まず
[85559]冒頭の備考の説明の番号が間違っているので訂正します。
(B) 十和田湖(59.86 km2)を含む。
に対応するのは全国計で、
(C) 十和田湖(59.86 km2)を含まない。
に対応するのは青森県・秋田県で、
(D) 宍道湖 (82.32 km2)は市部・郡部の面積に含まない
に対応するのは島根県です(
[85559]では(B)になっている)。
文章を書いている途中で後から十和田湖の面積の脚注を追加したので、番号がずれてしまいました。
現時点で昭和35年(1960年)の市区町村別人口を入力し終えたところですが、その面積にも3つほど問題となる箇所がありました。
1960年国勢調査における都道府県別・市郡別面積をまとめると以下のようになります。
都道府県 | 合計 | 市部 | 郡部 | その他 | 備考 |
全国 | 369,660.74 | 82,559.42 | 285,577.66 | 1,446.34 |
北海道 | 78,508.67 | 10,207.55 | 68,301.12 |
青森県 | 9,612.65 | 2,225.91 | 7,324.02 | 62.72 | 小川原湖 |
岩手県 | 15,274.46 | 3,987.06 | 11,287.40 |
宮城県 | 7,285.71 | 1,187.39 | 6,098.32 |
秋田県 | 11,608.97 | 1,823.53 | 9,566.21 | 219.23 | 八郎潟 |
山形県 | 9,325.15 | 2,983.13 | 6,342.02 |
福島県 | 13,779.82 | 1,886.20 | 11,789.66 | 103.96 | 猪苗代湖 |
茨城県 | 6,087.92 | 1,562.88 | 4,525.04 |
栃木県 | 6,419.44 | 1,959.63 | 4,459.81 |
群馬県 | 6,349.96 | 1,033.97 | 5,315.99 |
埼玉県 | 3,799.83 | 1,388.82 | 2,411.01 |
千葉県 | 5,034.43 | 1,530.97 | 3,503.46 |
東京都 | 2,026.89 | 1,030.55 | 996.34 |
神奈川県 | 2,361.37 | 1,277.99 | 1,083.38 |
新潟県 | 12,575.33 | 3,452.65 | 9,122.68 |
富山県 | 4,252.03 | 970.73 | 3,281.30 |
石川県 | 4,193.92 | 1,656.96 | 2,509.98 | 26.98 | 邑知潟 (3.96); 河北潟 (23.02) |
福井県 | 4,187.38 | 1,496.56 | 2,690.82 |
山梨県 | 4,463.48 | 1,114.79 | 3,348.69 |
長野県 | 13,581.56 | 2,591.62 | 10,975.78 | 14.16 | 諏訪湖 |
岐阜県 | 10,521.82 | 1,535.48 | 8,986.34 |
静岡県 | 7,768.82 | 2,448.49 | 5,255.44 | 64.89 | 浜名湖 |
愛知県 | 5,057.48 | 1,887.03 | 3,170.45 |
三重県 | 5,765.81 | 1,866.70 | 3,899.11 |
滋賀県 | 4,016.00 | 443.72 | 2,877.78 | 694.50 | 琵琶湖 |
京都府 | 4,612.07 | 2,026.01 | 2,586.06 |
大阪府 | 1,831.47 | 1,312.94 | 518.53 |
兵庫県 | 8,329.92 | 2,371.51 | 5,958.41 |
奈良県 | 3,692.15 | 630.78 | 3,061.37 |
和歌山県 | 4,714.99 | 565.61 | 4,149.38 |
鳥取県 | 3,488.39 | 501.97 | 2,986.42 |
島根県 | 6,625.03 | 1,490.85 | 5,052.37 | 81.81 | 宍道湖 |
岡山県 | 7,059.93 | 1,685.70 | 5,357.58 | 16.65 | 児島湾干拓第7区 |
広島県 | 8,431.23 | 1,525.25 | 6,905.98 |
山口県 | 6,073.10 | 2,071.03 | 4,002.07 |
徳島県 | 4,142.85 | 541.24 | 3,601.61 |
香川県 | 1,859.36 | 391.33 | 1,468.03 |
愛媛県 | 5,651.18 | 1,527.95 | 4,123.23 |
高知県 | 7,104.24 | 1,990.38 | 5,113.86 |
福岡県 | 4,900.77 | 1,491.32 | 3,409.45 |
佐賀県 | 2,403.50 | 888.91 | 1,514.59 |
長崎県 | 4,086.38 | 1,121.75 | 2,964.63 |
熊本県 | 7,371.41 | 1,373.21 | 5,998.20 |
大分県 | 6,312.43 | 1,406.62 | 4,905.81 |
宮崎県 | 7,732.51 | 1,786.53 | 5,945.98 |
鹿児島県 | 9,140.17 | 2,308.22 | 6,831.95 |
十和田湖 | 59.77 | | | 59.77 | 青森県・秋田県に含まず |
中海 | 101.67 | | | 101.67 | 鳥取県・島根県に含まず |
岐阜県郡上郡白鳥町に編入された福井県大野郡旧石徹白村の一部 | 77.32 | | | 77.32 | 福井県・岐阜県に含まず |
続いて3つの問題点を列挙しますと:
(1) 岐阜県郡上郡白鳥町へ異動した旧石徹白村の領域(住民あり)の取り扱い
