[104067]BANDALGOM さん
(茨城県)桜川市、河内町
これも驚きです。河内町は先に指定された利根町とともに、地元から比較的近い所ですし(千葉市へ行くより近いかな?)、桜川市は水戸線が通っている所ですから、過疎地と言われても、あまりイメージが湧かないものがあります。
せっかくレスを頂いたものの、東国はあまりイメージが湧かないので、とりあえずデータ的なものを調べてみました。
| 2020年人口 | 5年間増減率 |
桜川市 | 39,122人 | -8.23% |
河内町 | 8,231人 | -10.22% |
ということで、両市町とも5年間で10%近くの人口減が起こっていました。R2国勢調査による追加の要件がよく分からないのですが、もともとの人口要件の25年間21%以上減で見てみると単純平均で5年4.2%なので、この5年間の人口減の加速化で過疎地域の要件に掛かってきたのだと思われます。確かに桜川市は南部は筑波山もあるので過疎も分かるのですが、北部はJR駅も3つあり、ICもあるので過疎というと少しイメージが湧かないところがあります。そこで桜川市の合併前町村部ごとの5年間人口増減を調べてみました。
| 2020年人口 | 5年間増減率 |
桜川市(全域) | 39,122人 | -8.23% |
(旧岩瀬町) | 18,077人 | -7.83% |
(旧真壁町) | 15,159人 | -9.05% |
(旧大和町) | 5,886人 | -7.30% |
と、実はあまり地域に偏りなく人口減が起こっているようです。南部の旧真壁町の減少率が少し高いものの全域で7%を超えており、全部過疎になるのも妥当なのかなというデータです。
一方の河内町はやはり鉄道と高速道を含めた交通の便の問題が大きいのか、5年減少率が-10%を超えていますのでデータ的には過疎地域になるのも分かる気がします。大昔なら舟運の利があるかもしれませんが、現代では利根川クラスの大河は地理的な不利を生み出す要因となる影響が大きいのでしょう。
では、同じ茨城県内で一部過疎に追加指定される、潮来市とかすみがうら市はどうなのかと思い、旧町村部ごとの内訳も含めて比較してみました。
| 2020年人口 | 5年間増減率 |
潮来市(全域) | 27,604人 | -5.17% |
(旧潮来町) | 22,962人 | -3.83% |
(旧牛堀町) | 4,642人 | -11.29% |
| 2020年人口 | 5年間増減率 |
かすみがうら市(全域) | 40,087人 | -4.88% |
(旧霞ヶ浦町) | 14,564人 | -6.11% |
(旧千代田町) | 25,523人 | -4.17% |
潮来市については、中心部の旧潮来町の人口比率が高く減少率もやや小さいため、市全体としては過疎の要件には掛かってこず、旧牛堀町部のみが過疎地域に該当するため一部過疎に指定されたと思われます。中心地域と周辺地域に人口格差がある合併例で、一部過疎にありがちなパターンなのでしょう。このような合併市では、やはり過疎対策をする上では一部過疎の考え方が必要だと思います。
かすみがうら市については、私自身勘違いしていたのですが、霞ヶ浦町より千代田町のほうが人口規模が大きかったのですね。新市の名前がひらがなの「かすみがうら」になったのも理解できます。こちらについては旧2町の規模が余り変わらない合併のようですが、旧霞ヶ浦町部のみがギリ過疎地域の要件にかかってきたのでしょうか。一部過疎のなかでは珍しいパターンのように思います。微妙なところですが旧2町の該当非該当を分けたのは鉄道駅の有無と地理的要因(霞ヶ浦)と考えられます。
やはり大都市近郊では中心都心部への交通の便(時間距離と言えるかも知れません)が過疎化(人口減少)に与える影響と言う意味では一番大きいようです。
私自身、今回の追加市町村の中で一番、あれっ?、と思った木津川市についても同様に人口の増減を調べてみました。実は木津川市は京都府で5年間人口増減率が一番大きい市(+6.95%)なので、そもそも、このタイミングで過疎に指定されたことに驚きました。
| 2020年人口 | 5年間増減率 |
木津川市(全域) | 77,907人 | +6.95% |
(旧木津町) | 57,253人 | +10.09% |
(旧山城町) | 7,958人 | -6.69% |
(旧加茂町) | 12,696人 | -7.19% |
内訳をみれば一目瞭然ですが、木津川市の人口増は旧木津町地域の+10.09%が引っ張り上げており、旧山城町と旧加茂町は何れも-6%を超える減少となっています。全体としては当然過疎ではありませんが、旧山城町または旧加茂町の地域が過疎に該当するので一部過疎という事になったものと思われます。
旧加茂町は1980年代に大規模住宅団地(南加茂台)の開発などで人口は増加していましたが、H2国勢調査の16,950人をピークにその後は減少を続けています。H27国勢調査が14,241人なので25年で-15.9%となり、当初の過疎の要件25年間-21%には達していませんでしたが、H7→R2の25年で見ると-23.8%となり人口減少が進んでいることが分かります。旧山城町地域より減少率が大きいのは、30年以上前に開発された住宅団地の高齢化が進んでいるのが一因となっているのでしょうか。
旧加茂町にはJR関西本線が通っており、昭和63年に電化されて以降は大阪への大和路快速の始発駅となりましたが、人口減少に伴い当初は毎時3本であった直通快速が一部奈良始発となって減便されて2本になり、令和3年からは毎時1本になってしまっています。こうなると都心部への交通の便という意味で、ますます過疎化を進める要因となりそうです。
一方の山城町ですが、こちらは大規模団地の開発等はなかったので、人口は昭和60年をピークに緩やかに増加して減少しています。H27国勢調査における25年間増減率は-5.5%でR2国勢調査においても25年間増減率は-13.5%と過疎の要件には達していません。このことから、今回の一部過疎は旧加茂町地域の追加であろうと推察されます。
旧加茂町地域の人口減は過去の団地開発で特定の年齢層が社会増で急増した反動が出ており、旧山城町地域は一般的な地方部の人口増減を辿っているとみることができそうです。そう考えると、現在、人口が増加している旧木津町地域もほとんどが他市(多くは奈良市)からの社会増であることから、30年後には旧加茂町地域と同じ問題が起こる可能性が高く、今のうちからビジョンを持った対策が必要なのだろうと思います。この事は現在、人口が大きく増えている首都圏郊外の市にも言えることなのではないでしょうか。