[76774]で約束した通り、今回の十番勝負・問十の共通項「孤独な終着駅」に関連する記事を書いてみることにします。
この問のテーマは、「市内にただ一つの終着駅」。これに類する記事(
[70157]k-aceさん‥「終着駅のある(あった)町村」)も過去に出ていることもあるので、今回は「該当する市」については割愛して、「該当しない市」についての考証を進めることにしましょう。
この問で「NG」として例示された市は、函館・本巣・いなべ・那覇の各市ですが、それらの市について、「NG」とされた理由と、各々のタイプに類する市について拾い上げてみることにします。
(1)函館市。JRとしては函館駅が終着駅ですが、その駅前から市電が出ており、しかもその市電の終着駅も複数(3ヶ所)あります(それ以前に、JRは函館駅の次の五稜郭駅で函館線と海峡線の2方向に分かれており、既にその理由により「NG」になっていると考えられます)。このタイプには、他に長崎市が当てはまりましょう。なお、共通項発表(
[76757])では「路面電車は対象外」としていますが、後述しますが過去にはこの「路面電車の定義」(
[70404])が絡んだ「微妙な市」が存在していたことと、路面電車絡みのこのタイプの「NGの市」は前記の2市以外にはなさそうなので、「路面電車は除く」というくだりは外すのがよいと思われます。
(2)本巣市。この市を通っている鉄道は、5年前に名鉄揖斐線が全廃されて以降、樽見鉄道ただ一つだけになっています。しかし、その樽見鉄道、終着駅・樽見駅は確かに本巣市ですが、途中で隣の揖斐川町との間を出入りしており、谷汲口・高科の2駅が揖斐川町にあります(
[76757])。このタイプに類する市は、現在は他には無さそうですが、実は過去には例がありました。それは、旧・新湊市。この市を通っていた旅客鉄道は、万葉線(旧・加越能鉄道)だけ(他に貨物線のJR新湊線)。「中伏木」駅で新湊市域に入ってから、終着駅「越ノ潟」までずっと新湊市のように思えます。しかし、実は高岡市域が張り出しているところがあり、「中新湊」駅の住所は微妙なところで高岡市になっています(
[67775])。更に、その万葉線。全区間を路面電車タイプの車両が直通していますが、六渡寺~越ノ潟間は法規上「地方鉄道」扱い。実質的にはこの区間も「路面電車」として扱って差し支えないのですが(
[70404])、いずれにしても大変「微妙な市」が存在していたのでした。
(3)いなべ市。市内を通っているのは、いずれも三岐鉄道の三岐線と北勢線(こちらは以前は近鉄でしたが)。しかしそれぞれの終点(西藤原・阿下喜)はお互いに離れており、また両線の起点の市(四日市市と桑名市)も異なります。朝倉市(西鉄と甘木鉄道の甘木駅。もっともこちらはお互いに目と鼻の先ですが)もこれと同類と考えられましょう。日立電鉄があった5年前までの常陸太田市(
[76764]MasAkaさん)も、朝倉市と同タイプでした。幻になった「南セントレア市」も、このタイプに入るところでした(名鉄河和線・河和駅(美浜町)、知多新線・内海駅(南知多町))。
(4)那覇市。市内にあるのは「ゆいレール」だけで、那覇市内で完結しています。これに近い例は、昭和47年に茶屋町~児島間が廃止され、63年に瀬戸大橋線が開通するまでの下津井電鉄(平成2年末に廃止)があった旧・児島市でした。しかし、児島市は昭和42年に倉敷市の一部になっていて、その時期にはもう存在していませんでした。
ところで、ここ数年の間にも鉄道路線の開業や廃止が相次ぎ、「該当する市」にもいくつか出入りがありました。新線開通により新たに仲間入りしたのはつくば市ですが、逆に路線の廃止によって仲間入りすることになった市には、前述の常陸太田市の他、碧南市(名鉄三河線の碧南~吉良吉田間が6年前に廃止)と島原市(島原鉄道の島原外港以南が2年前に廃止)があります。島原鉄道の一部廃止により、「該当する市」が南島原市(島原市内に「南島原」駅(存続区間)があるので紛らわしい!)から島原市に移っています。
♯もう暦の上では冬。今回のタイトルは、この問の第一アナグラムの解「孤独な終着駅」にちなみ、そしてこの問でNGの例とされた函館市を故郷とする、「灰色楽隊」の哀愁のバラード"Winter Again"(
[69202])の一節から取りました‥。
【1,2】誤字・誤記訂正
【3】朝倉市について追記