的な地方公共団体」というように表記されています[75018]
[78833] 2011年 7月 27日(水)18:16:30【1】hmt さん
「市制町村制」と「自治体の呼び名」 (2)宿駅と称し町と称するもの、村落と同一制度の下に立たしめん
[78832]で挙げた2つの問題のうち、明治21年法律第1号「市制町村制」に基づく「制度」に関する本論です。
市制町村制理由 33コマ右62頁の9~13行目の記載【適当に句読点と改行を入れました。】
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本制に制定する市町村は 共に最下級の自治体にして、市と云い町村と云い 都鄙の別に依て其名を異にするに過ぎず。其制度を立つるの原質に於ては 彼此相異なる所なし。
元来 町と村とは 人民生計の情態に於て其趣を同くせざるものありて、細かに之を論ずれば 均一の準率に依り難きもの なきに非ずと雖も、本邦現今の状況を察し 旧来の慣習に依て 之を考うるに、都会輻輳の地を除くの外、宿駅と称し町と称するもの、施政の大体に於て村落と異同あることなし。
故に 今之を同一制度の下に立たしめんとす。
其施治の細目に至っては或は多少の差異を見ることあるべしと雖も、此等は制度の範囲内に於て、執行者の処分斟酌宜しきを得ると否とに在る可きものとす。
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細かく見れば町と村との暮しは違うが、宿駅とか町とか言っても、施政の大体は村落と変わらないから、同じ制度を適用する。
「制度」として存在するのは、【都会輻輳の地を除けば】「町村制」だけ。
“宿駅と称し町と称するもの”とあるので、制度の名は「町村制」であっても、その対象とする「自治体の呼び名」は、「村」と「町」に限らず、「宿」や「駅」も許容されている と理解することができます。

「同一の制度」の下に立つのですから、[78790]に挙げられた「日野宿、箱根駅、与瀬駅、吉野駅、府中駅」が、制度上「町」であるか「村」であるかを論じる必要はなく、もちろん市制町村制理由にも言及はありません。

[78790]の提案 “「1市22町1宿4駅293村設置」とした方がよいのではないでしょうか” は、変遷情報の中での案内目的の注記に関するものです。これを提案のように「自治体の呼び名」に基づいて記すのか、原案のように「制度」に基づく「変更種別」欄に合わせて記すのかは 編集者の裁量ですが、私としては提案の方がわかりやすいと思います。

個別入力データ「変更種別」については、「呼び名」でなく 法律上の「制度」に基づいて 記されるべきものでしょう。
既に明らかなように、「制度」として存在するのは「市制」と「町村制」だけです。
従って、変更種別欄の記載は、横浜市については「市制」、320町村についてはすべて「町村制」になる筈です。

[78797] 88 さん
見た目の名称に捕らわれず、市制町村制という法律上の位置づけで判断すればよいと考えます。

これは、まことに正論であると思います。箱根駅の変更種別を見た目の名称から「駅制」とすることはできません。
さりとて「町制」を選ぼうとしても、法律には この言葉がありません。
「町制」という言葉は、「市制」「町村制」という法律用語から類推して作られた「俗語」なのではないでしょうか。

現在の地方自治法においては、「市制」という言葉も 附則で使われているだけであり、第8条「市となるべき普通地方公共団体」のような使い方がされています。
しかし、「市制」は 昔の法律以来ずっと使われている言葉であり、市になれば 郡の範囲外になる扱い などの実質的な変化も、現行制度に継続されており、引き続き使用されているのも、それなりの理由があると思われます。

これに比べて、村か町かは「制度上」での実質的な違いがなく、ほぼ「自治体の呼び名」の違いに限られます。
現行法において「町となるべき普通地方公共団体」が「○○村」→「○○町」となる場合の「法律的根拠」に基づく変更種別は、「名称変更」でしょうか?
町村制時代の「○○村」→「○○町」も同様?

なんだかよく判らなくなってきましたが、とりあえず、「町制」「村制」という言葉は、昔も今も法律的な根拠が不確実なのではないか という疑いを記しておきます。

せっかく「市制町村制理由」の「町村制」序論部分を紹介したので、「市制」も記します。
“都会輻輳の地”に施行する「市制」についての序論は、33コマ右62頁13~17、18行目に記してあります。
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然れども都会の地に至ては 大に人情風俗を異にし 経済上自ら差別あり。故に之を分離して 別に市制を建て 機関の組織及び行政監督の例を異にせり。
是固より 町村制と其性質を異にするに非ず。其市民の便益と実際の必要とに出て然らざるを得ざるなり。
即現行の区制に継続する所のものなりと雖も、従来の区は郡の区域を離れずして 行政上別に吏員を置き 事務を処理するに過ぎざりしも、今改めて独立分離せしめ、従来区の下に町ありしも、之を改めて市を最下級の自治体と為さんとす。【中略】
今此市制を施行せんとするものは三府其他人口凡二万五千以上の市街地に在りとす。
------------------------------

