祝・「落書き帳」25歳&「未開マガジン」オープン🎇(控え目の絵文字一個)
本題に入る前に…
「境界変更の諸相」というのを見つけました。「境界変更」に関する貴重な論文だと思います。また、事例として1950年4月1日の伏黒村(一部)→保原町、1957年4月10日の金沢市(一部)→野々市町、の2つが取り上げられており、個人的には非常に参考になるものでした。関心のある方は、どうぞご覧ください。
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さて今回は
「前身町と、それ以外の構成町の人口の拮抗or隔絶」に焦点をあて見ていきます。(「拮抗」の対義語が「隔絶」?…どうも違和感があり、「格差が大きい」ぐらいにしときましょう。)
その指標としては「惜敗率」を活用します。
なお、今回はダラダラと長くなりそうなので
「A」・・・合併と同時に「市」となった事例
「B」・・・合併しても「町」のままであった事例
の「A」だけにし、「B」は次回に回します。
※以下の表中の人口は、「合併直前の国勢調査等に記載された人口を、編入時の境域に組み替えたもの」です。
また、今回も町名の後に「因子町」(
[102175])の印を付けております。
☆:本源・前身・最古因子町
◎:本源・最古因子町
@:本源・前身因子町
◇:前身因子町
△:直系因子町
(印のない町は「因子町」を「修了」した町です。また、今回の「因子町」は、あくまでも合併後の自治体におけるもので、現行の自治体におけるものではありません。)
(1)前身町とNo.2町の人口の拮抗:トップ10
合併年月日 | 合併後市名 | 前身町 | 人口 | No.2町 | 人口 | 惜敗率 |
1950.01.01 | 日南市 | 油津☆ | 11,558 | 飫肥◇ | 11,558 | 100.00 |
2004.11.01 | 北杜市 | 長坂@ | 9,252 | 高根△ | 9,218 | 99.63 |
2005.02.01 | 能美市 | 根上◇ | 15,426 | 寺井 | 15,308 | 99.24 |
2003.04.01 | 南アルプス市 | 白根 | 19,247 | 櫛形 | 18,920 | 98.30 |
2006.01.10 | 下野市 | 南河内◇ | 20,873 | 石橋 | 20,494 | 98.18 |
2004.02.01 | 本巣市 | 糸貫☆ | 11,799 | 真正△ | 11,556 | 97.94 |
2005.03.20 | うきは市 | 吉井 | 17,209 | 浮羽△ | 16,836 | 97.83 |
2005.10.11 | 牧之原市 | 相良 | 25,656 | 榛原 | 24,989 | 97.40 |
2005.07.07 | 清須市 | 清洲 | 19,122 | 新川 | 18,556 | 97.04 |
2005.01.01 | 高島市 | 安曇川 | 14,489 | 今津 | 13,921 | 96.08 |
何と言っても、油津・飫肥の「がっぷり四つ」、タマリマせん。「前身因子町」が二つ、というのは他にありません。
(2)前身町とNo.2町の人口格差が大きいトップ10
合併年月日 | 合併後市名 | 前身町 | 人口 | No.2町 | 人口 | 惜敗率 |
1940.12.01 | 小松市 | 小松☆ | 19,139 | 安宅△ | 1,965 | 10.27 |
1933.10.01 | 新宮市 | 新宮☆ | 25,179 | 三輪崎△ | 3,788 | 15.04 |
1953.10.01 | 倉吉市 | 倉吉☆ | 25,371 | 上井△ | 3,846 | 15.16 |
1954.03.31 | 湯沢市 | 湯沢☆ | 17,465 | 岩崎△ | 2,872 | 16.44 |
1940.11.03 | 土浦市 | 土浦☆ | 31,000 | 真鍋△ | 5,251 | 16.94 |
1954.04.01 | 甘木市 | 甘木☆ | 11,692 | 秋月△ | 1,997 | 17.08 |
1971.04.01 | 備前市 | 備前 | 28,378 | 三石△ | 5,269 | 18.57 |
1939.11.03 | 鎌倉市 | 鎌倉☆ | 29,412 | 腰越△ | 5,523 | 18.78 |
1941.04.29 | 西条市 | 西条 | 20,691 | 氷見△ | 3,933 | 19.01 |
1951.09.01 | 赤穂市 | 赤穂☆ | 28,313 | 坂越△ | 5,526 | 19.52 |
ワンサイドゲームのオンパレードです。小松/安宅や甘木/秋月は、二町だけの合併であれば、「編入」の形をとっていたかもしれません。「そもそも、安宅や秋月が何故『町』だったのか?」と訝しむ方がいるかもわかりませんが、両町とも人口ピークは国勢調査開始前の話で、当時はそれなりの街だったのでしょう。白桃、秋月(城址)に行ったときは、三橋美智也の♪「古城」を歌いたくなりました。
(3)前身町と構成町(No.2町以外)の人口格差が大きい(惜敗率20.00未満)事例
合併年月日 | 合併後市名 | 前身町 | 人口 | 構成町 | 人口 | 惜敗率 |
