都道府県市区町村
都道府県や地図に関する地理の総合マガジン

市と町の違い

トップ > hmtマガジン > 市と町の違い
記事数=23件/更新日:2015年2月9日

Q:市と町との最大の違いは何ですか?
A:ハーイ。全国の市十番勝負の回答に挙げることができるかどうかです。

これは冗談としても、1999年篠山市をモデルケースとする平成の大合併では、市になるための「しきい」が低くなり、町から市への動きが加速したのは事実です。
そんなに市になりたいのは何故か?
地方自治体がその仕事行うために役立つ実質的な権限が得られるのか?
それとも、見栄えの良い看板が欲しいためか?

このサイトの主な題材である「市町村」に関する根本的な問いかけに関する記事を集めてみました。
「市になりたい!」人たちの本音を、最も的確に突いていると私が感じた言葉が、[584]にありました。
“なっちゃったもの勝ち”です。

この特集は主として「何のために市になりたいの?」という目的論からまとめました。
もちろん、「市になりたい!」だけではダメで、要件を満たす必要があります。
これについては、既存のアーカイブズ 「市」になる要件について−地方自治法・都道府県の条例から− があります。今回の特集に、その一部を再録しました。

発足当初の「市」は、明治21年法律1号に付属する 「市制町村制理由」 に記されたように、「人口凡二万五千以上の市街地」そのものでした[64148]
しかし、市の領域は、周辺地域の編入により非市街地を含むようになりました。
地方自治法は、人口5万以上の他に中心市街地の戸数6割以上などの要件を定めていますが、合併特例法や合併新法により、市街地・都市的業態従事者・都市的施設の要件は骨抜きにされてしまいました。

2010年3月を期限とする5年の時限立法だった(新)合併特例法は10年延長され、「赤歌合併」により人口2万人未満の「市」を新設する道は、現在でも残されています[75441]
でも、(旧)合併特例法時代から継続していた「3万市特例」は、ようやく廃止されました。

【2010/7/4】
市となるための人口要件に関して、法律の変遷をまとめて記した むっくんさん の記事の続編[75438]と、「3万市特例」を 2010年3月31日まで有効にしていた いわゆる合併新法 制定当時の記事[40463] とを追加しました。
【2011/9/2】
[75441]の記事中において、リンクした記事番号に誤記がありました。
2005年「合併新法」制定当時の第7条【3万市特例】の条文が記されていたのは、[40463] 百折不撓 さん の記事でした。
【2013/6/4】
地方自治法施行前の人口要件(S18市制施行詮議内規5万人、S21改正3万人)に関する むっくんさん の記事[83139]追加。

参考までに、外国の市に関する記事も末尾に加えています。

★推奨します★(元祖いいね) グリグリ

記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[272]2001年6月10日
学生
[289]2001年6月14日
Issie
[581]2001年12月17日
Issie
[584]2001年12月18日
Issie
[1119]2002年3月17日
だいてん
[7795]2003年1月17日
ken
[7815]2003年1月17日
BANDALGOM
[7828]2003年1月17日
しらうお
[7831]2003年1月17日
special-week
[24587]2004年2月7日
太白
[24590]2004年2月7日
太白
[24598]2004年2月7日
太白
[40463]2005年5月1日
百折不撓
[62749]2007年12月1日
むっくん
[75438]2010年7月4日
むっくん
[83139]2013年4月19日
むっくん
[85278]2014年4月16日
hmt
[64148]2008年3月29日
hmt
[74393]2010年3月21日
播磨坂
[74408]2010年3月22日
hmt
[75441]2010年7月5日
hmt
[430]2001年10月21日
Issie
[9921]2003年2月27日
太白

[272] 2001年 6月 10日(日)14:56:30学生 さん
教えて下さい
今、市町村合併について勉強している大学生です。
合併についての各種パンフや自治体などのHPをいろいろ見ていますが、
ひとつ教えてほしい疑問点があります。
町が市になるとどういった点が、メリットなのか?などを分かりやすく説明
されているサイトがありましたら、教えて下さい。(市と町の相違点etc.)
おぼろげに「許可関係などの権限委譲等」ということは、分かるんですが、
いまひとつピンとこないものですから・・・・・。
人口4万を超える私の町では、「敢えて、合併をする必要はないんじゃ
ないの?」っていう人が、結構な割合でいます。
私は、国の財政を考えると合併して、将来に向けて準備しておく必要があると
学生なりに考えてはいるんですが。
[289] 2001年 6月 14日(木)23:56:29Issie さん
市と町の違い
あまりに素朴な疑問ですが,改めて考えると何が違うのか私もわかりませんでした。
とりあえず,検索エンジンでとも思ったのですが,どうキーワードを設定して絞り込んでいけばよいか見当がつかず,お手上げ。そこで,地方自治関係のリンク集に当たってみたのですが,このような素朴な疑問に答えてくれるHPは見つかりませんでした。
地方行政制度についての解説書を見ても,そういう説明はないようです(むしろ,専門書だから載っていないのかも)。

で,「地方自治法」そのものを読んでみる...
この法律でも,そしてこの法律の別表に列記してある「法定受託事務」(旧地方自治法の委任事務にあたる)関連の法律でも,「市町村」はすべてセットでそのまま列記されていて,つまり制度上,この3つは「全く同等」と扱われています。法律上の権限の違いはないらしい。どこをさがしても,「市の権限」と「町村の権限」とを別々に列記した法律は見つかりません。

でも実際には,たとえば都市計画に関して多くの「市」が単独で行っているのに,「町村」に関しては都道府県が行っていることが多い...
これは発想が逆で,「都市計画法」では「市町村」が等しくその主体になることができるけれども,「町村」の場合は単独でそれを実施しないことが多い。その場合には“広域的”な事業として都道府県の管轄になる,ということのよう。
多くの県が出先機関として「土木事務所」などを置いていますが,「市」の区域をその管轄に含めない県もあれば,管轄に含める県もあって,まちまちです。それは,こうした機関の設置に関しては各都道府県が個別に条例で定めるからです。
ただし,「(政令)指定都市」「中核市」「特例市」に関しては都道府県から委譲される権限が「地方自治法」に列記されています。

とすると,「市」「町」「村」の違いは権限の違いではなく,単なる名称の,しかし(法律上ではなく)一般の思い込みとしての「格」の違いなのかもしれません。あるいは,「市」と「町」には“人口規模”についての規定があるから,そういう意味での「格」の違いかもしれない。
とりたてて権限に違いがないのなら,あえて「村」が「町」になったり,「町」が「市」になったりする必要はない,という選択もあり得ます。まして単独の自治体として成り立っていく十分な財政力があるなら,合併(編入)によって「独立」を失うより「町」(または「村」)のままでいるほうが良い,という自治体もあるようですね。広島県の府中町が頑として広島市への編入を拒んでいるのもそのような理由である,とはよく指摘されていることです(本当かどうか,私は知りませんが)。

国はとにかく「市」への垣根を低くしてまで無理やり合併を進めたがっていますが,どちらを選ぶかは何よりも住民の意思が最優先で尊重されるべきだと,私は思います(私は人口60万都市の住民ですが,隣りの12万都市をうらやましく思うことがたびたびあります。ここも周辺3市との合併話がありますが)。
[581] 2001年 12月 17日(月)23:45:22Issie さん
Re:おしえてください2
「村」から「町」に,「町」から「市」になるための手続きや,人口規模による規定なんかは,すべて「地方自治法」とその施行規則などに規定されています。
下のページで「地方自治法」を検索してみてください。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

現行の地方自治法では「市町村」にもやはり区別はなく,これまでの経緯で「市」「町」「村」と言っているだけです。
でも実際にはいくつかの点で権限の幅に違いがあるようです。

