[81866]グリグリさん
[81862]hmtさんのリストに記載があり、
瞬間の市に記載が無い6市(岡谷市、芦屋市、泉大津市、北見市、大和高田市、泉佐野市)の法的根拠を官報等で調べました。
まずは地方自治法が施行される以前の市制町村制の時の4市(岡谷市、芦屋市、泉大津市、北見市)を見ます。
(1) 1936(S11).4.1市制/改称 長野県諏訪郡平野村→岡谷市
この市制の法的根拠は
内務省告示第82号(S11.3.7)で
内務省告示第八十二号
市制第三条及町村制第三条ニ依リ昭和十一年四月一日ヨリ長野県諏訪郡平野村ヲ廃シ其ノ区域ヲ以テ岡谷市ヲ置ク
昭和十一年三月七日 内務大臣 後藤文夫
とあります。
(2) 1940(S15).11.10市制/改称 兵庫県武庫郡精道村→芦屋市
この市制の法的根拠は
内務省告示第580号(1940(S15).11.6)で
内務省告示第五百八十号
市制第三条及町村制第三条ニ依リ昭和十五年十一月十日ヨリ兵庫県武庫郡精道村ヲ廃シ其ノ区域ヲ以テ芦屋市ヲ置ク
昭和十五年十一月六日 内務大臣 安井英二
とあります。
(3) 1942(S17).4.1市制/改称 大阪府泉北郡大津町→泉大津市
この市制の法的根拠は
内務省告示第158号(1942(S17).3.20)で
内務省告示第百五十八号
市制第三条及町村制第三条ニ依リ昭和十七年四月一日ヨリ大阪府泉北郡大津町ヲ廃シ其ノ区域ヲ以テ泉大津市ヲ置ク
昭和十七年三月二十日 内務大臣 湯澤三千男
とあります。
(4) 1942(S17).6.10市制/改称 北海道常呂郡野付牛町→北見市
この市制の法的根拠は
内務省告示第374号(1942(S17).5.27)で
内務省告示第三百七十四号
市制第三条、北海道一級町村制第一条及町村制第三条ニ依リ昭和十七年六月十日ヨリ北海道常呂郡野付牛町ヲ廃シ其ノ区域ヲ以テ北見市ヲ置ク
昭和十七年五月二十七日 内務大臣 湯澤三千男
とあります。
これら4市を成立させることとした内務省告示を見ますと、
名称変更の条文(市制第七條、町村制第五條、北海道一級町村制第一條で町村制第五條を準用)を使用せずに
廃置分合の条文(市制第三條、町村制第三條、北海道一級町村制第一條で町村制第三條を準用)を使用しています。
市町村会議員必携(実例判例市制町村制逐条示解)(著:河本速夫、出版:自治正調協会、S12.12.18)での解説“名称ノ変更トハ”に依りますと、
村を町と為し、町を村となすも町と村とは元より町村制と云ふ同一の制度の下に置かれたものでありますから法律上其の性質を変更するものではありません只其の名称を変更するに過ぎませんが町を市と為し市を町とする場合は名称の変更ではありません。其の市又は其の町である自治団体は消滅して更に市又は町なるものが存在するものでありますから此の場合は廃置分合の手続きによらねばなりません。
とあり、上記(1)~(4)の4市の変更種別は「市制/改称」ではなく「新設/市制」が正しいものと考えられます。内務省告示の文章中でも
ヲ廃シ其ノ区域ヲ以テ★★市ヲ置ク
とあることより(1)~(4)の4市の変更種別は「市制/改称」ではなく「新設/市制」が正しいものと考えられます。
さて、変更種別が新設/市制となりますと、「市制施行日にのみ存在した市」、「市制施行日に先行して町名を改称した市」のいずれにも該当することはありえません。
続いて市制町村制等が廃止され地方自治法が施行された後のものを見ます(大和高田市、泉佐野市)。
地方自治法詳解(編・発行:内務大臣官房文書課、S22.7.15)によりますと
三 市の基準
(略)
従来町村は町村制を基礎法規としていたから町を村とし、村を町とすることは単なる名称の変更に類似し、人格の生減を伴わなかつたが、地方自治法においては、市と町村を通じて同一法律に基く地方公共団体となった結果単一の町村がそのまま市となる場合又は市が町村となる場合には、人格の生減を伴わないこととなるわけである
