今回の十番勝負問十
■読みの母音が「あ音」と「う音」だけの市(両音を含む)
について、主に拗音について解釈が分かれていますが、自分としては拗音が入る羽生市と日向市(「ん」を許容する場合は周南市も)は想定解に含まれてしかるべきなのではないかと考えています。
仮名で考えた場合、
[101979]白桃さん言うように「ニ、ヒ、シが入る」という指摘もありますが、これはあくまで表記上の問題です。日本語の仮名は表音文字で、基本的に表記(文字数)と発音(音数)が一対一で対応をするものではありますが、拗音に関してはこれが二対一になっています。要するに、2文字で1つの音(モーラと言います)を表現しているということですね。拗音の中でも、「イ段+小書きのヤ行」で表現されるものを開拗音と言いますが、この開拗音は直音(ナ行であれば「ナ・ヌ・ノ」)に対して子音が口蓋化したことを表すために、常に口蓋化が起こっているイ段の文字を便宜的に使用しているに過ぎません。今回の共通項が「読みの母音」に着目している以上、表記上イ段の文字が現れることを以って除外の理由にするのは適切ではないと考えます。
日本語の読みをラテン文字で写し取ろうとしたものがいわゆるローマ字で、特にヘボン式ローマ字は日本語の音韻体系に囚われずそれぞれの音を(英語読みに即した)ラテン文字表記に変換しています。拗音に関しては(一部を除き)「y」を子音と母音の間に挟むことにより口蓋化を表現しています。
[101966]グリグリさんは「母音かどうかという点は曖昧」と仰っていますが、
[101980]とりぴーさんも書いている「半母音」のことでしょうか? 「半濁音」が「濁音」でないように、「半母音」もまた「母音」ではないと解釈するのが妥当でしょう。日本語のローマ字表記においては先の「y」がこの半母音(あるいは口蓋化)を表していて、半母音を母音と解釈した場合同じく「y」を含む湯沢・村山・那須烏山・熊谷・深谷・浦安・勝山・野洲・養父・津山・福山・松山の12市も、母音が3種類あることになり想定解から外れてしまいます。それこそ「共通項のシンプルさ」という観点からしても半母音「y」は子音であるとしてスッキリさせたほうが良いのでは。なお、「y」と同じく「w」も半母音に含まれるため(ちなみに、子音・母音間に「w」の方の半母音が入った拗音「くぁ・ぐぁ」は合拗音と呼ばれます)、これも母音と解釈してしまうと更に砂川・深川・須賀川・桜川・諏訪・中津川・桑名の各市も外れます。日本語の音韻体系から考えても、1音(モーラ)は基本的に1つの子音と1つの母音から構成されており、子音が無い(ア行)ことや母音が無い(「ん」及び「っ」)ことはあっても「母音が2つ」ということは無いため、「y」(および「w」)を母音と解釈するとおかしなことになります。また、シャ行(とチャ行、及びそれぞれの濁音)に至っては/s/音(/t/音)の口蓋化が進み別の音素/ɕ/(/t͡ɕ/、/ʑ/、/d͡ʑ/)へと変容しています。ヘボン式ローマ字ではこれを汲み取って「sh」(「ch」、「j」)と書き表すため、周南(shūnan)に至ってはそもそも半母音は登場しません。
[101966]グリグリさんの言う「できれば微妙なところは解答しないでという願い」は確かに出題者側に立ってみれば尤もなのですが、やはり解答者側としては「ギリギリを攻める」とまではいかなくとも、他と比べて異質なところや、少し変わったところ、要するに「変化球」を答えたくなるものです。自分は問十では想定解群の中で唯一促音(「っ」)が入る福生を答えましたが、これは共通項が読み(発音)に着目したものでも表記に着目したものでもまず間違いなく除外されない変化球であろうと思い解答したものです。共通項のいくつかの可能性を考えて解答前に想定解数を数えたもののどうしても合わなかったのですが、「拗音は含まずに「ん」は含む」理論の合理的な共通項が思い浮かばなかったためです。たとえば「ローマ字表記をした時に使われる母音がaとuの2種類のみ」とすれば「っ」・拗音・「ん」の全てを含んだ62市になり、「仮名で表記したときにア段とウ段の文字だけで構成されている」とすれば拗音も「ん」も除外され56市となります。もし想定解数が62市とアナウンスされていれば、僕は迷うこと無く周南市を答えていたと思います。