[110011] グリグリさん
アバウトな点は主に次の2点です。
(1) 赤道半径と極半径から中間緯度の半径を緯度で単純比で按分計算し、中間緯度上の円周長を計算していること
(2) 中間緯度上の円周長から東端と西端の緯度差分の円周距離を計算しているが、緯度上の円周は直線距離にはならないこと
どなたか得意な方、東端経緯度と西端経緯度からの計算式を考えてもらえませんか。
この問いに、数学の問題として興味を持ちました。幾何学の問題として数学的に解釈し、解いてみたいと思います。地理をきちんと勉強したことがないので地理的には的を外すかもしれません。以下、東端を北緯θ_1,東経φ_1とし、西端を北緯θ_2,東経φ_2とします。(単位はrad)
(1)は「東端と西端の中間緯度上の円周長をどのように計算すべきか」という問いです。まず、現行の計算方法は次の形だと読み解きました。まず「中間緯度」αを、α=(θ_1+θ_2)/2とし、これが0とπ/2の間を分ける比によって赤道半径と極半径を按分した値をその緯度の地球半径R_αとする。そして2π R_α cosαを緯線長として採用し、東西長はR_α(cosα)(φ_1-φ_2)としている。これは妥当か、というということですね。
この計算方法でαがかかわるのはR_αとcosαですが、αの微小な変化によって影響を受けるのは圧倒的にR_αよりもcosαです。地球の半径は極半径と赤道半径で見ても差は0.3%程度であり、まして北緯20°から45°程度という狭い範囲の緯度での差はこれよりもさらに小さくなります。それに対しcosαはcos20°/cos45°≒1.329とこの範囲でも最大3割の誤差です。妥当性の考察の際には、R_αは定数とみなし、cosαが妥当な値なのはどのαか、に絞るのがよさそうです。
そう考えると、「緯度の平均のcos」をとるよりも「緯度のcosの平均」をとった方がより妥当かもしれないと思えてきます(ここは数学というより主観です)。別の言い方をすると、「平均緯度上の緯線長」ではなく「緯線長の平均」をとるということです。数式で陽に書くと、α=arccos((cosθ_1+cosθ_2)/2)とすることになります。
(2)は「東端と西端の中間緯度上の円周長は東西長として妥当なのか」という問いです。既に
[110017]でスカンデルベクの鷲さんがご指摘のこととたぶん重なりますが、緯線の弧の長さは最短距離ではなく、2点間の最短距離は大円の弧の長さです。まず、一般に北緯θ_1,東経φ_1の点P_1と北緯θ_2,東経φ_2の点P_2を結ぶ大円の弧の長さを計算してみます。簡単のため地球は半径Rの球とし、地球の中心を原点として、本初子午線と赤道の交点を(R,0,0)、北極点を(0,0,R)とする座標系で極座標を直交座標に変換すると、2点の直交座標はP_1(R cosθ_1 cosφ_1, R cosθ_1 sinφ_1, R sinθ_1), P_2(R cosθ_2 cosφ_2, R cosθ_2 sinφ_2, R sinθ_2)となります。この2点の位置ベクトルの内積OP_1・OP_2をR^2で割ることで角P_1 O P_2のcosが得られますので、この値のarccosに半径Rをかけると大円の弧の長さとなります。計算すると、大円の弧の長さはR arccos(cosθ_1 cosθ_2 cos(φ_1-φ_2)+sinθ_1 sinθ_2)となります。
今計算した一般の大円の弧の長さは、南北にずれた東端と西端を結ぶ「斜め」の長さになっています。東西長は「まっすぐ東西」の長さがほしいわけですので、θ_1=θ_2=αを代入して整理すべきでしょう。つまり、R arccos((cosα)^2 cos(φ_1-φ_2)+(sinα)^2)です。
最後は仕上げです。(cosα)^2=((cosθ_1+cosθ_2)/2)^2,(sinα)^2=1-(cosα)^2を代入して整理しましょう。結論として、東端が北緯θ_1,東経φ_1、西端が北緯θ_2,東経φ_2のときの東西長の計算式は
R_α arccos((4-(cosθ_1+cosθ_2)^2(1-cos(φ_1-φ_2)))/4)
となりました。ただしR_αは、北緯α=arccos((cosθ_1+cosθ_2)/2)における地球半径であり、具体的にはR_α=(6378.1(π-2α)+2*6356.8α)/πです。
この式を用いて東京都の東西長を計算すると、1840.9kmとなりました。ほんのわずかに短くなったのは想定通りなので大外しはしていなそうですが、逆に言えば大山鳴動鼠一匹でしょうか...