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落書き帳から選び抜いた珠玉の記事集

なぜ地図は「北が上」なのか?

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記事数=6件/登録日:2004年6月26日/編集者:YSK

現在発行されている地図のほとんどは、北を上にして描かれています。それはなぜなのでしょうか。

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記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[17429]2003年6月27日
スナフキん
[17468]2003年6月28日
三丁目
[17496]2003年6月28日
Issie
[17578]2003年6月30日
U+3002
[29720]2004年6月25日
太白
[29725]2004年6月26日
Issie

[17429] 2003年 6月 27日(金)23:12:05スナフキん さん
しっかり!学生さん
本日帰宅直前、大学で招かれて臨時講師の真似事をしている常務が戻ってきました。講義で日本地図の白図を配布し、決められたサイズ内で実家から大学までのルートがちゃんと入り切るように図取りをし直してください、その際通る都道府県名も記してください、という課題を出してみたのだそうです。本来の目的は、「地図は上が北」という概念を取り払って、自由な角度で地域を捉えることの予行演習とする意図があったらしいのですが…結果として講義にならなかったのだそう。何と、実家から東京まで、通ってくる都道府県が1ヶ所以上分からない(東京在住でない)学生が大半だというのです。例えばと挙げたのが新潟が実家の学生。新潟を脱して越後山脈を越えた、その先の駅名や市町村名どころか、県名がもう分からない…授業が成り立たないわけです。今日2度目の「ア然」になってしまいました。で、その学生に問いただしたところ、案の定日本史受験…。少なくとも私が学生だった時分は、9割方地理学科の学生は地理を受験して通ってきていましたが、今は半分いれば御の字、くらいにまで比率が下がっているようです。ただでさえ少子・高齢化で大学の敷居がどんどん下がっているというのに、受ける側の学生の意識も「入れりゃ、どこだっていい」みたいな安直な考えがまかり通っており、これではますます学問の質が低下しかねませんね。敷居が下がるのなら、より自分の求める方向、より高い方向へのチャレンジ精神が旺盛に出てきてもよさそうなものですが、残念ながら今の世の中はそうなっていないみたいです。日本の高等教育、ことに大学教育はこれからどこへ向かおうとしているのでしょう。あるいは、この劣悪な状況は私の母校だけに見られるものなのでしょうか…。かく、偉そうに言う私も学生時代は、決して自慢できる受講態度とは言えませんでしたが。

これってひょっとしたら、「新幹線」「高速道路」が招いた功罪でしょうか? 超高速で起点から終点、目的地へと一直線で結ぶ交通路の存在は、人間の空間認識という必要最小限の能力さえ、奪っているのでしょうか…。これではいけません、学生さんは金はなくても時間はある人が多いのですから、昔よりしんどくなっているとはいえ、長期休暇にはすすんで青春18きっぷの旅をするようにしてほしいですね。そして、訳のわからない方言交じりでもいいから、その地元の人と少しでも話をしてほしいです。私はそのおかげもあって、自慢できる受講態度ではなかったけれどJR全線を走破できましたし、駅名もかなり頭に入り(何せ「各駅停車」がキホンですから)、それがひいては地名知識の蓄積へと変換されていま、十二分に役に立っています。以前にも書いたことですが、日本史の知識はせいぜい、実社会に出ても「博学+@」程度にしか役立ちませんが、地理の知識は詰め込んで絶対に無駄になることはありません(もちろん、本来「詰め込む」ものでなく自然に身につくのが最善ですが)。旅行のとき、毎日のニュース、ちょっとした調べものetc...当落書き張にも学生さんがいらっしゃり、まあここに首を突っ込む方なら心配はまずないでしょうが(苦笑)、しっかり!学生さんと言いたいですね、決して「真面目」ではなかった地理学科OBからでも。
[17468] 2003年 6月 28日(土)13:52:37三丁目 さん
地名、疑問編
宗谷本線で、下士別駅が、士別駅よりも北にあります。上=北、が地名のつけ方として普通だと思っていましたから、なぜ下士別は士別よりも北なのに「下」なのだろう、と思いました。地図を見てもよくわからなかったのですが、土地の標高差で、下士別は士別よりも低いからかな?と思いました。我が地理アドバイザーに聞いたところ、川の下流だから「下」と付けられたのだろう、とのことでした。そういう意味では、私の推測は当たらざれども遠からずかな、と。同様な地名が中札内村にもあるよ、と教えてもらいました。もともとは、上札内が中札内よりも南にあるから変だな?と思ったから気づいたそうでして。

