[66825] 右左府 さん
貨物専用路線の小坂線、どうやら今年度いっぱいで廃止となるようです。
そうですか、とうとう廃止ですか。
地元の小坂町は小坂線を鉱山事務所や、明治時代に建てられた木造の芝居小屋・康楽館と並ぶ、近代化遺産と位置づけ、旅客営業を含めた鉄道の保存を検討しています。
私も昨年小坂に行き、なんとかこの鉄道を旅客輸送に使えないものかと思ったものでした。
小坂駅は製錬所の資材や製品を輸送するための貨物専用の駅ですが、94年までは旅客輸送も行っていました。広い貨物ヤードに1面の旅客ホームがあり、小さな駅舎も残っていて、また駅前広場は立木や花壇などがきちんと刈り込まれ清潔な感じがして、今でも旅客営業を行っているかのようでした。
駅近くには康楽館という名前の芝居小屋があり、さらにその先には元鉱山事務所だった立派な西洋館も建っています。芝居小屋へは観光バスで来る団体客も多く、十和田湖などの観光コースにも組み込まれているようでした。
それならばいっそのこと、小坂鉄道に観光客のための旅客列車を走らせたらどうか。芝居小屋の前面を線路が走っているからここに駅を作って大館から客を乗せればいい。もちろん秋田からとか、盛岡からとか、あるいは角館から秋田内陸縦貫鉄道を走り鷹巣まで来る急行「もりよし」をここまで延長しても良い。線路というインフラがあり、それも重量貨物を運ぶ強固なものですから、旅客列車を走らせることくらい簡単だと思いました。
車両の調達が難しかったら、スイスの山岳鉄道あたりから中古の客車を買ってきて、貨物列車の後ろに繋いでもいいでしょう。
というようなことを考えていたら、今年になってこの鉄道の運行が休止になったことを知りました。小坂精錬での濃硫酸の生産が終了し、1日2往復のタンク貨車で製品の濃硫酸を輸送する貨物列車の運転を中止したとのことでした。(鉄道ジャーナル 2008年6月号)
DOWAホールディングス子会社の小坂精錬は4月から、リサイクル原料の処理に適した新型炉を本格稼動させましたが、これは携帯電話や廃家電のプリント基板などの他、亜鉛の精錬行程や化学工業で出た残渣を原料にして、金や銀などの貴金属だけでなく、鉛の代替材料である「ビスマス」やコピー機の感光ドラムに使われる「セレン」などのレアメタル、合計18種類の金属が回収できるという、最先端のものだそうです。(日経ビジネス 2008年4月21日号)
だから濃硫酸よりはずっと重量当たり単価の高い製品に転換したので、最早鉄道は不要ということになったのかも知れません。
事業休止期間を2009年3月末までの1年間としており、輸送する新たな貨物が見つからない場合には路線の廃止をする方針だそうですが(鉄道ジャーナル)、この精錬所が処理能力を拡大し、都市鉱山と言われる電子機器廃材を全国から集めるようになれば、やはり鉄道輸送は有効だと思います。
小坂町の鉱山事務所や芝居小屋の一帯はヨーロッパの街並みに似ており、わが国の鉱工業近代化の足取りを語ってくれる産業遺跡そのものです。十和田湖などと上手く組み合わせ、観光都市としても生きて行けそうだし、リサイクル事業最先端の町として今後は世界的にも知れ渡るかも知れません。
鉄道でこの町に行くことのできる日が、いつか来ることを願っているのですが。