人口25000人以上の都会は、町村と大いに人情風俗が違い、経済力の差もある。そこで、町村制と本質的に異なるわけではないが、「市制」という別制度を作って市民の便益を図る としています。郡区町村制の下でも、郡と別に「区」の行政吏員を置いていたが、今回はその区域の「郡-町」構造を廃止して「市」に改めます。
【中略】の部分は、東京・京都・大阪について三市特例法を設けるという内容です。
[78858] 2011年 8月 2日(火)19:34:57【1】hmt さん
「市制町村制」と「自治体の呼び名」 (3)変遷情報収録対象の「市区町村」
[78832][78833]の続きです。

市区町村変遷情報の 北海道 が 更新されました[78845][78854]
改めてこれを拝見しながら、北海道だけの問題ではないのですが、個人的に気になったことを記してみます。

最初に、変遷情報の収録対象となる「市区町村」とは何か、その「変遷」とは何かということです。

現行制度の下における「市区町村」の大部分は「市町村」であり、これは「基礎的な地方公共団体」とされています。
2000年施行の地方自治法改正で、「特別区」が「基礎的な地方公共団体」の仲間入りをしました[75410]
特別区は、それ以前から 区議会を持つ自治体であり、その多くは「市」を上回る規模であるため、東京都では 「区市町村」と呼んでいます。しかし、一般的には耳慣れない言葉[75111]であるようですね。

「市区町村」という言葉が使われるのは、政令指定都市が条例で設ける区【行政区】を含むためでしょう。
政令指定都市の「行政区」は、区議会を持たないことでもわかるように自治体ではなく、行政の都合で設けた区画にすぎません。しかし区役所があり 住所の表記に使われる身近な存在であるため、制度上の違いは別として、「市町村」及び「特別区」と併せて「市区町村」と総称されます。

19都市 170区に及ぶ行政区【データベース検索の一覧表示結果は[75505]にリンク】は、数から言えば23特別区を圧倒しており、そのために 「区」は「市」の下位に置かれて、「市区町村」という表記になるのでしょう。

特別区と政令指定都市の行政区以外にも種々の「区」があり[75425][76149]、その中には法人格のあるものや住所の表示に使われるものもありましたが、あまり一般的でないので、すべて対象外とされています。

「町」という語尾が付いていますが、例えば東京都千代田区「三番町」の類は、「市区町村」に含まれません。
東京市 の市制施行前の町村名に麹町区三番町があるように、昔は郡部の「町」と同列だったのですが、市制施行により「市」の内部になった「町」は、「字」と同類の住所地名として使われるだけです。

1947年現行法になる前の制度は、市制と町村制とが中心でした。その他に、地域や時代により、東京都制・北海道区制・北海道一級町村制・北海道二級町村制・沖縄県及島嶼町村制など種々の制度がありました。これらの制度による「市区町村」は、府中駅の「駅」など異なる字が使われた事例[78790]を含め、現在に準じて変遷情報の対象とされています。

次に、市・区・町・村でないが、便宜上変遷情報の対象に含まれるグループがあります。

「郡」は、地方自治体として機能していた時代がありました。「市制町村制理由」には、「府・県」、「郡」・「市町村」を“3階級の自治体と為さんとす”と記されています。
# 原文[78832]には 3階級を分かつ句読点がありません。便宜上、「市町村」を重視した区分けで記しましたが、規模からすれば「府県」「郡市」「町村」の3階級と記すべきかもしれません。

自治体である「郡」があったのは、法律「郡制」の施行日[62662] から 1923年の「郡会」廃止までです。
その後の「郡」は 行政区画(県の出先機関)になり、それも 1926年に 廃止されました [51042]
昭和になってからも、同一県内にある同名の町村を区別する地理的名称としての機能を果たしていたのですが、現在ではその働きも薄れ、影の薄くなった住所地名です。
こんな具合に浮沈の歴史はあるものの、市町村を包括する広域自治体の役割を果した過去もある「郡」は、「市区町村」の仲間として 変遷情報の収録対象になっています。

北海道の「支庁」は、名前の通り北海道庁の出先機関ですが、これも便宜上変遷情報の収録対象になっています。
もともと明治2年に蝦夷地を北海道にして 11ヶ国を新設し[59112] 、86郡を設けた際には、国郡を行政区画にするつもりだったのでしょう。しかし、90近い郡というのは多すぎました。数郡を管轄していた郡役所は、結局のところ明治30年(1897)の 19支庁に変えられました。現在の「変遷情報・北海道」は、ここから始まります。