*「対馬市」なんぞが誕生する前に,本当にもう一度「“市”とは何か」真剣に考え直す必要があると思うんだけどな…。
[584] 2001年 12月 18日(火)23:13:37Issie さん
Re:市町村
> ...町村はあまり決まりないみたいですね...。(笑)

決まりがないわけではありません。
「町」になる要件については各都道府県が条例で規定しています。
下のページを参照してみてください。
http://member.nifty.ne.jp/jiti/

全部の都道府県や市町村がWEB上で条例や規則(例規集)を公開しているわけではないのですが,ここで公開されているものを見ても都道府県ごとに人口に関する規定に違いがあることがわかります。
少ない県では「4千人」,多いところでは「1万人」というのが相場かな。

でもその人口に達したら(人口以外にも必須の条件があります)自動的に「町」や「市」になるわけではありません。
それを決めるのはまず第一に当該町村だから,あえて「町」や「市」にはならない,という選択をすることもあります。
反対に,いったん「町」や「市」になってしまえば,要件が満たされなくなったからといってもとの「村」や「町」に戻るということもありません。
“なっちゃったもの勝ち”です。
だから,北海道や筑豊の炭鉱町のように昔は5万人くらいもあった人口が激減して1万人を割ってしまっても「市」のままであることもあるのです。

だから,「市」「町」「村」の区別にこだわるなんて...
[1119] 2002年 3月 17日(日)02:19:17だいてん さん
>1115
この問題は、以前にもここで議論されたような気もしますが、私の理解は以下のようなものです。

まず、市になる要件は、地方自治法8条1項に定められています。
かいつまんで言うと、まず「一 人口五万以上を有すること」とあり、次いで中心市街地に居住する人口が6割以上いることや、商工業に従事する人口が6割以上いることなどといった要件を満たすことが必要になっています。
そうなってはいますが、最近の単独市制施行の状況を見れば、人口5万を満たした時点で市制施行が許されています(おそらくその他の要件も満たしていて、それが形となって見えにくいということなんでしょうが)。

ところが、以前は人口要件が3万人だった時期がありました。
1度市制施行してしまえば、以後人口がいくら減っても市を名乗りつづけることが出来ますから、この時期市制施行し、炭鉱の廃止などで人口が激減した市が存在するのです(北海道歌志内市や福岡県山田市などはその例ですね)。

また、近時は合併促進のため、合併のときに限り人口要件を3万人に緩和しています(合併促進特例法)。
これによる市制施行は茨城県潮来市などがあります。

そして、町と村の区別は地方自治法8条2項で定められています。
それによると、「当該都道府県の条例で定める町としての要件を具えていなければならない」とありますから、都道府県が独自に基準を決めることになりますね。

以上のことから見ると、茨城県東海村は人口が3万人台ですから、単独での市制施行はできないことになります。
茨城県の条例を知らないので分かりませんが、町制施行ならできるのではないでしょうか。
「日本一豊かな村」の話が本当なら、それは町制施行しないという意味ではないでしょうか。
沖縄県豊見城村が4月に市制施行しますが、町制施行を経由しなかった理由に「とみぐすくそん」という響きに誇りを持っていたから、というものがあったという話を聞いたことがあります。
まあ本当かどうかは知りませんが、言いたいことは、要件を満たしていても町制、市制施行しない自治体もあるということです。そのため人口の多い村や町が出てくるわけです。

私の説明(になっていたかな?)は以上ですが、最後に私からみなさんに質問を。
例えば先の東海村が、一度村の一部を分離し、直後に合併した場合も市制施行できるんでしょうか?
まあ議会議員や首長の選挙などがありますから現実性は疑問ですが、どうなんでしょうねえ?
長々と書いてしまいました。ご容赦を。
[7795] 2003年 1月 17日(金)01:32:07ken さん
re:市の要件
[7771] 合併研究家 さん
>「特例町村」として市に準じた権限を与えるのが望ましいと思います。

町村にはなくて、市しか持っていない権限っていうのは、ないんですよ。

あるのは「市」という名誉称号だけです。

合併研究家さんのように篠山市などと北巨摩郡などの「質的」な差を、指摘できる識見をお持ちの方でも、町村と市の間「行政上の権限」に差があるかのように思い込まれている点が、問題なのかなあ、と思います。

中核市や政令指定都市は別として、通常の市町村は行政上、法律上の権限には差はありません。
[7815] 2003年 1月 17日(金)13:08:02BANDALGOM[合併研究家] さん
市の権限・合併方式・市より人口の多い町との合併
[7795]kenさん
>町村にはなくて、市しか持っていない権限っていうのは、ないんですよ。
[7806]fさん
>いろいろとあるんだけどなあ。たとえば
http://www.town.yuya.yamaguchi.jp/gyomu/kikaku/gkikaku6.html
>を見てもらえればわかるのですが。自治体としての規模に応じて
>事務処理権限が異なる、ということですかね。

「ないんですよ」とはっきり言い切られると、長年地方自治制度を研究してきた者としては、唖然とさせられるものがあります。
fさんが貼り付けられているHPの通りなのですが、このようなHP・文献をよくお調べになった上で「ないんですよ」という結論になったのでしょうか。

市は福祉事務所の設置が義務づけられていますが、町村は都道府県がそれを肩代わりする。
これによって福祉施策でも、都道府県の場合は画一的ですが、市は独自の施策がとれます。
「教育委員会の史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可」とか、「商店街振興組合及び商店街振興組合連合会の設立認可、定款の変更の認可等」が市にはできて町村にはできないというのも大きいですね。
まあ、政令指定都市や中核市と一般市の違いに比べたら微々たるものですが、「町村にはなくて市しか持っていない権限」はあります。


[7796]uttさん
>例えば、山口県の美祢市は隣の山陽町より小さいですよね?
>このような市と町でも、吸収合併ってありうるのでしょうか??
>吸収される方が大きい場合も吸収合併としてみとめられるのでしょうか??

この場合は吸収合併はありえませんね。
新設合併にしてしかるべきなのは、
1.さいたま市のように、同格の市町村2つ以上が合併する場合。
諏訪地域は岡谷・諏訪・茅野市が、宇摩地域は伊予三島・川之江市がほぼ同格ですから、
これに相当します。
2.静岡市と清水市のように、合併対象の人口規模が最大市町村の半分程度以上の市町村と
合併する場合。
3.篠山市のように、人口規模が最大市町村の半分程度以上の市町村を1つ以上含んだ合併の場合
(旧篠山町2万2千人、旧丹南町1万5千人)
だと思います。
人口6万人の市、3万5千人の町、1万人の町の合併の場合は、新設合併にしてしかるべきです。
問題は人口6万人の市と、1万人の町、5千人の村が合併する場合です。
この場合は編入合併にしてしかるべきところですが、往々にして町村側が「新設合併」を要求するのです。
新設合併が決まっている長野県東部町・北御牧村の場合、2万5千人の町と5千人の村の合併ですし、同じく山梨県河口湖町・勝山村・足和田村・上九一色村(南部)の場合は2万人弱の町と2千人前後の村の合併ですから、このような場合は編入でもおかしくないところです。

島原市周辺の合併協議が方式をめぐって難航していますが、ここの場合は島原市の半分以上の町は一つもありませんから、編入してしかるべきなのです。
一方、取手市と藤代町の合併協議も方式をめぐって難航していますが、8万人と3万5千人、ここは新設にするか編入にするかのボーダーラインってところですね。
藤代町が4万人以上なら新設でしかるべきですし、3万人未満なら編入でしかるべきところですが。


