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伊豆之国さんの記事が1件見つかりました

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記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[107733]2023年4月26日
伊豆之国

[107733] 2023年 4月 26日(水)00:27:54【1】訂正年月日
【1】2023年 5月 25日(木)17:47:42 by オーナー(表組み改善)
伊豆之国 さん
苗字から見る東西境界線(市盗り合戦の東西両軍の区分け)
「東日本と西日本」にまつわる話題でにぎわっていましたが、[107686]の最後にも書き込んだ、私が落書き帳上で幾度か取り上げている「苗字から見る日本の東西」について、「戦国市盗り合戦」を「関ケ原合戦」になぞらえて、参加メンバーが「東西両軍のどちらに属するか」も交えて書き込んでみることにします。
ここまでの記事を総合すると、地形・地質から見た境界線は「糸魚川~静岡構造線」(「糸静線」)、方言の上では日本海側が富山・新潟県境のすぐ東の「親不知」、太平洋側は「木曽三川」の河口が集まる愛知・三重両県境辺りとされるようですが、「苗字」の面で見たらどうなるのでしょうか。それぞれの「境界線」の東西にある主な市について、それぞれTOP10を見て行きましょう。

まず日本海側から。ランキングはWeb版「写録宝夢巣」(データは2007年頃)からです(※)。
市区名苗字TOP10
新潟県長岡市佐藤・小林・高橋・渡辺・丸山・田中・五十嵐・長谷川・中村・高野
上越市佐藤・小林・渡辺・丸山・高橋・池田・小山・清水・竹内・中村
糸魚川市渡辺・斉藤・伊藤・中村・猪又・佐藤・山本・加藤・清水・金子
富山県黒部市山本・佐々木・能登・長谷川・宮崎・田中・中村・吉田・川端・山田
富山市山本・林・中村・清水・吉田・中川・山崎・田中・藤井・山田
高岡市林・山本・中村・吉田・山田・山崎・田中・高田・前田・中島
石川県金沢市中村・山本・吉田・田中・中川・山田・林・松本・清水・山崎
野々市市中村・山本・吉田・中川・田中・山田・松本・清水・林・北村
白山市中村・山本・山田・中川・林・吉田・北村・田中・中田・西田

「親不知」を挟む新潟県上越地域と富山県を比べてみると、「中村」「清水」など共通して顔を出す苗字もあり、また糸魚川市の「猪又」や黒部市の「能登」のような独特の苗字もありますが、新潟県全体でもトップの「佐藤」を初め、糸魚川市では10位以内に4つも顔を出す「○藤」型の苗字は富山県に入るとランキング上位から全く姿を消し、「山本・林・吉田・中川・田中」など、字画が少ない名字が上位に来て、明らかに苗字ランク上位をみた直感が変わることが読み取れ、石川県に入ると、金沢市と近隣2市でいずれも「中村・山本」が2トップに並ぶなど、さらに顕著になります。日本海側での苗字の東西境界線は、やはり「親不知」を挟む新潟・富山県境にあると見てよいでしょう。そして、福井県を含め、北陸3県が苗字の上では明らかに「西日本型」に属することは間違いない事実でしょう。「市盗り合戦」では、石川県出身のEMMさん・星野彼方さん、富山県在住で出身も「西」の滋賀県の鰯山さんは、いずれも「西軍」所属ということで問題ないと思います。

