明日は母の日。と言うことで、今回は白桃さんのお膝元・浦安市のお隣、市川市から「パロディ風」ニュース。
京成線に「市川真間」と言う駅があります。その市川真間駅の駅名標示などが、明日12日まで期間限定で「市川ママ」に書き換えられている、という「嘘のような本当の話」が出ていました(
こちら)。
今回お話しするのは、その「ママ」…ではなくて、「まま」という地名についての講釈です。
市川市の「
真間」は、「萬葉集」にも登場する古くからの地名で、その「萬葉集」にも詠み込まれている、その昔かの地に住んでいたという伝説上の絶世の美女「手児名」にまつわる悲恋物語(
HP…
[93578])が伝わっていることでも知られています。民俗学者・柳田国男の「地名の研究」によると、「まま」と言う地名について、まずその市川市の「真間」を取り上げ、そのあとに次のようなことが書かれています(要約引用、地名は現在の自治体名に改めた)。
あの辺の地形には千年の間に大なる変化があったと思われるから、むしろ地名の意義から昔を推測するほうが早い。ママという地名は東部日本に充満している。汽車の駅名にも間々田【東北本線・栃木県小山市】、大間々【わたらせ渓谷鉄道・群馬県みどり市】がある
とあり、これに続いて群馬県の「大間々」について
「十六夜日記残月抄」に、「間々」は「儘」で、土が心のままに崩れるところをいい、上野の大間々なども同様である。渡良瀬川の高い崖で、「躍滝」【「高津戸峡」([84083])の[魚發]瀧(はねたき…現地ルポ~「稀少地名漢字リスト」より)か】という辺りなどはそういう場所か
と言う説を引用し
「心のまま」とはこじつけであろうが、土の崩れる崖を「まま」と言うことには傍証があり、相模の愛甲辺りの方言で、「ママックズレ」というのを現地で聞いた
と言うことが書かれています。
更に、「ママ」に当てた「方言文字」的な当て字についていくつか書かれており、静岡県伊豆の国市の「
墹之上」(ままのうえ) について、「土手と低地の間の土地」をさす方言、と言ったような意味のこと、上総・信濃でも同じような言い方があり、「崩れると言う意味はないが、高地の斜面を指す、と言う点では共通している」ということ、神奈川県南足柄市の「
壗下」(まました)と言う地名も紹介されており、地名辞書に「崖のはずれをママという」こと、「壗」と言う字は「残月抄」と同様の考えから「儘」の字をにんべんを土へんに変えた字である、ということが書かれ、伊豆の「墹之上」も、「間」(ま)の字に土へんをつけた字である、と書かれています。
このあと、各地の「ママ」地名がいくつか出ており、その大半は小字クラスですが、現在も大字として存在している、愛知県小牧市の「
間々」もありました。
終わりのほうには、現在は「真間」と同じ市川市に属する、江戸川を下って浦安市との境近くにある「
欠真間」と言う地名についても触れ、「地形と合わないのは、民居と共に滑っていったのであろう」と推測していました。
「地名の研究」には出ていない「ママ」地名として、山形県長井市の「
ままの上」があります。長井市役所の所在地でもあるこの地名は、現在は「まま」はかな表記になっていますが、古くは「土へんに山」(圸)という字が使われていました。この「圸」と言う字は、「
稀少地名漢字リスト」によると、他に山形県の西置賜郡内の2ヶ所の小字地名として使われているだけで、おそらく山形県でも置賜地方だけで使われた「方言文字」と思われます。前出の、南足柄市の「壗下」の「壗」は、他に同じ南足柄市内の2ヶ所と小田原市の1ヶ所の小字に使われているだけ、伊豆の国市の「墹之上」の「墹」も、伊豆半島から駿東地区にかけての数ヶ所の小字で見られるだけで、やはりいずれもそれぞれの限られた区域内だけで通用していた方言文字と思われます。こうした、それぞれの地元以外ではまず見たこともないような珍しい漢字がPCで打ち出せたのは、「大字クラスの地名に使われている」ことと関係しているのでしょうか。
…この記事では、ここまで出てきた「ママ」地名について、いずれも"Google Map"による航空写真をリンクしています。現在の地形・周辺環境から、「ママ」とはどんな地形を指すのか、と考えていただければよいのですが。
「市川真間」の話に戻りますが、今を去ること千数百年の昔、その美貌から多くの男達からの求愛を受け「争奪戦」に巻き込まれた挙句、自ら命を絶った伝説の美女「手児名」。もし「意中の男性」を見つけ、めでたく恋愛のゴールにたどり着けたらば、子宝にも恵まれて「理想のママ」として多くの人々から慕われた存在になったのでは、と「妄想」もしたくなります…。
…ところで、
[97673]で出した道中記クイズですが…
[97681] Nさん
さすが「超・ご当地」、お見事です…。
「領主」お勧め?の「花の名所」(実はこの駅から直接バスで行けないことが判明)
あれ?行けませんでしたか?
B市の駅前バスターミナルで時刻表を見たら、「○○の里」へは隣の駅(A市側)からバスに乗ってください」と案内がありました。おそらく、連休中の特別ダイヤで、2本の大河を続けて渡る橋の渋滞を見込んでの「臨時措置」だったのでしょう。
まだ答えが残っているので、ここでヒントを出しておきましょう。
【Q1】…文中の各市の現在の「領主」は次の通りです(敬称略)。
A市…不在 H市…深夜特急 I市…桜トンネル J市…k_ito K市…デスクトップ鉄 L市…ぺとぺと
B市~G市までの6市は全て同一人物が領主です(もう既に見え見え…)。
【Q2】…この県にある渓谷がある市には、B市と同様「特殊狭軌」の鉄道が通っています。
【Q3】…参道抜き(さんどうぬき)