[24428]水土 さん
地名にその土地の歴史がかなり濃厚に塗り込められていることが多いようです。
日本では地名の研究が遅れているやに聞いています。
昔ながらの地名には、その土地がどういうところだったのかがかなり如実に示されているはずです。
又聞きですが、「いな」という呼び名がつく土地は、その昔地震や洪水、山崩れなどの災禍があったところということが多いのだそうで。それがいきなりどこにでもある「XX台」になっていいものなのか、そういう議論は必要かと思うのですが....
ひらがなの自治体名称や「さくら市」の問題とはズレますが、水土さんのネタ振りは興味をそそるものでしたので、反応しちゃいます。
地形を表す地名というのは、建築業界などでは比較的常識として知られています。例えば日本建築学会の発行する「小規模建築物基準設計の手引き」にはその代表的な地名が「低湿地」「新田・干拓地」「砂州・干潟」「崩崖」の4つの区分で列挙されています。あくまで文献による参考ですが、大変危険な土地の代表的な地名とされている例ですので、例えば家を建てるときには気に留めるのも必要かと思います。
ただし、これらは全ての土地にあてはまるものではありません。あくまで参考になりうる傾向情報です。これは不安を助長するものではないことをここに確認しておきます。
地形 | 代表的地名(使われる漢字) |
低湿地 | アクド・アクダ(悪田) アト(阿戸) アベ(阿部) アワラ(芦原) ウダ(宇田) |
| エダ(江田) カツタ(勝田) カツマタ(勝又) カマタ(蒲田) クボ(久保) |
| コタ(古田) ゴミ(五味) ゴンタ(権田) タイマ(当間) タクマ(託間) ツボ(壷) |
| トダ(戸田) トベ(戸部) トロ(土呂) トンダ・ドンダ(頓田) ニタ・ニト(仁田) |
| ヌカタ(額田) ヌタ(沼田) ノタ(野田) ノマ(野間) フケ(富家) フダ(布太) |
| ヌノダ(布田) ホダ(法田) ミドロ(美土路) ムタ(牟田) ヤノ(矢野) |
| ヤダ(矢田) ヤチ(谷地) ヤツ(谷津) ヤト(谷戸) ヤハラ(谷原) ヨド(淀) |
新田・干拓地 | オキ(沖) カラミ(搦) コウヤ(興野) コモリ(小森) |
| シンザイケ(新在家) シンボ(新保) シンヤシキ(新屋敷) タシロ(田代) |
| チサキ(地先) ナンゲンヤ(何軒屋) ハダチ(羽立) ベッショ(別所) ベフ(別府) |
砂州・干潟 | イサ(伊砂・諫) イサゴ(砂子) シカ(鹿田) ス(州) スカ(須賀) |
| テマ(手間) ユサ(由佐) ユラ(由良) |
崩崖 | アズ(小豆沢) アゾ(阿曽原) アボ(阿保) ウツ(宇津) オシダシ(押出) |
| カケ(掛・沓掛) カレ(干) カロ(賀露) カンカケ(鍵掛) クエ(久江) |
| サル(猿山) ザレ(座連) ダシ(出谷) ツエ(津江) ナキ(黒薙) |
| ヌケ(抜谷) ホキ(保木) ボケ(歩危) シラズ(不知) |
ちなみに、地名に使われる漢字は佳字が充てられる事も多いので、上記の漢字というよりは読みに注目したほうがわかりやすいでしょう。
これらの他にも、例えば「モリ」という地名、漢字が「森」を使っていたとしても実は意味的には「盛」であり、そこが人工的に埋められた土地であることを表す、とかまだまだたくさんあるようです。
ところで、こうやって列挙してみると、意外にも字名でおさまらず、市町村の名前に含まれるものも結構あるのではないかと思います。例えば「砂州・干潟」の「スカ(須賀)」ですが、ご存知神奈川県横須賀市は、三浦半島に位置し確かに海に近く、文字通り「スカ」の横にあると言えます。愛知県東海市の一部となった旧横須賀町もやはり海際です。
市町村合併などで消え行く自治体名称もあれど、それを何らかの形で残していくということは、なにも歴史を消さないだけでなく、先人が残したメッセージをも残すことになるんですね。