南大阪市という市が過去に存在したことをご存知でしょうか。1991年(平成3年)10月1日には大阪の南にあるということで阪南市が誕生していますが、南大阪市という市は見つかりません。また、そんな市があったことを記憶している人もほとんどいないでしょう。それもそのはずで、南大阪市は瞬間に存在した市だったのです。大阪府の羽曳野市は、市になる前は南大阪町と呼ばれていました。このため一旦、南大阪市で市制施行し、次にあらかじめ決めていた羽曳野市に改称しました。すなわち、南大阪町→(市制)→南大阪市→(改称)→羽曳野市、という手続きが1日で行われました。南大阪市は、まさに一瞬だけ存在した瞬間の市だったのです。
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この市制施行日にのみ存在した市名については、"じょにー"さんが以前から数多くあることを指摘されていましたが、"issie"さんが国会図書館で自治省告示を調べ正確に確認してくれました。その結果は、
ARC 市制施行日に名前を変えた市とは?にまとめてあります。なお、1949年(昭和24年)5月3日に埼玉県北埼玉郡忍町が市制施行した行田市のケースは、総理庁告示ではなく埼玉県告示で確認したものです(行田市HPの例規集より)。一覧表にはありませんが、1959年(昭和34年)1月1日に高知県の土佐市が市制施行する際に、高岡町→高岡市→土佐市、と一旦高岡市が存在した可能性がありますが、現時点では確認できていません。なお、現在までに消滅したすべての市については
「消滅した市名」で紹介します。
市制施行日のみのケースの多くは既にある市と同名になることを回避するための改称ですが、茨城市、南大阪市、美陵市、秋多市はそうではありません。茨城市以外は町名を一旦市名にして、市制施行するにあたって名称を一新したものでしょう。茨城市の場合はちょっと変わっていて、磯原町以下6町村が新設合併し一旦「茨城市」を名乗ったのですが、すぐに「北茨城市」に改称したものです。これは、本当は「茨城市」としたかったのですが、茨城県の他の自治体から県名と同一名称を名乗ることに対して横やりが入ったためと言われています。
一方、町の名前を改称してから市制施行したケースもあります。これについても "Issie"さんが詳しく調べてくれました。大和郡山市、常磐市、習志野市、三沢市、天竜市、入間市、志木市、和光市、新南陽市、尾張旭市、上福岡市、鹿嶋市、みよし市です。すなわち、大和郡山市の場合ですと、郡山町→(改称)→大和郡山町→(市制)→大和郡山市、という手続きになります。さらに、市制施行当日よりも3週間前に準備よろしく町名を改称した市があります。大分県の豊後高田市は、1954年(昭和29年)5月10日に高田町を豊後高田町に改称し、3週間後の5月31日に豊後高田市として市制施行しました。