[73231]に続いて、ほぼ時代順に温泉駅を追います。
1949年5月11日、山陰本線の「湯町」が「玉造温泉」に改称されました。
戦争をはさんで、(1920/5/15)鉄道省→(1943/11/1)運輸通信省→(1945/5/19)運輸省→(1949/6/1)日本国有鉄道と組織は変りますが、日本国有鉄道発足直前に改称されたこの「玉造温泉」が、29年間の省線時代に、私鉄から引き継いだ2駅に加えられた唯一の温泉駅なのでした。
戦後に遊楽禁止が解けて、玉造温泉に続いて湯田温泉(1961)、加賀温泉(1970)、海潟温泉(1972)、芦原温泉(1972)、武雄温泉(1975)、あつみ温泉(1977)、和倉温泉(1980)、天塩川温泉[仮](1981)と増えてゆくのですが、まだまだスローペースでした。
温泉駅が一挙に増えるのは、国鉄改革に伴なう第三セクター鉄道とJR6社の誕生です。
その第1号は、第1次廃止対象特定地方交通線である神岡線が、1984年に三セク(神岡鉄道)に転換すると同時に誕生した「奥飛騨温泉口」駅(神岡駅を改称)でした。この駅は、2006年12月1日に路線と共に廃止され、現存しません。
次いで1986年には、長良川鉄道「湯の洞温泉口」(美濃立花を改称)、三セク新線・野岩鉄道「川治温泉」と「湯西川温泉」。
翌1987年には、野岩鉄道・東武鉄道経由で東京への一貫ルートが形成れた会津線が三セクの会津鉄道に転換し、「芦ノ牧温泉」「芦ノ牧温泉南」「湯野上温泉」が改称により生まれました。
このルートは 2006年になると野岩鉄道に更に2つの温泉駅(上三依塩原温泉口と中三依温泉)が改称に生まれているので、会津鉄道3駅、野岩鉄道4駅、東武鉄道鬼怒川温泉を合わせて8駅という 温泉駅最多ルート になりました。
三セク誕生と並行して、東北本線では 「浅虫温泉」(1986)、「金田一温泉」(1987/2/1)への改称がありました。後者は 2002年新幹線八戸延伸に伴ない、三セクのIGRいわて銀河鉄道に移行したので、現在の二戸市は十番勝負の条件を満たしていません。
そして、1987/3/1飯山線における「戸狩野沢温泉」への改称が、「国鉄時代最後の温泉駅」誕生になりました。
その1ヶ月後、昭和62年(1987)4月1日に 国鉄分割民営化による JR6社の時代を迎えます。
[73216] 伊豆之国 さんのリストでは、S63.3の「川湯温泉」と、平成になってからの18駅が民営化された6社による温泉駅です。6社と書きましたが、北海道2駅、東海1駅、西日本2駅、九州2駅に対して、東日本が12駅と圧倒的で、四国は0駅。 JR東日本は、殊の外に温泉駅がお好きと見受けました。
陸羽東線の宮城県大崎市(もと鳴子町)を見ると、川渡温泉・鳴子御殿湯・鳴子温泉・中山平温泉と連続した後、県境を越え山形県最上町に入ると2駅目に赤倉温泉、同じ最上町内に更に瀬見温泉という具合。前記会津鬼怒川間3社に次ぐ温泉駅ルートです。
時代を少し戻して、「加賀温泉」駅。
近くに温泉もなかった北陸本線の小駅「作見」が、動橋駅と大聖寺駅との特急停車争奪戦の解決策である「ハブ駅」として特急停車駅になり、「加賀温泉」駅と改称されたのが国鉄時代の1970年でした。
その直前の時刻表を見ると、周遊指定地「加賀温泉郷」として、北陸鉄道の路線が、大聖寺駅から山中へ、新動橋駅から山代経由河南へと存在しました(他にバス路線)。1965年以前には、動橋から片山津へ、そして粟津温泉駅への路線もあったようです。
特急の停まるハブ駅の出現によって温泉の客は加賀温泉駅に集まる旅館の送迎バスに移行し、ローカル鉄道路線は、その存在意義を失うことになったのでしょう。
戦後の私鉄温泉駅は、近鉄の榊原温泉口(1965)と湯の山温泉(1970)、一畑電気鉄道の松江温泉(1970)→松江しんじ湖温泉(2002)、富山地方鉄道の宇奈月温泉(1971)、大井川鐵道の接岨峡温泉(1990)と川根温泉笹間渡(2003)。
軌道は函館市電の湯の川温泉(年代?)と伊予鉄道市内線の道後温泉(1960)。
三セクの温泉駅は1990年以降も増え続け、この年に宮津線が転換した北近畿タンゴ鉄道で木津温泉への改称。
1993年は、先ず平成筑豊鉄道田川線に「柿下温泉口」が3月開業。
同年8月には、前年に当時
日本一長い駅名 を作って評判になった南阿蘇鉄道が、2匹目の泥鰌をねらって阿蘇下田に城郭風で温泉施設を併設した新駅舎を完成させ、「阿蘇下田城ふれあい温泉」と改称しました。
1994年は、三セク新線として開業した智頭急行の「あわくら温泉」。2002年長良川鉄道の新駅「みなみ子宝温泉」。
2004年、九州新幹線開業で鹿児島本線の一部が肥薩おれんじ鉄道に移管され、日奈久の改称で「日奈久温泉」。
最も新しい温泉駅は、今年(2009)の4月の改名により誕生した「人吉温泉」(くま川鉄道)です。 JR九州肥薩線は人吉のままで、1989年に三セクに転換した湯前線の駅だけの改称です。
最後に、過去帳入りした温泉駅をまとめておきます。
前報に記した戦前には、青島温泉、綱島温泉、野沢温泉、佐里温泉(松浦温泉)の4駅がありました。(復活した鶴巻温泉を含まず。)
戦後は、現在の有馬口が有馬温泉口だった時代があり(1951~1954)、江若鉄道には、雄琴から改称した
雄琴温泉 がありました。江若鉄道が 1969年に廃止になった後にご承知のように国鉄湖西線ができたわけですが、こちらの雄琴は 2008年に「おごと温泉」に改称し、歴史を繰り返した形です。
これに大隅線海潟温泉
[73216]と、前記のように三セク転換後に廃止された奥飛騨温泉口を加えて戦後4駅で、戦前分と合わせて8駅となります。
【本題の温泉駅からは離れますが、本文を追記したついでに、リンク記事にない長い駅名情報】
2001/7/27開業の 舞浜リゾートラインディズニーリゾートライン線 には、「東京ディズニーランド・ステーション」と「リゾートゲートウェイ・ステーション」があり、この2つが 長い駅名日本一 になっていると思われます。
外国の駅名では、 ウェールズの 「Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch」
[15585] kenさん が駅名になっていますから、おそらくこれが最長。読み方は
[19115]をご覧ください。