太平洋側はどうでしょうか。なお、政令指定都市の静岡・浜松・名古屋の各市は区に分かれているため、静岡と浜松はそれぞれ人口最多の葵区と中区を代表とし、名古屋市は人口1位と2位の緑区と中川区を取り上げています。
市区名苗字TOP10
静岡県富士市鈴木・渡辺・佐野・望月・加藤・小林・遠藤・佐藤・山本・石川旧富士川町は含まず
静岡市葵区望月・鈴木・杉山・海野・佐藤・小林・山本・森・渡辺・山田
藤枝市鈴木・増田・大石・青島・杉山・八木・村松・杉本・山本・池谷旧岡部町は含まず
島田市鈴木・大石・杉本・増田・杉山・大塚・伊藤・塚本・山田・山本旧川根町は含まず
掛川市鈴木・松浦・山本・山崎・杉山・戸塚・大石・佐藤・伊藤・中山
浜松市中区鈴木・伊藤・中村・加藤・山本・佐藤・松本・高橋・内山・大石
湖西市山本・鈴木・佐原・菅沼・伊藤・石田・豊田・飯田・田中・佐藤旧新居町は含まず
愛知県豊橋市鈴木・伊藤・山本・加藤・河合・白井・小林・中村・佐藤・田中
岡崎市鈴木・加藤・山本・柴田・佐藤・太田・杉浦・中根・小林・伊藤
安城市杉浦・神谷・鈴木・加藤・石川・稲垣・近藤・都築・岡田・太田
名古屋市緑区鈴木・加藤・伊藤・近藤・山口・山田・佐藤・田中・山本・中村
名古屋市中川区伊藤・加藤・山田・森・佐藤・鈴木・鬼頭・服部・奥村・西川
津島市伊藤・加藤・鈴木・山田・佐藤・服部・堀田・横井・平野・水谷
弥富市伊藤・佐藤・服部・加藤・山田・鈴木・横井・渡辺・平野・早川
三重県桑名市伊藤・水谷・加藤・佐藤・中村・近藤・平野・後藤・石川・服部
四日市市伊藤・加藤・田中・小林・水谷・鈴木・森・服部・佐藤・山本
鈴鹿市伊藤・田中・鈴木・加藤・小林・宮崎・中村・森・林・市川
亀山市伊藤・豊田・小林・田中・服部・若林・桜井・草川・佐野・川戸
津市田中・伊藤・鈴木・小林・山本・前田・長谷川・中村・加藤・稲垣
松阪市田中・中村・鈴木・伊藤・山本・小林・中西・中川・松本・加藤
伊勢市中村・山本・中西・中川・浜口・大西・西村・山口・北村・森
伊賀市山本・中森・田中・松本・福森・東・中井・前川・橋本・服部

静岡県駿河地域から三重県伊勢地域までの、「東海道」に属する沿岸地域を見ると、静岡市から富士南麓までの地域に密集し山梨県でも非常に多い「望月」を初め、静岡県内に広く分布し神奈川県西部にも多く見られる「杉山」、愛知県三河地方に多い「杉浦」、愛知県尾張から三重県北部にかけて広く分布する「服部」、三重県北部に非常に多い「水谷」など、地域ごとに特徴的な苗字があり、また小規模な市では独特の苗字が上位に入るところもありますが、全体傾向を見ると、三重県のうちの伊勢国北部に属する地域までは「鈴木・伊藤・加藤」など「東日本型」の苗字が多く見られる範囲が広がっていることが分かります。
さらに細かく見て行くと、「糸静線」やそのすぐ西の、「越すに越されぬ大井川」を越えて遠江国に入ると、「望月」は激減して全く影が薄くなりますが([96259])、「鈴木」は一層勢力を増し、浜松市では全体でも人口の7%超、磐田市など一部の市町では人口の1割を超えるところも見られます。そして浜名湖を越え、愛知県に入っても、三河地域ではやはり「鈴木」が圧倒的に多く、静岡県西部と同様、人口の1割超を占める市町も見られます。愛知県三河地方が本拠のk_itoさんは、「東軍」に入ることになります。
名古屋市など尾張地域に入ると、「伊藤」と「加藤」が「鈴木」にとって代わってトップ争いとなり、「山田」なども上位に顔を出しますが、やはり傾向としては「東」型と言えるでしょう。そして方言の上では東西境界となっている「木曽三川」を渡り切ると三重県に入りますが、その三重県に入って最初の市になる桑名市のトップ10を見ると、県内で最多姓でもある「伊藤」がダントツで、トップ10にはその「伊藤」を初め「○藤」が5つも入っている反面、「西」型の代表である「田中」と「山本」はそれぞれ17位と14位。桑名出身のNさんは、自身では「西日本」だと思っているようですが([107660])、桑名市は苗字分布の面から見ると「東日本」の地域に入ることがはっきり見えるので、Nさんは「市盗り合戦」における「東西対決」では、「東軍」の所属とさせていただくこととします。
更に伊勢湾岸を南下すると、四日市市、鈴鹿市でも共に「伊藤」が最多で「鈴木」や「加藤」も上位に来ているので、まだ「東」の色彩のほうが強いのですが、「田中」の順位もそれぞれ3位・2位と上がってきて、「西」の影響も強くなり、県都の津市に来るとついに「田中」がトップに来ます。しかしこれに続いて「伊藤」「鈴木」が来るので、東西が入り交じっている様相です。実際、「平成の大合併」前の旧市域では「伊藤」がトップだったようです。津市は「大合併」では久居市や一志郡など、南側の市町村とより多く合併しており、旧久居市では「田中」のほうが「伊藤」より多かったようで、[102089]では、苗字研究家の森岡浩氏のTV番組での発言を受けて、「津市と松阪市の間に東西境界ラインがある」と書いたのですが、実際の東西境界線は「津市内の、旧津市と旧久居市の間辺りにある」というのがより正確なような気がします。
境界線の南側の松阪市では、「田中」「中村」が2トップとなり、「西」の色が強くなってきますが、すぐ下に「鈴木」「伊藤」が続くので、まだ東西入り交じっている感じですが、更に南東側の伊勢市になると、「中村」「山本」が2トップで、紀伊半島に多い「中西」「浜口」や、奈良県でも上位に来る「大西」がトップ10に顔を出す一方、「伊藤」や「鈴木」などは圏外に落ち、「関西色」が濃厚になっていることが見えます。また、鈴鹿山脈を越えた内陸の伊賀市を見ると、独特の苗字も上位に顔を出していますが、「山本」が最多で「田中」が3位に入る一方、「伊藤」や「鈴木」は50位内にさえ入らず、全くの「関西型」になっていることがはっきりわかります。したがって、伊賀上野出身の三重うなぎさんは、「西軍」に入ることになります。

