[11791]seahawk さん
引き続き、政令指定都市についてのレスをたくさん寄せてください。よろしくお願いします。
ということなので、私も、
[11792]で挙げられている地方自治法の条文などを参照しながら、意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、指定の要件とその手続から見てみたいと思うのですが、
中核市では、地方自治法第252条の23という独立した条文で、要件が明確に規定されているのに対して、
政令指定都市と特例市は、それぞれの権能について規定している同法第252条の19と第252条の26の3で、
政令で指定する人口○○万人以上の市は‥と書かれているのみで、独立した要件規定を持っていない
という違いが、目に付きます。
つまり、中核市になるための要件は明確で、この要件を満たしていれば、
所定の手続きに則って中核市の指定を受けられるものと解せるのに対して、
政令指定都市と特例市の場合は、実際に人口○○人以上のどの市を指定するかは
政令(つまり政府の判断)に白紙委任されているように、読めるわけです。
もっとも、特例市については、地方自治法第252条の26の4で、
中核市の指定に係る手続について定めている同法第252条の24を準用することが定められていますから、
中核市同様、市議会の議決と都道府県議会の議決を経た同意を得た上で申し出る
という手続を踏めば、当然に指定されるものと解せますので、政府の裁量の入る余地は乏しく
行政の透明性は担保されていると言えましょう。
問題は、政令指定都市の指定に係る手続です。
政令指定都市制度について書かれている地方自治法の第12章第1節には、
実は、指定の手続に関する規定が、一切書き込まれていません。
何の根拠規定もないために、この指定は、政府(実際にはこの関係事務を担う旧自治省官僚)の
恣意に委ねられてしまっているように思われるのです。
行政の手続の透明性ということから考えても、地方自治体の自治という観点からいっても、
この点は、改められるべきではないかと、考えます。
すなわち、政令指定都市についても、
中核市の指定に係る手続について定めている地方自治法第252条の24の規定を準用するような条文を設け、
市が指定を望み、その属する都道府県の同意が得られるならば、政府の裁量の余地なく指定されるように
改めるべきだと思うのです。
さて、このように書きますと、
そのように市の主体性に任せてしまうと政令指定都市が粗製濫造されてしまうのではないか、
既存の政令指定都市(の威厳や風格!?)とのバランスを失するのではないか、
といったご批判を受けそうです。
そこで、文字通り大都市と呼べるような都市については、
政令指定都市よりもさらに権能が拡充される都市制度を新設することを、考えてみたいと思います。
地方自治法第252条の22の、中核市の権能についての規定や、
同法第252条の26の3の、特例市の権能についての規定をご覧いただくとわかるように、
これらの市の権能は、いずれも、政令指定都市の権能からの引き算になっています。
人口50万以上の市に対して、中核市以上政令指定都市未満の「政令指定都市2軍」的な制度を設ける
という考え方もあろうかとは思いますが、政令指定都市と中核市との間に、
敢えて新たな都市制度を設けて、さらに微妙な権能の差を設けることは、
都市の格付けといった意味はあるにしても、あまり実態的な意味はないように思えてなりません。
それよりも、既存の政令指定都市が、さらなる権限移譲を求めてきている経緯を踏まえると、
政令指定都市よりもさらに権能が拡充される都市制度を新設することのほうが、
地域で出来ることはできるだけそれぞれの地域の判断に任せるという、分権・自治といった発想からも、
望ましいのではないかと考える訳です。
とはいえ、既存の政令指定都市の権能をさらに充実させたら、
それはもう、「県そのもの」なのではないか という見方もあるでしょう。
指定都市事務局は、道府県との「二重行政」の解消や税財源の移譲などを、国へ要望しているようで、
必ずしも、この要望に沿う形で権能を充実させても、「県そのもの」ではないとは思いますが、私は正直、
一定の規模の大都市は、かつて議論された特別市や、韓国の広域市のように、完全に道府県から独立した、
「県そのもの」になってしまってもいいのではないかと、思っています。
となるともちろん、大都市部に独立されてしまった道府県の残余の部分は、どうするか
という、かつて特別市制度が論じられた当時に問題となった懸念が、再浮上してくるでしょう。
この懸念に対しては、私は、2つの考えをもっています。
1つは、財政調整制度(交付税制度)があるので、残余の部分だけでも、
既存の他の県に比して、全く立ち行かなくなるという道府県はないのでは‥というものです。
そしてもう1つは、大都市に独立されてしまうことで、これが都道府県の合併の呼び水になり、
国のブロック出先機関の持っている権限の移譲を受けるための受け皿が整備されて道州制に一歩近づくのでは‥
というものです。
さて、この「県そのもの」となれる大都市=特別市の要件ですが、条文っぽく書きますと
1.人口100万以上を有すること
2.当該市の人口が200万未満の場合にあっては、最近の国勢調査の結果による当該市の従業地・通学地による人口を当該国勢調査の結果による当該市の常住地による人口で除して得た数値が1を超えること(つまり昼夜間人口比が100以上)
といった要件を考えています。
ちなみに、このような規定ですと、大都市=特別市の対象となるのは、
横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸、京都、福岡、広島、北九州、仙台の10市となり、
川崎、さいたま、千葉の各政令指定都市が、対象から外れることとなります。
なお、道府県から独立した大都市=特別市の場合、都道府県-市区町村の2層の自治を有する
他地域と異なり、
そのままでは1層の自治体となってしまいますので、現在の行政区を、公選の区長・議会を有する
東京特別区型の自治体としてはどうかと、考えています。
以上、長々と私見にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
また、この私見に対するご意見を、お寄せいただけましたら幸いです。