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落書き帳から選び抜いた珠玉の記事集

「入梅」の地域性

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記事数=6件/登録日:2004年1月11日/編集者:YSK

一般に、梅雨入りすることを「入梅」と言うようですが、地域によっては梅雨と呼ばれる雨季のことを指す場合があったり、また「ナガシ」など別の呼び方がなされたりするようです。

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★推奨します★(元祖いいね) YSK 稲生

記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[16555]2003年6月10日
Issie
[16557]2003年6月10日
ありがたき
[16559]2003年6月10日
YSK
[16586]2003年6月10日
Issie
[16588]2003年6月10日
YSK
[16590]2003年6月10日
ken

[16555] 2003年 6月 10日(火)00:43:54Issie さん
梅雨入り宣言
もう昨日になってしまいましたが,
テレビのニュースで,「九州地方と山口県」が梅雨入りをした,と気象庁が発表したと報じていましたね。

なぜ「…と山口県」か,といえば,気象庁の予報区分では山口県が「中国地方」ではなくて「九州北部地方」に区分されているからですが,やはり一般の感覚からすると「九州」に含まれるというには違和感があるのでしょうね。

ところで先日,常磐線の石岡から鹿島鉄道に乗りに行きました(この線は楽しいですね。同じ関東鉄道グループでも常総線はあまり面白く感じませんでした。龍ヶ崎線は短すぎるし,これは乗りそびれてしまったけど,筑波線も端から見るとイマイチという感じです)。
終点の鉾田から鹿島までは北浦沿いに走る路線バスに乗ったのですが,鉾田で乗り合わせた地元のお婆さん,運転手に「もうすぐニューバイだから…」などと話していました。
ニューバイ…,漢字で書くと「入梅」となるのですが,この言葉を生で耳にしたのは初めてでした。「つゆ(梅雨)」という表現が(たぶんマスコミを通じて)一般化するまで,関東地方では「にゅうばい(入梅)」という方が普通だった,と聞いたことはあるのですけどね。
[16557] 2003年 6月 10日(火)01:03:50【2】ありがたき さん
関東もそろそろ
[16555]Issie さん

鉾田で乗り合わせた地元のお婆さん,運転手に「もうすぐニューバイだから…」などと話していました。

そのお婆ちゃんは、「もうすぐ梅雨入りするから…」という意味で言ったのであって、梅雨=入梅という意味で使っていたのではないと思うのですが、いかがでしょうか?

「つゆ(梅雨)」という表現が(たぶんマスコミを通じて)一般化するまで,関東地方では「にゅうばい(入梅)」という方が普通だった

ちなみに「入梅」という言葉ですが、雑節のひとつですからメジャーな言葉のはずですよ。意味は「夏至を中心に約三十から四十日間梅雨の期。雨期に入った最初の日。梅の実が熟す頃の意。カビが生えやすくなる事から黴雨とも。」となっています。お、そうすれば、梅雨=入梅という使い方でも間違っていないのかな?
雑節でメジャーな言葉は他にも「節分」「八十八夜」「土用」「彼岸」「上巳の節句」「端午の節句」などなどありますね。
[16559] 2003年 6月 10日(火)01:27:59【2】YSK[両毛人] さん
季節感
そうですね。入梅は二十四節気などの暦日以外で、生活の中から自然発生的な季節感を示す言葉(総称して、「雑節」と呼びます)の1つですね。詳しくは、[16557]ありがたきさんのご説明のとおりです。 2003年は、6月11日が「入梅」です。

そうそう、昨日九州と山口県が梅雨入りしたと見られる、という発表があったのですね。
#「~したと見られる」という表現がポイントですね。1993年の大冷害以来、断定的な表現がなされないようになりましたね。

私、梅雨時は好きな季節の1つなんですよ。
確かにじめじめ、というイメージはありますが、それ以上に、凛とした、落ち着いた瑞々しい空気の中、紫陽花が穏やかな輝きを見せる季節。筆舌に尽くしがたい美しさを感じます。

ちなみに、紫陽花の花ですが、花弁に見えるひらひらは、実は「がく」でして、その真ん中に「真花」と呼ばれる、おしべのようなものがつく「花」がつきます。その「真花」が開いた時点を、気象庁は「紫陽花の開花」として観測しています。

入梅の常陸の野を往く列車かな
[16586] 2003年 6月 10日(火)20:44:49【1】Issie さん
ニューバイ
[16557] ありがたき さん
梅雨=入梅という意味で使っていたのではないと思うのですが、いかがでしょうか?

いや,どうも東日本方言では「ニューバイ」が“雨季そのもの”,つまり“イコール梅雨”という用法だったらしいのですよ。
こんな記述をした一般向けの専門書があります。

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「茄子」は,東がナス,西がナスビ,「恐ろしい」は,東がオッカナイ,西がコワイ,オソガイ,「あさっての次の日」は,東がヤノアサッテ,西がシアサッテ(ただし,東京を含む),「鱗」は,東がコケラ,西がウロコ(ただし,東京を含む),「梅雨」は,東がニューバイ,西がツユ,サズイ,ナガシ,「薬指」は,東がクスリユビ,西がベニサシユビ,またはベニツケユビ等である。以上の項目の境界は,ほぼ親不知-浜名湖線に一致している。

 加藤正信,「現代日本語 方言」中「語彙」の項,『言語学大辞典セレクション 日本列島の言語』,p.287,三省堂,1997年
-----------------------------------------------------------------------------

私の感覚では,ここにあがった単語はほぼ「東京方言」のそれに一致をするのですが,「ニューバイ(入梅)」だけは私自身,「梅雨入り」という意味の用法しか知らなかったので,記憶に残っていたのです。