北陸3県、三重県といずれも境を接する岐阜県はどうでしょうか。
市名苗字TOP10
岐阜県高山市田中・山下・清水・谷口・山本・長瀬・中村・川上・加藤・都竹
多治見市加藤・水野・伊藤・渡辺・鈴木・柴田・山田・佐藤・安藤・林
岐阜市林・高橋・山田・加藤・後藤・田中・伊藤・大野・堀・森
大垣市伊藤・山田・大橋・高橋・清水・高木・安田・田中・三輪・吉田
海津市伊藤・水谷・古川・高木・森・中島・渡辺・田中・大橋・加藤

岐阜県内では、地域によって苗字の分布にかなりばらつきがあり、地域差が大きいようです。例えば東濃地方では「鈴木」や「水野」が上位に入ってくるなど愛知県の影響が強く見られますが、「鈴木」などは岐阜市や西濃地区では20位内にも入らずかすんでしまいます。県の南西端に位置し、愛知・三重両県と接する「輪中」地帯にある海津市では、「伊藤」が最多で三重県北部に多い「水谷」が続くなど、三重県の影響が見られ、また飛騨地方では富山県との交流があって、北陸地方の影響も受けているようです。ただ、県全体では「加藤」が最多で、僅差で「伊藤」が続いており、傾向としては「東」の色彩のほうが濃いと言ってよいでしょう。

「苗字の東西境界線」については、既に今から半世紀余りも前、「お名前博士」として知られた佐久間英氏(新潟県上越市出身、本業は医師)が、「日本海側は『親不知』ではっきり東西に分かれる。一方、太平洋側ではあまりはっきりしない。強いて言えば、岐阜県・愛知県を『東』とし、三重県の鈴鹿山脈の東側が『東』ということになるでしょうか」と書いています。それから30年ほどの時を経て、森岡浩氏らの考察によって、佐久間氏の「推測」がほぼ当たっていたことが証明されたとみてよいでしょう。

※以前にも書き込んだことですが、携帯電話の普及や個人情報の保護が進み、電話帳への掲載も特に都市部を中心に激減し、電話帳自体の発行も中止になる事態となった今日では、もはや電話帳を基にして苗字分布を調べること自体が今日では困難な状況になっていると思われます。web版「写録~」は既に10数年前のデータですが、全国の苗字分布を調べるのにあたって、信憑性の高いデータを見るのには、この時期ぐらいがぎりぎりではないかと思います。

♯「戦国市盗り合戦」の現況に関する考察は、次回に回すことにします。また、「統一地方選挙」についての雑感にも、少し触れてみるかもしれません。


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