「支庁」は、「行政区画」であるという点では、1923~1926年の「郡」や、政令指定都市の「行政区」と共通します。
「北海道」が自治体になった戦後の支庁や現在の9総合振興局+5振興局は、更に行政区に類似した存在です。
数の多すぎた「郡」を、最終的に14区画にまとめた「支庁」は、道内を区分する広域地名として適当であり、地図にも使われて、広く認知されています。

都道府県の支庁 は北海道に限ったものではありません。しかし、「地理的存在」としての性格【例えば地図への表示】が北海道ほどでない東京都島嶼部や山形県の支庁は、準メンバーとしても「市区町村」の仲間入りができません。
[78867] 2011年 8月 3日(水)19:22:56hmt さん
「市制町村制」と「自治体の呼び名」 (4)市区町村の「変遷」
変遷情報収録対象である「市区町村」の種類【郡・支庁などを含む】[78858]に続き、その「変遷」の意味を探ります。

現在の変遷情報にリニューアルされる直前「市町村合併情報」時代ですが、収録対象とする「変遷」につき、
「都道府県市区町村」(「地方行政組織」と言い換えてもよいかな?)の3要素、すなわち「区域」、「主体」、「名称」の変化に関するものを原則としたらいかがかと考えます。
という意見を記したことがありました[55567]

「名称」の変化についての異論は、あまりないものと思われます。
「区域」の変化について、当時は境界変更の取り扱い方針が未定でした。[55569]では 実例を挙げて、少なくとも「実質的に合併に関与する境界変更」は、普通の廃置分合と同様に収録対象にしたい と論じました。
現在では、88さんにより、重要な境界変更が ほぼ漏れなく収録されるようになっていると思われます。

残る問題は、「主体」の変化であり、これは法令に基づく「制度」の変化とも言えます。

昭和22年5月3日、大日本帝国憲法に代わる「日本国憲法」が施行され、具体的な地方制度も、市制・町村制・東京都制・道府県制という一連の法律に代って制定された「地方自治法」に基づく新制度になりました【例えば[75012]】。
このように、根拠法令が変れば市区町村「制度」が変り、それに基づく「市区町村」の「名称」は変わらなくても、市区町村の「主体」は変化します。

もっと前の北海道の制度についての発言ですが、[55731] 88 さん自身も、同じ言葉【名称】のまま、根拠法令により権能【主体】が異なってくる【つまり、市区町村が変遷する】ことを記しています。
おっしゃるとおり、「区」も「町」「村」も、言葉は同じですが、時代により根拠法令もその権能も異なります。
この変更種別の説明は、十分ではありません。もっと言うと、私自身がまだ頭の中で整理できていません。特に北海道はよくわかっていません。

その後、[65018] むっくん さん からも、町村制の法的根拠などの明示を求める提案があり、[65198] 88 さんの記事は、これに答えるものと理解されます。
いずれの記事にも、全国の市区町村が関係する昭和22年の地方自治法体制への移行についての言及がなされています。
# 「昭和22年の移行」などを変遷情報に反映させることについては、もっと新しい 88 さんの記事があったように記憶するのですが、ちょっと見つからず、リンクすることができません。

「区域」も「名称」も変わらない。しかし、根拠となる法令が変ったために「主体」の変更があった。
このような事例の最たるものと私が考えるのは、1898年10月1日の三市特例法廃止に伴う、三大都市の実質的な誕生です。

この時の「変遷」については、「東京市」について [74320]で記していますが、「京都市」「大阪市」についても同様です。
三市特例法時代には、官吏である府知事が市長を兼ね、市の吏員もいませんでした。
このような「名前だけの東京市」から脱却して、名実ともに具備した「自治体としての東京市」に生まれ変ったのです。
このような思いが、10月1日を 東京市の「自治記念日」とし、現在の「都民の日」に引き継がれているのです。

[74320]では、市の変遷 に 「東京市の実質的な誕生 1898年10月1日」が記録されていないことを指摘したつもりだったのですが、連動元の変遷情報への入力がないと、グリグリさんとしても動けない[74330]ようでした。

88さん、[74833]で 私からも案を提示しています。変遷情報への入力につき ご検討願います。

三大都市の自治権獲得ほど目覚しい事例ではないかもしれませんが、開拓時代の変則的な制度である 北海道二級町村制から、府県における町村制に準じた制度である 北海道一級町村制への「昇格」も、実質的な「自治体の誕生」に近いもので、変遷情報に記録する価値があるのではないでしょうか。

参考までに、北海道二級町村制の下では、町村長は北海道庁長官の任免により、助役は置かれず、町村会も定員が少なく、条例規則の制定権もないなど、公権力による強い統制と保護の下に置かれていました。
「名前だけの東京市」ほど極端ではないにしても、「名前だけの自治体」と言いたくなります。


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