そうそう、こういうときは市区町村雑学(大中小上下の入った市)(大中小上下の入った町)(大中小上下の入った村)。ということで、自治体名で比べてみると、南北と上中下が逆転しているのは、ワールドカップで有名になった大分県の中津江村、と上津江村。ちょっとわかりにくかったので、宮崎出身の人に地図を見てもらったら、上津江村の方が川の上流にあたるようです。

京都市の上京区、中京区、下京区、と北から南へ、と思っていたので、意外な感じがしました。それとも、私が誤解していただけであって、上・下は、川の流れ=上流に「上」と付けられていることが、一般的なのでしょうか。

[17429]スナフキんさん
「地図は上が北」という概念を取り払って、自由な角度で地域を捉えることの予行演習とする意図があったらしい
が、気になるところではありますが。
[17496] 2003年 6月 28日(土)21:39:03【1】Issie さん
Re:地名における「上」と「下」
[17468] 三丁目 さん
[17470] 雑魚 さん
[17469][17485] 両毛人 さん
ほか皆さん

基本的には皆さんの説明されているとおりでしょうね。

「自然な感覚」としては,まず
1)河川の上流下流 (かつて「オートボルタ」という国が存在しました。フランス語で「ボルタ川の上流」という意味です。現在は「ブルキナファソ」)。
次に,
2)都を基点とした上下ということになると思います。

一方、「北上」 「南下」 なる一般名詞の存在から、温暖地を求める北半球共通の感覚の様なものがあるのかな、とも感じますね。

こういう感覚,現在の私たちはアプリオリ(初めからあったよう)に思い込んでいますが,意外に新しいのではないか,と思います。

房総の場合,半島の南側が「上総」,北側が「下総」です。
これは,奈良期には東海道が相模国府(海老名,または大磯)を経た後,横須賀の走水から浦賀水道を渡って房総半島に上陸するルートを順路としていた名残です。
明治初期までは上総・下総の双方に「埴生(はぶ)郡」が存在しました。下総を管轄した印旛県と上総・安房を管轄した木更津県とが合体して千葉県が成立したとき,上総の埴生郡は「上埴生郡」,下総の埴生郡は「下埴生郡」となっています。それぞれ,1890年代の郡制施行に際しては,上埴生郡は長柄郡と統合されて「長生郡」に,下埴生郡は「印旛郡」に統合されています。

「北が上」というのが何を起源としているのか,私はよく知りません。
平城京(奈良)や平安京(京都)では確かに内裏が都の北端に置かれ,しかもそれぞれ大和盆地(奈良盆地)や京都盆地の北端に位置したせいで,地形的にも「北が高く,南が低い」という状況にあるのですが,これが「必然」とは必ずしも言えないと思います。

平城京に先立って建設された「藤原京」の場合,確かに「北に山を背負い,…」と続く中国式都城の基本設計を踏襲しているのですが,明日香そのものが大和盆地の南に位置するために,こともあろうに都の北端に置かれた内裏に向かって都(みやこ)中の汚水が集まってきてしまい,その点では大失敗だったと言われます。
しかし,モデルとなった長安(シーアン:西安)は,山を南に,北にウェイ川を臨む位置にあるのですよね。もしかしたら,北の方が低かったのでは?

1869年に明治天皇が東京へ「2度目の旅」に発って以来,ほんの一瞬を除いて天皇は東京へ旅行へ行ったまま8世紀末以来の「平安京」にほとんど帰ってこない(睦仁=明治天皇はお墓を伏見に作ったので,死去してから京都に帰ってきました。嘉仁=大正天皇と裕仁=昭和天皇は即位の式典をしに京都にやってきましたが,お墓は東京にあります。現天皇の明仁氏は即位の式典さえも東京でやってしまいました)のですが,それまでの東海道では「東下/西上」というのが当然の表現でしたよね。
今の東海道本線では「西下/東上」となってますけどね。
[17578] 2003年 6月 30日(月)15:40:08U+3002 さん
地図の向き
[17485]両毛人 さん
地図がなぜ北を上にしてつくられようになったかということにつきましては、一般的な説として、方位磁針が北を指し、また方位を知るために古くから北極星が目標とされていたため、というものがある

だとすると、かりに文明が南で生まれたとしても、必ずしも南が上ということにはならないですね。
南極星はないですし、すると、方位磁石が南を指す(正確にいえば、南を指すがわに印をつける)ともかぎらなそうです。