とあることより、従前の市制町村制の時に使用された廃置分合の規定が用いられずに、
地方自治法(S22.4.17法律第67号)
第三条
3 都道府県及び特別市以外の地方公共団体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定のあるものを除く外、条例でこれを定めなければならない。
第八条
2 町村を市とし又は市を町村としようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て、内務大臣がこれを定める。
の規定が用いられるようになりました。
#第八条第二項は
地方自治法の一部を改正する法律(S22.12.12法律第169号)によりS23.1.1以降は第八条第三項と変更されました。
(5) 1948(S23).1.1市制/改称 奈良県北葛城郡高田町→大和高田市
この市制の法的根拠の一つ目は
内務省告示第395号(1947(S22).12.27)で
内務省告示第三百九十五号
地方自治法第八条の規定により、昭和二十三年一月一日から、奈良県北葛城郡高田町を大和高田市とする。
昭和二十二年十二月二十七日 内務大臣 木村小左衛門
とあります。
そして地方自治法の第三条第三項の規定により、法的根拠の二つ目として条例の存在が推認できます。また、
地方自治法詳解では
五 告示
条例及び規則は必ず一定の公告式によつてこれを告示しなければならない。法規は、これを遵守すべきものに終始せしめたうえでなければその効力を生ぜず、且つ執行しないこととすることが立憲主義上当然の要請であるからである。告示の様式には別に制限はないが、従前の府県公報、市町村公報等によるべきである。
とあります。官報及び奈良県報(奈良県の公報)で名称変更の条例の存在が確認できないことより、おそらく高田町公報に名称変更の条例があるものと考えられます。
そして名称変更の条例があるならば、大和高田市は「市制施行日にのみ存在した市」もしくは「市制施行日に先行して町名を改称した市」のいずれかに該当することとなるのでしょう。
(6) 1948(S23).4.1市制/改称 大阪府泉南郡佐野町→泉佐野市
この市制の法的根拠の一つ目は
総理廳告示第五十六号(1948(S23).4.9)で
総理廳告示第五十六号
町を市とする処分
地方自治法第八條第三項の規定により、昭和二十三年四月一日から、大阪府泉南郡佐野町を泉(いずみ)佐(さ)野(の)市とする旨、大阪府知事から届出があつた。
昭和二十三年四月九日 内閣総理大臣 芦田均
とあります。
そして法的根拠の二つ目として名称変更の条例があり
佐野町条例第27号(佐野町を佐野市とされた場合における新市の名称変更についての条例)(S23.3.24)
昭和23年3月24日
佐野市を泉佐野市に変更する。
付則
この条例は、佐野町を佐野市とされた日から、これを施行する。
とあります。
#参考までに
大阪府公報昭和23年3月29日第2999号(PDF)p1では
大阪府告示第百八十七号
地方自治法第八條第三項の規定により、昭和二十三年四月一日から、泉南郡佐野町を、佐野市とし、同法第三條第三項の規定により、同日から市の名称を、泉佐野市に変更する條例を許可した。
昭和二十三年三月二十九日 大阪府知事 赤間文三
とあります。
総理廳告示からは分かりませんが、佐野町条例と大阪府告示より、大阪府泉佐野市は「市制施行日に先行して町名を改称した市」として付け加えることになるものと思われます。
訂正
【1】地方自治法(S22.4.17法律第67号)と地方自治法の一部を改正する法律(S22.12.12法律第169号)のリンク先を変更