[75358]でMujonさんが紹介くださった「白鳥」。なるほどなぁと考えさせられます。
ただ、地名の読みって実は結構厄介。地名そのものは人間に使われるものなので、長い間の慣用で読み方が揺れたりすることは避けられません。読みやすい方向にどうしても流される…使い続ければ自然とそうなってしまいます、時の流れは無情なもの。ここでもかつて話題になっていた「輪厚」「月寒」などはいま、別の読み方が流布されつつあります。北海道という特殊な地域性を考慮に入れても、内地に比べれば音に漢字を当てた歴史はずっと浅いはずなのに…。まぁ、読みの流され方はイントネーションや方言など、国語学的知識が多少なりとも必要な分野に抵触するので突っ込んでいろいろは書けませんが、白鳥もひょっとすると、それに類する地名かもしれません。
一方で、地名にとっての「正しい」とか「本当」も、何か確固たる拠り所でもない限り断定し切れない部分もあります。本山において私が「正式読み」とあえて書けたのも、駅名にせよ居住地名にせよ、正しく読ませる典拠があってこその話。同じ名古屋市内で別の例を挙げると、「鶴舞」という地名があります。駅名や居住地名は、調べ物をすればすぐそれが「つるまい」と読むのだと分かります。これはこれで正しい…しかし、白川公園や久屋大通などと並んで市内でも有数の面積を有する「鶴舞公園」は「つるまこうえん」…恐らく、名古屋近辺の人や地名に造詣の深い人でもない限り、これをつるまと読める人は相当少ないと思いますが、これとて間違いではありません。私自身が何かの書物で目にしたのはこれ、「つるま」の音に「鶴舞」を当て、「舞」の字の読みに後年引っ張られて、駅名も居住地名も「い」がぶら下がってしまったというのが通説なのだそう。どちらの読みもよしとする、地名ならではの包容性が私はちょっと好きだったりします。