[17496]Issie さん
「北が上」というのが何を起源としているのか,私はよく知りません。
平城京(奈良)や平安京(京都)では確かに内裏が都の北端に置かれ,しかもそれぞれ大和盆地(奈良盆地)や京都盆地の北端に位置したせいで,地形的にも「北が高く,南が低い」という状況にあるのですが,これが「必然」とは必ずしも言えないと思います。

「天使は南面す」と言われますから、古来は「北が上」というのは自然な感覚だったと思います。
十二支の第1支「子」は真北で、五行説でも、第1行「木」は北です。
ただし、東アジアの地図は「北が上」ではなく、皇帝に見えるまま、つまり「南が上(というか遠く)」です。
私見ですが、現在の「北が上」という感覚は、古代の「北が上」とは断絶しており、ヨーロッパ起源だと思います。

以下、思いつくままに書き連ねます。

北を上とするのは、プトレマイオス『世界地理書』が起源と言われています。
プトレマイオスは円錐図法を採用したため、北を上にすると地図が正立三角形(△)になり、レイアウト上つごうがよかっらからだそうな。

ただ、「北が上」が主になるのは、ルネサンス以降です。
中世ヨーロッパでは、エデン(もちろん架空)の方角である東が上でした。
同時代のイスラムでは、南が上でした(理由は不明)。

天文学では、自然の法則として、北半球なら「北が上」です。
簡単な例では、(北緯35°なら)北極星の高度は35°、天の南極の高度は-35°です。
天の北極周辺の狭い領域では上下が逆転することもありますが、それ以外では常に「北が上」です。
ただ、これが地図の向きの確立と関係しているかどうかはわかりません。

天体望遠鏡では、視野が180°回転して見えます。
そのため、天体図(天体の地図)は、南が上に書かれることがあります。
近年になって、惑星探査機の写真をもとに地図が描かれるようになったからか、「南が上」の天体図は減りました。

神戸では、北を「上」、南を「下」と言うそうです。
標高/河流からでしょうね。
ただ、これは六甲山以北にまで適用されるのか、気になるところです。

オーストラリアの「南が上」地図は、観光客向けのみやげものらしいです。
[29720] 2004年 6月 25日(金)23:59:25太白 さん
下町の地名の謎
久しぶりの書き込みです。諸般の事情により、ろくにROMもできていない状況ではありますが…。


[28818] なきら さん
次の移動先も海外なのかなぁと
はい、メンバー紹介欄にあるとおり、残念ながら東京の下町中の下町在住となっております。

そんなわけで、下町の地名で疑問に思った点をいくつか…。

1.南北なのに「横」
江東区の中央部、旧東京市深川区と城東区の境界を基本的に画していた「横十間川」([14798]Issieさん)ですが、東陽町付近の一部を除き、基本的には南北方向に流れる川です。そういう意味では、この川は「北が上」という現在の地図の一般的感覚からすると若干の違和感があります。他方で、江戸城から千葉方面に向かう際には「横向きに走っている川」ともいえるわけで、江戸城中心で見た命名感覚との印象があります。なお、浅草から東に向かう川は「縦十間川」ではなく「北十間川」です。

2.「入谷」の「谷」って何?
 上野周辺には「入谷」「下谷(したや)」「谷中(やなか)」など、谷がつく地名が多くあります。このうち、「谷中」については、不忍通り沿いの比較的深い谷との関連性が見出せますが、「入谷」「下谷」は地形上、谷とは思えません。すなわち、入谷の西側は上野の山ですが、東側は隅田川にかけて完全にフラットな地形になっています。また、対応するであろう「上谷」という地名もありません。

3.「深川」の由来とは?
 旧東京市の区名でもあり、現在も地名として残る「深川」なのですが、地名の由来は何なんでしょうか? 住居表示としての深川が残る門前仲町北部を通る川は仙台堀川ですし、西深川橋、東深川橋がかかるのは小名木川。「深川」なる川は見当たりません。
[29725] 2004年 6月 26日(土)01:23:55Issie さん
縦横
[29720] 太白 さん
1.南北なのに「横」

すでに何人かの方がお答えになっていますが,
要するに「北が上」の地図なんぞ見ていないからですね。
お城から東の方を見れば,南北の川は横になって見えるじゃないですか。
だから「横十間川」。…「正しい」東京(江戸)方言としては「よこじっけん」と読むところですが…。
で,お城の手前から向う,東の方へズドーンと延びている川は「竪川=縦川」なのですね。

「北が上」など,ヨーロッパ式の地図の習慣に毒された思い込みに過ぎません。
そもそも,日本式の江戸地図では注記の向きは必要に応じてまちまち(大名屋敷の場合は,門の向きに合わせる)ですから,地図そのものには上も下もなさそうです。

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