1956.03.31 | 北茨城市 | 磯原 | 23,486 | 平潟△ | 3,534 | 15.05 |
2005.04.01 | 宍粟市 | 山崎 | 25,971 | 千種△ | 4,029 | 15.51 |
1937.04.01 | 布施市 | 布施 | 48,696 | 楠根△ | 7,569 | 15.54 |
2010.03.23 | 姶良市 | 姶良 | 44,671 | 蒲生△ | 7,261 | 16.25 |
1999.04.01 | 篠山市 | 篠山 | 22,229 | 今田△ | 3,895 | 17.52 |
2006.01.01 | 伊達市 | 保原 | 24,521 | 月舘 | 4,394 | 17.92 |
1999.04.01 | 篠山市 | 篠山 | 22,229 | 西紀△ | 4,125 | 18.56 |
2004.03.01 | 対馬市 | 厳原 | 15,485 | 峰△ | 2,897 | 18.71 |
2005.04.01 | 宍粟市 | 山崎 | 25,971 | 波賀△ | 4,860 | 18.71 |
2006.03.01 | 香南市 | 野市 | 17,759 | 赤岡◎ | 3,324 | 18.72 |
2005.03.31 | 豊後大野市 | 三重 | 18,241 | 朝地△ | 3,431 | 18.81 |
2005.04.01 | 登米市 | 迫 | 23,040 | 津山 | 4,380 | 19.01 |
1943.04.01 | 佐野市 | 佐野☆ | 17,873 | 堀米△ | 3,545 | 19.83 |
1954.03.31 | 村上市 | 村上 | 15,711 | 瀬波△ | 3,138 | 19.97 |
上記のうち、篠山は今田と西紀を、山崎は千種と波賀を、完封?しています。ともに兵庫県内陸部の街。それが何か?(笑)。
前身町のうち「因子町」は佐野だけ。因みに、現在の佐野市の場合、☆は「佐野」ではなく、「佐野」は@(本源・前身因子町)で、●(最古因子町)は「田沼」です。嗚呼、赤岡。クヤジィーです。
(4)三町の人口が拮抗している(No.3町の惜敗率85.00以上)事例
合併年月日 | 合併後市名 | 前身町 | 人口 | No.2町 | 人口 | 惜敗率 | No.3町 | 人口 | 惜敗率 |
2005.02.01 | 能美市 | 根上◇ | 15,426 | 寺井 | 15,308 | 99.24 | 辰口△ | 14,343 | 92.98 |
1955.03.31 | 松浦市 | 新御厨◇ | 10,594 | 志佐 | 13,914 | 131.34 | 調川△ | 9,830 | 92.79 |
2006.03.31 | 南島原市 | 有家 | 8,847 | 深江△ | 8,228 | 93.00 | 西有家△ | 8,197 | 92.65 |
2005.07.07 | 清須市 | 清洲 | 19,122 | 新川 | 18,556 | 97.04 | 西枇杷島◎ | 17,215 | 90.03 |
2007.12.01 | 南九州市 | 川辺 | 14,809 | 頴娃△ | 14,126 | 95.39 | 知覧△ | 13,256 | 89.51 |
2005.04.01 | 栗原市 | 築館 | 15,866 | 若柳 | 14,714 | 92.74 | 栗駒 | 14,164 | 89.27 |
1950.01.01 | 日南市 | 油津☆ | 11,558 | 飫肥◇ | 11,558 | 100.00 | 吾田※△ | 10,286 | 88.99 |
2004.03.01 | かほく市 | 宇ノ気◇ | 12,574 | 七塚△ | 11,270 | 89.63 | 高松 | 10,826 | 86.10 |
1955.01.01 | 陸前高田市 | 高田☆ | 6,461 | 気仙△ | 5,550 | 85.90 | 広田※△ | 5,505 | 85.20 |
2006.01.10 | 下野市 | 南河内◇ | 20,873 | 石橋 | 20,494 | 98.18 | 国分寺△ | 17,765 | 85.11 |
吾田と広田に※印を付けていますが、これは合併前の国勢調査時点では「村」であった、という意味です。
ここは、いっぱい書きたいことが有りますが、松浦市に関してだけ。No.2の「志佐」の惜敗率が131.34となっているのはオカシイではないか…という疑問。これは当然で、説明を要します。
白桃は「前身町」を次のルールによって決めております。
市制施行または町制施行が行われた年月日直前の国勢調査の時点で町制施行している自治体で最も人口が多かった旧町
松浦市の◎(本源・最古因子町)の「志佐」の場合ですが、1950年10月1日国勢調査の時点では、9,776人で、新御厨はもちろん、調川(つきのかわ…難読!!!)よりも少なかったのです。が、1954年4月1日に上志佐村と合体(新設合併)して、新御厨の人口を上回ったのです。このようなケースは非常に数少ないのですが、他にもあります。そして、とある理由で、白桃は「前身町」ルールを変える意思が全くないことを言い添えておきます。