「市区町村変遷履歴情報」の項目ごとに易しく言い換えて考えます。
(1)新設 自治体名:C町 変更対象自治体名:A町・B町
言い換えると「A町とB町が合併して、新たにC町になった」。
(2)編入 自治体名:A町 変更対象自治体名:A町・B町
言い換えると「A町にB町が編入(吸収)された」。
(3)分立 自治体名:B町 変更対象自治体名:A町
言い換えると「A町の一部(地域B)が独立してB町になる」。
ここまでは一般的な「新設・編入・分立」という単語の意味から連想される通りのものです。特に分かりにくいということもないでしょう。つづいて、問題となっている「分割」。
(4)分割 自治体名:A町 変更対象自治体名:A町の一部
分立と分割ってどう違うんだろう? 元の自治体が法律上消滅するか、でしょうか。一般的な単語としての意味は
いくつかに分けること。(『デジタル大辞泉』による)
ある物をいくつかに分けること。(『大辞林』による)
とあり、分けるところまでの意味しかありません。変遷履歴情報における分割は、分けることに加え「市町村を置く」ことまでを含むために分かりづらくなっているように思います。法律上の用語であるなら一般的な意味とは異なっても仕方ないことですが…。
さて、1911年4月1日の神奈川県子安村・屏風浦村の例を検討します。
・子安村(子安・白幡・西寺尾で構成)→子安は横浜市に編入、白幡は大綱村に編入、西寺尾は旭村に編入
・屏風浦村(滝頭・磯子・岡・その他で構成)→滝頭・磯子・岡は横浜市に編入、その他で(新)屏風浦村を設立
どちらも変遷履歴情報では「分割」として扱われているが、中身は大きく異なります。これを「分割」でひとくくりにしていることが分かりにくい原因ではないでしょうか。前者は「3つの地域に分割→それぞれが異なる1市2町に編入」、後者は「2つの地域に分割→一方は他市に編入、残りのもう一方は村を新設」です。
変遷の分かりやすさを重視して
・子安村を子安・白幡・西寺尾の3つに分割
・屏風浦村を北部(滝頭・磯子・岡)とそれ以外の南部の2つに分割
があった後に
・子安村のうち子安と屏風浦村の北部(滝頭・磯子・岡)を横浜市に編入
・子安村のうち白幡を大綱村に編入
・子安村のうち西寺尾を旭村に編入
・屏風浦村の南部で(新)屏風浦村を新設
が同じ日に行われたことにするしかないのではないでしょうか。変更種別の「分割」=「1つの自治体を分けること」とした方が分かりやすくなると思います。
(続き)
少し時間を空けたらもう少し書きたいことが見つかったので追加します。
A町が分割されるケースでは以下のタイプもあります。
・「A町の一部とB町が合併した」→新設(または編入) 自治体名:B町 変更対象自治体名:B町・A町の一部
・「A町の一部でB町が新設された」→分立 自治体名:B町 変更対象自治体名:A町の一部
いずれにしても元のA町が残っており、上記の「分割」とは異なるのは明らかです。従って、「分割」=元のA町が残らない、「分立」や「編入」=元のA町が残る、と区別されます。そう考えれば
[95666]グリグリさんの
ある市町村を廃止し、その区域を複数に分けて、他の市町村と新設合併、他の市町村へ編入あるいは新たに市町村を設置のいずれかを行うこと
と同じことになるかと思います。ただし、一般的な「分割」の意味に合わせて「分けること」を主眼として
他の市町村と新設合併、他の市町村へ編入あるいは新たに市町村を設置のいずれかを行うために、ある市町村を廃止し、その区域を複数に分けること
とすればよいのではないでしょうか。ただし、上記の子安村・屏風浦村の例のように複数の分割と編入が同時に行われる場合、複雑で分かりにくくなります。自治体の分割は単独で項目立てをするのがいいと思います。