まずは福井県大野郡旧石徹白村です。大野郡石徹白村は昭和30年の国勢調査によると人口1,402人、面積103.07 km2ですが、昭和33年10月14日に石徹白村の一部(105人、25.75 km2)が福井県大野郡和泉村(昭和35年の面積 332.26 km2 = 旧下穴馬村128.29 km2 + 旧上穴馬村 178.22 km2 + 旧白鳥町 25.75 km2)となります。そして翌日の昭和33年10月14日に、白鳥町の残りの地区(1,297人、77.32 km2)が岐阜県群上郡白鳥町(昭和35年の面積 118.78 km2)となっております。
これに関して昭和35年国勢調査報告によると、
3) 岐阜県郡上郡白鳥町の面積のうち,昭和33年10月15日同町に編入された福井県大野郡旧石徹白村の面積は,全国の面積に含まれているが,境界不明のため,岐阜県および白鳥町の各面積には含まれていない。
とあり、人口1,297人が住んでいる77.32 km2の帰属をはっきりさせておりません。ただし昭和35年の国勢調査報告書の方では、13,658人中1,297人分が住んでいる土地を無視して、そのまま人口密度を計算しています(13,658人/118.78 km2 ≒ 115.0 人/km2)。
昭和40年(1965年)の国勢調査では、岐阜県郡上郡白鳥町の面積は196.24 km2(昭和35年より77.42 km2増加)、福井県大野郡和泉村の面積は332.26 km2(昭和35年と同一)となっており、77.32 km2の土地はそのまま岐阜県郡上郡白鳥町に加算されていることになります(残りのプラス0.10 km2は、昭和36年4月1日に大和村の一部が白鳥村へ人口異動なしに境界変更されたことに対応すると考えられます)。よって旧石徹白村の面積77.42 km2は、昭和35年の時点で岐阜県郡上郡白鳥町に加算して問題ないように思えるのですが、国勢調査の方を優先するべきか悩ましいところです。
(2) 岐阜県中津川市と長野県西筑摩郡山口村の間の境界紛争地域の面積
御存じのように昭和35年の国勢調査の場合、岐阜県中津川市と長野県西筑摩郡山口村の間の境界紛争地域の人口79人が岐阜県と長野県の人口に加算されておりません。
2) 岐阜県中津川市と長野県西筑摩郡山口村の間の境界紛争地域の人口 (79人) は,全国計に含まれているが,岐阜県および長穏県のいずれにも含まれていない。
ところがこの境界紛争地域の面積については何ら言及がなく、岐阜県中津川市と長野県西筑摩郡山口村の間で分割されているように見えます。
(1)の場合は、人口を分割しているのに、面積の分割を完了していないことになりますが、(2)の場合は、逆に面積を分割しているのに、人口を分割していないケースということになります。
(3) 下新川郡宇奈月町・朝日町の面積
昭和30年の国勢調査では、富山県下新川郡宇奈月町の面積424.82 km2、富山県下新川郡朝日町の面積146.76 km2と分割されておりました(合計571.58 km2)。その後昭和34年1月1日に朝日町の一部(昭和30年の人口1355人)が下新川郡舟見町(昭和30年の面積12.20 km2)へ異動しておりますが、さらに舟見町は同日昭和34年1月1日に下新川郡入善町(昭和30年の面積56.33 km2)に吸収されております(昭和35年の入善町の面積71.58 km2で、15.25 km2の増加)。よて昭和34年1月1日に朝日町から入善町へ異動した面積は3.05 km2と推測されます。
ところが昭和35年の国勢調査では、下新川郡宇奈月町・朝日町の面積は示されず、人口密度も空欄となっております。脚注によると
2) 下新川郡宇奈月町と同郡朝日町の境界未定。同町の各面積も測定不能。(両町の合計面積は 568.61 km2)。
とあります。昭和30年の国勢調査と比べて2.97 km2面積が減っており、朝日町から入善町への異動で面積が3.05 km2で減少したのほかに、0.08 km2の面積が増えたことになりますが、この辺は昭和30年の国勢調査において、
一部調査未了のため総理府統計局において推定した。
ことに伴う誤差と考えられます。
そこでより新しい国勢調査の面積を使って、下新川郡宇奈月町・朝日町の面積を推定できるのではないかと期待して、より新しい国勢調査の報告書をチェックしたところ、なんとこの面積の問題は昭和40年・昭和45年・昭和50年の国勢調査においても続いていることが分かりました。昭和40年の国勢調査報告書によると
2) 富山県下新川郡宇奈月町と同郡朝日町の各面積は推定不能 (両町の合計面積は 568.61 km2)。
昭和45年の国勢調査報告書によると
3) 富山県下新川郡宇奈月町と同郡朝日町の各面積は推定不能 (両町の合計面積は 568.61 km2)。
昭和50年の国勢調査報告書によると
2) 富山県下新川郡宇奈月町と同郡朝日町の各面積は推定不能 (両町の合計面積は 568.61 km2)。
昭和35年・昭和40年・昭和45年・昭和50年の国勢調査では、何れも両町の面積と人口密度は空欄となっております。昭和55年の国勢調査でようやく宇奈月町341.20 km2、朝日町227.41 km2という数字に落ち着いています(合計568.61 km2)。奇しくもこの地区に関しては1980年まで1960年の合計面積を使いまわしていたことが判明しましたので、結果として1960年まで遡って宇奈月町341.20 km2、朝日町227.41 km2を適用することも可能に見えますが、その一方でわざわざ20年近くにわたり、国勢調査では宇奈月町と朝日町の面積を確定せずに放置し続けていたのも事実です。これも国勢調査表記を優先する場合にはどのようにまとめるべきなのか、悩ましいところです。
【追記:タイトルが『「1950年」の市区町村別面積の問題点』となっていたので、「1960年」に修正しました。また白鳥町の所属郡が一部間違っていたので訂正。】