[7808]HMさん
>県の決めた枠組みでは市より人口の多い町とその市との
>合併枠なので少し戸惑っています。
[7811]白桃さん
>日出町は杵築市より人口が多い

私が思い付いたのは笠間市と友部町ですが、杵築市と日出町もそうでしたね。
穂高町も大町市より多いですがここでは合併は検討されていませんし。
[7828] 2003年 1月 17日(金)21:06:56しらうお さん
市のメリット
[7815]合併研究家さん
>「ないんですよ」とはっきり言い切られると、長年地方自治制度を研究してきた者としては、唖然とさせられるものがあります。

市と町村の権限は、「福祉事務所の設置」が実質上ほとんど唯一の違いでしょう。
実際、行政の人も権限についてのメリットはほとんどないことはわかっているはずです。
権限よりも肩書きで、「村」よりも「町」、「町」よりも「市」ってなるのでしょう。

個人的には、統計調査なんかでは「市」と「町村」で扱いが違ったりするので、
その結果を用いる「住みやすい都市ランキング」とかの対象になるのが大きな違いでしょうか。
「地域経済総覧」なんかでも、「市」と「町村」の扱いが全然違いますよね。
歌志内市が出てるのに...って思ってる人は多いはず。
[7831] 2003年 1月 17日(金)22:44:11special-week[ヒロオ] さん
市と町村の違いについて考える
[7828][7815]
しらうお様、合併研究家様

市と町村の違いについては主に以下の事項が挙げられます。

1.議会の招集の告示期間
2.議会事務局を置かない場合の書記長の必置制
3.収入役の必置制
4.選挙管理委員会の書記長の必置制
5.監査委員の定数
6.福祉事務所の必置制

 などがあります。そのほか、教育委員会の史跡名勝天然記念物の変更の認可や商店街振興組合などの設置認可権なども市は有しています。

 また、市昇格の要件として、市街地の連たん数も基準になるため必然的に市街地が形成され、サービス施設も集積するといったことが挙げられます(でも合併の場合、人口のみが昇格条件なのであんまりこれは関係ないですね)
[24587] 2004年 2月 7日(土)03:42:57【3】太白 さん
行政遂行能力の有無が本質問題では? でも確かに名称は気になりますね。
久々に長文で書き込みます。

[24485][24537] 稲生 さん
現在の市制施行の最低人口要件の3万人ギリギリで、市制後明らかに3万人を割る新市の誕生について、「落書き帳」の皆さんはどのように思われますでしょうか?
人口が15,000人を割ったら町に戻るというのは、いかがでしょうか?
このネタは古くて新しい(?)話題ですね。

人口が少ない市(政令市にも共通します)について懸念を表明する議論の根拠は、おおむね、2つの点に集約されると思います。

1.人口が少なかったり、集積度が低い市や政令市は、本来持つべき「格」を保てないから好ましくない。

2.人口が少なかったり、集積度が低い市や政令市は、法令上想定されている自治体としての機能を十分に発揮できないから好ましくない。

長くなるので、本稿では1.の「格の問題」を書きます。

まず大前提として、政令市を含め、市町村に地方自治法上、普通地方公共団体としての「格」の違いはないわけです。しかし、特に政令市に関して、「格」の問題は落書き帳でも過去何度も話題になっています。

アーカイブ「政令指定都市にふさわしい都市とは?」
http://uub.jp/arc/arc30.html
私自身は、[6328]の両毛人[YSK]さんの意見に「理念として」完全に同意します。

他方で、現実問題として「市への昇格」「村に降格」といった言葉は普通に使われているわけです。
アーカイブ「え!そんなことあるの?市町の降格」
http://uub.jp/arc/arc179.html
こちらは、[6816]蘭丸さんの意見が極めて示唆に富んでいると思います。最終段落を除き同意見です。

ここで、「昇格・降格」という用語法を非難する意図はありません。現実問題としてそうした「格」の違いを意識的・あるいは無意識のうちに感じている方が少なくないと思います。また、地図帳の巻末や「民力」などの全国都市ランキングに「市」でないと載らないとか、そこの首長さんが「市長」さんで、全国市長会のメンバーになれるかとか、事実上の違いはあるわけで、それを気にされる方がいても不思議ではないと思います。特に、後者(呼称の問題)は合併を主導する当事者ですから。

あるいは、それは「上下関係」でなくても、「市」とは、そこに住む住民がある程度都会に住んでいるというアイデンティティを示すものかも知れません。
[24445] いっちゃん さん
「市」になることはなんとなく嬉しい
と答えた方の内面は、「市」と「町」の境界にいる自分が「都会の仲間入り」をしたと認められたような気持ちなのかな…と想像します。私自身も、かつて自分の住んでいる住所に「区」が追加されたとき、住所書くのが面倒だな…と思いつつ、やはり「何となく嬉しい」と思いましたし。

逆に、自分の住んでいるところは総合的にみて他の市と変わらない、あるいはそれ以上に都会的なはずなのに、「町」という名称だと、アイデンティティの不一致があって、フラストレーションがたまるのではないか…と想像します。
>軒下提灯さん、どうですか(笑)

これは、何も「市」に限ったことではなくて、村が「町」にならず「村」という名称を引き続き選ぶ例もあることから、「村=風光明媚な農村地帯に住んでいるんだ」という誇りもまた、当てはまると思います。そうした場所が「市」の名称を得ても、アイデンティティの不一致をもたらすだけだと思います。

したがって、理念として、あるいは法制度上「市」「町」に格の違いなどない、ただの「種別」だと思いつつも、名称に付随する「自分の住んでいる自治体の名称がもたらす漠然としたイメージ」があって、特に「市」と「町」の境界部分の自治体の住民が「市」という名称を選好する傾向がある限り、こうした議論はなくならないのでは…と思う今日このごろです。

こうした、誰もが持つ何らかの「イメージ」の面でみると、人口15000人割れで「市」から「町」になるという考え方は、都市としての衰退を名実ともに「宣告」することになるので、そういう「アイデンティティの破壊(おおげさ?)」をしてまで、名称を変更すべき必要性を私は感じません。
※人口減少→都市としての衰退を、地域としての魅力の減少と同一視しているわけではありません。念のため。

「人口3万人で市になるのはおかしい」「2万人なのに市なのはおかしい」という議論は、その自治体の行政遂行能力に対する疑問というよりむしろ、「都会」という千差万別の主観的イメージの「ボーダーライン変更」に対して違和感を持つ人々と、従来のボーダーライン(5万人)付近の「市」の中で、自分達の優越感(無意味なものだと思いますが…)を失うのが嫌と感ずる一部の人々によってなされているのではないか…、などと考えております。
[6816]で蘭丸さんが指摘された
従来の合併推進に関わる市の要件の特例は、地方自治法中の人口要件の部分について特例を設ける形式でしたが、現在のそれは「人口3万以上」のみで可とする…政府は市となるためには市街地を有しなければいけないという100年来の市の概念を変更した
という点について、問題視されるのであれば、それは1つの考え方だと思います。
[24590] 2004年 2月 7日(土)04:56:12【2】太白 さん
「町」にするなら「市」の権限を変えても同じ。それとも、看板が一番重要?
人口が少ない市の存在に懸念を表明する議論のうち、

[24587] 太白
2.人口が少なかったり、集積度が低い市や政令市は、法令上想定されている自治体としての機能を十分に発揮できないから好ましくない。
に関する書き込みです。

地方自治法や各種法令上、「必置規制」なるものがあります。例えば、「助役や収入役を置かなければならない」とか「保健所がなければならない」などです。これは、市と町で異なる場合があるので、市であれば行政コストの増大(逆にいえばサービス水準の向上)になります。

