[16557] ありがたき さん
梅雨=入梅という意味で使っていたのではないと思うのですが、いかがでしょうか?
いや,どうも東日本方言では「ニューバイ」が“雨季そのもの”,つまり“イコール梅雨”という用法だったらしいのですよ。
こんな記述をした一般向けの専門書があります。
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「茄子」は,東がナス,西がナスビ,「恐ろしい」は,東がオッカナイ,西がコワイ,オソガイ,「あさっての次の日」は,東がヤノアサッテ,西がシアサッテ(ただし,東京を含む),「鱗」は,東がコケラ,西がウロコ(ただし,東京を含む),「梅雨」は,東がニューバイ,西がツユ,サズイ,ナガシ,「薬指」は,東がクスリユビ,西がベニサシユビ,またはベニツケユビ等である。以上の項目の境界は,ほぼ親不知-浜名湖線に一致している。
加藤正信,「現代日本語 方言」中「語彙」の項,『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』,p.287,三省堂,1997年
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私の感覚では,ここにあがった単語はほぼ「東京方言」のそれに一致をするのですが,「ニューバイ(入梅)」だけは私自身,「梅雨入り」という意味の用法しか知らなかったので,記憶に残っていたのです。
あいさつ文としてよく使う「入梅の候」という用法などを考えても,この単語自体,本来は“特定の日”を表す,というよりは,ある程度の期間を表す用法と理解した方がいいように感じます。
夏至を中心に約三十から四十日間梅雨の期。
こちらの用法の方が,基本的なのではないか。
そもそも,ある特定の日を「梅雨入り」(あるいは「梅雨明け」)と認定するようになったのは気象統計上の必要からではないかと思います。気象庁,あるいは前身の中央気象台が設置されて全国一律に気象観測が行われるようになってからではないのか。
このような機関がなければ,ある特定の日を「梅雨入り」「梅雨明け」と認定する主体は存在しませんよね。
最近では気象庁も「宣言」をすることをやめて,実はシーズン終了後に「始まり」と「終わり」を再検討していることを明らかにしています。
特定の日を認定することができないのであれば,もっと漠然とある程度の期間を指していたのではないか,と私は考えています。