[77547] 千本桜 さん
なぜ「大字が分解されてかつての小字が市町村の直下に組み込まれると小字が大字扱いになってしまう」と考えておられるのか不思議でした。
私の記述が舌足らずであったため、誤解を招いてしまったようです。
正確に表現すると、「小字が大字扱いになってしまう」ではなく、
[77486]の表で「大字」としてある地域のうちには、大字が分解された小字も含まれる、とすべきでした。小字が大字になったと考えているわけではありません。
[77486]で意図したのは、小字起番の地域が地理的に極端に偏っていること、したがって、mapionなどのネット上の地図で検索する場合も、抽出される小字地名が特定の県に偏在すること、を示すことでした。その点さえ理解してもらえばいいので、データの詳細な正確性にはこだわっていませんでした。
資料として郵便番号簿を使ったのは、小字起番の地域を簡単に抽出できる資料がそれしかないからで、このデータに、千本桜 さんがご指摘されたような欠陥があることは承知の上です。
ただ、
[77486]で私が使った「大字」という用語は、明らかに誤解を招く表現です。正確には「市区町村の直下の地域区分」であり、それには近世村に由来する大字のほか、城下町等の町に由来する町、明治以降に新たにつくられた町、そして大字が分解された結果市区町村の直下に位置することになった小字、などが含まれています。
スペースが限られる表頭部分に、「市区町村の直下の地域区分」などという長たらしい表示をしたくなかったので単純に「大字」と表現したのですが、以上の説明を丁寧にしておくべきでした。誤解を与えてしまい申し訳ありません。
宮城県の大字数が2848個というのは納得できません。この数字は大字の他に住居表示実施で発生した町と多数の小字を含んでいるはずです。
住居表示された丁目地名は小字起番があり得ないので除去しているとのことですが、丁目がない住居表示済みの町も同様に扱うべきだと思います。
これも、千本桜 さんの意見は正論です。
ただ、「住居表示された丁目地名」は、郵便番号簿から簡単に分かるのですが、「丁目がない住居表示済みの町」を機械的操作によって知る方法はありません。つまり、その地域区分が「丁目がない住居表示済みの町」であるかどうかを確認するためには、10万件近い地名について、その住居表示適用の有無をチェックする必要があります。それには相当の手間と時間がかかるはずで、
[77486]でお示ししたデータについては、そこまでの時間を費やしていません。
また、「大字」として示した中に多数の「小字」が含まれるのは先にも示したとおりですが、これも機械的に判別する方法がなく、いちいち確認する必要があります。徳島県内や宮城県の一部については事前に知っていたのですが、東北地方の他の県などの実情はよく分かりません。で、詳しくは調べずに、「大字が分解された小字の存在を考慮すると、小字起番率はさらに高まる」という注釈を入れておいたのですが、こちらも誤解を招いたようです。
今後は、できるだけ誤解を招かない表現、説明をするようにいたしますので、ご容赦ください。
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と言うだけでは言い訳ばかりになってしまうので、大字・小字に関係する別のデータをご紹介しておきます。
基礎とした資料は「
数値地図25000(地名・公共施設)」です。これは、25000分の1地形図(全部で4000枚以上あるはずですが)に記載されている地名等の注記約47万件のデータベースです。上記のサイトによると、2002年4月刊行の世界測地系に基づく版もあるようですが、私が持っているのは2000年1月発行の日本測地系版です(定価で買うと7500円なのですが、ヤフオクで1000円で入手しました)。当然、2000年もしくはそれ以前のデータです。
このデータでは、約47万件の注記のうち居住地名が約30万件あり、それが次の3つに区分されています。
・総称する名称~580件
・包括する名称(大字及び住居表示)~141,574件
・個々の名称(字及び通称)~153,025件
とりあえず、「総称する名称」は無視し、「大字及び住居表示」と「字及び通称」の件数を都府県別に集計したのが次の表です。
県 | 大字及び住居表示 | 字及び通称 | 計 | 「字及び通称」比率 |
03岩手県 | 1771 | 7693 | 9464 | 0.81 |
45宮崎県 | 1150 | 3972 | 5122 | 0.78 |
07福島県 | 3009 | 10342 | 13351 | 0.77 |
37香川県 | 885 | 2714 | 3599 | 0.75 |
46鹿児島県 | 1828 | 5428 | 7256 | 0.75 |
32島根県 | 1496 | 4133 | 5629 | 0.73 |
36徳島県 | 963 | 2635 | 3598 | 0.73 |
05秋田県 | 1707 | 4569 | 6276 | 0.73 |
44大分県 | 1929 | 4985 | 6914 | 0.72 |