分かりやすい例を挙げれば、地方自治法168条2項で、市は収入役を置く必要がありますが、町村は条例により置かないことが可能です。さて、人口30000人未満の市に、収入役は不可欠なのでしょうか。収入役がいることによる社会的な利益より、行政コストの方が大きくなるケースが出てくると思います。

これを解決するには、
(1)人口が減少した市は「町」になるような制度を作る
(2)人口が減少する市(今後増えるでしょう)を想定して、市の権限をよりフレキシブルなものとする

の2つの方法が考えられます。
[24485]稲生さんの
人口が15,000人を割ったら町に戻る
とのご意見は(1)に属すると思います。しかし、本当に人口のみでクリアカットに考えるのならば、3万人で市になれる以上、3万人を切ったら町に戻るとするのが筋論だと思います。換言すれば、成立要件と資格喪失要件を別のラインとすることは(直感として非常に分かりやすいですが)制度論としては成り立ちにくいと考えます。
念のため付言しますが、私自身が「3万人を切ったら町にすべき」と考えているわけではありません。「市への昇格」が合併促進(財政効率化)の「アメ」として有効に機能しているわけですし、[24587]の後半で書いたとおり、「市」という名称を奪うことに伴う政治的なコストを考えると、そこまですべき必要性を感じません。

したがって、私としては(2)人口が減少した市の権限をよりフレキシブルなものとする、とのアプローチを支持します。具体的には、市であっても町と同様の権限ないし必置規制も可能とするよう、条例等で手当てできるようにすべきと考えます。

また、上記のような権限論を政令市に置き換えて考えれば、政令市は都市計画の策定など、通常の市であれば県が担う事務を自らが実施できるわけで、この権限委譲は「県→政令市」の関係にあります。したがって、県はどんなに小さくても政令市以上に(広域行政に関する)権限を持っていることを意識する必要があると思います。人口61万人の鳥取県が、ある面では横浜市以上の権限を持っていることについて、誰も疑問を唱えませんね。でも、静岡市や浜松市、新潟市等の政令市構想(=県からの権限委譲)には異議を唱える人がいる。面白いことですね(権限を失う県の関係者だったら反対するのも分かりますが:笑)。
[24598] 2004年 2月 7日(土)13:53:14【1】太白 さん
必置規制
[24590]太白
例えば、「助役や収入役を置かなければならない」とか「保健所がなければならない」などです。
この文章に関し、すでにフォローをいただいておりますが、誤解を受けやすい書き方になっていますね。上記の文章は、あくまで必置規制一般論について述べたものであり、「市には助役や保健所を置かなければならない」との趣旨ではありません。市と町の違いの典型例は、私が例に挙げた収入役と、[24595]キュッキュさんの福祉事務所ということになるでしょうか。
助役については、[24597] 両毛人さんの書き込みの通りですし、保健所についても、中規模以上の市でないと基本的に設置されていません。
http://www.jasmec.go.jp/kankyo/h15/book/panf/cr/kensetu_7.htm

…というか、必置規制の例として、それがない「助役」を例にしてしまったのが問題でしたね。失礼しました。
[40463] 2005年 5月 1日(日)18:12:58百折不撓 さん
3万市特例
[40461] がめら さん
今年4月から施行された所謂「合併新法」においても、人口が3万人あれば市になることはできます。
ここに3月までの合併特例法と4月からの合併新法の違いがまとめられていますのでご覧になっていただくとよいと思います。

なお、参考までに市となる要件の特例についての条文を載せておきます。
市町村の合併の特例等に関する法律(抄)
(市となるべき要件の特例)
第七条 次に掲げる処分については、地方自治法第八条第一項各号の規定にかかわらず、市となるべき普通地方公共団体の要件は、人口三万以上を有することとする。
 一 地方自治法第七条第一項又は第三項の規定に基づき市を設置する処分のうち市町村の合併に係るもの(次項の規定に該当するものを除く。)
 二 地方自治法第八条第三項の規定に基づき町村を市とする処分のうち市町村の合併により他の市町村の区域の全部又は一部を編入する町村に係るもの(当該市町村の合併の日に市とするものに限る。)
2 地方自治法第七条第一項又は第三項の規定に基づき市の区域の全部を含む区域をもって市を設置する処分のうち市町村の合併に係るものについては、当該処分により設置されるべき当該普通地方公共団体が同法第八条第一項各号に掲げる要件のいずれかを備えていない場合であっても、同項各号に掲げる要件を備えているものとみなす。
[62749] 2007年 12月 1日(土)23:41:08むっくん さん
市制施行に当たっての人口要件
こんばんは。むっくんです。

最近市制(明治21年法律第1号)町村制(明治21年法律第1号)がらみの書き込みをしている私ですが、町村が市となるための人口要件が妙に気になるようになりました。というわけで、少々調べてみました。


(1)地方自治法(昭和22年法律第67号)施行以降

まず地方自治法施行以降の市となるための人口要件については、以前[187]M.K.さんが文中で紹介されたサイト「市の人口要件の特例措置の変遷」(全国ふるさと市町村圏協議会)(URLは[51976]suikoteiさんによる)に詳しく載っていました。
市となるための人口要件は、昭和22年5月3日の地方自治法施行時以降は3万人で、昭和29年の地方自治法改正以降は5万人が原則とのことでした。そして特例で人口要件が3万人や4万人に下げられた時期があるとのことです。
ただし前述のサイトには平成大合併時の人口3万人での市制施行が出来る特例([13120][16677]参照)までは書かれていませんでしたが。
#その他の要件は、アーカイブ「市」になる要件について-地方自治法・都道府県の条例から-としてもまとめられています。


(2)地方自治法(昭和22年法律第67号)施行以前

地方自治法施行以前の戦前・大正・明治においての市となるための人口要件は、過去ログにおいては、以前[51056](hmtさん)で
明治21年6月27日の朝野新聞には、どんなところが「市」になるのだろうかという記事がありました(明治ニュース事典)。
“その筋にて昨今それらの取調べをなし居る由なり”としながら、“或者の云う処にてはおよそ二万五千戸以上とか、いやそれ以下でもその土地の模様によるとか、現在区を設けてありて郡とその経済を別にし居る処のみ”とか
と市制町村制施行時においての市制の基準が市井でも議論されたことが書かれていたぐらいで、他には何も触れられていませんでした。
[3326][37794]に書かれていることより、人口要件以外の要件が当然ながら必要であったことは推測されます。

次に私が調べた限りでは、市制町村制理由(法令全書[第28冊]p62(33コマ)の18行目以降)に
今此市制を施行せんとするものは三府其外人口凡二万五千以上の市街地に在りとす。尤郡制制定の時に至て其要件を確定することある可しと雖も今内務大臣の定むる所に従て之を施行せんとす。
と書かれていたことより、明治22年に市制町村制が施行されたときの市となるための人口要件は2万5千人以上であったことだけは分かりました。
しかしその後から地方自治法施行時(昭和22年)に至るまでの間の、市となるための人口要件の変遷がよく分からないまま残りました。
#長野県の長野町が市となった時(明治30年4月1日)の人口要件も2万5千人以上だったようですが(参考)。

市制(明治21年法律第1号)施行時における2万5千人以上という市となるための人口要件が、どのような経緯を経て地方自治法(昭和22年法律第67号)施行時での3万人以上という人口要件に変わったのでしょうか。御存知の方は御教示願いたく存じます。
[75438] 2010年 7月 4日(日)18:22:29【4】むっくん さん
市制施行の要件
hmtマガジン発足おめでとうございます。