あいさつ文としてよく使う「入梅の候」という用法などを考えても,この単語自体,本来は“特定の日”を表す,というよりは,ある程度の期間を表す用法と理解した方がいいように感じます。
夏至を中心に約三十から四十日間梅雨の期。
こちらの用法の方が,基本的なのではないか。

そもそも,ある特定の日を「梅雨入り」(あるいは「梅雨明け」)と認定するようになったのは気象統計上の必要からではないかと思います。気象庁,あるいは前身の中央気象台が設置されて全国一律に気象観測が行われるようになってからではないのか。
このような機関がなければ,ある特定の日を「梅雨入り」「梅雨明け」と認定する主体は存在しませんよね。
最近では気象庁も「宣言」をすることをやめて,実はシーズン終了後に「始まり」と「終わり」を再検討していることを明らかにしています。

特定の日を認定することができないのであれば,もっと漠然とある程度の期間を指していたのではないか,と私は考えています。
[16588] 2003年 6月 10日(火)22:13:06YSK[両毛人] さん
入梅
私も、季節は移ろうものですから、その境目をしっかりと定めると考え方はあまりしないですね。

気象庁の「梅雨入り・梅雨明け」の発表も、気象統計上の記録ということもありますが、あくまで季節の移ろいを実感するアクセントのようなものですね。

あ、もうそんな季節になったんだ・・・、って感じですね。

一応、辞書を開いてみました。「入梅」にも一応暦の上の定義があるようです。「入梅」は、太陽の黄経が80度となる日とのことです。

私がよく参照する「こよみのページ」
http://koyomi.vis.ne.jp/mainindex.htm

によりますと、昔は芒種後の最初の「壬(みずのえ)」の日だそうで、今年なら6月8日にあたるそうです。ですので、本来「入梅」=「気象庁の梅雨入り宣言のあった日」ではないわけでして、暦の上でも、しっかりと息づいたことばだったのですね。農耕と濃厚に結びついたわが国にとって、梅雨の時期は豊作をもたらすための恵みの雨であるとともに、場合によっては恐ろしい冷害をももたらす、畏怖すべき存在だったのでしょう。そんな梅雨の入り口は、人々にとって強烈に意識された季節感であったのでしょうか。

別の辞書もめくってみました。
そこには、第一義として、「つゆに入ること」、第二義として、(東北から中部地方において)梅雨の時期を示す方言、とありました。

いずれにしたしましても、季節は移ろいゆくもの。季節の解釈、感じ方は人それぞれです。私は、この季節、凛とした、頬を濡らす梅雨の情感を心ゆくまで堪能してゆきたいです。

今日、関東甲信地方までが「梅雨に入ったとみられる」とする発表がありました。
[16590] 2003年 6月 10日(火)22:49:11ken さん
ニューバイ
[16557] ありがたき さん
[16586] Issie さん
いや,どうも東日本方言では「ニューバイ」が“雨季そのもの”,つまり“イコール梅雨”という用法だったらしいのですよ。
徳川宗賢先生の日本の方言地図を久しぶりに引っ張り出しましたが、梅雨を何というか

ニューバイ地区は、青森県、秋田県、宮城県、山形県内陸、福島県大部分、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県の大部分、岐阜県の一部

ツユ地区は、山形県沿岸、新潟県下越、富山県西半、石川県、福井県大部分、滋賀県、三重県北中部、奈良県、和歌山県北半、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、鳥取県、島根県、広島県、山口県、香川県沿岸、愛媛県沿岸、福岡県、佐賀県玄海側、大分県大部分、熊本県一部

サズイ:新潟県中越上越、富山県東半

ツイリ:岐阜県大部分、愛知県一部、静岡県一部、福井県山間部、三重県南部、和歌山県南部

ナガメ(ナガアメ):岩手県に多く分布、福島県浜通にいくつか、奄美、沖縄本島、八重山(宮古島ではツユ)

ナガシ・ナガセ:徳島県、高知県、香川県南部、愛媛県南部、大分県一部、宮崎県、鹿児島県、長崎県、熊本県大部分、佐賀県有明海側

ハエ:三重県志摩地方

ナガジケ:岩手県に多く分布、福島県・群馬県・長野県にもナガジケの回答あり

ズリ:北海道道南にいくつか

北海道は、ニューバイ、ツユ、が混在。
北海道には梅雨はないと言うが、言葉としてはズリなどの独自の言葉もある。

で、基本的に愛知以東の東日本方言は「ニューバイ」なのですが、標準語は西日本方言のツユが採用されてています。
徳川先生はこのことについて、関東・東京でも方言レベルではニューバイであったが、「梅雨」そのもののことを指して使っているが、文字は「入梅」である意識もあって、本来「梅雨入り」のことなのではないか、という意識が根底のどこかにあったのではないか。
その意識が西日本方言形であるツユを標準語として、受け入れる素地となったのではないか、と分析されています。
東海から和歌山・三重南部のツイリも、本来ツユイリから来ているものであろう、されています。
また、この分布からはツユが古形でニューバイが新たに出来たものかどうかは特定できないが、一般的な「長い雨」を意味するナガメ・ナガアメが東北と南西諸島に分布していることから、少なくとも、ナガメ・ナガアメが古形で、ツユ・ニューバイが新しいことは想像できるとしています。

方言分布にご興味のある方は
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121005333/ref=sr_aps_b_/250-6061758-6685837
中公新書「日本の方言地図」徳川宗賢
をご一読されると面白いと思います。

さらに興味を惹かれた方は
新潮文庫「全国アホ・バカ分布考」松本 修 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101441219/qid=1055252550/sr=1-2/ref=sr_1_0_2/250-6061758-6685837
もお薦めです。

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