[89943] 実那川蒼さん
個人的に気になっている例を挙げます。下総(しもうさ)は下(しも)+総(ふさ)の合成と考えられますから、「追う」タイプのように見えます。ところが、JR東日本の総武本線にある下総中山駅のローマ字表記は「Shimōsa-Nakayama」になっており、発音も「王」タイプなのです。(中略)自然言語は一筋縄ではいかないものだと思いました。
「下総」のような古い歴史をもつ地名では、語源を伝える漢字表記と 現在の発音 との間には変化があります。
語源 | 漢字1 | 発音1 | 漢字2 | 発音2 | かな表記 | ローマ字表記の例 |
あわ/うみ | (近)淡海 | オー/ウミ | 近江 | オーミ | おうみ | city.omihachiman.shiga |
とおつ/あわ/うみ | 遠淡海 | トーツ/オーミ | 遠江 | トートーミ | とおとうみ | station/toutoumi |
かみつ/ふさ | 上総 | カミツ/フサ | 上総 | カヅサ | かずさ | kazusa-h(上総高校) |
しもつ/ふさ | 下総 | シモツ/フサ | 下総 | シモーサ | しもうさ | Shimōsa-Nakayama駅[89943] |
かみつ/けぬ | 上毛野 | コーヅ/ケヌ | 上野 | コーヅケ | こうずけ | (神津島こうづしまKozu Shima) |
しもつ/けぬ | 下毛野 | シモツ/ケヌ | 下野 | シモツケ | しもつけ | city.shimotsuke |
[89925]で紹介した
地図表現検討会報告書で採用している「長音を表す記号の省略」方式を用いる場合、その詳細は 備考2でを示されています。
これを「下総」のケースにあてはめた場合、常識的な判断では「シモツ/フサ」の短縮により 現在の「シモーサ」という単純な長音発音が生まれたと思われます。
その場合は、ヘボン式表記「Shimōsa」【JRで現実に使用】から 長音記号省略の原則に従った「Shimosa」になります。
しかし、駅名のかな表記は「しもうさ…」です。
これだけでは、発音が「シモーサ」なのか、「シモウサ」なのか判別できません。
後者、すなわち表音ローマ字表記が「Shimousa」である場合は、
長音に対応する元の漢字が一文字の場合には「o」に短縮するが、二文字に分かれる場合には短縮しない
の前者「Shimosa」ではなく、後者「Shimousa」になります。
確かに、一筋縄ではいきません。