市と町の違いで触れられている、市となるための要件(人口要件)をまとめてみました。以下、時系列で並べます。

M22~23市制町村制施行時
人口凡そ2万5千人以上
市制町村制理由での
今此市制を施行せんとするものは三府其外人口凡二万五千以上の市街地に在りとす。尤郡制制定の時に至て其要件を確定することある可しと雖も今内務大臣の定むる所に従て之を施行せんとす。
との文言)

? 内務省で市制施行の内規制定
人口3万人以上と規定(法律上の規定はなし)
#地方自治制度(著:秋本敏文・田中宗孝、出版:ぎょうせい、S53.8.31)53頁の記述による

S18 内務省での市制施行の内規改正
人口5万人以上(法律上の規定はなし)
#地方自治制度(著:秋本敏文・田中宗孝、出版:ぎょうせい、S53.8.31)53頁の記述による

S22.5.3 地方自治法(S22.4.17法律第67号)施行
人口3万人以上で都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項)

S23.1.1 法律第169号(S22.12.12)で地方自治法改正
人口3万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)

S29.9.20 法律第193号(S29.6.22)で地方自治法改正(政令第227号(S29.7.31)でS29.9.20施行)
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・すでに申請されている場合は従前のまま、つまり人口3万人以上でかつ連たん戸数は6割以上、かつ都市的業態人口は6割以上、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(昭和29年法律第193号附則第2項1号)
・知事の合併計画に基づき、かつS41.3.31までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(昭和29年法律第193号附則第2項2号)

S33.4.5 法律第53号(S33.4.5)で地方自治法改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・S33.9.30までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(地方自治法附則第2項)
・知事の合併計画に基づき、かつS41.3.31までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(昭和29年法律第193号附則第2項2号)

S38.6.8 法律第99号(S38.6.8)で地方自治法改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・知事の合併計画に基づき、かつS41.3.31までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(昭和29年法律第193号附則第2項2号)
・地方自治法第8条の町村を市とする処分でS42.12.31までに申請した場合は国勢調査のかわりに当該市町村の人口に関する指定統計調査による人口によることも可(地方自治法附則第20条の3)

S40.3.29 市町村合併特例法(S40.3.29法律第6号)が成立
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・知事の合併計画に基づき、かつS41.3.31までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(昭和29年法律第193号附則第2項2号)
・S42.3.31までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から4万人以上に緩和(地方自治法附則第20条の3)
・地方自治法第8条の町村を市とする処分でS42.12.31までに申請した場合は、国勢調査のかわりに当該市町村の人口に関する指定統計調査による人口によることも可(地方自治法附則第20条の4)

S45.3.12 法律第1号(S45.3.12)で地方自治法改正(政令第14号(S45.3.12)により法律第1号(S45.3.12)の施行期間はその施行の日より二年間)
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
S47.3.11までに申請した場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から3万人以上に緩和(ただし人口3万人以上5万人未満の場合では、連たん戸数、都市的業態人口は7割以上を満たすこと)(地方自治法附則第20条の5)

H10.12.18 法律第145号(H10.12.18)で昭和40年法律第6号市町村合併特例法が改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
H17.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から4万人以上に緩和(市町村合併特例法第5条の2)

H12.12.6 法律第138号(H12.12.6)で昭和40年法律第6号市町村合併特例法が改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・H16.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、人口3万人以上(市町村合併特例法第2条の2)
・H17.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、上記原則の人口要件が5万人以上から4万人以上に緩和(市町村合併特例法第5条の2)

H15.7.9 法律第105号(H15.7.9)で昭和40年法律第6号市町村合併特例法が改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
H17.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、人口3万人以上(市町村合併特例法第5条の2)

## 昭和40年法律第6号市町村合併特例法は同法附則第2条第1項により平成17年3月31日限りで失効。失効期日は法律第50号(H7.3.29)の改正による。

H17.4.1 (新)市町村合併特例法(H16.5.26法律第59号)が成立
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
・H22.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、人口3万人以上((新)市町村合併特例法第7条第1項)
・H22.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、上記原則のいずれかを欠いていても可((新)市町村合併特例法第7条第2項)

H22.4.1 法律第10号(H22.3.31)(PDF)でH16.5.26法律第59号(新)市町村合併特例法が改正
(原則)
人口5万人以上(地方自治法第8条第1項1号)でかつ連たん戸数は6割以上(地方自治法第8条第1項2号)、かつ都市的業態人口は6割以上(地方自治法第8条第1項3号)、かつ当該都道府県の条例で定める都市的形態を備えること(地方自治法第8条第1項4号)
(例外)
H32.3.31までに市町村合併によって成立する場合は、上記原則のいずれかを欠いていても可((新)市町村合併特例法第7条)


<訂正>
【3】「H16.5.26法律第59号(新)市町村合併特例法はH22.3.31限りで失効。」との記載を削除しました。その代わりとしてH22.4.1の改正関連を追記しました。
【4】H17.4.1の新法での例外の一つを追記。
[83139] 2013年 4月 19日(金)12:25:54むっくん さん
市制施行の要件(vol.2)
かつて[75438]拙稿で市となるための要件(人口要件)をまとめました。

[75438]においては、
S18 内務省での市制施行の内規改正
人口5万人以上(法律上の規定はなし)
#地方自治制度(著:秋本敏文・田中宗孝、出版:ぎょうせい、S53.8.31)53頁の記述による
と書きましたが、これを

S18.4.17 内務省発地第36号(市制施行詮議内規)
人口5万人以上で都市的形態を具備するものと認められること

S21.12.2 内務省発地第291号(市制施行詮議内規改正)
人口3万人以上で都市的形態を具備するものと認められること
へと追記・修正します。


なお、
S18.4.17 内務省発地第36号(市制施行詮議内規)
S21.12.2 内務省発地第291号(市制施行詮議内規改正)
の詳細は以下の通りです。
#S21.12.2 内務省発地第291号(市制施行詮議内規改正)につきましては、新潟県市町村合併誌(上巻)(編:新潟県総務部地方課、発行:新潟県、S37.12.27)1021頁の記載によりました。

S18.4.17 内務省発地第三六號
市制施行詮議内規
一、市制の施行は其の豫定地域に於ける現住人口五萬以上なることを要すること
二、市制の施行は其の豫定地域に於ける住民の業態、市街地の形成、都市的施設其の他各般の事項に付概ね都市的形態を具備するものと認められることを要すること
(備考)
(1)住民の業態に付ては商工業的業態の戸数が全戸数の六割以上を占むるものなること
(2)市街地の形成に付ては中心市街地に於ける連たん戸数全戸数の六割以上を占むるものなること
三、前二項の基準に該当せざるも特に大工場の設置等に依り近く前二項の基準に達する見込確実にして且新興都市として都市計画的見地等より都市的建設を圖るの要あるものは特に之を詮議することを得ること


S21.12.2 内務省発地第二九一號
市制施行詮議内規
一、市制の施行は、その豫定地域における、現住人口が三萬以上であることを必要とすること
二、市制の施行は、その豫定地域における住民の業態、市街地の形成、都市的施設その他各般の事情について、概ね、都市的形態を具えるものと認められることを必要とすること
(備考)
(1)住民の業態については、商工業その他都市的業態の戸数が全戸数の六割以上を占めるものであること。
(2)市街地の形成については、中心市街地における連たん戸数が全戸数の六割以上を占めるものであること。
[85278] 2014年 4月 16日(水)19:52:05hmt さん
「市」になる要件
[85269] Shouta さん
【人口10万人を超えていた町が】なぜ市にならなかったのか疑問
[85271] 白桃 さん
ざっくりいえば、人口要件以外に都市的要素(中略)を満たしてはいなければならない

