8月25日、経済産業省から「2019年工業統計調査(2018年実績)」の確報が公表されました。
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ここには「産業別統計表」・「品目別統計表」・「地域別統計表」の3種類があります。私はこの中で「地域別統計表」をダウンロードし、
[100253]にてクイズを出したのでありました。
今回はこの統計表を眺めて「面白いな」と思ったことについていくつか書いていきます。
まず「2019年工業統計調査(2018年実績)」という表題について。ダウンロードしたデータの「留意事項」によると、
○事業所数・従業者数については2019.06.01現在
○現金給与総額・製造品出荷額等・付加価値額などの経理事項については2018年1月〜12月の実績
とのこと。それから内容を見る限り「従業者数4人以上の事業所」のみのデータであるようです。
(1)事業所数・従業者数
地域別統計表は都道府県市区町村別の事業所数・従業者数・製造品出荷額等が分かるようになっています。
事業所数のランキングは大阪市が4862件でトップ、以下名古屋市、東大阪市、横浜市、京都市、……と続き、人口の順位に近いかな、という感じです。100万都市が並ぶ中で東大阪市はやや目立って見えますね。大阪自体工業が盛んで、特に東大阪あたりは中小の工場が多く集まる「ものづくりのまち」であるということの表れとも言えます。
続いて従業者数。豊田市・大阪市が11万人超、以下名古屋市、横浜市、浜松市、……となっています。大都市が並ぶ中で、工業が盛んな中都市も上位に来るといった印象。10位の安城市、11位の刈谷市なんかは結構意外性があります。
この2つのデータは割と人口規模に比例する並びとなっていますね。一方で製造品出荷額等は全く違う様子です。
(2)製造品出荷額等
1位は豊田市で15兆円。計算してみると日本全体の合計のうち5%近くを占めることになります。自動車恐るべし。
2位は市原市、3位は倉敷市でどちらも4兆円台。豊田市の圧倒的数字に驚かされます。市原・倉敷は石油化学関係の工業が盛んですよね。
4位から9位は川崎、横浜、大阪、堺、名古屋、神戸と政令指定都市が続きます。10位に四日市が来ることは少し意外(?)ですが、石油化学工業が盛んで、中京工業地帯を支えているのは間違いないでしょう。その後も大都市が続く中、太田市や安城市といった、自動車関係に強い都市が肩を並べているようです。
出荷額が1兆円を超えるのは69市町。この中に入っている「町」は、愛知県幸田町と福岡県苅田町の2つです。幸田町は複数の工業団地を持ち、自動車部品最大手であるデンソーの工場などがあります。苅田町はトヨタや日産の九州工場、さらには金属・セメント・電力関係の工場もあり、臨海工業都市として発展しています。
このデータを都道府県内でのランキングにしてみます。まず分かるのは非県庁所在地の強さ。県庁所在地が都道府県内トップとなる例は16と少なく、これが(1)と大きく違うところですね。
それから町村が都道府県内1位となる事例。具体的には岩手県金ケ崎町、山梨県忍野村、香川県直島町です。山梨県については忍野村に次いで2位が昭和町で、市のトップは3位の韮崎市となっています。
金ケ崎町はトヨタ自動車東日本、塩野義製薬、デンソー岩手の工場があり、岩手県最大の工業団地も町内にあるのです。
忍野村にはファナックの本社があります。ファナックは工作機械用CNC、産業用ロボットにおいて世界一のシェアを誇る企業です。
昭和町は複数の工業団地があり、キトー(機械)やテルモ(医療機器)といった企業の工場が集積しています。
直島町は三菱マテリアルの製錬所があり、地金は日本一の生産量だとか。香川県のトップは坂出市のイメージがありますが、まさか島が1位だとは。
自分でこうした統計表を見て、製造品出荷額等の数字というのは人口にあまり関係ないというのがよく分かりました。面白いデータについつい見入ってしまいました。