[91970] にまんさん
個人的には「西分」「東分」は一体という感じがします。
同様の名称は山口県内にいくつかあってて、現在でも大字として残っているところだと、
上小川西分、上小川東分(萩市旧田万川町)
阿東生雲東分(山口市旧阿東町)
大嶺町東分、大嶺町西分、大嶺町北分、大嶺町奥分(美祢市)
といったところでしょうか。
これは貴重な情報です。ありがとうございます。
手許にある山口県地名明細書(M8年の「山口県大小区村名書」を底本として、S47年に編集された本)では、これらは、
椿郷西分、椿郷東分
上小川村西分、上小川村東分
生雲村東分、(生雲村西分)
大嶺村東分、大嶺村西分、大嶺村北分、大嶺村奥分
という表記(郷や村の後に○分)となっています。
なるほど、元々は郷の後に○分だけで、村は後から付けたという訳ですか。つまり、「分村」よりも「○分」の方が成り立ちとしてより強い関係にあるということですね。他の事例も含めて考えると「○分」は枝番号のようなものと考えると分かり易いです。いずれにせよ成り立ちがよく分かってとても面白いです。ちなみに、椿郷も含めて上記の地名については、
山口県の市制町村制施行時の時点ではすべて「□□○分村」になっています。例えば、
大嶺村、
上小川村など。どこかの時点で種別名(注1)の付け直しが行われたのでしょうか。
注1)町村単位名を表す適切な言葉はないでしょうか?
ところで、椿郷西分村と椿郷東分村だけは「郷」を残したまま「村」を後ろに付けたため、種別名が重なる結果になりました。五郎兵衛新田村、粟島浦村、大町市、大村市なども種別名が成り立ちにおいて重なった例になります(もっとも、種別名自体に明確な線引きがあるとも言い切れませんが)。この例で思い出したのが、父島にあった、扇村袋沢村です。扇村と袋沢村が合体してできた村なので、椿郷○分村と同様に種別名が離れて重なっている特異な例です。通常なら、扇袋沢村にすることも考えられるのですが、地区名の呼び名として「扇」よりも「扇村」の呼称の方が定着していたからと推測します。
[91965]で言いたかったのは、町村名の読みを考える際に、そういう個別の事情を無視して「町・村」の種別名の部分を一律に切り離してよいものだろうかと言うことでした。
[91969]のhmtさんの記事中にも引用されていますが、
[34776]でIssieさんが「どのような基準にのっとって解釈するかはそれぞれ」と言われている通りであり、その地区における呼び名は、一般的には種別名が含まれる場合もあれば含まれない場合もあり、今回の事例のように種別名を含めて呼ばないと訳が分からなくなる特異な例もあるわけです。そのような状況でも、
短い読み・長い読みの市区町村のカウント数の表示においては、できるだけ納得性を高く表現したいと考えています。
対象が現時点だけであれば、種別名を除いてカウントすることでほぼ問題はありませんが(ただし、都道府県を対象とすると北海道が悩ましい。下記注2参照)、明治の市制町村制まで遡ると「新田」を参考データとして提示するなどの工夫が必要になってきます。
短い市区町村名・長い市区町村名についても、現在は市以外は過去例を対象としていませんが、過去にさかのぼる際には工夫が必要になってきます。
注2)北海道が悩ましい例。
・市区町村雑学:
都道府県名の苗字分析
・データベース検索サンプル:
一番長い読みの都道府県はどこでしょう?
追記:扇村袋沢村は
合成地名コレクションに収蔵されていませんね。