Shouta さん はじめまして。hmtマガジンの特集 市と町の違い を編集した hmt です。
この特集や、アーカイブズ 「市」になる要件 の記事をお読みになれば、「市」になるためには人口以外の要件を満たすことが必要であることがお分かりになることと思います。
この記事では 法令に記された要件や その解釈という観点から、少々フォローしておきます。

現在の地方自治法は、その第八条第一項で 市となるべき自治体が具えるべき要件を規定しています。
そこには、5万以上という人口要件(第一号)に加えて、中心市街地要件(第二号、しばしば連たん要件と呼ばれる)・業態要件(第三号)・都市的施設要件(第四号)が求められています。後の3要件は都市要件と総括してもよいでしょう。

今回のような戦前【正確に言えば、地方自治法施行前】の話になると、法律も変りますが、前記マガジンの特集に収録された むっくん さん の記事3件を参照すると、制度の変遷がわかります。
基本になるのは、「市」という制度を誕生させるにあたり明治21年に制定された 「市制町村制理由」の記載[62749]です。リンク文書右頁19行。
今此市制を施行せんとするものは三府其外人口凡二万五千以上の市街地に在りとす

数字や、具体的な都市要件など細かい規定の違いはありますが、基本的に 人口と市街地、この2つを要件とするという考え方は、現行法の 人口要件と都市要件 に引き継がれていることがわかります。

1930年当時に施行されていた 明治44年市制 という法律の第1条に記された“市は従来の区域に依る”も、明治21年の法律の基本的な考え方を踏襲する方針を示しています。

昭和戦前(1930年頃)の「市」は、建前上は この 明治時代に決めた制度から 変っていません。
しかし、日本の産業構造は 19世紀から20世紀へと変化しており、「市」の範囲にも 本来の市街地に加えて周辺部が加わり、広域の市域が形成されつつありました。[79563]で示した人口密度から見た旧富山市の変遷は、その実例です。
M22-H15の旧富山市人口リストは、リンクが切れていますが、WARPを辿れば、到達することができます[84569]

富山市の事例は、「市」の範囲が 「市制町村制理由」に記された“市街地”そのものだけではなく、市街地を核とする 都市圏 へと拡大したことを示しています。
つまり、昔ながらの“人口2万5千以上の市街地”は“市の核”として必要ではあるが、その周辺には市街地でない郊外部を含むことが 許容されるようになりました。

本来ならば このような実態をふまえて、法律「市制」を改正すべきであったと思われます。
しかし、実際には 都市要件を成文化した規定は、ずっと後の 昭和18年内務省発地第三六號 市制施行詮議内規[83139] として現れています。
人口5万人以上で都市的形態を具備するものと認められること
そして、これが現行法の第8条第1項第1号(人口要件)と第2~4号(都市要件)の起源と思われます。

関東大震災後の人口急増で出現した荏原町[83708] 等の新興住宅地の自治体。
これが「市」になれるのか? という問題に戻ります。
郊外にできた住宅地は、あくまでも東京都市圏の一部にすぎない存在である。市の中心市街地たる“核”が東京都心と 別個に存在するとは認められない。これが荏原市否定論の根拠でしょう。
渋谷になると、単独で市になる構想もあった[35674]ようです。
しかし、誕生後2年で京都市に編入された伏見市(1929-1931)のように、現実的ではありません。

1930年当時 東京市の周辺にあった 東京府5郡の町村が 「市」にならなかった【なれなかった】理由は、法律・市制の下での「市」という存在の捉え方に起因するのだと思います。

[64148]では「中心市街地」について記しました。
しかし、その捉え方は法律・市制の時代(戦前)と現在とでは変化しているようです。

背景が東京市の周辺町村とは異なりますが、1941年に大規模な戦時合併で誕生した相模原町。
この町は、中心市街地を欠く という理由で 「市」になることができませんでした[64153]
その後も 中心市街地がどこなのかは 定かでない状態が続いていたと思いますが、とにかく昭和大合併時代の 1954年には「相模原市」が誕生しました。

この間には 法律も 市制から地方自治法へ と変り、相模原町自体の発展もありました。
しかし、決定的に変ったのは、「都市圏の中心市街地」についての要求だったのではないでしょうか。
戦前・戦中までは市に対して厳しく求められた 都市要件が 戦後の政策変化により緩和されました。
平成合併では、平成17年施行の合併新法第7条で、一時的とはいえ都市要件が不要になった時代もありました 参考資料
これは極端な緩和の事例です。しかし、それよりもずっと前の昭和合併の時代から 匙加減により都市要件の緩和は進められてきました。そして、これにより多くの市が生み出されたものと思われます。
[64148] 2008年 3月 29日(土)13:16:00hmt さん
中心市街地
[64144] Issie さん
域内に中心が存在せず,隣接する市に多くを依存する
古く(戦前以前)からの歴史のある核を持たずに「市」となり,いつの間にか人口を増やした

地方自治法 では、「市となるべき要件」(8条1項)の2号に
中心の市街地を形成している区域内に在る戸数が、全戸数の六割以上
と記し、「市」には「中心市街地」が存在することを当然の前提としているようです。

地方自治法の“中心市街地”の意味は、DID のような定義された人口集中地区と関連しているのでしょうか? DIDは統計局の使う専門用語だから直接の関係はないのかな。
いずれにしても、“中心市街地”は“古くからの歴史のある核”である必要はなく、新興住宅地で人口を稼いでもよいのでしょう。
商工業その他の都市的業態要件(3号)もありますが、商店街が分散していてもOKで、もちろん歴史は不要。

人口要件(1号)・連たん要件(2号)・業態要件(3号)に続いて、都道府県の条例で定める都市的施設要件(4号)。
都道府県による違いは少しはあるようですが、お手本があるようで、過去記事 を見ると大同小異です。
なお、要件の全項目を満たしている必要がありますが、項目内はいずれかがあればOKです[3545]

都道府県の条例で定める施設要件いずれの項目も、“中心市街地”や“歴史のある核”を求めていません。

今更言うのもナンですが、以上の要件はもちろん「市となるべき要件」であって、「市であり続ける要件」ではありません。
「体力の限界!」 で引退する横綱、恒久的保存義務を守ることができなければ登録抹消される世界遺産[59505]とはわけが違い、現状では都市的要件を具備しない「市」をそのまま許容しているのが、現行地方制度による「市」です。

振り返ってみると、明治21年法律1号に付属する 「市制町村制理由」 には、
…今此市制を施行せんとするものは三府其の他人口凡二万五千以上の市街地に在りとす…
とあり、市制の対象は 「市街地」 そのものだったようです。

全部改正された明治44年の市制第1条でも“市は従来の区域に依る”とされ、昭和22年の地方自治法でも“普通地方公共団体の区域は、従来の区域による”(第5条)と変らないはずです。
しかし、現実には周辺の村々の合併によって、いつか「市街地」でない区域が入り込んだ「市」が普通の存在になっていました。
そこで地方自治法では、新たな市を作る場合は「連たん要件」を満たすことを求めるようになったのでしょう。

もっとも、合併特例法では“連たん要件等の人口以外の要件を不要とする”としていたし、2005年4月からの合併新法でも“地方自治法第八条第一項各号の規定にかかわらず”となっているので、近年の合併では「中心市街地が存在しない市」を公認しているのかもしれません。
[74393] 2010年 3月 21日(日)20:53:27播磨坂 さん
合併特例
お久しぶりです。
平成大合併といえば、明治・昭和両大合併と比べると、明確な目標もなく、何となく合併を推進したという感が否めませんが…

[74392]今川焼 さん
特にアメの効果を発揮したのが、合併特例債の創設などを定めた1999年の改正と人口要件の緩和を定めた1998年(4万人特例)と2000年(3万人特例)の改正だと思います。

