[25784] の浦安にあった地名? です。山本周五郎「青べか物語」は、次のような文章で始まります。
浦粕町は根戸川のもっとも下流にある漁師町で、貝と海苔と釣場で知られていた。(中略)北は田畑、東は海、西は根戸川、そして南に「沖の百万坪」と呼ばれる広大な荒地がひろがり、その先もまた海となっていた。
昔の地形図を見ると、海岸沿いに約1km幅の干潟があり、特に江戸川河口には 海中であるにもかかわらず 荒地の記号も記されているのが認められます。
どうやら正式には浦安町の面積 4.43km2に含まれていないが、実質的はある程度沖積地を形成していた半陸地と思われます。
私には目測する能力がないので正確にはなんともいえないが、そこは慥かにその名にふさわしい広さをもっていた。畑といくらかの田もあるが、大部分は芦や雑草の茂った荒地と沼や池や湿地などで占められ、その間を根戸川から引いた用水掘が…通じていた。
このように描写された半陸地を500億円の工費で正式の陸地にし、5000円/m2で千葉県から払下を受けたのは 1960年設立のオリエンタルランドで、遊園地用地 211ha、住宅地 132ha 合計 343haというから、文字通り百万坪でした。
同社は住宅地の転売で利益を確保したものの、本来の遊園地事業の方はなかなか進捗せず、東京ディズニーランドが開園したのはずっと後の1984年でした。
蛇足ですが、「青べか物語」には「三本松」というランドマークも登場します。【1】ひょっとすると
[23102]「三本松を全国的に有名にする会」会長さんのお住まい? まさか。
土地造成により拡大した市区町村は浦安以外にもあるので、思いつくままに記してみました。
明治以来の純血主義を守ってきたミニ自治体 大阪府田尻町は、1990年には面積 1.94km2でしたが、関西国際空港の一部が加わった現在は、面積 3.86km2と倍増しています。空港は現在の約2.5倍に拡張される計画がありますが、田尻町も泉州南合併協議会に入っているので、浦安の造成拡大率トップ(4倍増)の座はゆるぎそうにもありません。
同じ大阪府の高石市も、臨海工業用地の造成により6.19km2から11.35km2へと倍増に近い拡大です。こちらは造成前の1953年に旧取石村を編入合併しているので、造成拡大率が小さくなっています。
もちろん秋田県大潟村は八郎潟干拓により造成された村ですが、元の村が存在しなかったので「拡大」には該当せず、別格と考えます。
東京都江東区は浦安市、田尻町、高石市よりも大きな自治体ながら、埋立地比率はかなりの値になりそうです。自治体発足よりも前、江戸時代からの埋立地を含めたら、大部分が埋立地と言えるかもしれません。
中央区にしても日本橋は江戸前島でしたが築地・月島は名前の通り築造地ですね。
東京の場合は自治体発足前の埋立地があるので、造成拡大率は比較しにくいところがあります。
おしなべて埋立地が多い東京湾北部の中で、海岸のミニ自治体という純血を守った浦安が、近年の造成拡大率ナンバーワンになったのは当然かもしれません。