「苗字と市名」にまつわる話題でにぎわっていますが…
[107802] あきごんさん
奈良県に長く住みながら奈良さんは1家族しか知らないので、もっと珍しいのかと思ったら、587位、全国に33,300人とそこまで珍しくない名字でした
私が苗字の分布・ランキングで普段利用している「
Web版・写録宝夢巣」(2007年頃のデータ)で「奈良」さんの分布を調べると、全国に約6600件、苗字順位は564位となっています。最も多いのは青森県で1062件、県ランク48位。これに次ぐのが秋田県で、775件、53位となっており、県ランキング100位以内に入るのはこの両県だけです。青森県ではその大半が青森市から弘前市にかけて、津軽中部に集中しており、「南部」ではほとんど見られません。実数では青森市が最多で260件余り、市町村ランクでは平川市と板柳町の17位が最高です。秋田県では、数では最多の県都・秋田市を除くとほとんどが青森県と接する北部に集中しており、鹿角市と大館市には200件近くあり,鹿角市では市内10位に入ります。
そのほかでは、数の上では両県からの移住も多い北海道と首都圏が上位に来ますが、県ランクでは山梨県で150位・群馬県で174位に入っているのが目を引き、県ランク200位以内に入っているのは青森・秋田と合わせてこの4県です。山梨県ではそのほとんどが東部に集まり、上野原市では130件を数え市内6位、大月市でも20位以内に入ります。群馬県では、前橋市を中心とした地域に集中しているのですが、県南東部の明和町にも多く、60件近くあり町内で2位に入っています。一方、西日本には少なく、100件以上あるのも大阪府と兵庫・香川両県のみ。奈良県には30件余りしかなく、「奈良県で奈良さんを見たことがない」というのも頷けましょう。
この「奈良」という苗字ですが、大和の奈良が発祥ではなく、「現在の
埼玉県熊谷市の地名から発祥した一族が繫栄した」とされているようです(→
[74921])。この武蔵の奈良氏は「中世の名門」であり、またこの(「奈良」という)地名が新しくないことは明らかである(柳田国男氏「地名の研究」より)ともあります。柳田氏も触れていますが、「なら」というのは「平らな地形」(「平らにする」ことを「ならす(均す)」という言い回しもありますね)を指す広い言い方であったと思われ、例示されている、現在の
東京都町田市成瀬の旧小字「奈良谷戸」(現在もバス停名などに残っている。隣接する横浜市青葉区には「奈良町」がある)など、各地に「なら」あるいはそれに近い地名があったことも書かれていました。
もっとも、現在、熊谷市には「奈良」さんはわずか数件しか見当たらず、東北地方に多いことから、「関東発祥の苗字が東北によくみられる」(「熊谷」さんもその例の1つ)というケースに当てはまるのでしょう。一方で、埼玉県内では久喜市の旧栗橋町に「奈良」さんが50件以上集中して町内10位にランクし、埼玉県内の市町村でも最多になっており、群馬県明和町のも共に、発祥地からもそう遠くない場所なので、熊谷市の奈良地区から移ってきたのかもしれません。
なお、
こちらによると、秋田の奈良氏は「佐竹氏家臣」、山梨の奈良氏は「武田氏家臣」といった由来が書かれていました。