[102290] オーナー グリグリさん
ところで、平麺ではきしめんだけが定義されていますが、ほうとう、ひもかわなどは枠外ということでしょうか?
単に麺類の分類を紹介するだけだと、こちらのサイトの趣旨から逸脱しかねないと思いつつも、地域特産が色々あるので、それを紹介出来れば、と思いながら調べ物を続けていましたところ…
[102290] ありがたき
JAS(日本農林規格)による乾めん類品質表示基準
が、もしかしたら大きく変わっているかもしれないという疑問が浮かび上がってきました。
裏取りに時間がかかっておりまして、ただあまり時間をかけてもどうかというところもありますので、
現時点での、ある程度信頼のおけるところの資料を元にした調査結果を発表したいと思います。
まず「乾めん類の日本農林規格(農林水産省)」です。
前述の品質表示基準とは名前が少し違うのですが、最終改正は平成28年2月24日農林水産省告示第489号と、こちらの方が新しいので、こちらを紹介します。
一部抜粋です。
(定義)
第2条 この規格において、次の表の左欄に掲げる用語の定義は、それぞれ同表の右欄に掲げるとおりとする。
用 語 定 義
乾めん類 次に掲げるものをいう。
1 小麦粉又はそば粉に食塩、やまのいも、
抹茶、卵等を加えて練り合わせた後、
製めんし、乾燥したもの。
2 1に調味料、やくみ等を添付したもの。
干しそば 乾めん類のうち、そば粉を使用したもの
をいう。
干しめん 乾めん類のうち、干しそば以外のものを
いう。
調味料 (略)
やくみ (略)
そば粉の配合割合 (略)
こちらでは、乾めん類の原料や製法と、大分類としてそば粉を使用した「干しそば」とそれ以外の「干しめん」を定義されています。
次に「食品表示基準(消費者庁)」です。
最終改正は令和3年3月17日内閣府令第10号なのですが、乾めん類に関する改正は平成27年3月20日内閣府令第10号が最新のようです。
どうやら、乾めん類の小分類は、消費者庁の規定に移行しているようなのです。
諸々の経緯が追いきれていないので、ひとまず、内容を紹介します。
一部抜粋
(機械製乾めん)
「干しうどん」又は「うどん」
長径を1.7mm以上に成形したもの
「干しひやむぎ」、「ひやむぎ」又は「細うどん」
長径を1.3mm以上1.7mm未満に成形したもの
「干しそうめん」又は「そうめん」
長径を1.3mm未満に成形したもの
「干しひらめん」、「ひらめん」、「きしめん」又は「ひもかわ」
幅を4.5mm以上とし、かつ、厚さを2.0mm未満の帯状に成形したもの
(手延べ)
「手延べうどん」
長径を1.7mm以上に成形したもの
「手延べひやむぎ」又は「手延べそうめん」
長径を1.7mm未満に成形したもの
「手延べひらめん」、「手延べきしめん」又は「手延べひもかわ」
幅を4.5mm以上とし、かつ、厚さを2.0mm未満の帯状に成形したもの
機械製麺と手延べ麺に中分類し、それぞれ小分類されていますね。消費者庁の基準では、「ひやむぎ」と「細うどん」は同じ規格、「手延べひやむぎ」と「手延べそうめん」は同じ規格、
「ひらめん」「きしめん」「ひもかわ」は機械製麺と手延べ麺の中分類はあれど、その下ではそれぞれ同類になるようです。
それとは別に、業界団体として「全国乾麺協同組合連合会」が「表示等のガイドライン」を出しています。原料や製法は割愛しますが、こちらの別表に「《別表》全国乾麺協同組合連合会指定産地名」を発見しました。
最終改正:平成24年1月11日
産地表示商品名 製めん地範囲 所有者
白石温麺 宮城県内 奥州白石温麺協同組合
上州うどん 群馬県内 -
信州そば 長野県内 -
甲州ほうとう 山梨県内 -
名古屋きしめん 愛知県内 -
三輪素麺 奈良県内 奈良県三輪素麺工業協同組合
播州そうめん 兵庫県内 兵庫県乾麺協同組合
揖保乃糸 たつの・姫路
揖保・宍粟・作用 兵庫県手延素麺協同組合
淡路島そうめん 兵庫県南あわじ市内 -
半田そうめん 徳島県半田地区 -
讃岐うどん 香川県内 -
小豆島そうめん 香川県小豆島内 -
浮羽そうめん 福岡県うきは市内 -
福岡県久留米市田主丸町内
神埼そうめん 佐賀県神埼市内 -
佐賀県神埼郡吉野ヶ里町内
島原そうめん 長崎県島原半島内 -
※ 各産地表示には、各産地毎に品質基準を設けているものもある。
これらをまとめると、大きい側から、農林水産省、消費者庁、業界団体の順に細かく規定・基準等が定められているようですね。
それ以前では、大きく分けると、ルーツ的には、
生地を麺棒で薄く伸ばしてから細く切った麺が「うどん」「ひやむぎ」、
生地に油を塗りながら細く延ばして作る麺が「そうめん」
であったようですが、機械製麺が発達してあらゆる太さの麺を作れるようになってからは、それらの境目も曖昧になっているようです。
あと、今まで語ってきたのは全て「乾麺」であり、「生麺」はまた別に、どうやら公正取引委員会が規則を設けているようですが、そちらについてはここでは勘弁してください。手が出しきれませんでした。
グリグリさんの疑問の中に出てきた「氷見うどん」ですが、これも裏取り中ですが、今のところ見えてきたのは、
ルーツが輪島のそうめんで、1751年(宝暦元年)に「高岡屋」が輪島から技法を取り入れて作り始めたとされ、元々は「糸うどん」の名称であったようです。
よって、そうめんの技法で作られた細いうどんという概念ですが、前述の規格でいうと、手延べだとひやむぎ、機械製麺だと細うどんに分類されそうな感じですね。
それから「ほうとう」です。消費者庁の基準には一切語られていませんでしたが、全国乾麺協同組合連合会指定産地名には「甲州ほうとう」が出現しています。同様に前述の規格でいうと、厚さが2.0mm未満ならひらめん等、2.0mm以上ならうどんに分類されそうです。
そして、今回まとめきれていない理由のひとつに、ほうとうには、太くて短い麺の形態だけでなく、すいとん的な小塊のものもあるそうで、ほうとうが麺類(ヌードル)なのかダンプリング類(すいとん、蕎麦がき、水餃子、ニョッキ、ちまきなどが分類されるグループ)なのか、境界線が曖昧で、調査の手を広げないといけないかなーという問題が判明しました。すいとんに近い郷土料理で旧仙台藩北部の「はっと」が音的に「ほうとう」に近く、ルーツもほうとうにありそうとか、こちらも奥深そうですので。
これ以上の深掘りは、いわゆる板違いになりかねないので、ひとまずここら辺で区切らせていただきます。
地域特産として多彩な麺類がありますので、皆さんでまた盛り上がりを見せるようでしたら、法的な、あるいは公的な分類とは切り分けて、取り上げてみるのもおろしろいかも知れませんね。