20長野県 | 2362 | 5806 | 8168 | 0.71 |
41佐賀県 | 979 | 2359 | 3338 | 0.71 |
35山口県 | 1955 | 4619 | 6574 | 0.70 |
04宮城県 | 2445 | 5752 | 8197 | 0.70 |
33岡山県 | 2916 | 6767 | 9683 | 0.70 |
43熊本県 | 2342 | 5363 | 7705 | 0.70 |
39高知県 | 1810 | 3276 | 5086 | 0.64 |
38愛媛県 | 2138 | 3821 | 5959 | 0.64 |
10群馬県 | 1937 | 3288 | 5225 | 0.63 |
34広島県 | 3479 | 5559 | 9038 | 0.62 |
09栃木県 | 2377 | 3728 | 6105 | 0.61 |
42長崎県 | 2022 | 2892 | 4914 | 0.59 |
08茨城県 | 3654 | 5135 | 8789 | 0.58 |
02青森県 | 1995 | 2634 | 4629 | 0.57 |
06山形県 | 2245 | 2932 | 5177 | 0.57 |
19山梨県 | 1138 | 1480 | 2618 | 0.57 |
21岐阜県 | 2759 | 3160 | 5919 | 0.53 |
30和歌山県 | 1576 | 1755 | 3331 | 0.53 |
40福岡県 | 4963 | 4647 | 9610 | 0.48 |
22静岡県 | 3521 | 3219 | 6740 | 0.48 |
31鳥取県 | 1483 | 1234 | 2717 | 0.45 |
24三重県 | 2745 | 2278 | 5023 | 0.45 |
12千葉県 | 5392 | 3881 | 9273 | 0.42 |
47沖縄県 | 970 | 679 | 1649 | 0.41 |
11埼玉県 | 4857 | 3127 | 7984 | 0.39 |
26京都府 | 1816 | 861 | 2677 | 0.32 |
15新潟県 | 5360 | 2243 | 7603 | 0.30 |
01北海道 | 13091 | 5549 | 18640 | 0.30 |
14神奈川県 | 4092 | 1455 | 5547 | 0.26 |
23愛知県 | 7188 | 2480 | 9668 | 0.26 |
17石川県 | 2225 | 643 | 2868 | 0.22 |
29奈良県 | 2159 | 623 | 2782 | 0.22 |
28兵庫県 | 7778 | 1725 | 9503 | 0.18 |
25滋賀県 | 2014 | 365 | 2379 | 0.15 |
13東京都 | 5084 | 529 | 5613 | 0.09 |
18福井県 | 2228 | 206 | 2434 | 0.08 |
16富山県 | 2591 | 232 | 2823 | 0.08 |
27大阪府 | 7150 | 252 | 7402 | 0.03 |
上記計 | 131833 | 152541 | 284374 | 0.54 |
(「字及び通称」比率=「字及び通称」/(「大字及び住居表示+「字及び通称」))
「大字及び住居表示」には、大字地名のほか○○×丁目などが個別に、つまり○○1~5丁目は5つの地名として、含まれています。一方、「字及び通称」は大字の下位地名で、小字のほかいわゆる「通称」と称するものが含まれています。大字起番地域では大半が通称ですが、小字起番地域でも、通称が記載されている場合があると思われます。
また、このデータには重大な欠陥があります。25000分の1地形図の注記をそのままデータ化したものなので、地形図の端に位置する地名は、複数の地名図にまたがって記載されます。最大で4つの地形図に記載され、4回カウントされている地名があります。このような地名がどのくらいの割合にのぼるかはよく分かりません(スクリプトを書いて重複データを除去することは、ある程度まで可能ですが、そこまでやっていません)。
以上のような性格のデータだということを念頭に置いて見ていただきたいのですが、全国には大字等の地名が約13万件、小字・通称が15万件程度あることが分かります(先の欠陥のため、実際の地名数はこれより少なくなります)。
また、「字及び通称」比率が高い県には、小字起番地域である東北各県や徳島県のほかに、九州各県や香川県、島根県などがあがっています。一方、「字及び通称」比率が低い地域として、住居表示実施率の高い東京、大阪などの大都市があがっているのは当然として、福井、石川、富山の北陸各県、および奈良、兵庫、滋賀県といったかつての畿内近国地域が目につきます。
どうしてそのような結果になるかについては、地域による近世村の構造の違いが影響していると考えられ、仮説も持っているのですが、その紹介は今後の書き込みで行いたいと思います。
夕方になったから、今日の夕食の「おでん」を作らないといけないのですよ。