これってよく言われますが、「市」になることにそんなにメリットがあるんでしょうか。市役所職員の方にお話を伺ったことがあるのですが、「市」になるメリットは保健師(だったかな?)を設置出来るようになることくらいだとおっしゃっていました。最低でも特例市にならないと県から権限を移譲されないし、「市」になるメリットといえば見栄えが良くなることくらいでは、と思ってしまいます。
[74408] 2010年 3月 22日(月)16:51:47【1】hmt さん
平成の大合併 と 篠山 (2)篠山市が果たした「目印」としての役割
篠山市については、最近も今川焼 さんの記事[74392]「篠山市は平成の大合併第1号…かどうかはともかく」があります。
紹介された 篠山市誕生記録集 に集録された 合併の経過 によると、1996年の第3回多紀郡合併研究会で合併基本5項目が確認され、1997年設立された法定の合併協議会で新町名「篠山町」を確認し、1998年の自治大臣への届出に進んでいます。

その後に記されているのが、
1998年12月議員提案で市町村合併特別措置法改正提案。市制の人口要件を4万人に引き下げ…施行

[74392]今川焼 さんの記事にある次のくだりがこれです。
この“4万人特例”は地元が要望したものではなく、篠山市誕生前に突如施行されたもので

自治大臣への届出後の法律であるにも拘らず、この4万人特例は篠山にも適用されることになり、1999年1月20日合併協議会だより は次のことを伝えています。

第144回臨時国会において法律改正が成立。市制施行の人口要件が「合併の場合に限り、4万人以上とする」というもので、「この法律の施行前に合併申請がなされており、まだ、合併新町が設置されていない場合においても適用できる」。この法律施行を受けて合併協議会開催。
協議第50号 新市の名称について
新市の名称は「篠山市」とすることで確認しました。これは既に「篠山町」として発足することが決まっていました。
各町臨時議会も市制施行を可決。

そして、市制施行に伴う手続きを記した後に、「新市と町の場合の主な相違点」を表で対比しています。
議会議員の定数(どちらも30人)、議会の招集告示・監査委員・選挙制度(少し違う)、住民税(同じ)
市の場合は福祉事務所設置が義務付けられているが、町の場合は任意。市の場合は福祉事務所の設置・生活保護に要する経費について地方交付税の基準財政需要額に算入される点が町の場合と相違する。

篠山町のままか、篠山市になるかの行政実体上の違いはこの程度です。[74393] 播磨坂さん でも同様の指摘あり。
だが、「市になれる」という法律を作ってくれたのなら、新しい自治体の看板とか目印として「篠山市」を掲げるのも悪くない。
この機会に市になっておこうか。 …篠山としては、そんな感じだったのでしょうか。


こうして1999年4月1日に発足した「篠山市」。
その直後の同年7月16日に成立したのが、[74407]に記した「合併特例債」制度を含む合併特例法の大改正でした。

今度の制度は既存の市には無関係と思いきや、意外にも既に発足している篠山市に適用されたのですね。
改正された合併特例法第十一条の二は既に記しました。そして、地方分権一括法の附則第157条第6項に
新合併特例法第十一条の二第一項及び第二項の規定は、平成十一年四月一日以後に行われた市町村の合併について適用する。
とあります。

この日付は、もちろん篠山市ができた日付です。つまり篠山市は4万人特例だけでなく、合併特例債の適用においても、後からできた法律を特別に適用されるという優遇措置を受けることになったのでした。

[74392] 今川焼 さんも既に記しています。
特にアメの効果を発揮したのが、合併特例債の創設などを定めた1999年の改正と人口要件の緩和を定めた1998年(4万人特例)と2000年(3万人特例)の改正だと思います。
合併特例債などを定めた改正法の公布は2000年の7月ですが、適用は4月1日市制施行の篠山市にまでさかのぼるとされ篠山市はその恩恵に浴しています。
どうも篠山市は合併を推進したい国によって都合良く“平成の大合併のモデルケース”に仕立てられた感があります。

全国で 3232 あった自治体の数を3つ減らしたというだけならば、篠山が平成の合併史に名を残すことはなかったでしょう。

しかし、既に届出の出ていた「篠山町」を 強引とも思われる手段で 1998年改正 人口特例 の適用対象にして、5万人未満の「篠山市」を実現させた「仕掛け人」が居ました。
この仕掛け人の仲間は、その上に、この篠山市を 1999年改正 特例地方債 の適用対象にまですれば、合併の「おいしいところ」を見せつける モデルケースに仕立てる ことができると考えたのでしょう。

このようにして、最初から選んだ道ではなかったのですが、篠山は「平成の大合併の目印」として利用されることになりました。

モデルケースに仕立てられた篠山の住民にとり、タナボタ的な2つの特例、つまり優遇措置によって市になり、合併特例債を利用したことが本当に幸せにつながったかどうかは、議論のあるところでしょう。

しかし、私としては上に引用した地方分権一括法附則第157条第6項の条文
平成十一年四月一日以後に行われた市町村の合併
を見ながら、「篠山市こそが平成の大合併第1号であった」という結論を導くのに躊躇しません。
[75441] 2010年 7月 5日(月)17:37:48【1】hmt さん
平成22年改正(新)合併特例法
[75438] むっくん さん
H17.4.1 (新)市町村合併特例法(H16.5.26法律第59号)が成立
H22.4.1 法律第10号(H22.3.31)(PDF)でH16.5.26法律第59号(新)市町村合併特例法が改正
「H16.5.26法律第59号(新)市町村合併特例法はH22.3.31限りで失効。」との記載は誤りであったので訂正しました。

この法律は、「市町村の合併の特例等に関する法律」というタイトルで、平成17年度(2005年度)から5年間の時限立法として成立した法律でしたが、最近上記の改正がありました。

“この法律は平成22年3月31日限り、その効力を失う。”という時限立法により、平成の大合併終了 へと導くことは政府の5年前からの既定方針だったわけですが、実質的にはその方針を貫きながらも、特例法を改正して「10年延長」という形にしたのは、地方制度調査会答申(平成21年6月16日)に従ったものです。

上記 答申pdf の9/35に「市町村合併に関する方策」があり、次のように記されています。
市町村合併は、行財政基盤の強化の手法の一つとして、今後もなお有効であると考えられ、現行合併特例法期限後においても、自らの判断により合併を進めようとする市町村を対象とした合併に係る特例法が必要である。

その内容は、改正法 だけを見ても解り難いので、改正前の合併新法概要を参照しつつご覧ください。
改正前の合併新法概要はいろいろなページがありますが、岡山県HP 内を「合併新法 概要」で検索して出る pdfファイルが、条文との対応があり見やすいと思います。

合併新法の3ポイントのうち、第3章の合併特例区制度はそのまま存続。
第4章の都道府県の積極的関与による合併推進規定は削除。
そして、第2章で合併障害除去と称して設けられた地方自治法の特例のうち、地方税の不均一課税や議員の在任特例など存続。

問題の市となる要件ですが、[40363]に引用されている制定当時の第7条をご覧ください。
第1項が「3万人市」の特例で、これは既定方針に従って削除されました。
そして第2項。意外にもこれが平成22年改正法でも生き残っています。これはどのようなケースに使えるのか?
「赤歌合併」がその例になります。合併しても人口2万人未満の歌志内市と赤平市ですが、新設自治体は「市」を名乗ることができます。まがみさん[17199]が そのことを示した当時とは、合併特例法が変っているが、結果は同じ。

