この記事は、「政令指定都市」という用語に関する
[53814]の末尾に記した「中核市」関係の部分を分割し、再構成した上で書き足したものです。
中核市を論ずるとなると、最初に、どのような利点(権限の委譲)があり、どのような負担があるのかを心得る必要があります。
しかし、残念ながらこの点について論ずるだけの力を持たないので、
[11805] seahawk さんの対照表と、
[2796] たけもと さん による八王子論を引用するに止めておきます。
では、中核市が生まれてからの10年間、どんな都市が指定されてきたかを、指定要件が緩和されてきた歴史と共にたどります。
1995年4月1日の制度発足から1年後の1996年指定は12市( 宇都宮、新潟、富山、金沢、岐阜、静岡、浜松、堺、姫路、岡山、熊本、鹿児島 )。
翌年以降は、毎年4月1日に数が増えてゆきます。
1997年(秋田、郡山、和歌山、長崎、大分)、1998年(豊田、福山、高知、宮崎)、1999年(いわき、長野、豊橋、高松)
2000年4月1日施行で人口30万人以上50万人未満の市に対する昼夜間人口比率要件が廃止されました。
2000年(旭川、松山)、2001年(横須賀)、2002年(奈良、倉敷)とペースは落ちますが毎年追加指定が続きます。
2002年4月1日施行で人口50万人以上の市については面積要件が廃止されました。
翌2003年の追加指定は、川越、船橋、相模原、岡崎、高槻の各市ですが、このうち船橋と相模原(当時)の面積は、100km2未満であり、要件緩和に救われた実例となりました
[2764]。
静岡市は、1996年に中核市に指定されていましたが、2003年に清水市との新設合併によって旧・静岡市の指定は解消され、改めて指定されました。
2004年の追加指定は東大阪市ですが、新設合併の富山市も改めて指定されました。
2005年は、4月1日に静岡市が政令指定都市になり、はじめて中核市の数が減少。10月1日には函館市、下関市が指定。
そして、本年(2006)6月7日に公布された地方自治法の改正で、中核市の面積要件(252条の23)が削除されました。
官報 の附則によって確認できるように、この部分の改正は即日施行で既に有効になっている筈ですが、総務省の
法令データ提供システム には、まだ旧条文が残っていました。
「面積100km2の壁」が取り払われたことを最も歓迎したのは、僅か0.04km2の差で及ばなかった西宮市
[2781][2789][19219]ではないかと思うのですが、西宮市の
中核市移行の経緯と予定 によれば、
西宮市は、平成20年(2008年)4月1日の「中核市」移行をめざし、準備を進めています。
とのことなので、まだ少し先のことになるようです。
それよりも早く、本年10月1日から中核市に追加指定されることが決まっているのが青森市です。
中核市の指定に関する政令 の中で(未施行)と付記されている「平成十八年五月十九日政令第百九十九号」に出ています。
最後に、「都道府県市区町村」の中の日付表記について。
政令指定都市・中核市・特例市一覧 で、富山市の中核市指定日が1996.4.1となっています。
実質的には、この日から富山市が中核市であることは間違いなく、私自身もこの日付が良いのではないかと思うのですが、形式的には、1996年に指定された旧・富山市は、2005.4.1の新設合併により消滅し、この日に(新しい)富山市が中核市に指定されています。
総務省の中核市一覧 の注3参照。
これは、グリグリさんの専門分野(?)である「市制施行日」とも共通する問題であると思われ、表記方針に口を出すつもりはありませんが、上記の政令に記された中核市の順位では、
……東大阪市 富山市 函館市 下関市
と、新参者扱いにされている事実を指摘しておきます。