10年延長というのは、改正法の4コマに記された次のくだりです。
附則第二条第一項中「平成22年…」を「平成32年…」に改める。

それはさておき、
平成の大合併を事実上終了させた平成22年改正「市町村の合併の特例に関する法律」。
そうです、法律のタイトルが「…合併の特例等…」から「…合併の特例…」へと変りました。「等」が削除されて、平成17年に廃止される以前の「合併特例法」(昭和40年法律第6号)と同じ名に戻ったのですね。

この「平成22年改正法」の新しい通称が欲しいところです。
私としては「新合併特例法」でよいと思いますが、この言葉は 2005年から「合併新法」と同様に使われていて、改正前と区別できません。さて、どうしたものか。

【追記】
法律用語に詳しくないので、この法律に使われた附則第二条の「失効」を調べたら、参議院HPに解説がありました。
法律の停止・廃止・失効
“この法律は、平成二十二年三月三十一日限り、その効力を失う。”という状態が続けば、期限が来れば自動的に失効するので、その前に改正(別の立法措置)が行われたのですね。
停止・廃止・失効いずれも法律全体を対象とするものと理解されるので、3万人市特例を定めた第七条第一項のように部分的な条文を対象とする場合は、「削除」を使いました。
[430] 2001年 10月 21日(日)20:26:46Issie さん
ワシントン D.C.
「市」という語尾を都市名の後ろにつける制度になっている東アジア諸国は別として,ほかの国の都市について「市」をつけるのは,むしろ日本側の習慣であるように思います。
ニューヨークの場合には「州」と区別する意味もあって New York City という呼称がありますが,ワシントンの場合はどうなのでしょう。ワシントンの場合は「州」と区別するために District of Columbia(直訳すると「コロンビア地区」)という呼称があるけれども,Washington City とは言うのかしら。
City というのはイギリスではもともと国王から自治権を与えられた都市に対して与えられた称号で,City of London といえば現在の都市ロンドンの一部の区域に対する名称です。東京で言えば「中央区」に相当する部分でしょうか。City of London にはバッキンガム宮殿も国会議事堂も(首相官邸も?)ありません。周辺のいくつもの地区(自治体)をまとめて Greater London(大ロンドン=ロンドン都市圏)となり,これが「旧東京市」あるいは「東京都」に相当するものと思います。ただし,保守党のサッチャー・メージャー政権下では自治体としての大ロンドンは廃止されていたように記憶しています。で,労働党のブレア政権になって自治体として復活した。
「パリ市」は周辺の「県」と同格の存在であり,他の自治体(フランスには制度としての市町村の区別はなくすべて「コミューン」。実は現在の日本の市町村もこれと同じ)とはかなり違った制度になっています。
漢字で「市」と表記していても,日本と韓国と北朝鮮と中国と台湾とではどれも同じ制度ではありません。

どの国の地方制度も,それぞれ別個の制度であるわけですから,たとえ同じ呼称を使用していてもイコールの存在ではありません。だから,お互いにそれらを比較するには十分な注意が必要です。
[9921] 2003年 2月 27日(木)19:54:46太白 さん
はじめまして(アメリカの地方制度)
 はじめて書き込みします(というか、ネット上の掲示板に投稿するのはこれが初めてです)。
 少し前に、市町村合併のリンクからこのHPを偶然発見し、「ツボ」にはまってしまい、以来楽しく見させていただいています。私は現在アメリカのマサチューセッツ州在住の者です。

 [9903]でZzzさんがアメリカの地方制度について触れられていたので、私の知っている範囲で補足できればと思い書き込みします。

 アメリカの地方自治制度は、基本的には、連邦政府の下に、州(State)、郡(County)、市・町(City, Town等:以下まとめて「市」とします。)の三層構造(連邦政府を合わせれば四層)となっています。日本と違って、州が内政に関する広範な権限を持つため、例えば消費税は州によって異なります。マサチューセッツ州の消費税は5%、その北隣のニューハンプシャー州には消費税が存在しません。高速で小1時間もあれば州を越えてしまうので、州境のニューハンプシャー側には、税金が安いことを売り物にしたショッピングモールや酒屋が立ち並ぶ…という状況です。日本では、県境を越えた瞬間消費税が安くなるという制度は考えも付きませんでしたが…。

 カウンティは、州の出先機関で、州の授権の範囲内でその職務を行います。都市部では、普段生活していてカウンティを意識することはまず無いと思います。なお、カウンティはいくつかの市を包含しており、例えばボストン及びその近郊都市は、Suffolk Countyに属します。ただ、例外的にCountyに属しないCityがあるようで、その場合、CountyとCityの境界が一致しないかも知れません。

 さて、基礎的自治体である「市」ですが、この具体的な権限は州によって異なります。なぜなら、地方自治制度の設計や市の設置そのものが各州政府の判断に委ねられているからです(地方自治権の根拠は連邦憲法ではなく、州憲法)。州が基礎的自治体を設置する際制定する憲章(Charter)によって、市の権限や組織も多様なものとなります。このため、日本のように「市」と「町」の一般的な違いを論ずることはあまり意味がないようです。都市部には一般に市が存在しますが、農村部においては法人格を持つ基礎的自治体は存在しないことも少なくないようです。この場合、法人格を持たないタウンシップ(Township)なるものが存在しますが、地方自治制度としては州・郡の二層となります。(冒頭に「基本的に三層構造」と書いたのはこのためです。)

 「市」や「町」といっても、その規模はニューヨークのような数百万規模のものから、数十人のものまで、極めてバラエティに富むものです。このため、行政組織も、市長-議会という形態とは限りません。むしろ、そのような例は少ないといえるでしょう。私の手元に、マサチューセッツ州東部166のCity, Townの行政組織に関するデータがありますが、その範囲では、基礎自治体の行政形態は次の4つに分類することができます。

1.市長(Mayor)-議会(Council)型
2.市支配人(Manager)-議会(Council)型
3.理事会(Representative Town Meeting)型
4.住民総会(Open Town Meeting)型

 1.のパターンは、166市のうち、26に過ぎません。その殆どは人口5万人以上の市です。ボストン(人口58.9万人)やその周辺の都市が、ほぼこの類型になります。

 2.のパターンは、議会の議員は住民の選挙で選ばれ、政策決定の全権と行政の監督権限を持ちますが、行政全般の運営を行政の専門家として雇った市支配人(Manager)に委ねる仕組みです。それなりの規模(人口3~10万人)の都市にいくつか見られます。ハーバード大学があるCambridge(人口10.1万人)がこの類型に属します。

 3.のパターンは、住民に選挙された代表が、理事会で政策決定を行うものです。全住民の総会を開くにはちょっと大きい市・町(人口2万人~5万人程度)にこの例が多いです。

 4.のパターンは、住民が直接、総会で重要事項の決定を行うものです。2万人以下の町で多く見られます。(でも、2万人の町で住民総会って…)

 初等・中等教育の充実度が自治体によって全く異なるため、結果、税金は高いが、潤沢な予算を背景に良い教育を受けられる市には高所得者が住む傾向があります。また、自動車保険に加入する際にも、その町の治安(車の窃盗、いたずら等の可能性)を勘案して保険料にプレミアムが付きます。契約時に保険屋さんに見せてもらったのですが、郊外にある所謂高級住宅街と、都心のスラム街では、同じ車でも年間1000ドル(=12万円!)の差がありました。極めて合理的ではありますが、もし日本で「あなたは治安の悪い市に住んでいるから自動車保険料が高くなります…」とかやったら、いろいろ問題が生じるでしょうね。

 では、今後ともよろしくお願いします。

この特集記事はあなたのお気に召しましたか。よろしければ推奨してください。→ ★推奨します★(元祖いいね)
推奨するためには、メンバー登録が必要です。→ メンバー登録のご案内


都道府県市区町村
都道府県や地図に関する地理の総合マガジン

パソコン表示スマホ表示